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28.変えられない過去

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テーブルの上には、ドニが腕によりをかけた料理が並び、食欲をそそる香りが漂っている。アビーたちとも一緒に食べたかったが、さすがに無理だった。でも、近くで、私が食べている様子を微笑ましいものを見るような目で見ている。



楽しい空気だったからこそ、今まで心の中に閉じ込めていた感情が、抑えきれずに溢れ出た。


「お兄様…いいえ、みんなも聞いて。私、本当は、もう誰も私のことなど気にかけていないと思っていたの…ごめんなさい」

皆が辛そうな顔で私を見つめているのが分かる。その視線が痛くて、私は目を伏せた。


「お兄様から…手紙も来ないし、プレゼントも届かなくなった。会いたい、と願っても邸から出られないのに、お兄様は会いに来てくれない。もう、私のことなんてどうでもいいんだって…」


言葉に詰まりながらも、私は自分の心の中をさらけ出した。長い間感じていた孤独と絶望が、言葉として形になるのが苦しかった。


「…リア、それは違う…」

お兄様が苦しげな表情をした。ああ、そんな顔をさせたかったわけじゃないの。胸が締め付けられるような痛みを感じた。


「ふふ、私、お兄様が私のことを疎んだら、もう誰もいらない、この世を消してしまおうって…怖いでしょ?幸せに暮らしている人のことなんか何も考えていなかった…もう、私は、みんなの知っている私じゃないの」


言葉が止まらない。過去の自分がどれほど無力で絶望的だったか、どれほど周りを見失っていたかを語りながら、私は自分自身が怖くなっていた。


「お嬢様は、それだけ嫌な思いをしたんです!ええ、お嬢様は私の可愛いお嬢様のままです」

アビーが涙ぐみながら、私の手を握ってくれた。その言葉は、母のように私を包み込んでくれる。


「そうです。過去に思ったことにさえ苦しんでしまうなんて…お辛かったですね」

セバスもまた、静かに私を慰めてくれる。



「リアは悪くない。リアの過去に一緒にいなかった私を…私は許せない。でも、過去は変えられない、一緒に諦めよう?でも未来まで諦めることはないんだ。大丈夫だリア。私がいる」


お兄様が強く、そして優しく私に語りかける。
『大丈夫だリア。私がいる』
あの時もそう言ってくれた。あの時のように絶望に包まれていた私を一瞬で引き戻してくれた。そんな気がした。


「ありがとうございます…。お兄様、みんな」



涙が自然と溢れ出し、止まらなかった。こんなにも優しい言葉をかけてくれる人たちに囲まれている。

過去の自分を許すことができなくても、私はきっと未来を歩んでいける。私はそう強く思った。

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