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24.騎士団の帰還
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薬づくりに集中していると、ふいに扉が勢いよく開かれ、サラが息を切らせて飛び込んできた。その顔は興奮と緊張が入り混じっていて…もしかして!!
「フローリア、騎士団が今から帰ってくるって早馬が来たわ!出迎えに行きましょう!」
サラの声は、どこか浮き立つような響きがあった。作業をそのままにして、急いで、サラと一緒に門まで向かう。
門に到着すると、すでに多くの人々が集まり、騎士たちを待ちわびていた。やがて、遠くから重い鎧の音と、馬のひづめの音が響き渡り、次第にその姿が見えてくる。
「あ!フローリア来たわ!」
私も思わず前に出て、目を凝らした。騎士団が疲れ切った様子であるのは一目瞭然だった。鎧は泥と血にまみれ、彼らの顔には疲労の色が濃かったが、どこか安心したような表情が浮かんでいた。
エドモンド様はどこかしら?あ、いた!
彼の姿を見つけた瞬間、胸の中で何かが弾けるような感覚が広がった。
エドモンド様は馬から颯爽と降り立ち、私に気付くと、いつもの優しい笑顔を向けてこちらに歩いてくる。
「エドモン…」
彼の名前を呼ぼうとした瞬間、突如として一人の騎士がこちらに向かって全力で走ってくるのが見えた。
「フローリア様ぁぁぁ!」
様?私は思わず立ち止まった。息を荒げながら言葉にならない叫びを上げている。な、何事なの?
「フローリア様ぁぁ、貴方のおかげで、俺は!魔獣が、ずばって、して来てですね。俺の腕が、ぎりぎり、ブラブラで…ああ終わったって、もう絶望しかなくて、ありがとうございますぅぅぅ」
…全然意味が分からないわ。手を強く握られ、涙を流して話している騎士に呆然としていると、エドモンド様が苦笑しながら騎士を引き剥がしてくれた。
「落ち着けレオ。フローリアが戸惑っているだろ?」
「エドモンド様、えーとこれは一体…」
引き剥がされた騎士は、今度は涙を流しながら私を拝みだした。周りの人々がその様子を見ているのが気になるから、ちょっとやめて欲しい…
「ああ、実はな、この馬鹿、魔獣を倒しきれなかったのに気づかず、魔獣に背中を見せてしまったんだ。瀕死の魔獣が、こいつの腕めがけて、噛みついてきて…皆で倒して、離したんだが、腕がめちゃくちゃで。もう切り落とすしかないと思ったんだが、フローリアからもらったポーションを思い出して、使ってみたんだ」
この馬鹿と呼ばれた騎士は、再び私に向き直った。その瞳には感謝の色が浮かんでいた。
「この通り、綺麗に治りました。絶望と恐怖と痛みから救ってくれたフローリア様には感謝しかありません。ああ、俺はフローリア様のために何でもします。何かお願いはないですか、なんでも何度でもぜひ!!!!」
ち、近い…。
「だから、離れろって。いいか、お前の傷はフローリアから俺がもらったポーションで治ったんだ。俺が助けた。だからお前は、俺の願いをなんでも何度でも聞け!フローリアのお願いは、俺がなんでも何度でも聞く。フローリアがくれたポーションで俺の部下が助かったんだから、俺が礼をするのは当然だ」
「そ、そんな。俺がフローリア様にお礼をしたいのに…」
「お前は、怪我の報告書を書かなくてはいけないだろ。ほら、もう行け。この話はまた今度だ」
騎士はとぼとぼと戻っていきながらも、何度もこちらをちらちらと振り返っていたが、エドモンド様に睨まれたことでようやく諦めた様子だった。
「すまんな、持ち帰ると約束をしたのに、使ってしまった」
エドモンド様は少し申し訳なさそうに私を見つめた。
「いいえ、使ってもらうために作ったのです。あんなに感謝されるなんて作ったかいがありました。効果を後で詳しく教えてくださいね」
「ああ、わかった。あっ、そうだ。フローリアただいま」
エドモンド様はふと思い出したように、私にそう告げた。
「ふふ、お帰りなさいませ、エドモンド様。ご無事で嬉しいです」
エドモンド様のいつもの笑顔に心からの安心を感じた。彼の変わらない優しさが、これまで抱えていた不安をすべて吹き飛ばしてくれたようだった。
「フローリア、騎士団が今から帰ってくるって早馬が来たわ!出迎えに行きましょう!」
サラの声は、どこか浮き立つような響きがあった。作業をそのままにして、急いで、サラと一緒に門まで向かう。
門に到着すると、すでに多くの人々が集まり、騎士たちを待ちわびていた。やがて、遠くから重い鎧の音と、馬のひづめの音が響き渡り、次第にその姿が見えてくる。
「あ!フローリア来たわ!」
私も思わず前に出て、目を凝らした。騎士団が疲れ切った様子であるのは一目瞭然だった。鎧は泥と血にまみれ、彼らの顔には疲労の色が濃かったが、どこか安心したような表情が浮かんでいた。
エドモンド様はどこかしら?あ、いた!
