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44.お世話になった人たち
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「リア、誰に手紙を書いているんだい?」
手紙を書いていると、お兄様が微笑みながら尋ねてきた。
「前に話したマリーさんですわ。セバスが住所を調べてくれて。その、ベンさんの封印が解けていないか心配で…それに、王都では雨が続いているそうですので、子供たちはどうしているのかな…と」
お兄様は、頷きながら、何かを考えているようだった。
「王都は以前よく雨が降っていて、でも、ここ数年はそうでもなかったのですけど…」
子供たちが外で遊べないなんて、かわいそうだわ。それに…
「あの、お兄様、前にも言ったのですが、私、雨が嫌いで…。ここ数年、雨が降るたび、消えてほしいと願っていたのです。でも、あの日、このまま雨に当たっていたいと願ったから、封印が解けて…そう思えてならないのです。形あるものも封印できたわけですし、ただ雨をどこに封印したのか、いいえ、できるのかどうかも、そもそもわからなくて」
「思い悩むことはないよ、リア。雨が降って喜ぶものもいるだろうし、その件はセシルも動いている。何、自称、天才魔法省幹部がなんとかしてくれるさ。リアが関係していてもいなくても、問題ないよ。」
「自称…ふふ、わかりましたわ」
不安は尽きないけど、セシル殿下も動いているのなら…
「そのマリーさんに、礼も言いたいし、近く一緒に王都へ行こう、リア」
「はい!!」
嬉しいわ。ああ、また、あの家族に会えるのね
***********
「リア、ちょっと人に会うから同席してほしいんだ」
お兄様がお願い事なんて珍しいと思い、来客を待つ間、そわそわしていた。
「ヴィルフリード様、お越しになりました」
「そうか、入れ」
お兄様は、短く答えた。
「は、は、はじめてお目にかかります!!ホレス・ウィンターと申します。この度は、私どもノーブル商会に声をかけていただき、光栄です」
緊張で震えながら、床に頭が付くそうなくらい立礼をする商人。え?ホレスさん…
お兄様は、彼の緊張を和らげようと、優しく声をかけた。
「ああ、そんなに固くならずに、座ってくれ」
ホレスさんはぎこちなくソファに腰を下ろし、何度も汗を拭きながら恐縮していた。彼は私たちを見ているようだったが、目線が合わず焦点が定まっていないように見えた。大丈夫かしら…
「アレキサンドライトの取引に、私どもの商会も参加させていただけると聞き、飛んでまいりました。何のつながりもなかったのに、なぜ私をご存じで…あ、いや、私の存在なんて些細なことでしたね。すみません…余計なことは言いません、はい」
お兄様が、微笑んで応じた。
「私のエミリアがずいぶん助けられたと聞いてね。是非お礼をと考えていたら、リアが、ホレスさんはアレキサンドライトに関心があるようだと教えてくれてね。合っているかい?」
「あ、合ってます。一度、アレキサンドライトにお目にかかれるだけでも、と。でも、エミリアさんに助けられたのは私の方で、お礼なんて…え?エミリアさん?」
あ!やっとホレスさんと目が合ったわ。
「え?えぇぇぇぇー侯爵家の令嬢ですか!あ!!!お兄様…良かった会えたんだね、い、いいえ、会えたのですね」
「はい。ホレスさんのおかげで、無事、お兄様に会えました。お勧めしてくれた串焼きも、いただいたお金で美味しく食べることができましたわ。ふふ」
「うわ…侯爵令嬢に串焼きを勧めただなんて…」
ホレスさんは驚愕しながら、お兄様の顔色を窺った。
「ああ、リアが串焼きを頬張るという珍しいものが見られた。礼を言う。はは。そうだ、調べたところによると、君の商会はアクセサリーのデザイナーを抱えていると聞いた。実は、リアに作ってほしいアクセサリーがある。まだ公にしていないが、アレクサンドライトとは別にタンザナイトを発掘した。それを使ってほしい」
私にアクセサリー?
「どちらも希少な宝石ではないですか!?もしかして、タンザナイトも取引させていただけると考えても…」
ホレスは驚きの表情を隠せないでいる。
「もちろんだ。」
「!!!!!ああ、やっぱり、エミリアさんは女神だった!幸運の女神!!」
神に祈るように感謝を述べた。ふふ、やっぱり大げさね。
「ああ、私もそれは否定しない」
お兄様が上機嫌で言った。
「では、詳しい契約を詰めるから場所を変えよう。リアとは、後でお茶をしながら話すといい」
***
契約が無事に終わったニコニコ顔のホレスさんとお茶を楽しんだ。ホレスさんは侯爵家からの突然の連絡に最初は怯えていたことを打ち明け、私はこれまでの話を彼に伝えた。二人で話しているうちに、時間があっという間に過ぎていった。
馬車に乗り込んだホレスさんは、何度も手を振りながら去っていった。また、すぐに会えるわね、きっと。
ふふ、さあ。お兄様にお礼を言いに行きましょう。
手紙を書いていると、お兄様が微笑みながら尋ねてきた。
「前に話したマリーさんですわ。セバスが住所を調べてくれて。その、ベンさんの封印が解けていないか心配で…それに、王都では雨が続いているそうですので、子供たちはどうしているのかな…と」
お兄様は、頷きながら、何かを考えているようだった。
「王都は以前よく雨が降っていて、でも、ここ数年はそうでもなかったのですけど…」
子供たちが外で遊べないなんて、かわいそうだわ。それに…
「あの、お兄様、前にも言ったのですが、私、雨が嫌いで…。ここ数年、雨が降るたび、消えてほしいと願っていたのです。でも、あの日、このまま雨に当たっていたいと願ったから、封印が解けて…そう思えてならないのです。形あるものも封印できたわけですし、ただ雨をどこに封印したのか、いいえ、できるのかどうかも、そもそもわからなくて」
「思い悩むことはないよ、リア。雨が降って喜ぶものもいるだろうし、その件はセシルも動いている。何、自称、天才魔法省幹部がなんとかしてくれるさ。リアが関係していてもいなくても、問題ないよ。」
「自称…ふふ、わかりましたわ」
不安は尽きないけど、セシル殿下も動いているのなら…
「そのマリーさんに、礼も言いたいし、近く一緒に王都へ行こう、リア」
「はい!!」
嬉しいわ。ああ、また、あの家族に会えるのね
***********
「リア、ちょっと人に会うから同席してほしいんだ」
お兄様がお願い事なんて珍しいと思い、来客を待つ間、そわそわしていた。
「ヴィルフリード様、お越しになりました」
「そうか、入れ」
お兄様は、短く答えた。
「は、は、はじめてお目にかかります!!ホレス・ウィンターと申します。この度は、私どもノーブル商会に声をかけていただき、光栄です」
緊張で震えながら、床に頭が付くそうなくらい立礼をする商人。え?ホレスさん…
お兄様は、彼の緊張を和らげようと、優しく声をかけた。
「ああ、そんなに固くならずに、座ってくれ」
ホレスさんはぎこちなくソファに腰を下ろし、何度も汗を拭きながら恐縮していた。彼は私たちを見ているようだったが、目線が合わず焦点が定まっていないように見えた。大丈夫かしら…
「アレキサンドライトの取引に、私どもの商会も参加させていただけると聞き、飛んでまいりました。何のつながりもなかったのに、なぜ私をご存じで…あ、いや、私の存在なんて些細なことでしたね。すみません…余計なことは言いません、はい」
お兄様が、微笑んで応じた。
「私のエミリアがずいぶん助けられたと聞いてね。是非お礼をと考えていたら、リアが、ホレスさんはアレキサンドライトに関心があるようだと教えてくれてね。合っているかい?」
「あ、合ってます。一度、アレキサンドライトにお目にかかれるだけでも、と。でも、エミリアさんに助けられたのは私の方で、お礼なんて…え?エミリアさん?」
あ!やっとホレスさんと目が合ったわ。
「え?えぇぇぇぇー侯爵家の令嬢ですか!あ!!!お兄様…良かった会えたんだね、い、いいえ、会えたのですね」
「はい。ホレスさんのおかげで、無事、お兄様に会えました。お勧めしてくれた串焼きも、いただいたお金で美味しく食べることができましたわ。ふふ」
「うわ…侯爵令嬢に串焼きを勧めただなんて…」
ホレスさんは驚愕しながら、お兄様の顔色を窺った。
「ああ、リアが串焼きを頬張るという珍しいものが見られた。礼を言う。はは。そうだ、調べたところによると、君の商会はアクセサリーのデザイナーを抱えていると聞いた。実は、リアに作ってほしいアクセサリーがある。まだ公にしていないが、アレクサンドライトとは別にタンザナイトを発掘した。それを使ってほしい」
私にアクセサリー?
「どちらも希少な宝石ではないですか!?もしかして、タンザナイトも取引させていただけると考えても…」
ホレスは驚きの表情を隠せないでいる。
「もちろんだ。」
「!!!!!ああ、やっぱり、エミリアさんは女神だった!幸運の女神!!」
神に祈るように感謝を述べた。ふふ、やっぱり大げさね。
「ああ、私もそれは否定しない」
お兄様が上機嫌で言った。
「では、詳しい契約を詰めるから場所を変えよう。リアとは、後でお茶をしながら話すといい」
***
契約が無事に終わったニコニコ顔のホレスさんとお茶を楽しんだ。ホレスさんは侯爵家からの突然の連絡に最初は怯えていたことを打ち明け、私はこれまでの話を彼に伝えた。二人で話しているうちに、時間があっという間に過ぎていった。
馬車に乗り込んだホレスさんは、何度も手を振りながら去っていった。また、すぐに会えるわね、きっと。
ふふ、さあ。お兄様にお礼を言いに行きましょう。
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