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第二章 動き出す
魔法陣解除
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実は入ったときから気になる魔法の気配がするというニックの後を着いて、牢屋の通路と反対側の洞窟の奥へと進んでいく。こちらは先ほどの道とは違いきちんと整備されてなくゴツゴツとした岩が残され非常に足元が危ない。が、整備されてない分頑丈で、こちらはヒビ一つ入っていなかった。
「やっぱ、魔術師ってパーティーに一人いると便利だよな。後でウルマに言おう」
光がないのでニックが杖の先に小さな火の玉を浮遊させて前方を照らしている、それをサズが感心したように見ながらそう呟いていた。
「自己紹介まだだったな、俺はノルベルトっつーんだ。よろしくな!」
転ばないように慎重に歩いていると、金髪の青年が自己紹介をしてきた。ニックと違い猫を被っている様子はなく、本物の好青年のようだ。
「ライハです。よろしくお願いします」
「おう!んで、そっちのは?」
「サズだ。ウルマのパーティー所属」
「ああ、あのオッサンの。お前は何処のだ?俺はシラギクん所のだが」
「カリアさんの所です」
「あー、あのやたら背が高くてボインの姉さんん所のか」
(ボイン…)
そんな感じで駄弁りつつ黙(だんま)りのニックを追い掛けていると前方に岩の壁が。
「行き止まりか?」
サズが言う。
「いや、ちょっと待て」
ニックが壁を触り何かを探している。叩いたりもしているのだが、固そうな音が鳴るだけで特に変わった様子もない。また魔法陣でもあるのかとオレも薄暗い中隅々まで目を通すがそれらしきものはなく、本当にただの行き止まりのように感じられた。
「どうする、クラウス。引き返すか?」
と、ノルベルトが親指で来た道を指し。
「…掘るか?」
と、サズが斧をくるくる回す。
しかしニックはそれらを無視し、服の中に隠れていたリスのようなウサギのような生き物を取り出すと、そいつを壁に向けた。
しばらく耳と鼻を動かしながらニックにあちこち動かされてもされるがままだったが、壁のある場所を向けられるとピクリと反応した。
「キキッキ、キキキ!」
いや、ニックの手の中で必死に顔をそらして逃げようとしていた。
「ニックさん。何してんすか、それ」
「ん?あー、こいつはピートンっていう生き物で、魔力や危険を察知する能力に長けている。こんな感じに」
「!!、キャー!!キャー!!」
「ひどい傷付いた」
ニックがピートンをこちらへ向けたとたん、可愛い前足を頭の横に付け、まるでオーマイガッ!と言っているみたいに激しく首を振りながら悲鳴をあげ始めた。オレなにもしてないのに。
「やめろお前も狙うんじゃない」
そしてそのピートンをじっと見る猫。
「じゃあ、この変な生き物が反応した向こうに何かあるってことか」
「ただ、この岩は魔法陣で作られたものではない。純粋な、創成魔法で作られたものだ。そして生憎俺は土属性魔法が苦手でな」
「どうするんです?」
「そこで、ノルベルトが役に立つ」
「オルァ!!」
剣を顔の横で狙いをつけ、気合いと共に剣を壁に突き立てるとそこを中心に蜘蛛の巣状にヒビが入った。
「もう一丁!!」
そして一度引き抜くと大きく振りかぶって再び突き刺す。
(ここにきて地道な突貫作業、てか“ノルベルトさん”がじゃなくて、“ノルベルトさんの剣”が役に立つの間違いだわこれ)
ひたすらヒビに剣を突き刺し広げていく作業をノルベルト、サズ、オレと交代で行い(ニックは灯り担当の為不参加)三周目でようやく向こう側に到達したのかヒビの間から光が漏れてきた。
「お、あとちょっとだな」
「じゃあ最後は一緒にやりましょう」
「よし、じゃあタイミング合わせんぞ!準備は良いか?」
オレは黒刀を、ノルベルトは剣を、サズは両斧を構える。
「いっせーのっ、せ!!!」
バゴンとなんとも気持ちのよい音をさせて壁が崩れ落ちた。達成感に包まれた三人がイエーイ!とハイタッチをし合う。
「うっわ、これはまた…」
喜びを分かち合っている三人をスルーしていち早く壁の向こうへ進んだニックがソレを見て呆れた声をあげた。
部屋一杯に広がる不思議な形をした巨大な魔法陣と大量の光る石。光る石のせいか魔法陣も青白く輝き、ニックの灯りもいらない程に明るい部屋だった。
あちらこちらから蛍のようなものが壁をすり抜け魔法陣に吸収され、その代わり黒く弾ける光が魔法陣から靄のように立ち上る。
「うわぁ、綺麗だ」
その幻想的な光景と何故だか魔法陣から溢れる光がとても魅力的なものに見え、見入ってしまっていた。
「うっ、ちょっと気分わりぃ」
「俺もだ。すまんがそっから先へは行けそうにない」
だが、サズとノルベルトは眉を潜め顔色を悪くさせていた。
出来るだけ光を見ないように腕で防御し、壁があった場所から近付こうとしない。
「おい、呪いの」
「ライハです、ニックさん」
「お前は平気か」
「あー、はい。特に何も」
むしろ逆に体が楽になってくる。
恐らく反転の呪いが作用しているのだろう。
「ニックさんは?」
「俺も一応まだ平気だが、魔力耐性や適応能力の低い奴らにはただの毒のようなものだ。魔力中毒になっちまう。ったく、これ使って何をしようとしてんだか…」
「なんの魔法陣なんですか?これ」
「座標固定、広域指定、特定収集、移送、一部反転、凝縮、放出に召喚補佐と自己防御…、と、色んな魔法陣の複合したやつだ。描く時恐ろしく時間と魔力を消費するが、一度起動させちまえば厄介な品物だな。この大量の魔宝石も自己防御の為にしか使ってない、この辺りの魔力を集めてどっかに流している。その一部を害のある魔力に変えて放出し耐性の低い人間を遠ざけ、万が一見付かっても結界を張ってるから容易に破壊できないようにしてやがる。つか、この召喚補佐の陣はなんだ?こんな大掛かりなもの使って何を召喚するつもりなんだよ、これ作ったやつ絶対色々狂ってる」
ブツブツと呟きながらニックは灯りを消した杖の先を魔法陣に近付けると、途中見えない何かに阻まれたかのように押し戻されている。結界というやつだろうか。
「やっぱお前連れてきて正解だった」
ニックが立ち上がりこちらを見る。
「時間がない、さっさとこの魔法陣解除するぞ」
「了解です」
「やっぱ、魔術師ってパーティーに一人いると便利だよな。後でウルマに言おう」
光がないのでニックが杖の先に小さな火の玉を浮遊させて前方を照らしている、それをサズが感心したように見ながらそう呟いていた。
「自己紹介まだだったな、俺はノルベルトっつーんだ。よろしくな!」
転ばないように慎重に歩いていると、金髪の青年が自己紹介をしてきた。ニックと違い猫を被っている様子はなく、本物の好青年のようだ。
「ライハです。よろしくお願いします」
「おう!んで、そっちのは?」
「サズだ。ウルマのパーティー所属」
「ああ、あのオッサンの。お前は何処のだ?俺はシラギクん所のだが」
「カリアさんの所です」
「あー、あのやたら背が高くてボインの姉さんん所のか」
(ボイン…)
そんな感じで駄弁りつつ黙(だんま)りのニックを追い掛けていると前方に岩の壁が。
「行き止まりか?」
サズが言う。
「いや、ちょっと待て」
ニックが壁を触り何かを探している。叩いたりもしているのだが、固そうな音が鳴るだけで特に変わった様子もない。また魔法陣でもあるのかとオレも薄暗い中隅々まで目を通すがそれらしきものはなく、本当にただの行き止まりのように感じられた。
「どうする、クラウス。引き返すか?」
と、ノルベルトが親指で来た道を指し。
「…掘るか?」
と、サズが斧をくるくる回す。
しかしニックはそれらを無視し、服の中に隠れていたリスのようなウサギのような生き物を取り出すと、そいつを壁に向けた。
しばらく耳と鼻を動かしながらニックにあちこち動かされてもされるがままだったが、壁のある場所を向けられるとピクリと反応した。
「キキッキ、キキキ!」
いや、ニックの手の中で必死に顔をそらして逃げようとしていた。
「ニックさん。何してんすか、それ」
