16 / 98
脳腫瘍の里沙ちゃん
しおりを挟む「えーっ、マジで。そっかぁ、でも痛いんでしょ? それって……」
「はじめての時はね、めっちゃ痛いよぉ。もう早く終われ~って感じ。全然、気持ちよくない。でもいまの彼氏はおっちゃんだから、超やさしくしてくれる」
とても小学生に聞かせられるような話ではない。
しかも間違いなく犯罪だ。
「ありさちゃん、お友達とはデイルームのほうで話して!」
仕切られていたありさのカーテンを少し開けて、きつい口調で注意した。
スチールの椅子に座っていた三人のお友達がムスッとして私をにらみつけた。
今日は二○五号室の空きベッドに、小学一年生の女の子が入院することになっている。
午後三時に入室予定となっているから、そろそろ来られる頃だ。
入院のための案内を用意し、指示されているお薬や検査などの伝票を助手さんにお願いして病室へ向かった。
ベッドの頭部にさげられている名札入れに、記載した紙をいれた。
『遠藤里沙 六歳 担当医 松田Dr』
「これから小学一年生の女の子が入るからよろしくね!」
「はーい!」
ありさが仰向けにコミックを読みながら返事をした。
優花はいつも真っ白な自由帳に、なにやらイラストらしきものを描いている。
このふたりの間に挟まれて大丈夫かな?
小学一年生か、ちょっと心配になって来る。
ナースステーションに戻ると、ボストンバッグを手にした三十過ぎくらいのお母さんと、髪を肩の長さに切りそろえた目のクリんとした女の子が立っていた。
「こんにちは。遠藤里沙ちゃんですね。今日、担当させていただく平川です。お部屋へご案内しますのでどうぞ」
里沙ちゃんの歩くようすを観察しながら部屋へ案内し、入院中の規則や備品の使用方などを説明した。
ナースステーショに戻り、指示されている採血や投薬の準備などをすませる。
バイタルを取ったり、既往歴などを聞くために再度訪れると、ありさの女友達が三人来ておしゃべりをしていた。
里沙ちゃんは小脳に腫瘍が見つかり、主症状は軽度の歩行困難、手足のしびれとめまいだ。
「里沙ちゃん、めまいはしてない? 頭は痛くないかな?」
「だいじょうぶぅ」
パジャマに着替えた里沙ちゃんは、乳歯が抜けたままの笑顔を見せた。
「よかった。じゃあ、里沙ちゃん、ちょっと指相撲してみない?」
里沙ちゃんは夢中で私の親指を捕らえると、思いきり押さえつけた。
「痛ててて、すごーい! 里沙ちゃん、手の力強いね!」
「うん、だって里沙、鉄棒大好きだもん!」
「へ~ だからこんなに強いんだぁ」
ーーまだ握力は十分ね。
「運動するのが大好きなんですよ」
そばで聞いていたお母さんが、笑顔の中に不安と悲しみをにじませたようすで答えた。
「きゃはははははー! ヤバすぎ、マジうけるぅ~ 」
さっきから、ありさと友達のおしゃべりがうるさい。
「それでねぇ、彼氏が退院のお祝いに好きなバッグを買ってくれるって。ありさ早く顔の傷治して、めっちゃきれいになって帰るからね~って」
「いいなぁー。ありさの彼氏はお金持ちで」
「そうでもないよ。普通のサラリーマンだよ。梨乃は大輝くんとどうなったの?」
「どうって、まだ三回しか会ってないし。でもこの間キスしてもいい?って聞かれて超ビビッた」
「え~ まだキスもしてないの? ありさなんて一回目のデートで本番までいったよ~」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
六華 snow crystal 2
なごみ
現代文学
雪の街、札幌を舞台にした医療系純愛小説。part 2
彩矢に翻弄されながらも、いつまでも忘れられずに想い続ける遼介の苦悩。
そんな遼介を支えながらも、報われない恋を諦められない有紀。
そんな有紀に、インテリでイケメンの薬剤師、谷 修ニから突然のプロポーズ。
二人の仲に遼介の心も複雑に揺れる。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
六華 snow crystal 4
なごみ
現代文学
雪の街、札幌で繰り広げられる、それぞれの愛のかたち。part 4
交通事故の後遺症に苦しむ谷の異常行動。谷のお世話を決意した有紀に、次々と襲いかかる試練。
ロサンゼルスへ研修に行っていた潤一が、急遽帰国した。その意図は? 曖昧な態度の彩矢に不安を覚える遼介。そんな遼介を諦めきれない北村は、、
騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる