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その23 小さな侵入者
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ひょこひょことアホ毛が動いている。
手には手枷の痕が残り、体はガリガリで襤褸と呼んでも差し支えない服の隙間から見えた肋骨が浮いている。
オレンジの髪はドロドロで、土と埃で色がくすみ。紫色の瞳は常にキョロキョロと動いて警戒している。
年の瀬は、7つくらいだろうか。
だけど余りにも痩せているからもっと幼く見えている。
そう。その子は奴隷であった。
この子が何か罪を犯したわけではない。
奴隷が誰かに孕まされて、奴隷として産まれた哀れな奴隷二世だった。
「うー。う?」
草むらの向こうから足音が聞こえる。
無知を持った監視が追い掛けてきたのか。
子供は震えながら身を小さくして音が遠くなるまでその場で息を止めていた。
いつものように穴を掘った時に出る土砂を運んでいる最中に催して草むらの中に入っていった。
用を済まして戻ろうとしたときに、変な形の棒を見つけたのだ。
キラキラぴかぴかしていてきれいなそれを思わず拾うと、頭の中に《鍵穴に入れる》と出た。
鍵穴がなんなのか分からなかったけど、目の前に矢印が浮かんだと思えば、それが動いて腕のわっかの穴を示した。
これに入れるのかと、好奇心で入れるとわっかが外れた。
腕がとても軽くなった。
凄く面白くてもうひとつのわっかも外すと空を飛びそうなほど腕が軽くて、しばらくその場でばんざいをしていた。
そうだ。そろそろ戻らないと叩かれると、もとの場所に戻ろうとしたとき、またしても目の前に矢印。
手で払っても消えない矢印がある方向を指している。
でももう戻らないと怒られて鞭で叩かれると無視しようとすると、矢印がたくさん増えて視界を覆い尽くしてしまった。
これでは前が見えないし転んでしまう。
仕方なく示された方向に顔を向けると矢印が消えてひとつだけになった。
どうやらこの矢印はどこかに連れていきたいらしい。
そこにこの矢印を連れていってから戻ろうと、矢印の後に着いていった。
草を掻き分けて、岩を上って、岩の間の溝を通っていった。
子供の体はとても小さくて、探しに来た監視の目には見えない。
そんなことはつゆほども知らない子供はよいせよいせと登っていく。すると、たくさんの怖い人達が草の間で走り回っていた。
監視ではないけど剣を持っていて凄く怖い。
見付かったら叩かれるかもしれない。
それは嫌だなと草むらで隠れて座っていると、手にふわふわのものが触れた。
目を向けると、毛玉がこっちを見ていた。
なんだろう。うさぎというやつかな?
「ん?」
小さく声を出すと、ふわふわも跳ねながら声を出した。
「グモ」
可愛いふわふわ。
触れてみると、今まで触った何よりもふわふわで撫でてみた。
ふわふわも嬉しいのかすり寄ってきて、思わず歯を出してみた。
するとたくさんのふわふわが出てきた。
驚いて逃げようとすると、後ろに大きいふわふわがいてぶつかった。
「あ、え?」
急に怖くなって、頭が真っ白になった瞬間。
「グモ、グモグモ」
ふわふわが分裂して子供を飲み込んだ。
気が付いたら森のなかだった。
どこも怪我してないし、ふわふわも矢印も居なくなっていた。
戻ろうとしたとき、足音が聞こえてきた。
途端体が震えだし逃げてしまったのだ。
叩かれるのは嫌だ。痛いのは嫌だ。
でも結局は小さな子供。
いつの間にか眠ってしまってた。
「あれ?子供だ」
「迷い子かねぇ??」
「ねぇ、怪我しとるよ。手当てしないと」
「んだな。みんなー!帰るどー!!」
手には手枷の痕が残り、体はガリガリで襤褸と呼んでも差し支えない服の隙間から見えた肋骨が浮いている。
オレンジの髪はドロドロで、土と埃で色がくすみ。紫色の瞳は常にキョロキョロと動いて警戒している。
年の瀬は、7つくらいだろうか。
だけど余りにも痩せているからもっと幼く見えている。
そう。その子は奴隷であった。
この子が何か罪を犯したわけではない。
奴隷が誰かに孕まされて、奴隷として産まれた哀れな奴隷二世だった。
「うー。う?」
草むらの向こうから足音が聞こえる。
無知を持った監視が追い掛けてきたのか。
子供は震えながら身を小さくして音が遠くなるまでその場で息を止めていた。
いつものように穴を掘った時に出る土砂を運んでいる最中に催して草むらの中に入っていった。
用を済まして戻ろうとしたときに、変な形の棒を見つけたのだ。
キラキラぴかぴかしていてきれいなそれを思わず拾うと、頭の中に《鍵穴に入れる》と出た。
鍵穴がなんなのか分からなかったけど、目の前に矢印が浮かんだと思えば、それが動いて腕のわっかの穴を示した。
これに入れるのかと、好奇心で入れるとわっかが外れた。
腕がとても軽くなった。
凄く面白くてもうひとつのわっかも外すと空を飛びそうなほど腕が軽くて、しばらくその場でばんざいをしていた。
そうだ。そろそろ戻らないと叩かれると、もとの場所に戻ろうとしたとき、またしても目の前に矢印。
手で払っても消えない矢印がある方向を指している。
でももう戻らないと怒られて鞭で叩かれると無視しようとすると、矢印がたくさん増えて視界を覆い尽くしてしまった。
これでは前が見えないし転んでしまう。
仕方なく示された方向に顔を向けると矢印が消えてひとつだけになった。
どうやらこの矢印はどこかに連れていきたいらしい。
そこにこの矢印を連れていってから戻ろうと、矢印の後に着いていった。
草を掻き分けて、岩を上って、岩の間の溝を通っていった。
子供の体はとても小さくて、探しに来た監視の目には見えない。
そんなことはつゆほども知らない子供はよいせよいせと登っていく。すると、たくさんの怖い人達が草の間で走り回っていた。
監視ではないけど剣を持っていて凄く怖い。
見付かったら叩かれるかもしれない。
それは嫌だなと草むらで隠れて座っていると、手にふわふわのものが触れた。
目を向けると、毛玉がこっちを見ていた。
なんだろう。うさぎというやつかな?
「ん?」
小さく声を出すと、ふわふわも跳ねながら声を出した。
「グモ」
可愛いふわふわ。
触れてみると、今まで触った何よりもふわふわで撫でてみた。
ふわふわも嬉しいのかすり寄ってきて、思わず歯を出してみた。
するとたくさんのふわふわが出てきた。
驚いて逃げようとすると、後ろに大きいふわふわがいてぶつかった。
「あ、え?」
急に怖くなって、頭が真っ白になった瞬間。
「グモ、グモグモ」
ふわふわが分裂して子供を飲み込んだ。
気が付いたら森のなかだった。
どこも怪我してないし、ふわふわも矢印も居なくなっていた。
戻ろうとしたとき、足音が聞こえてきた。
途端体が震えだし逃げてしまったのだ。
叩かれるのは嫌だ。痛いのは嫌だ。
でも結局は小さな子供。
いつの間にか眠ってしまってた。
「あれ?子供だ」
「迷い子かねぇ??」
「ねぇ、怪我しとるよ。手当てしないと」
「んだな。みんなー!帰るどー!!」
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