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恋に落ちて
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無邪気で明るいありさがとても不潔な女の子に見えてきた。
今どきの中学生としては、めずらしくもない普通のことかもしれない。
自由な環境の中でどんどん汚染されていく無防備なありさと、無菌室から出ることを恐れてもがき苦しんでいる不登校の優花。
深刻な病に冒されているのは一体どっちなのだろう。
……そう言う自分はどうなのか。
妻子ある男性に惹かれている者が、ありさのことを批判する資格などない。
仕事を終え、ロッカールームで着替えていると、有紀がゼーゼーと息をはずませながら入って来た。
「あー いた! 彩矢~ もう、めっちゃ探した。帰るの早すぎ~ 佐野さんが六時に駐車場で待ってるって」
「えーっ、今日これから、デートってこと?」
さっき、返事をしたばかりなのに。
「まずかった? なんか用事でもあったの?」
「別にないけど、、急に言われても……」
「ないならいいじゃん。なんか美味しいものでもご馳走してもらいなさいよ」
「有紀もいっしょに行こうよ」
「なに言ってんの、私の役目はもう、お・し・ま・い。私はこれから横田君たちとカラオケに行くんだから、じゃあねぇー!」
大げさに手を振って、有紀はロッカー室を出て行った。
気持ちが沈んでいてデートをするような気分にはなれなかった。
どうして佐野さんと付き合ってみるなんて言ってしまったんだろう。
時計を見るとまだ五時四十分だったので、誰もいない外来ロビーの椅子に座って時間を潰すことにした。
マガジンラックからよれた先月号の週刊誌を取ってながめていたら、廊下の向こうから男の人の話し声が聞こえて来た。
白衣姿の佐野さんが松田先生と一緒にレントゲン室の方から歩いて来るのが見えた。
「あっ、彩矢ちゃん、ここで待ってたんだ。ごめん、今すぐ行くから」
佐野さんは手を合わせて謝ると、ロッカールームのほうへ走っていった。
先生が立ち止まって私のほうを見ていた。
佐野さんと待ち合わせしてることを知られてしまったので、少し後ろめたい気持ちになった。
別に悪いことをしているわけではないと思いなおし、顔をあげた。
目が合った瞬間、全身に電流が走った。
ーーー完全に恋をしていた。
……先生が、、先生が好き。
涙が出そうになって横を向いた。
先生も何も言わずに行ってしまった。
我慢していた涙がどんどん溢れて頬を伝った。
もうすぐ佐野さんが来るのに変に思うだろう。
でも涙はどうしても止められなかった。
五分ほどして佐野さんが走って来た。
「ごめん、ごめん。 あ、あれ? 彩矢ちゃん? どーしたの……」
今どきの中学生としては、めずらしくもない普通のことかもしれない。
自由な環境の中でどんどん汚染されていく無防備なありさと、無菌室から出ることを恐れてもがき苦しんでいる不登校の優花。
深刻な病に冒されているのは一体どっちなのだろう。
……そう言う自分はどうなのか。
妻子ある男性に惹かれている者が、ありさのことを批判する資格などない。
仕事を終え、ロッカールームで着替えていると、有紀がゼーゼーと息をはずませながら入って来た。
「あー いた! 彩矢~ もう、めっちゃ探した。帰るの早すぎ~ 佐野さんが六時に駐車場で待ってるって」
「えーっ、今日これから、デートってこと?」
さっき、返事をしたばかりなのに。
「まずかった? なんか用事でもあったの?」
「別にないけど、、急に言われても……」
「ないならいいじゃん。なんか美味しいものでもご馳走してもらいなさいよ」
「有紀もいっしょに行こうよ」
「なに言ってんの、私の役目はもう、お・し・ま・い。私はこれから横田君たちとカラオケに行くんだから、じゃあねぇー!」
大げさに手を振って、有紀はロッカー室を出て行った。
気持ちが沈んでいてデートをするような気分にはなれなかった。
どうして佐野さんと付き合ってみるなんて言ってしまったんだろう。
時計を見るとまだ五時四十分だったので、誰もいない外来ロビーの椅子に座って時間を潰すことにした。
マガジンラックからよれた先月号の週刊誌を取ってながめていたら、廊下の向こうから男の人の話し声が聞こえて来た。
白衣姿の佐野さんが松田先生と一緒にレントゲン室の方から歩いて来るのが見えた。
「あっ、彩矢ちゃん、ここで待ってたんだ。ごめん、今すぐ行くから」
佐野さんは手を合わせて謝ると、ロッカールームのほうへ走っていった。
先生が立ち止まって私のほうを見ていた。
佐野さんと待ち合わせしてることを知られてしまったので、少し後ろめたい気持ちになった。
別に悪いことをしているわけではないと思いなおし、顔をあげた。
目が合った瞬間、全身に電流が走った。
ーーー完全に恋をしていた。
……先生が、、先生が好き。
涙が出そうになって横を向いた。
先生も何も言わずに行ってしまった。
我慢していた涙がどんどん溢れて頬を伝った。
もうすぐ佐野さんが来るのに変に思うだろう。
でも涙はどうしても止められなかった。
五分ほどして佐野さんが走って来た。
「ごめん、ごめん。 あ、あれ? 彩矢ちゃん? どーしたの……」
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