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第2章 ポエトロの町と花園伝説
第12話 アリスと呪いと魔法の鐘
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―――テオンがアリスと出会う少し前
日も傾いて肌寒くなってきたブルムの森を、武装した集団が駆け抜けていた。
先頭を走るのはポエトロの町切っての俊足、シルビィ・コオルだ。女ばかりの冒険者パーティ「グレイシア」のリーダーをしている。今日はメンバーのルリィとティルダも来ている。頼もしい限りだ。
その後ろで地図を広げながら宙に浮かんで移動しているのが、飲んだくれモルトことモルト・プレミオールだ。激レアの鑑定スキルを有し,風と火の2属性を操る凄腕の魔導士だ。ポエトロ最強パーティ「三つ子の魂」のリーダーの一人でもある。
「三つ子の魂」は3人のリーダーとそれぞれの弟子数人からなるパーティだ。今日は弟子たちがクエストに出掛けてしまっているため、リーダー3人とも来てくれている。残り二人はヨルダとユクトルだ。
ヨルダ・ブレイトルはポエトロ最強の冒険者。白髪を振り乱して棍棒を振るう姿は「白鬼」と恐れられる。ユクトル・ジュヴネールは治癒魔法の使い手だ。ララの怪我を治してくれた人でもある。
二人はモルトの後ろを軽やかに走っている。一人は老人、一人は肥満体型なのに。信じられない。
「レナさん、今日は本当に見てるだけなんですか?」
走りながら私に話し掛けてきたのはドルトン・エリオール。テオンと一緒に飛び出してしまったエミル・リーヴァインのパーティ「花園の妖精」のメンバーである。
「ステータスじゃ測れない強さもあるかもなと思ってね。皆のデータはあるけど、生の強さを見ておきたいの」
そう。私は道具魔術師でありながらスキル鑑定士のレナ。本職は王国民の強さを測ることなのだ。
アルト村ではレベル測定も行っているが、普通は町に測定器がある。故に私は定期的にデータを書面で受け取っているにすぎない。ポエトロの町の冒険者一人一人と顔を合わせることは滅多にない。
あの村人たちを思い出す。彼らはステータスも平均より高いが、実際の戦闘ではそれ以上の実力を出していた。彼らは皆、伝統的に無詠唱でスキルや魔法を発動し、武器の構えや心の読み合い、地の利の生かし方などに主眼をおいて鍛練を積んでいる。その結果を目の当たりにしたのだ。
『数字にだけ囚われてちゃ見えてるものも見えなくなる』か。博士の言う通りだわ。
「流石レナさんです。いいとこ見せますよー」
お金の節約も兼ねているのは内緒ね。
「でもやばかったらレナさんも戦ってくれるんですよね?」
「も、もちろんよ……」
そんな事態にはならないように祈っている。
「これは……既にこんなに捕らえていたのか」
そこは谷川のほど近く、大きな岩の影だった。赤いターバンを巻いた者たちが5人、ロープで縛られて寝かされていた。全員ほぼ無傷で捕らえられている辺り、かなりの実力差が伺える。
「ララちゃんに聞いていた通りの服装ね。件の輩に間違いないでしょう」
「この近くに奴らが陣取ってるということで違いないでしょうな。恐らくはこの岩の反対側に」
ヨルダは早速谷川の方を探索している。
「それにしてもこれはどういうことなんだろうな」
ユクトルが不思議そうに辺りを見渡している。
「ああ、驚いたぜ。まさか森の守護神様の領域に、こうも簡単に入れるなんて」
「まさか守護神様がこの方々にやられてしまったのですか?」
「だとしたら大変よ!!ポエトロの威信をかけてこいつら全員引っ捕らえてやんなきゃ!」
グレイシアの3人も物珍しげに辺りを調べながら息巻いている。
「守護神様のお姿は見たことがありますが、人の手で倒せるような御仁ではございませんでしたよ。そんなことができるとしたら、敵方も相当油断ならない猛者を擁しておるのやも……」
