9 / 28
その9 オレツの探し物.2
しおりを挟む
オレツは必要な荷物を整えると、ツマンティーヌの元へ向かった。
「ツマさん。俺ちょっと野暮用で人間界行ってくるね」
「え!!?」
仕事中だったツマンティーヌが顔を上げる。
「ななななななんで!?」
「用事があって」
「急ぎなの!?」
「うん」
ツマンティーヌの唇がきゅっと結ばれた。
そして少し顔に影がかかる。
「……お供はつけたの?」
「ううん。まだ。あー、そっかつけてた方が何かと良いよね」
その言葉にツマンティーヌがホッと息を吐いた。
「誰つけようかな」
幹部皆忙しい。勇者が来なくても魔王城の維持や領土の管理にバタバタだ。オレツも一応補佐と、勇者が来たときの即戦力として動いているけど、何だか最近は音沙汰無しである。
平和なのは良いことだ。
「これ、付けてて」
「?」
ツマンティーヌからふわふわの黒マリモに尻尾と耳が付いた生き物が手渡された。
「もこもこクロマリモさん。私の魔力を食べて育ったから強いし、何かあったら連絡手段になる。普段は影に隠れてるから、名前を呼んだら出てくるわ。この子はモクちゃんね」
「よろしくモクちゃん。てかこれ重力濁流層に生えてる草じゃない?」
「ええそうよ。可愛いでしょう。種から育てたらこうなったの」
「…………ツマさん。新種作ったんだね……」
こうして魔界の生き物は増えていく。
「早く帰ってきなさいよ!!」
「うんうん、お土産楽しみにしててね」
オレツは人間界へと歩いていく。といってもまっすぐ行ったら即攻撃されるので、境界線をなぞるように歩く。まっすぐ行けないのならせめて横移動で距離を稼いでいる。転移魔法で行けばいいじゃないかと思うが、転移魔法は何かと制限が多い。
転移魔法を作ったやつが恐ろしく几帳面なやつで、何でか世界を正方形の線で覆ってやるとか言って座標を縦横高さの正方形の距離で移動しかできなくなってしまったのだ。
なので、主要な拠点を押さえられている。
多分、転移した瞬間拘束されるだろう。なんせオレツは人気者なのだ。
ならば歩いていくのはどうか?
それも出来ない。世界一の魔術によっては網目状の結界が張られている。鳥などの魔力を持たないものは素通りだが、魔力を持つものは絡まる。
人間側の精一杯の魔族に対する対抗策である。
それを抜けるためには魔力を消す薬を死ぬ覚悟で飲むか、転移魔法のみ。
雲よりも高く飛べば問題ないが、オレツは残念ながらそこまで飛べない。なので地味ではあるが安全地帯まで歩いていくしかないのだ。
森の中にはたくさんの動物がいる。基本おっかない魔獣達だが、オレツが強いのが分かるので近付かない。快適な散歩日和。
是非ともツマンティーヌと歩きたかった。
「さてこの辺かな」
オレツが向きを変えると、人間界側には大きな崖が聳え立っていた。何処までも壁だ。しかし、此処で転移なんかしたら岩の中に転移してしまう。なので此処はは人間の警戒が最も薄い場所だ。
だが、オレツには問題なかった。
「ふぅー。せいっ!!!」
オレツは深くしゃがみこむと高く跳躍した。そして更に風の魔法で高く飛び上がり崖よりも高い位置に到達すると、素早く転移魔法を発動させた。
一瞬で景色が後ろに伸びて戻る。
そして落下した。
「ととっ。よし!成功!」
少しよろけたが見事な着地。体の鈍りもそこまで無いようで安心した。後ろを振り返れば魔界。
「さて、急がないとな」
「ツマさん。俺ちょっと野暮用で人間界行ってくるね」
「え!!?」
仕事中だったツマンティーヌが顔を上げる。
「ななななななんで!?」
「用事があって」
「急ぎなの!?」
「うん」
ツマンティーヌの唇がきゅっと結ばれた。
そして少し顔に影がかかる。
「……お供はつけたの?」
「ううん。まだ。あー、そっかつけてた方が何かと良いよね」
その言葉にツマンティーヌがホッと息を吐いた。
「誰つけようかな」
幹部皆忙しい。勇者が来なくても魔王城の維持や領土の管理にバタバタだ。オレツも一応補佐と、勇者が来たときの即戦力として動いているけど、何だか最近は音沙汰無しである。
平和なのは良いことだ。
「これ、付けてて」
「?」
ツマンティーヌからふわふわの黒マリモに尻尾と耳が付いた生き物が手渡された。
「もこもこクロマリモさん。私の魔力を食べて育ったから強いし、何かあったら連絡手段になる。普段は影に隠れてるから、名前を呼んだら出てくるわ。この子はモクちゃんね」
「よろしくモクちゃん。てかこれ重力濁流層に生えてる草じゃない?」
「ええそうよ。可愛いでしょう。種から育てたらこうなったの」
「…………ツマさん。新種作ったんだね……」
こうして魔界の生き物は増えていく。
「早く帰ってきなさいよ!!」
「うんうん、お土産楽しみにしててね」
オレツは人間界へと歩いていく。といってもまっすぐ行ったら即攻撃されるので、境界線をなぞるように歩く。まっすぐ行けないのならせめて横移動で距離を稼いでいる。転移魔法で行けばいいじゃないかと思うが、転移魔法は何かと制限が多い。
転移魔法を作ったやつが恐ろしく几帳面なやつで、何でか世界を正方形の線で覆ってやるとか言って座標を縦横高さの正方形の距離で移動しかできなくなってしまったのだ。
なので、主要な拠点を押さえられている。
多分、転移した瞬間拘束されるだろう。なんせオレツは人気者なのだ。
ならば歩いていくのはどうか?
