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第三章 使い方

ネコマフラー

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「なるほど、そう来るか」

木の上にある建築物に到達するためには蔦を使って登っていかなくてはならない。幸いにも蔦は縄のように編み込みがされており、それなりの太さがあるので心配はない。

ただひとつ問題があるとするならば。

『おーん…』

このネコが上まで登ってこられるかどうかだ。

「ネコどうする?」

カリアが言う。

「担ぐしか無いわよね」

それか肩に乗せるか。しかしネコは普通の猫よりも大きめである。
オレ達も駿馬を置いてきたのでそれぞれ荷物(重い)を背負っているし、片手であそこまで登るのはちょっと辛そうだ。

「少し前のさ、あれできないの?」

『あれ?』

「影に潜るやつ」

『あー、あれか』

影に潜るやつはネコが自分の形を崩して影と同化する技である。しかしあれもそこそこ魔力を消費するらしい。

『うーん、まってやってみたいことがある』











「それでは行きます」

トルテが蔦を使ってするする登っていく。とても早い。驚きの早さだ。

「じゃあ次コッチ」

そしてカリア。
キリコ、アウソに続きオレの番になった。

「落ちるなよ」

『がんばる』

蔦を握り登り始める。今まで散々走ったり跳んだりしてきたが、登るのはあまりしなかったので荷物を背負った状態での蔦登りは少し辛い。でも少しは筋肉が付いてきているらしく、思ったよりもキツくはなかった。少し辛いけど、少しでおさまる範囲である。

そして問題のネコだが。

「やっぱり気になる」

『気にすんな』

形を変えて首に巻き付く蛇のような形状になっていた。首もとに当たる毛と、ネコ独特の高めの体温も合間ってまるでマフラーだ。冬なら最高だっただろう。しかし、今は初夏で、ここは熱帯だ。暑苦しいことこの上なし。

もともと形を変える修行の際にザラキから猫の体の大きさの変化だけではなく、もっと様々な形に成れるよう練習してみればと言われていた。ネコはめんどくさがって、練習もそこそこしかしなかったが、なるほど、こういう時に役に立つ。

暑苦しさと戦いながらようやく上まで登りきれると、たくさんの獣人(ガラージャ)達が集まってきていた。ほとんどが猫系だが、たまに蜥蜴系、そして子供程の大きさしかない鼠系のもいた。

家から男性が出てきた。もちろん頭からは立派な猫耳が、お尻からは逞しい尾が伸びている。

男性はこちらを見て口を開いた。

「ようこそ!我らがジュノへ!我々はあなた方を歓迎します!どうぞ、中へお入りください!!」









入口や壁は蔦を細かく編み込んだ物で仕切られており、入口も切れ目がないと何処なのかが分からなかった。

中に入り、用意されていた座布団へと座る。

荷物を下ろし床へ置くと、ネコがようやく猫型に戻り肩から降りてくれた。

男性が部屋の奥にある少し立派な座布団へと腰掛ける。そしてその隣にトルテと、違う女性。蜥蜴系の男性、青年と左右に並んで腰掛けた。

「今回はルキオからの使いでは無いと言う事で、共通語で話をさせて貰う。こんにちは。私はこのジュノを纏める長のスワと申します。こちらは妻のアリテ、娘のトルテ、側近のバラク、継ぎ子のラシュだ。今ここにいる私含めての5名は共通語、またはルキオ語を扱える者達だ。そちらにもジュノの言葉を解す者がいるという事だが、一応話せない者のために紹介しておく。もっとも私以外は流暢に話すことに馴れていないので、たまにジュノの言葉が混じるが、そこのところは理解をしてくれ」

共通語ぺらぺらですね。
トルテもぺらぺらではなかったが、理解出来ない事はなかったし、案外なんとかなるかもしれない。

そして、オレ達もカリアから順に自己紹介をしていき、カリアがザラキから聞いた情報を伝え当たっているかを確認し、知らない情報を開示してもらう。

その間、ずっと部屋の窓からのたくさんの視線が突き刺さっていて、凄く気になった。
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