23 / 28
その23 小さな侵入者
しおりを挟む
ひょこひょことアホ毛が動いている。
手には手枷の痕が残り、体はガリガリで襤褸と呼んでも差し支えない服の隙間から見えた肋骨が浮いている。
オレンジの髪はドロドロで、土と埃で色がくすみ。紫色の瞳は常にキョロキョロと動いて警戒している。
年の瀬は、7つくらいだろうか。
だけど余りにも痩せているからもっと幼く見えている。
そう。その子は奴隷であった。
この子が何か罪を犯したわけではない。
奴隷が誰かに孕まされて、奴隷として産まれた哀れな奴隷二世だった。
「うー。う?」
草むらの向こうから足音が聞こえる。
無知を持った監視が追い掛けてきたのか。
子供は震えながら身を小さくして音が遠くなるまでその場で息を止めていた。
いつものように穴を掘った時に出る土砂を運んでいる最中に催して草むらの中に入っていった。
用を済まして戻ろうとしたときに、変な形の棒を見つけたのだ。
キラキラぴかぴかしていてきれいなそれを思わず拾うと、頭の中に《鍵穴に入れる》と出た。
鍵穴がなんなのか分からなかったけど、目の前に矢印が浮かんだと思えば、それが動いて腕のわっかの穴を示した。
これに入れるのかと、好奇心で入れるとわっかが外れた。
腕がとても軽くなった。
凄く面白くてもうひとつのわっかも外すと空を飛びそうなほど腕が軽くて、しばらくその場でばんざいをしていた。
そうだ。そろそろ戻らないと叩かれると、もとの場所に戻ろうとしたとき、またしても目の前に矢印。
手で払っても消えない矢印がある方向を指している。
でももう戻らないと怒られて鞭で叩かれると無視しようとすると、矢印がたくさん増えて視界を覆い尽くしてしまった。
これでは前が見えないし転んでしまう。
仕方なく示された方向に顔を向けると矢印が消えてひとつだけになった。
どうやらこの矢印はどこかに連れていきたいらしい。
そこにこの矢印を連れていってから戻ろうと、矢印の後に着いていった。
草を掻き分けて、岩を上って、岩の間の溝を通っていった。
子供の体はとても小さくて、探しに来た監視の目には見えない。
そんなことはつゆほども知らない子供はよいせよいせと登っていく。すると、たくさんの怖い人達が草の間で走り回っていた。
監視ではないけど剣を持っていて凄く怖い。
見付かったら叩かれるかもしれない。
それは嫌だなと草むらで隠れて座っていると、手にふわふわのものが触れた。
目を向けると、毛玉がこっちを見ていた。
なんだろう。うさぎというやつかな?
「ん?」
小さく声を出すと、ふわふわも跳ねながら声を出した。
「グモ」
可愛いふわふわ。
触れてみると、今まで触った何よりもふわふわで撫でてみた。
ふわふわも嬉しいのかすり寄ってきて、思わず歯を出してみた。
するとたくさんのふわふわが出てきた。
驚いて逃げようとすると、後ろに大きいふわふわがいてぶつかった。
「あ、え?」
急に怖くなって、頭が真っ白になった瞬間。
「グモ、グモグモ」
ふわふわが分裂して子供を飲み込んだ。
気が付いたら森のなかだった。
どこも怪我してないし、ふわふわも矢印も居なくなっていた。
戻ろうとしたとき、足音が聞こえてきた。
途端体が震えだし逃げてしまったのだ。
叩かれるのは嫌だ。痛いのは嫌だ。
でも結局は小さな子供。
いつの間にか眠ってしまってた。
「あれ?子供だ」
「迷い子かねぇ??」
「ねぇ、怪我しとるよ。手当てしないと」
「んだな。みんなー!帰るどー!!」
手には手枷の痕が残り、体はガリガリで襤褸と呼んでも差し支えない服の隙間から見えた肋骨が浮いている。
オレンジの髪はドロドロで、土と埃で色がくすみ。紫色の瞳は常にキョロキョロと動いて警戒している。
年の瀬は、7つくらいだろうか。
だけど余りにも痩せているからもっと幼く見えている。
そう。その子は奴隷であった。
この子が何か罪を犯したわけではない。
奴隷が誰かに孕まされて、奴隷として産まれた哀れな奴隷二世だった。
「うー。う?」
草むらの向こうから足音が聞こえる。
無知を持った監視が追い掛けてきたのか。
子供は震えながら身を小さくして音が遠くなるまでその場で息を止めていた。
いつものように穴を掘った時に出る土砂を運んでいる最中に催して草むらの中に入っていった。
用を済まして戻ろうとしたときに、変な形の棒を見つけたのだ。
キラキラぴかぴかしていてきれいなそれを思わず拾うと、頭の中に《鍵穴に入れる》と出た。
鍵穴がなんなのか分からなかったけど、目の前に矢印が浮かんだと思えば、それが動いて腕のわっかの穴を示した。
これに入れるのかと、好奇心で入れるとわっかが外れた。
腕がとても軽くなった。
凄く面白くてもうひとつのわっかも外すと空を飛びそうなほど腕が軽くて、しばらくその場でばんざいをしていた。
そうだ。そろそろ戻らないと叩かれると、もとの場所に戻ろうとしたとき、またしても目の前に矢印。
手で払っても消えない矢印がある方向を指している。
でももう戻らないと怒られて鞭で叩かれると無視しようとすると、矢印がたくさん増えて視界を覆い尽くしてしまった。
これでは前が見えないし転んでしまう。
仕方なく示された方向に顔を向けると矢印が消えてひとつだけになった。
どうやらこの矢印はどこかに連れていきたいらしい。
そこにこの矢印を連れていってから戻ろうと、矢印の後に着いていった。
草を掻き分けて、岩を上って、岩の間の溝を通っていった。
子供の体はとても小さくて、探しに来た監視の目には見えない。
そんなことはつゆほども知らない子供はよいせよいせと登っていく。すると、たくさんの怖い人達が草の間で走り回っていた。
監視ではないけど剣を持っていて凄く怖い。
見付かったら叩かれるかもしれない。
それは嫌だなと草むらで隠れて座っていると、手にふわふわのものが触れた。
目を向けると、毛玉がこっちを見ていた。
なんだろう。うさぎというやつかな?