彼の姿を見つけた瞬間、胸の中で何かが弾けるような感覚が広がった。
エドモンド様は馬から颯爽と降り立ち、私に気付くと、いつもの優しい笑顔を向けてこちらに歩いてくる。
「エドモン…」
彼の名前を呼ぼうとした瞬間、突如として一人の騎士がこちらに向かって全力で走ってくるのが見えた。
「フローリア様ぁぁぁ!」
様?私は思わず立ち止まった。息を荒げながら言葉にならない叫びを上げている。な、何事なの?
「フローリア様ぁぁ、貴方のおかげで、俺は!魔獣が、ずばって、して来てですね。俺の腕が、ぎりぎり、ブラブラで…ああ終わったって、もう絶望しかなくて、ありがとうございますぅぅぅ」
…全然意味が分からないわ。手を強く握られ、涙を流して話している騎士に呆然としていると、エドモンド様が苦笑しながら騎士を引き剥がしてくれた。
「落ち着けレオ。フローリアが戸惑っているだろ?」
「エドモンド様、えーとこれは一体…」
引き剥がされた騎士は、今度は涙を流しながら私を拝みだした。周りの人々がその様子を見ているのが気になるから、ちょっとやめて欲しい…
「ああ、実はな、この馬鹿、魔獣を倒しきれなかったのに気づかず、魔獣に背中を見せてしまったんだ。瀕死の魔獣が、こいつの腕めがけて、噛みついてきて…皆で倒して、離したんだが、腕がめちゃくちゃで。もう切り落とすしかないと思ったんだが、フローリアからもらったポーションを思い出して、使ってみたんだ」
この馬鹿と呼ばれた騎士は、再び私に向き直った。その瞳には感謝の色が浮かんでいた。
「この通り、綺麗に治りました。絶望と恐怖と痛みから救ってくれたフローリア様には感謝しかありません。ああ、俺はフローリア様のために何でもします。何かお願いはないですか、なんでも何度でもぜひ!!!!」
ち、近い…。
「だから、離れろって。いいか、お前の傷はフローリアから俺がもらったポーションで治ったんだ。俺が助けた。だからお前は、俺の願いをなんでも何度でも聞け!フローリアのお願いは、俺がなんでも何度でも聞く。フローリアがくれたポーションで俺の部下が助かったんだから、俺が礼をするのは当然だ」
「そ、そんな。俺がフローリア様にお礼をしたいのに…」
「お前は、怪我の報告書を書かなくてはいけないだろ。ほら、もう行け。この話はまた今度だ」
騎士はとぼとぼと戻っていきながらも、何度もこちらをちらちらと振り返っていたが、エドモンド様に睨まれたことでようやく諦めた様子だった。
「すまんな、持ち帰ると約束をしたのに、使ってしまった」
エドモンド様は少し申し訳なさそうに私を見つめた。
「いいえ、使ってもらうために作ったのです。あんなに感謝されるなんて作ったかいがありました。効果を後で詳しく教えてくださいね」
「ああ、わかった。あっ、そうだ。フローリアただいま」
エドモンド様はふと思い出したように、私にそう告げた。
「ふふ、お帰りなさいませ、エドモンド様。ご無事で嬉しいです」
エドモンド様のいつもの笑顔に心からの安心を感じた。彼の変わらない優しさが、これまで抱えていた不安をすべて吹き飛ばしてくれたようだった。
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