それも出来ない。世界一の魔術によっては網目状の結界が張られている。鳥などの魔力を持たないものは素通りだが、魔力を持つものは絡まる。
人間側の精一杯の魔族に対する対抗策である。
それを抜けるためには魔力を消す薬を死ぬ覚悟で飲むか、転移魔法のみ。
雲よりも高く飛べば問題ないが、オレツは残念ながらそこまで飛べない。なので地味ではあるが安全地帯まで歩いていくしかないのだ。
森の中にはたくさんの動物がいる。基本おっかない魔獣達だが、オレツが強いのが分かるので近付かない。快適な散歩日和。
是非ともツマンティーヌと歩きたかった。
「さてこの辺かな」
オレツが向きを変えると、人間界側には大きな崖が聳え立っていた。何処までも壁だ。しかし、此処で転移なんかしたら岩の中に転移してしまう。なので此処はは人間の警戒が最も薄い場所だ。
だが、オレツには問題なかった。
「ふぅー。せいっ!!!」
オレツは深くしゃがみこむと高く跳躍した。そして更に風の魔法で高く飛び上がり崖よりも高い位置に到達すると、素早く転移魔法を発動させた。
一瞬で景色が後ろに伸びて戻る。
そして落下した。
「ととっ。よし!成功!」
少しよろけたが見事な着地。体の鈍りもそこまで無いようで安心した。後ろを振り返れば魔界。
「さて、急がないとな」
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
2回目チート人生、まじですか
ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆
ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで!
わっは!!!テンプレ!!!!
じゃない!!!!なんで〝また!?〟
実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。
その時はしっかり魔王退治?
しましたよ!!
でもね
辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!!
ということで2回目のチート人生。
勇者じゃなく自由に生きます?
転生発明家は異世界で魔道具師となり自由気ままに暮らす~異世界生活改革浪漫譚~
夜夢
ファンタジー
数々の発明品を世に生み出し、現代日本で大往生を迎えた主人公は神の計らいで地球とは違う異世界での第二の人生を送る事になった。
しかし、その世界は現代日本では有り得ない位文明が発達しておらず、また凶悪な魔物や犯罪者が蔓延る危険な世界であった。
そんな場所に転生した主人公はあまりの不便さに嘆き悲しみ、自らの蓄えてきた知識をどうにかこの世界でも生かせないかと孤軍奮闘する。
これは現代日本から転生した発明家の異世界改革物語である。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
異世界召喚されたのは、『元』勇者です
ユモア
ファンタジー
突如異世界『ルーファス』に召喚された一ノ瀬凍夜ーは、5年と言う年月を経て異世界を救った。そして、平和まで後一歩かと思ったその時、信頼していた仲間たちに裏切られ、深手を負いながらも異世界から強制的に送還された。
それから3年後、凍夜はクラスメイトから虐めを受けていた。しかし、そんな時、再度異世界に召喚された世界は、凍夜が送還されてから10年が経過した異世界『ルーファス』だった。自分を裏切った世界、裏切った仲間たちがいる世界で凍夜はどのように生きて行くのか、それは誰にも分からない。
初恋の幼馴染兼世界を救った騎士に『恋愛対象外』だと思われている件について
皇 翼
恋愛
「フェルって本当、脳筋ゴリラだよな~。もうそこいらの男より強いじゃん?そんなんじゃ恋愛対象外認定で貰い手見つからなかったりしてな」
魔王討伐後の仲間内での祝勝会。今現在恋心を抱いている相手から言われたその言葉によって、フェリシアの心はズタズタに切り裂かれた。知っていた。この失礼で女たらしの騎士は自分のことを誰にでも基本的に『脳筋ゴリラ』や『恋愛対象外』などと言いふらして、女として見ていない事など。なにせフェリシアは彼の幼馴染だ。
しかし幼馴染だからこそそれを肯定するようなことも、テキトーに返事を返して引き下がるようなことも出来なかった。
「そんなんなら今からでも貰い手見つけてやるわよ!!」
お酒が入っていた所為だろう。気が大きくなってしまった彼女は『出来もしない』ことを片思い中の騎士・ディランに宣言してしまう。
******
・『私の片思い中の勇者が妹にプロポーズするみたいなので、諦めて逃亡したいと思います(完結済み)』のディランルート的な何かです。前々から連載希望がチラホラあったので、調子に乗って連載を始めました。
・ちゃんと単体でも読めるように執筆していくつもりです。
・でも多分、前作読んでいたほうが読みやすいかとは思います。(前作URL:https://www.alphapolis.co.jp/novel/496593841/609317899)
・前作とは別次元のお話だと思って見てやってください。(恋愛ADVゲーム的な)
・感想欄は連載終了後に開く予定です。
・ダラダラ更新します。
聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】
青緑
ファンタジー
聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。
———————————————
物語内のノーラとデイジーは同一人物です。
王都の小話は追記予定。
修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。
転生貴族可愛い弟妹連れて開墾します!~弟妹は俺が育てる!~
桜月雪兎
ファンタジー
祖父に勘当された叔父の襲撃を受け、カイト・ランドール伯爵令息は幼い弟妹と幾人かの使用人たちを連れて領地の奥にある魔の森の隠れ家に逃げ込んだ。
両親は殺され、屋敷と人の住まう領地を乗っ取られてしまった。
しかし、カイトには前世の記憶が残っており、それを活用して魔の森の開墾をすることにした。
幼い弟妹をしっかりと育て、ランドール伯爵家を取り戻すために。
追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる