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その18 オレツの探し物.11
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『準備ができたわよ、というか、なんで私がわざわざ走って設置しなくちゃいけなかったのかしら…???』
という画面一杯のツマさんの解せない顔。
ようやく部下を使えば良かったという答えに辿り着いたらしい。
『まぁ、いいわ。いい運動にはなったもの』
ポジティブだ。
ポジティブなのは良いことだ。
「じゃあ、始めましょうか。ガンドロンさん用意は良いですか?」
「おう」
と、手荷物一杯のガンドロン。
頑張って説き伏せて実験の手伝いをしてくれることになった。
別にクロマリモゲートの実験だけならオレツだけでも良かったのだが、せっかくだから魔王城の見学にきてもらうことになった。
一応危なくないように防御魔法は掛けてあるし、なんなら魔力の糸で行方不明になっても探し出せるようにしておいた。もちろんそんな事にならないようにするつもりだけど、万が一という感じである。
「では留守中頼んだぞ。ゴンドルド」
「任せとけよ。ガンドロン」
弟のゴンドルドへガンドロンが一時的に権利を移行していざ出発。
ズニュンと、粘りのある膜を足が貫いて、そのまま体へと。
オレツにとっては感覚的には廊下から、気温の違う隣の部屋へと移動した感じだったが、ガンドロンにとっては少し違うものだったらしい。
「オエーッ!」
「えええ。ちょっと、大丈夫ですか?」
背中を擦ってやるとなんで吐きそうになっているのか分かった。
魔力酔いをしていた。
そう言えば、ドワーフ系やノーム系は魔力耐性低いんだったか。そうか、対策をしなければ。
「なに!?私なんかやっちゃった!?」
ツマさんがオロオロとしている。
時たまツマさんは魔力が強いがために、相対している魔族を魔力で昏倒させてしまう事があるのだが、またそうしてしまったのかと思ったらしい。
「大丈夫大丈夫。移動したときの魔力酔いしただけだから。ほら、良くなってきた」
背中を擦りながら余計な魔力を吸い取ってあげていると、ガンドロンの顔色がみるみる良くなっていた。
『ガンドローン!!大丈夫かぁ!?』
クロマリモゲートの外でゴンドルド達が心配そうに声を上げていた。
その声に、ガンドロンはすくっと立ち上がると、大丈夫だと腕を組んで胸を張ってみせた。沸き上がる歓声。
そんな中、足に力が入っておらず膝が笑っていたのをオレツは見て見ぬ振りをした。
「はぁー、噂とは大違いだったわい」
机に並べられた豪華な食事をぺろりと平らげ、魔界酒の中でも最高級のピンクマスカットで作ったワイン(魔力抜き済み)をぐびりと飲み干すとガンドロンが溜め息を吐きながらそう言った。
一通り魔王城を案内したのだが、ガンドロンはずっと「ほえー!」と口を開けたまま驚きっぱなしであった。途中オレツが「ガンドロンさん。まばたきした方がいいですよ?」と言ったくらいにガンドロンは驚きっぱなしであった。
「噂? うちの?」
ツマンティーヌが、人間界からの客人を接待するといって豪華なドレスを身に付けて、小さな口に食事を運んでいる。その途中ガンドロンの言葉に質問を投げ掛けた。
「おう。といっても今となっちゃあ全部でっちあげってのが分かったが。やれ、魔王城は落とし穴や袋小路だらけだの、やれ、火山の中にあるだの、やれ、虫だらけで不潔だの。一体どこを見て言っているんだって話だ」
思わずツマンティーヌと顔を見合わせて苦笑する。
それは完全に勇者用通路の話だ。
戦闘力のないか弱い魔物達を無下に犠牲に出来ないと、あえて分けているのだ。
そこでふるいを掛けて、無事に辿り着けたもののみ扉の前で完全に回復させてやり、ツマンティーヌが相手をする。
が、大体は扉の前に辿り着く前に全て脱落し、人間界へと強制的に飛ばしているのだ。
だからこの前の勇者はかなりの強運の持ち主だった。
ちなみにオレツは単身突破した。
好きな階層は重力濁流層とトラップ層である。あそこは楽しい。
「んで、まさかの仲間が魔界にもいるたぁ驚きだった。系統は違うが、良い話ができた」
「では、一時避難場所としては…」
「最高の場所だ。むしろ本当に良いのかと訊ねたくなるほど」
ちらりとツマンティーヌを見れば、ふんと鼻を鳴らした。
「未来の夫の頼みよ。それに、あなた方は今後の善き貿易相手です。より良い未来の為に恩の出し惜しみはしないわ」
「全く、とんでもない魔王様だ」
ガンドロンが笑う。
