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4.美しい義兄
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「お父様、お母様、お帰りなさい!お兄様はいつ来られるのかしら?」
「ああ。あとから従弟の伯爵たちと一緒に来るよ。…エミリアちょっといいかな?」
浮かない顔をしたお父様に抱き上げられ、部屋へと向かう。
「…エミリア、君の兄となるヴィルフリードだが、その、なんていうか…なあ、ソフィア…」
「ええ…エミリアはどんなお兄さまだと嬉しいかしら?」
「そうですわね。一緒に笑って楽しい時間を過ごしたいです!あ、あと、困ったときには力になってくれて、頼りになる人がいいですわ。」
お父様とお母様は顔を見合わせ、困ったように笑った。
「…そうか、うん、でも、もしエミリアの想像していた人と違っても、親元を離れてこの侯爵家にやってくるんだ。仲良くできるかな?」
お父様に頭を撫でられる。
「もちろんです!!」
いったいどんなお兄様なのだろう。
**********
数日後、お兄様が乗った馬車が到着した。
待ちきれなかった私はずっと玄関を行ったり来たりし、『はしたないわよ』とお母様に怒られた。
馬車から伯爵夫妻が降り、それに続いて美しい令息が降りてきた。光沢のあるブロンドの髪は風に揺れ、陽光を受けてきらめいていた。まるで絵画から抜け出してきたかのようだった。
「エミリア、彼がヴィルフリード。今日から、ヴィルフリード・ヴァルデンだよ」
お父様が紹介してくれたお兄様は近くで見るとより美しかった。
「初めまして、お兄様。私は、エミリア・ヴァルデンですわ。仲良くしてくださると嬉しいです」
お兄様の瞳は透き通るような青色で、見るものを引き込むほどの深い輝きを放っていた。
私をじっと見つめていたお兄様は、喜びがあふれたかのような笑みを浮かべた。
「私は、ヴィルフリード・ヴァルデン。今日から君のお兄様だよ。リアって呼んでいいかな?ああ、是非仲良くしてくれると嬉しいな」
笑うとその瞳はさらに輝きを増し、周囲の世界を一瞬で明るくする力を持っているように感じた。
「ええ、リアと呼んでください。そうだ!お兄様。お庭をご案内いたしますわ。私のお気に入りのお花がありますの」
優しく微笑み、手を差し伸べてくださったお兄様にエスコートされ、お庭、そして、邸の案内をした。
にこやかに頷きながら話を聞いてくださるお兄様に安心をし、あとで魔法を見せてもらえる約束まで取り付けた。
翌日、お兄様のご両親が隣国に帰るときには、お兄様のお母様である伯爵夫人にぎゅっと手を握られ
「ヴィルをどうかどーーーーかよろしくね」と、泣きながら頼まれた。
「大事なご両親と離れて私のお兄様になってくださったのですもの。もちろんですわ」
ともらい泣きをしながら答えた私を、お兄様はにこにこして見ていらっしゃった。
私が覚えている数少ない幸せだった頃の記憶。優しかった両親と兄。
なぜかしら、楽しかった思い出がたくさんあったはずなのに、年々思い出せなくなってきている。
*********
両親が亡くなった日のことも、断片的にしか覚えていない。
雨がひどく降り注ぐ中、家路を急いだ馬車が横転し、打ち所の悪かった両親はそのまま天国へ逝ってしまった。
葬儀のため、多くの人が出入りする邸の隅で震えていたとき、留学先から急いで帰ってきたお兄様が抱きしめてくれたことは覚えている。
『大丈夫だリア。私がいる』
隣国のお兄様のご両親が、私のことを引き取ると言ってくださったが、『将来結婚し、いずれ家族になるのだから』とクロード様の御父上が説得したようだ。『じゃあ、留学を取りやめ、一緒にいる』とお兄様も言ってくださったが、優秀なお兄さまの道を邪魔してはいけないと、クロード様の家にお世話になることに決めた。
優しいお兄様や小さい頃から一緒だった使用人と別れるのは辛かったが、温かく迎えてくれた伯爵様やクロード様がいたから何も不安なことはなかった。
そう、あの日が来るまでは。ああ、そして、今年もあの日がやってくる。
「ああ。あとから従弟の伯爵たちと一緒に来るよ。…エミリアちょっといいかな?」
浮かない顔をしたお父様に抱き上げられ、部屋へと向かう。
「…エミリア、君の兄となるヴィルフリードだが、その、なんていうか…なあ、ソフィア…」
「ええ…エミリアはどんなお兄さまだと嬉しいかしら?」
「そうですわね。一緒に笑って楽しい時間を過ごしたいです!あ、あと、困ったときには力になってくれて、頼りになる人がいいですわ。」
お父様とお母様は顔を見合わせ、困ったように笑った。
「…そうか、うん、でも、もしエミリアの想像していた人と違っても、親元を離れてこの侯爵家にやってくるんだ。仲良くできるかな?」
お父様に頭を撫でられる。
「もちろんです!!」
いったいどんなお兄様なのだろう。
**********
数日後、お兄様が乗った馬車が到着した。
待ちきれなかった私はずっと玄関を行ったり来たりし、『はしたないわよ』とお母様に怒られた。
馬車から伯爵夫妻が降り、それに続いて美しい令息が降りてきた。光沢のあるブロンドの髪は風に揺れ、陽光を受けてきらめいていた。まるで絵画から抜け出してきたかのようだった。
「エミリア、彼がヴィルフリード。今日から、ヴィルフリード・ヴァルデンだよ」
お父様が紹介してくれたお兄様は近くで見るとより美しかった。
「初めまして、お兄様。私は、エミリア・ヴァルデンですわ。仲良くしてくださると嬉しいです」
お兄様の瞳は透き通るような青色で、見るものを引き込むほどの深い輝きを放っていた。
私をじっと見つめていたお兄様は、喜びがあふれたかのような笑みを浮かべた。
「私は、ヴィルフリード・ヴァルデン。今日から君のお兄様だよ。リアって呼んでいいかな?ああ、是非仲良くしてくれると嬉しいな」
笑うとその瞳はさらに輝きを増し、周囲の世界を一瞬で明るくする力を持っているように感じた。
「ええ、リアと呼んでください。そうだ!お兄様。お庭をご案内いたしますわ。私のお気に入りのお花がありますの」
優しく微笑み、手を差し伸べてくださったお兄様にエスコートされ、お庭、そして、邸の案内をした。
にこやかに頷きながら話を聞いてくださるお兄様に安心をし、あとで魔法を見せてもらえる約束まで取り付けた。
翌日、お兄様のご両親が隣国に帰るときには、お兄様のお母様である伯爵夫人にぎゅっと手を握られ
「ヴィルをどうかどーーーーかよろしくね」と、泣きながら頼まれた。
「大事なご両親と離れて私のお兄様になってくださったのですもの。もちろんですわ」
ともらい泣きをしながら答えた私を、お兄様はにこにこして見ていらっしゃった。
私が覚えている数少ない幸せだった頃の記憶。優しかった両親と兄。
なぜかしら、楽しかった思い出がたくさんあったはずなのに、年々思い出せなくなってきている。
*********
両親が亡くなった日のことも、断片的にしか覚えていない。
雨がひどく降り注ぐ中、家路を急いだ馬車が横転し、打ち所の悪かった両親はそのまま天国へ逝ってしまった。
葬儀のため、多くの人が出入りする邸の隅で震えていたとき、留学先から急いで帰ってきたお兄様が抱きしめてくれたことは覚えている。
『大丈夫だリア。私がいる』
隣国のお兄様のご両親が、私のことを引き取ると言ってくださったが、『将来結婚し、いずれ家族になるのだから』とクロード様の御父上が説得したようだ。『じゃあ、留学を取りやめ、一緒にいる』とお兄様も言ってくださったが、優秀なお兄さまの道を邪魔してはいけないと、クロード様の家にお世話になることに決めた。
優しいお兄様や小さい頃から一緒だった使用人と別れるのは辛かったが、温かく迎えてくれた伯爵様やクロード様がいたから何も不安なことはなかった。
そう、あの日が来るまでは。ああ、そして、今年もあの日がやってくる。
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