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29.去る者は日日に疎し
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ーside国王ー
「ヴィクター、お前は、なぜそんなひどいことが言える!!!」
「そうですよ!高貴な私たちがそんなことできるわけがないでしょう。身分のあるものは身分にふさわしい生活をするものです」
怒りで紅潮した顔のアレクがヴィクターを責め、ミレーナがその隙間を埋めるように割って入り、ヴィクターを非難する。愚か者どもが、セレナ嬢の殺気をなぜ感じ取れない。
「…身分にふさわしい行動をしていなかったから、このような事態に陥ったのですのよ。どんなに愚かな者でも、さすがに理解できるはずでしょう?」
セレナ嬢が冷たく言い放ち、周囲の空気は一瞬にして凍りつく。
「…王太子の身分の永久剥奪、国外追放でもおかしくないことをお前たちはしたのだ。さらに、ヴィクターは王位継承権を放棄したのだぞ。他国の皇子まで巻き込んでいるのだ!!ヴィクターの恩情に感謝こそすれ、責めるとは。これ以上私に、情けない姿を見せるな!!」
”本当にやるのか?まさか…未来の王と王妃だぞ…ばかな…”
諦めきれずに、文句を言い続ける愚息たち
「…時に、セレナ嬢も被害者だ。その、君も2人に何かあるのではないか?」
「いいえ?ヴィクター様のおっしゃった処罰でよろしいですわ。ヴィクター様が一生懸命考えてくださったことに何の不満もありません。ヴィクター様のお考えは私の考えです。」
本当か?
「ヴィクター様が更生の機会をお与えくださったのです。でも、ヴィクター様の好意を無にしたときには…一言進言する機会を私にいただけるでしょうか。」
「あ、ああ、勿論だ」
これは何としてでも、遂行させなければならない。一言進言、そんな機会を作ってはいけないような気がする。
*****
ーいつものお茶の時間ー
「いや、無理でしょう。あの2人に使用人の真似事なんて…。セレナ、あなたそれ知っていますわよね」
「プライドだけは高貴な2人、どれだけ持つかしら。先が見えないと人は、むやみに先のことを考えて不安になる。先が見えないときは、 目の前のことに集中して、先を見ないのが一番というのに。」
逆境をチャンスに変えられる人は強い者だけ。やるべきとわかっているのにやらないあの二人は、ヴィクター様の与えたチャンスを無駄にし、逃すでしょうね。
1か月、持つかしら?
「そうですわ!レティシア、あなた王宮に用事はないかしら?」
「あると言えばありますけど、それがどうかして?」
レティシアは眉をひそめ、不審そうに私を見つめた。
「じゃあ、その用事、2人で行きましょう。文官とメイドに頭を深々と下げてもらうの。頭を上げ、私たちを視界に入れたら罰するのはどうかしら。」
「アルマンド公爵令息が与えた更生の機会を、あなたって人は…ふふ、でも、そうね、もちろん2人で行きましょう。」
私の提案に、レティシアが一瞬呆れた顔をしたが、瞳には、どこか悪戯っぽい光が宿った。あら私たち、ヴィクター様から以前聞いた『悪役令嬢』っぽいですわね。
*******
ー1か月後 side国王ー
「国王陛下にご挨拶申し上げます」
「ああ、セレナ嬢、よい、楽にしてくれ」
王太子が、病気になり部屋から出られず、その看病のためにミレーナがつきっきりで看病をしている…という話を聞きつけ、セレナ嬢が王宮へやってきた。
「お見舞いに来たのですが、誰とも会えないということで、国王陛下にご挨拶してから帰ろうかと…時に、病はいつ治りそうですか?」
セレナ嬢の声が冷たく響く
「…気づいているのだろう?仮病だということに」
「ヴィクター、お前は、なぜそんなひどいことが言える!!!」
「そうですよ!高貴な私たちがそんなことできるわけがないでしょう。身分のあるものは身分にふさわしい生活をするものです」
怒りで紅潮した顔のアレクがヴィクターを責め、ミレーナがその隙間を埋めるように割って入り、ヴィクターを非難する。愚か者どもが、セレナ嬢の殺気をなぜ感じ取れない。
「…身分にふさわしい行動をしていなかったから、このような事態に陥ったのですのよ。どんなに愚かな者でも、さすがに理解できるはずでしょう?」
セレナ嬢が冷たく言い放ち、周囲の空気は一瞬にして凍りつく。
「…王太子の身分の永久剥奪、国外追放でもおかしくないことをお前たちはしたのだ。さらに、ヴィクターは王位継承権を放棄したのだぞ。他国の皇子まで巻き込んでいるのだ!!ヴィクターの恩情に感謝こそすれ、責めるとは。これ以上私に、情けない姿を見せるな!!」
”本当にやるのか?まさか…未来の王と王妃だぞ…ばかな…”
諦めきれずに、文句を言い続ける愚息たち
「…時に、セレナ嬢も被害者だ。その、君も2人に何かあるのではないか?」
「いいえ?ヴィクター様のおっしゃった処罰でよろしいですわ。ヴィクター様が一生懸命考えてくださったことに何の不満もありません。ヴィクター様のお考えは私の考えです。」
本当か?
「ヴィクター様が更生の機会をお与えくださったのです。でも、ヴィクター様の好意を無にしたときには…一言進言する機会を私にいただけるでしょうか。」
「あ、ああ、勿論だ」
これは何としてでも、遂行させなければならない。一言進言、そんな機会を作ってはいけないような気がする。
*****
ーいつものお茶の時間ー
「いや、無理でしょう。あの2人に使用人の真似事なんて…。セレナ、あなたそれ知っていますわよね」
「プライドだけは高貴な2人、どれだけ持つかしら。先が見えないと人は、むやみに先のことを考えて不安になる。先が見えないときは、 目の前のことに集中して、先を見ないのが一番というのに。」
逆境をチャンスに変えられる人は強い者だけ。やるべきとわかっているのにやらないあの二人は、ヴィクター様の与えたチャンスを無駄にし、逃すでしょうね。
1か月、持つかしら?
「そうですわ!レティシア、あなた王宮に用事はないかしら?」
「あると言えばありますけど、それがどうかして?」
レティシアは眉をひそめ、不審そうに私を見つめた。
「じゃあ、その用事、2人で行きましょう。文官とメイドに頭を深々と下げてもらうの。頭を上げ、私たちを視界に入れたら罰するのはどうかしら。」
「アルマンド公爵令息が与えた更生の機会を、あなたって人は…ふふ、でも、そうね、もちろん2人で行きましょう。」
私の提案に、レティシアが一瞬呆れた顔をしたが、瞳には、どこか悪戯っぽい光が宿った。あら私たち、ヴィクター様から以前聞いた『悪役令嬢』っぽいですわね。
*******
ー1か月後 side国王ー
「国王陛下にご挨拶申し上げます」
「ああ、セレナ嬢、よい、楽にしてくれ」
王太子が、病気になり部屋から出られず、その看病のためにミレーナがつきっきりで看病をしている…という話を聞きつけ、セレナ嬢が王宮へやってきた。
「お見舞いに来たのですが、誰とも会えないということで、国王陛下にご挨拶してから帰ろうかと…時に、病はいつ治りそうですか?」
セレナ嬢の声が冷たく響く
「…気づいているのだろう?仮病だということに」
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