「可愛いし、いいでしょ?あげませんよ」
「お前さんに睨まれたくないからなぁー、外から眺めるだけにしておくよ」
という画面一杯のツマさんの解せない顔。
ようやく部下を使えば良かったという答えに辿り着いたらしい。
『まぁ、いいわ。いい運動にはなったもの』
ポジティブだ。
ポジティブなのは良いことだ。
「じゃあ、始めましょうか。ガンドロンさん用意は良いですか?」
「おう」
と、手荷物一杯のガンドロン。
頑張って説き伏せて実験の手伝いをしてくれることになった。
別にクロマリモゲートの実験だけならオレツだけでも良かったのだが、せっかくだから魔王城の見学にきてもらうことになった。
一応危なくないように防御魔法は掛けてあるし、なんなら魔力の糸で行方不明になっても探し出せるようにしておいた。もちろんそんな事にならないようにするつもりだけど、万が一という感じである。
「では留守中頼んだぞ。ゴンドルド」
「任せとけよ。ガンドロン」
弟のゴンドルドへガンドロンが一時的に権利を移行していざ出発。
ズニュンと、粘りのある膜を足が貫いて、そのまま体へと。
オレツにとっては感覚的には廊下から、気温の違う隣の部屋へと移動した感じだったが、ガンドロンにとっては少し違うものだったらしい。
「オエーッ!」
「えええ。ちょっと、大丈夫ですか?」
背中を擦ってやるとなんで吐きそうになっているのか分かった。
魔力酔いをしていた。
そう言えば、ドワーフ系やノーム系は魔力耐性低いんだったか。そうか、対策をしなければ。
「なに!?私なんかやっちゃった!?」
ツマさんがオロオロとしている。
時たまツマさんは魔力が強いがために、相対している魔族を魔力で昏倒させてしまう事があるのだが、またそうしてしまったのかと思ったらしい。
「大丈夫大丈夫。移動したときの魔力酔いしただけだから。ほら、良くなってきた」
背中を擦りながら余計な魔力を吸い取ってあげていると、ガンドロンの顔色がみるみる良くなっていた。
『ガンドローン!!大丈夫かぁ!?』
クロマリモゲートの外でゴンドルド達が心配そうに声を上げていた。
その声に、ガンドロンはすくっと立ち上がると、大丈夫だと腕を組んで胸を張ってみせた。沸き上がる歓声。
そんな中、足に力が入っておらず膝が笑っていたのをオレツは見て見ぬ振りをした。
「はぁー、噂とは大違いだったわい」
机に並べられた豪華な食事をぺろりと平らげ、魔界酒の中でも最高級のピンクマスカットで作ったワイン(魔力抜き済み)をぐびりと飲み干すとガンドロンが溜め息を吐きながらそう言った。
一通り魔王城を案内したのだが、ガンドロンはずっと「ほえー!」と口を開けたまま驚きっぱなしであった。途中オレツが「ガンドロンさん。まばたきした方がいいですよ?」と言ったくらいにガンドロンは驚きっぱなしであった。
「噂? うちの?」
ツマンティーヌが、人間界からの客人を接待するといって豪華なドレスを身に付けて、小さな口に食事を運んでいる。その途中ガンドロンの言葉に質問を投げ掛けた。
「おう。といっても今となっちゃあ全部でっちあげってのが分かったが。やれ、魔王城は落とし穴や袋小路だらけだの、やれ、火山の中にあるだの、やれ、虫だらけで不潔だの。一体どこを見て言っているんだって話だ」
思わずツマンティーヌと顔を見合わせて苦笑する。
それは完全に勇者用通路の話だ。
戦闘力のないか弱い魔物達を無下に犠牲に出来ないと、あえて分けているのだ。
そこでふるいを掛けて、無事に辿り着けたもののみ扉の前で完全に回復させてやり、ツマンティーヌが相手をする。
が、大体は扉の前に辿り着く前に全て脱落し、人間界へと強制的に飛ばしているのだ。
だからこの前の勇者はかなりの強運の持ち主だった。
ちなみにオレツは単身突破した。
好きな階層は重力濁流層とトラップ層である。あそこは楽しい。
「んで、まさかの仲間が魔界にもいるたぁ驚きだった。系統は違うが、良い話ができた」
「では、一時避難場所としては…」
「最高の場所だ。むしろ本当に良いのかと訊ねたくなるほど」
ちらりとツマンティーヌを見れば、ふんと鼻を鳴らした。
「未来の夫の頼みよ。それに、あなた方は今後の善き貿易相手です。より良い未来の為に恩の出し惜しみはしないわ」
「全く、とんでもない魔王様だ」
ガンドロンが笑う。
「可愛いし、いいでしょ?あげませんよ」
「お前さんに睨まれたくないからなぁー、外から眺めるだけにしておくよ」
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