冷静な様子で話しているのは飲んだくれモルトだ。酒が抜けると別人のようになる。いや、逆か。酒さえ飲まなければ……。まあこれでポエトロ一の美人を嫁にもらっているのだから、素面ではさぞカッコいいのだろうが。
それにしても彼らの言う森の守護神とはどんな存在なのだろうか。そしてそれを倒せる猛者。テオン、大丈夫かしら……。
「おお、あったぞ。こんなところに洞窟の入り口が隠されておるとはな。どうやら随分古いもののようだが」
「どれ?これはまた何かありそうな匂いがぷんぷんするな。これは狐の地蔵か?おい、ルリィ!お前紙は持ってきてるか?」
「え?あ、はい。いつでも絵を描けるように、用具は一式持ち歩いております。このお地蔵さまを描けばよろしいのですか?」
「ああ、ここは普段迷いの霧で近寄れないんだ。この機会に出来るだけ記録してギルマスに報告しよう」
「分かりましたわ。では」
ルリィは紙と鉛筆を取り出すとささっとスケッチを始めた。鉛筆はモエニア山脈から取れる黒鉛を加工した、ポエトロの町の特産品だ。ほとんどは王都に出荷される高級品だから、市民には滅多に出回ることのない貴重品なのだ。さすがお嬢様。
「では他のものは順次突入しよう。テオン殿やエミル坊にいち早く合流し、ついでに奇跡の花を狙う不埒な奴らを全員捕らえる。よろしいですな」
「「おう!!」」
こうしてヨルダ、ユクトル、モルト、シルビィ、ティルダ、ドルトン、そして私の7人が洞窟に突入することになった。
暗い洞窟を慎重に進む。ヨルダの索敵スキルによりかなりスムーズに進んだ。入り口からしばらくは敵の気配がないらしく、一行は一気に明かりのついた通路まで進んだ。
「その先を曲がった辺りに人の気配がたくさんある。お気をつけなされよ」
ヨルダの言葉に気を引き締めて先頭を行くシルビィが左に曲がった瞬間だった。
ひゅんっ!!
飛んできたのはナイフだ。壁にぴんと突き刺さる。
シルビィが素早く戦闘体制を取る。角を曲がってみれば20Mは離れたところで、テオンたちと敵三人が戦っていた。だがナイフの速度はその距離を飛んできたとは思えなかった。距離を詰めなければこちらが不利だろう。
シルビィ、ティルダが飛び出し、そのあとをモルト、ドルトンが追いかける。ユクトルはいつでも治癒魔法を発動できるように杖を構えており、ヨルダは戦況全体を把握できる位置で棍棒を構えている。わ、私はヨルダの隣で援護体制かな。
敵は女一人に男二人だ。さらにロープで縛られた敵がもう二人いる。男の盗賊がテオンたちに何かを吠えている。まだこちらには気付いていないらしい。しかし女の方は確かにこちらを見据えている。彼女は確実に油断ならない猛者だ。何人も実力者を見てきたスキル鑑定士としての勘が警鐘を鳴らしていた。
―――テオンサイド
アリス……!?彼女がどうしてこっちの世界に!?
"随分大勢でいらしたものですね。やはり伝説の奇跡の花とはそれほど大事なものなのでしょう"
そのとき、後ろから足音がした。
「エミル!それからテオン!!あと……」
「ライカンスロープのリュカさんよ!ギルドで会ったでしょ?」
「うるせえ!直接話してないから覚えてないんだよ。もう一人は……顔も覚えてねえぞ?」
「いや、あの方は初対面ね!結構イケメンじゃない!!早速ご挨拶を」
「馬鹿!今は戦闘中だぞ、後でやれ!」
この二人はギルドで見かけたポエトロの町の冒険者か。騒がしいが増援は助かる。二人が盗賊たちの前に出て注意を引き付けてくれている間に、後から来た冒険者が僕らを沼のような地面から引き上げてくれた。
「ドルトン!何でお前まで」
「バカ野郎!!エミル、何でこんな無謀なこと……」
「ああ、勝手に飛び出したのはすまなかった。ここを生き延びたらどれだけでも叱ってくれ」
どうやらエミルの知り合いらしい。
「あいつら、アリシア盗賊団っていうらしい。花畑を探してるって言ってた」
「やはりか。俺たちはそれを阻止するようギルマスに依頼されてきたんだ」
花畑ってのはそんなに大切なものなのか。見張りの男は何も知らなかったが、アリスなら何か知っているかもしれない。
"この人数……。お嬢、どうしましょう?"
"ひとまずあの部屋まで退きましょう。私たちには時間がありません。姫騎士が来る前に魔法の鐘を完成させなければ。そのためにも呪いを操る花は何としても必要なのですよ"
知っていた。言葉が分かるものがこちらにいないと思って油断しているようだ。下手なことは言わないで情報を引き出そう。それにしても、姫騎士に魔法の鐘に呪いを操る花……。色々と複雑な事情が絡んでいそうだ。
"他の探索係はどうします?"
"そうですね、敵に捕まっては可哀想です。一度集めましょう。ヤシチとトーゴローは皆に連絡を。私がしばらくこの者たちの足止めをしましょう"
アリスの言葉にしたがって、盗賊の男二人は洞窟の奥へと走っていく。
「な!?逃がすか!」
男勝りの女冒険者が追いかけようとするが。
"させませんよ"
その足元から植物の蔓のようなものが飛び出して足に絡む。女はバランスを崩して転倒する。あんな魔術、ミールにいた頃も魔王討伐隊にいた頃も見たことはない。あれがアリス本来の戦い方なのだろうか。さらに蔓は捕らえた二人の盗賊を素早く絡めとり、アリスの元へ連れ帰る。
「ふむ。仲間を逃がして一人で我ら全員の相手をしようというのですか?11対1……とても若いお嬢さんが無茶するような状態ではないと思いますが……?」
ん?今のはギルドにいた酔っ払いか!?まるで別人のようだ。杖を構えて既に魔力を溜めている。
"何と言っているのか分かりませんが、私たちには大切な使命があるのです。あなたたちに恨みはありませんが、邪魔するなら容赦はしませんよ"
やはりアリスはこの世界の言葉は話せないらしい。
「言葉が通じないというのは厄介ですな。心苦しいが全力で押し通らせてもらおう。吹き付ける熱風」
元酔っ払いは魔法を唱える。対するアリスは魔力を込めた手を向け、さっきよりも太い蔓を召喚して壁を作る。
"ここは通しません。魔王様のために!!"
日も傾いて肌寒くなってきたブルムの森を、武装した集団が駆け抜けていた。
先頭を走るのはポエトロの町切っての俊足、シルビィ・コオルだ。女ばかりの冒険者パーティ「グレイシア」のリーダーをしている。今日はメンバーのルリィとティルダも来ている。頼もしい限りだ。
その後ろで地図を広げながら宙に浮かんで移動しているのが、飲んだくれモルトことモルト・プレミオールだ。激レアの鑑定スキルを有し,風と火の2属性を操る凄腕の魔導士だ。ポエトロ最強パーティ「三つ子の魂」のリーダーの一人でもある。
「三つ子の魂」は3人のリーダーとそれぞれの弟子数人からなるパーティだ。今日は弟子たちがクエストに出掛けてしまっているため、リーダー3人とも来てくれている。残り二人はヨルダとユクトルだ。
ヨルダ・ブレイトルはポエトロ最強の冒険者。白髪を振り乱して棍棒を振るう姿は「白鬼」と恐れられる。ユクトル・ジュヴネールは治癒魔法の使い手だ。ララの怪我を治してくれた人でもある。
二人はモルトの後ろを軽やかに走っている。一人は老人、一人は肥満体型なのに。信じられない。
「レナさん、今日は本当に見てるだけなんですか?」
走りながら私に話し掛けてきたのはドルトン・エリオール。テオンと一緒に飛び出してしまったエミル・リーヴァインのパーティ「花園の妖精」のメンバーである。
「ステータスじゃ測れない強さもあるかもなと思ってね。皆のデータはあるけど、生の強さを見ておきたいの」
そう。私は道具魔術師でありながらスキル鑑定士のレナ。本職は王国民の強さを測ることなのだ。
アルト村ではレベル測定も行っているが、普通は町に測定器がある。故に私は定期的にデータを書面で受け取っているにすぎない。ポエトロの町の冒険者一人一人と顔を合わせることは滅多にない。