「ん?」
小さく声を出すと、ふわふわも跳ねながら声を出した。
「グモ」
可愛いふわふわ。
触れてみると、今まで触った何よりもふわふわで撫でてみた。
ふわふわも嬉しいのかすり寄ってきて、思わず歯を出してみた。
するとたくさんのふわふわが出てきた。
驚いて逃げようとすると、後ろに大きいふわふわがいてぶつかった。
「あ、え?」
急に怖くなって、頭が真っ白になった瞬間。
「グモ、グモグモ」
ふわふわが分裂して子供を飲み込んだ。
気が付いたら森のなかだった。
どこも怪我してないし、ふわふわも矢印も居なくなっていた。
戻ろうとしたとき、足音が聞こえてきた。
途端体が震えだし逃げてしまったのだ。
叩かれるのは嫌だ。痛いのは嫌だ。
でも結局は小さな子供。
いつの間にか眠ってしまってた。
「あれ?子供だ」
「迷い子かねぇ??」
「ねぇ、怪我しとるよ。手当てしないと」
「んだな。みんなー!帰るどー!!」
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
2回目チート人生、まじですか
ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆
ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで!
わっは!!!テンプレ!!!!
じゃない!!!!なんで〝また!?〟
実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。
その時はしっかり魔王退治?
しましたよ!!
でもね
辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!!
ということで2回目のチート人生。
勇者じゃなく自由に生きます?
転生発明家は異世界で魔道具師となり自由気ままに暮らす~異世界生活改革浪漫譚~
夜夢
ファンタジー
数々の発明品を世に生み出し、現代日本で大往生を迎えた主人公は神の計らいで地球とは違う異世界での第二の人生を送る事になった。
しかし、その世界は現代日本では有り得ない位文明が発達しておらず、また凶悪な魔物や犯罪者が蔓延る危険な世界であった。
そんな場所に転生した主人公はあまりの不便さに嘆き悲しみ、自らの蓄えてきた知識をどうにかこの世界でも生かせないかと孤軍奮闘する。
これは現代日本から転生した発明家の異世界改革物語である。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
異世界召喚されたのは、『元』勇者です
ユモア
ファンタジー
突如異世界『ルーファス』に召喚された一ノ瀬凍夜ーは、5年と言う年月を経て異世界を救った。そして、平和まで後一歩かと思ったその時、信頼していた仲間たちに裏切られ、深手を負いながらも異世界から強制的に送還された。
それから3年後、凍夜はクラスメイトから虐めを受けていた。しかし、そんな時、再度異世界に召喚された世界は、凍夜が送還されてから10年が経過した異世界『ルーファス』だった。自分を裏切った世界、裏切った仲間たちがいる世界で凍夜はどのように生きて行くのか、それは誰にも分からない。
初恋の幼馴染兼世界を救った騎士に『恋愛対象外』だと思われている件について
皇 翼
恋愛
「フェルって本当、脳筋ゴリラだよな~。もうそこいらの男より強いじゃん?そんなんじゃ恋愛対象外認定で貰い手見つからなかったりしてな」
魔王討伐後の仲間内での祝勝会。今現在恋心を抱いている相手から言われたその言葉によって、フェリシアの心はズタズタに切り裂かれた。知っていた。この失礼で女たらしの騎士は自分のことを誰にでも基本的に『脳筋ゴリラ』や『恋愛対象外』などと言いふらして、女として見ていない事など。なにせフェリシアは彼の幼馴染だ。
しかし幼馴染だからこそそれを肯定するようなことも、テキトーに返事を返して引き下がるようなことも出来なかった。
「そんなんなら今からでも貰い手見つけてやるわよ!!」
お酒が入っていた所為だろう。気が大きくなってしまった彼女は『出来もしない』ことを片思い中の騎士・ディランに宣言してしまう。
******
・『私の片思い中の勇者が妹にプロポーズするみたいなので、諦めて逃亡したいと思います(完結済み)』のディランルート的な何かです。前々から連載希望がチラホラあったので、調子に乗って連載を始めました。
・ちゃんと単体でも読めるように執筆していくつもりです。
・でも多分、前作読んでいたほうが読みやすいかとは思います。(前作URL:https://www.alphapolis.co.jp/novel/496593841/609317899)
・前作とは別次元のお話だと思って見てやってください。(恋愛ADVゲーム的な)
・感想欄は連載終了後に開く予定です。
・ダラダラ更新します。
聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】
青緑
ファンタジー
聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。
———————————————
物語内のノーラとデイジーは同一人物です。
王都の小話は追記予定。
修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。
転生貴族可愛い弟妹連れて開墾します!~弟妹は俺が育てる!~
桜月雪兎
ファンタジー
祖父に勘当された叔父の襲撃を受け、カイト・ランドール伯爵令息は幼い弟妹と幾人かの使用人たちを連れて領地の奥にある魔の森の隠れ家に逃げ込んだ。
両親は殺され、屋敷と人の住まう領地を乗っ取られてしまった。
しかし、カイトには前世の記憶が残っており、それを活用して魔の森の開墾をすることにした。
幼い弟妹をしっかりと育て、ランドール伯爵家を取り戻すために。
追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる