123 / 152
第三章 使い方
ネコマフラー
しおりを挟む
「なるほど、そう来るか」
木の上にある建築物に到達するためには蔦を使って登っていかなくてはならない。幸いにも蔦は縄のように編み込みがされており、それなりの太さがあるので心配はない。
ただひとつ問題があるとするならば。
『おーん…』
このネコが上まで登ってこられるかどうかだ。
「ネコどうする?」
カリアが言う。
「担ぐしか無いわよね」
それか肩に乗せるか。しかしネコは普通の猫よりも大きめである。
オレ達も駿馬を置いてきたのでそれぞれ荷物(重い)を背負っているし、片手であそこまで登るのはちょっと辛そうだ。
「少し前のさ、あれできないの?」
『あれ?』
「影に潜るやつ」
『あー、あれか』
影に潜るやつはネコが自分の形を崩して影と同化する技である。しかしあれもそこそこ魔力を消費するらしい。
『うーん、まってやってみたいことがある』
「それでは行きます」
トルテが蔦を使ってするする登っていく。とても早い。驚きの早さだ。
「じゃあ次コッチ」
そしてカリア。
キリコ、アウソに続きオレの番になった。
「落ちるなよ」
『がんばる』
蔦を握り登り始める。今まで散々走ったり跳んだりしてきたが、登るのはあまりしなかったので荷物を背負った状態での蔦登りは少し辛い。でも少しは筋肉が付いてきているらしく、思ったよりもキツくはなかった。少し辛いけど、少しでおさまる範囲である。
そして問題のネコだが。
「やっぱり気になる」
『気にすんな』
形を変えて首に巻き付く蛇のような形状になっていた。首もとに当たる毛と、ネコ独特の高めの体温も合間ってまるでマフラーだ。冬なら最高だっただろう。しかし、今は初夏で、ここは熱帯だ。暑苦しいことこの上なし。
もともと形を変える修行の際にザラキから猫の体の大きさの変化だけではなく、もっと様々な形に成れるよう練習してみればと言われていた。ネコはめんどくさがって、練習もそこそこしかしなかったが、なるほど、こういう時に役に立つ。
暑苦しさと戦いながらようやく上まで登りきれると、たくさんの獣人(ガラージャ)達が集まってきていた。ほとんどが猫系だが、たまに蜥蜴系、そして子供程の大きさしかない鼠系のもいた。
家から男性が出てきた。もちろん頭からは立派な猫耳が、お尻からは逞しい尾が伸びている。
男性はこちらを見て口を開いた。
「ようこそ!我らがジュノへ!我々はあなた方を歓迎します!どうぞ、中へお入りください!!」
入口や壁は蔦を細かく編み込んだ物で仕切られており、入口も切れ目がないと何処なのかが分からなかった。
中に入り、用意されていた座布団へと座る。
荷物を下ろし床へ置くと、ネコがようやく猫型に戻り肩から降りてくれた。
男性が部屋の奥にある少し立派な座布団へと腰掛ける。そしてその隣にトルテと、違う女性。蜥蜴系の男性、青年と左右に並んで腰掛けた。
「今回はルキオからの使いでは無いと言う事で、共通語で話をさせて貰う。こんにちは。私はこのジュノを纏める長のスワと申します。こちらは妻のアリテ、娘のトルテ、側近のバラク、継ぎ子のラシュだ。今ここにいる私含めての5名は共通語、またはルキオ語を扱える者達だ。そちらにもジュノの言葉を解す者がいるという事だが、一応話せない者のために紹介しておく。もっとも私以外は流暢に話すことに馴れていないので、たまにジュノの言葉が混じるが、そこのところは理解をしてくれ」
共通語ぺらぺらですね。
トルテもぺらぺらではなかったが、理解出来ない事はなかったし、案外なんとかなるかもしれない。
そして、オレ達もカリアから順に自己紹介をしていき、カリアがザラキから聞いた情報を伝え当たっているかを確認し、知らない情報を開示してもらう。
その間、ずっと部屋の窓からのたくさんの視線が突き刺さっていて、凄く気になった。
木の上にある建築物に到達するためには蔦を使って登っていかなくてはならない。幸いにも蔦は縄のように編み込みがされており、それなりの太さがあるので心配はない。
ただひとつ問題があるとするならば。
『おーん…』
このネコが上まで登ってこられるかどうかだ。
「ネコどうする?」
カリアが言う。
「担ぐしか無いわよね」
それか肩に乗せるか。しかしネコは普通の猫よりも大きめである。
オレ達も駿馬を置いてきたのでそれぞれ荷物(重い)を背負っているし、片手であそこまで登るのはちょっと辛そうだ。
「少し前のさ、あれできないの?」
『あれ?』
「影に潜るやつ」
『あー、あれか』
影に潜るやつはネコが自分の形を崩して影と同化する技である。しかしあれもそこそこ魔力を消費するらしい。
『うーん、まってやってみたいことがある』