あの村人たちを思い出す。彼らはステータスも平均より高いが、実際の戦闘ではそれ以上の実力を出していた。彼らは皆、伝統的に無詠唱でスキルや魔法を発動し、武器の構えや心の読み合い、地の利の生かし方などに主眼をおいて鍛練を積んでいる。その結果を目の当たりにしたのだ。
『数字にだけ囚われてちゃ見えてるものも見えなくなる』か。博士の言う通りだわ。
「流石レナさんです。いいとこ見せますよー」
お金の節約も兼ねているのは内緒ね。
「でもやばかったらレナさんも戦ってくれるんですよね?」
「も、もちろんよ……」
そんな事態にはならないように祈っている。
「これは……既にこんなに捕らえていたのか」
そこは谷川のほど近く、大きな岩の影だった。赤いターバンを巻いた者たちが5人、ロープで縛られて寝かされていた。全員ほぼ無傷で捕らえられている辺り、かなりの実力差が伺える。
「ララちゃんに聞いていた通りの服装ね。件の輩に間違いないでしょう」
「この近くに奴らが陣取ってるということで違いないでしょうな。恐らくはこの岩の反対側に」
ヨルダは早速谷川の方を探索している。
「それにしてもこれはどういうことなんだろうな」
ユクトルが不思議そうに辺りを見渡している。
「ああ、驚いたぜ。まさか森の守護神様の領域に、こうも簡単に入れるなんて」
「まさか守護神様がこの方々にやられてしまったのですか?」
「だとしたら大変よ!!ポエトロの威信をかけてこいつら全員引っ捕らえてやんなきゃ!」
グレイシアの3人も物珍しげに辺りを調べながら息巻いている。
「守護神様のお姿は見たことがありますが、人の手で倒せるような御仁ではございませんでしたよ。そんなことができるとしたら、敵方も相当油断ならない猛者を擁しておるのやも……」
冷静な様子で話しているのは飲んだくれモルトだ。酒が抜けると別人のようになる。いや、逆か。酒さえ飲まなければ……。まあこれでポエトロ一の美人を嫁にもらっているのだから、素面ではさぞカッコいいのだろうが。
それにしても彼らの言う森の守護神とはどんな存在なのだろうか。そしてそれを倒せる猛者。テオン、大丈夫かしら……。
「おお、あったぞ。こんなところに洞窟の入り口が隠されておるとはな。どうやら随分古いもののようだが」
「どれ?これはまた何かありそうな匂いがぷんぷんするな。これは狐の地蔵か?おい、ルリィ!お前紙は持ってきてるか?」
「え?あ、はい。いつでも絵を描けるように、用具は一式持ち歩いております。このお地蔵さまを描けばよろしいのですか?」
「ああ、ここは普段迷いの霧で近寄れないんだ。この機会に出来るだけ記録してギルマスに報告しよう」
「分かりましたわ。では」
ルリィは紙と鉛筆を取り出すとささっとスケッチを始めた。鉛筆はモエニア山脈から取れる黒鉛を加工した、ポエトロの町の特産品だ。ほとんどは王都に出荷される高級品だから、市民には滅多に出回ることのない貴重品なのだ。さすがお嬢様。
「では他のものは順次突入しよう。テオン殿やエミル坊にいち早く合流し、ついでに奇跡の花を狙う不埒な奴らを全員捕らえる。よろしいですな」
「「おう!!」」
こうしてヨルダ、ユクトル、モルト、シルビィ、ティルダ、ドルトン、そして私の7人が洞窟に突入することになった。
暗い洞窟を慎重に進む。ヨルダの索敵スキルによりかなりスムーズに進んだ。入り口からしばらくは敵の気配がないらしく、一行は一気に明かりのついた通路まで進んだ。
「その先を曲がった辺りに人の気配がたくさんある。お気をつけなされよ」
ヨルダの言葉に気を引き締めて先頭を行くシルビィが左に曲がった瞬間だった。
ひゅんっ!!
飛んできたのはナイフだ。壁にぴんと突き刺さる。
シルビィが素早く戦闘体制を取る。角を曲がってみれば20Mは離れたところで、テオンたちと敵三人が戦っていた。だがナイフの速度はその距離を飛んできたとは思えなかった。距離を詰めなければこちらが不利だろう。
シルビィ、ティルダが飛び出し、そのあとをモルト、ドルトンが追いかける。ユクトルはいつでも治癒魔法を発動できるように杖を構えており、ヨルダは戦況全体を把握できる位置で棍棒を構えている。わ、私はヨルダの隣で援護体制かな。
敵は女一人に男二人だ。さらにロープで縛られた敵がもう二人いる。男の盗賊がテオンたちに何かを吠えている。まだこちらには気付いていないらしい。しかし女の方は確かにこちらを見据えている。彼女は確実に油断ならない猛者だ。何人も実力者を見てきたスキル鑑定士としての勘が警鐘を鳴らしていた。
―――テオンサイド
アリス……!?彼女がどうしてこっちの世界に!?
"随分大勢でいらしたものですね。やはり伝説の奇跡の花とはそれほど大事なものなのでしょう"
そのとき、後ろから足音がした。
「エミル!それからテオン!!あと……」
「ライカンスロープのリュカさんよ!ギルドで会ったでしょ?」
「うるせえ!直接話してないから覚えてないんだよ。もう一人は……顔も覚えてねえぞ?」
「いや、あの方は初対面ね!結構イケメンじゃない!!早速ご挨拶を」
「馬鹿!今は戦闘中だぞ、後でやれ!」
この二人はギルドで見かけたポエトロの町の冒険者か。騒がしいが増援は助かる。二人が盗賊たちの前に出て注意を引き付けてくれている間に、後から来た冒険者が僕らを沼のような地面から引き上げてくれた。
「ドルトン!何でお前まで」
「バカ野郎!!エミル、何でこんな無謀なこと……」
「ああ、勝手に飛び出したのはすまなかった。ここを生き延びたらどれだけでも叱ってくれ」
どうやらエミルの知り合いらしい。
「あいつら、アリシア盗賊団っていうらしい。花畑を探してるって言ってた」
「やはりか。俺たちはそれを阻止するようギルマスに依頼されてきたんだ」
花畑ってのはそんなに大切なものなのか。見張りの男は何も知らなかったが、アリスなら何か知っているかもしれない。
"この人数……。お嬢、どうしましょう?"
"ひとまずあの部屋まで退きましょう。私たちには時間がありません。姫騎士が来る前に魔法の鐘を完成させなければ。そのためにも呪いを操る花は何としても必要なのですよ"
知っていた。言葉が分かるものがこちらにいないと思って油断しているようだ。下手なことは言わないで情報を引き出そう。それにしても、姫騎士に魔法の鐘に呪いを操る花……。色々と複雑な事情が絡んでいそうだ。
"他の探索係はどうします?"
"そうですね、敵に捕まっては可哀想です。一度集めましょう。ヤシチとトーゴローは皆に連絡を。私がしばらくこの者たちの足止めをしましょう"
アリスの言葉にしたがって、盗賊の男二人は洞窟の奥へと走っていく。
「な!?逃がすか!」
男勝りの女冒険者が追いかけようとするが。
"させませんよ"
その足元から植物の蔓のようなものが飛び出して足に絡む。女はバランスを崩して転倒する。あんな魔術、ミールにいた頃も魔王討伐隊にいた頃も見たことはない。あれがアリス本来の戦い方なのだろうか。さらに蔓は捕らえた二人の盗賊を素早く絡めとり、アリスの元へ連れ帰る。
「ふむ。仲間を逃がして一人で我ら全員の相手をしようというのですか?11対1……とても若いお嬢さんが無茶するような状態ではないと思いますが……?」
ん?今のはギルドにいた酔っ払いか!?まるで別人のようだ。杖を構えて既に魔力を溜めている。
"何と言っているのか分かりませんが、私たちには大切な使命があるのです。あなたたちに恨みはありませんが、邪魔するなら容赦はしませんよ"
やはりアリスはこの世界の言葉は話せないらしい。
「言葉が通じないというのは厄介ですな。心苦しいが全力で押し通らせてもらおう。吹き付ける熱風」
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