「ん?あー、こいつはピートンっていう生き物で、魔力や危険を察知する能力に長けている。こんな感じに」
「!!、キャー!!キャー!!」
「ひどい傷付いた」
ニックがピートンをこちらへ向けたとたん、可愛い前足を頭の横に付け、まるでオーマイガッ!と言っているみたいに激しく首を振りながら悲鳴をあげ始めた。オレなにもしてないのに。
「やめろお前も狙うんじゃない」
そしてそのピートンをじっと見る猫。
「じゃあ、この変な生き物が反応した向こうに何かあるってことか」
「ただ、この岩は魔法陣で作られたものではない。純粋な、創成魔法で作られたものだ。そして生憎俺は土属性魔法が苦手でな」
「どうするんです?」
「そこで、ノルベルトが役に立つ」
「オルァ!!」
剣を顔の横で狙いをつけ、気合いと共に剣を壁に突き立てるとそこを中心に蜘蛛の巣状にヒビが入った。
「もう一丁!!」
そして一度引き抜くと大きく振りかぶって再び突き刺す。
(ここにきて地道な突貫作業、てか“ノルベルトさん”がじゃなくて、“ノルベルトさんの剣”が役に立つの間違いだわこれ)
ひたすらヒビに剣を突き刺し広げていく作業をノルベルト、サズ、オレと交代で行い(ニックは灯り担当の為不参加)三周目でようやく向こう側に到達したのかヒビの間から光が漏れてきた。
「お、あとちょっとだな」
「じゃあ最後は一緒にやりましょう」
「よし、じゃあタイミング合わせんぞ!準備は良いか?」
オレは黒刀を、ノルベルトは剣を、サズは両斧を構える。
「いっせーのっ、せ!!!」
バゴンとなんとも気持ちのよい音をさせて壁が崩れ落ちた。達成感に包まれた三人がイエーイ!とハイタッチをし合う。
「うっわ、これはまた…」
喜びを分かち合っている三人をスルーしていち早く壁の向こうへ進んだニックがソレを見て呆れた声をあげた。
部屋一杯に広がる不思議な形をした巨大な魔法陣と大量の光る石。光る石のせいか魔法陣も青白く輝き、ニックの灯りもいらない程に明るい部屋だった。
あちらこちらから蛍のようなものが壁をすり抜け魔法陣に吸収され、その代わり黒く弾ける光が魔法陣から靄のように立ち上る。
「うわぁ、綺麗だ」
その幻想的な光景と何故だか魔法陣から溢れる光がとても魅力的なものに見え、見入ってしまっていた。
「うっ、ちょっと気分わりぃ」
「俺もだ。すまんがそっから先へは行けそうにない」
だが、サズとノルベルトは眉を潜め顔色を悪くさせていた。
出来るだけ光を見ないように腕で防御し、壁があった場所から近付こうとしない。
「おい、呪いの」
「ライハです、ニックさん」
「お前は平気か」
「あー、はい。特に何も」
むしろ逆に体が楽になってくる。
恐らく反転の呪いが作用しているのだろう。
「ニックさんは?」
「俺も一応まだ平気だが、魔力耐性や適応能力の低い奴らにはただの毒のようなものだ。魔力中毒になっちまう。ったく、これ使って何をしようとしてんだか…」
「なんの魔法陣なんですか?これ」
「座標固定、広域指定、特定収集、移送、一部反転、凝縮、放出に召喚補佐と自己防御…、と、色んな魔法陣の複合したやつだ。描く時恐ろしく時間と魔力を消費するが、一度起動させちまえば厄介な品物だな。この大量の魔宝石も自己防御の為にしか使ってない、この辺りの魔力を集めてどっかに流している。その一部を害のある魔力に変えて放出し耐性の低い人間を遠ざけ、万が一見付かっても結界を張ってるから容易に破壊できないようにしてやがる。つか、この召喚補佐の陣はなんだ?こんな大掛かりなもの使って何を召喚するつもりなんだよ、これ作ったやつ絶対色々狂ってる」
ブツブツと呟きながらニックは灯りを消した杖の先を魔法陣に近付けると、途中見えない何かに阻まれたかのように押し戻されている。結界というやつだろうか。
「やっぱお前連れてきて正解だった」
ニックが立ち上がりこちらを見る。
「時間がない、さっさとこの魔法陣解除するぞ」
「了解です」
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