「それでは行きます」
トルテが蔦を使ってするする登っていく。とても早い。驚きの早さだ。
「じゃあ次コッチ」
そしてカリア。
キリコ、アウソに続きオレの番になった。
「落ちるなよ」
『がんばる』
蔦を握り登り始める。今まで散々走ったり跳んだりしてきたが、登るのはあまりしなかったので荷物を背負った状態での蔦登りは少し辛い。でも少しは筋肉が付いてきているらしく、思ったよりもキツくはなかった。少し辛いけど、少しでおさまる範囲である。
そして問題のネコだが。
「やっぱり気になる」
『気にすんな』
形を変えて首に巻き付く蛇のような形状になっていた。首もとに当たる毛と、ネコ独特の高めの体温も合間ってまるでマフラーだ。冬なら最高だっただろう。しかし、今は初夏で、ここは熱帯だ。暑苦しいことこの上なし。
もともと形を変える修行の際にザラキから猫の体の大きさの変化だけではなく、もっと様々な形に成れるよう練習してみればと言われていた。ネコはめんどくさがって、練習もそこそこしかしなかったが、なるほど、こういう時に役に立つ。
暑苦しさと戦いながらようやく上まで登りきれると、たくさんの獣人(ガラージャ)達が集まってきていた。ほとんどが猫系だが、たまに蜥蜴系、そして子供程の大きさしかない鼠系のもいた。
家から男性が出てきた。もちろん頭からは立派な猫耳が、お尻からは逞しい尾が伸びている。
男性はこちらを見て口を開いた。
「ようこそ!我らがジュノへ!我々はあなた方を歓迎します!どうぞ、中へお入りください!!」
入口や壁は蔦を細かく編み込んだ物で仕切られており、入口も切れ目がないと何処なのかが分からなかった。
中に入り、用意されていた座布団へと座る。
荷物を下ろし床へ置くと、ネコがようやく猫型に戻り肩から降りてくれた。
男性が部屋の奥にある少し立派な座布団へと腰掛ける。そしてその隣にトルテと、違う女性。蜥蜴系の男性、青年と左右に並んで腰掛けた。
「今回はルキオからの使いでは無いと言う事で、共通語で話をさせて貰う。こんにちは。私はこのジュノを纏める長のスワと申します。こちらは妻のアリテ、娘のトルテ、側近のバラク、継ぎ子のラシュだ。今ここにいる私含めての5名は共通語、またはルキオ語を扱える者達だ。そちらにもジュノの言葉を解す者がいるという事だが、一応話せない者のために紹介しておく。もっとも私以外は流暢に話すことに馴れていないので、たまにジュノの言葉が混じるが、そこのところは理解をしてくれ」
共通語ぺらぺらですね。
トルテもぺらぺらではなかったが、理解出来ない事はなかったし、案外なんとかなるかもしれない。
そして、オレ達もカリアから順に自己紹介をしていき、カリアがザラキから聞いた情報を伝え当たっているかを確認し、知らない情報を開示してもらう。
その間、ずっと部屋の窓からのたくさんの視線が突き刺さっていて、凄く気になった。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
マーラッシュ
ファンタジー
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。
ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。
ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。
ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。
なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。
もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。
もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。
モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。
なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。
顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。
辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。
他のサイトにも掲載
なろう日間1位
カクヨムブクマ7000
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる