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4.父&友人①

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「と、まあ、そんなことがありましたの」


「それはそれは。くくっ。『ざまぁ』されるのは、我がホフマン家ではないのか?清廉潔白だという証拠…あるといいな。あーははは」


…お父様、笑いすぎです。



我がホフマン家の代名詞と言えば、「策略」「陰謀」「計略」「企み」。まあ、表立って言う者はいないが、決して清廉潔白ではない。わたしは、その血が流れていることに何ら不満はないし、誇りを持っているわ。




「そこは、抜かりありませんわ。婚約者様が、集めた証拠とやらで何をしてくださるのか、楽しみです。」


なんにせよ、あの誰にも興味のなさそうだったヴィクター様が私のために動いてくれるというのですもの。



「嬉しそうだな」

「お父様、ヴィクター様がね、『僕のセレナ』っておっしゃったのよ。ふふ。」

「何?あのヴィクター君がか?」  


結婚したらせいぜい家名を利用させてもらうだけの関係。と、割り切っていたのだが。
『僕のセレナ』悪い気はしないわ。



「そうなのですよ。でも、ヴィクター様、純粋すぎて…貴族としては少し危ういですわね。」


「…それは困ったな。手を打つか?」


「いいえ、あれがいいのです。何を考えているかわからないヴィクター様に興味はないですが、今の純粋で邪心がなく、私を信じている分かりやすいヴィクター様。魅力的ですわ。貴族としてのマナーや礼儀正しさは、前より良くなっていますし。」



それに卒業学年となる来年は、私と同じクラスになる!と、猛勉強なさっている。



「気に入ったようだな…計画変更か?」

「なにをおっしゃるの?計画通りに決まっておりますわ。」


ええ、ヴィクター様がおっしゃっていた悪意。放っておいたのには理由があるのですけど、よいですわ。あんなに一生懸命ですし、計画に支障はないですもの。




「ははは、そうか、お前の好きにしなさい。」



楽しくなってきたわ。



*****





「何やら面白いことになっているそうね」


今日は、久しぶりにレティシアとお茶を楽しむ。レースのテーブルクロスが美しく広がり、細やかな陶磁器のティーカップと瓶入りのジャムが並べられている。



「まあ、耳が早い。昨日まで隣国にいたとは思えませんわ。」


あの階段から落下した日から今日までの出来事をレティシアに話す。レティシアは、上品な笑顔を浮かべながらお茶を飲み、私の話を興味深そうに聞く。


「あの彫刻のように表情を変えないあなたの婚約者様がね。人生ってわからないものだわ。」

「ふふ、今のヴィクター様、純真無垢という言葉がぴったり。私の周りにいなかったタイプで興味深いわ。表情も豊かで、決してそれは貴族らしいとは言えないけれど、見ていて楽しいし、癒されるわ。」


今頃、一生懸命証拠集めをなさっているかしら。


「あら、セレナ気付いていて?その言い方、あの王太子がミレーナを褒める時とよく似ているわ。」


‥‥‥‥‥‥。


「ふふ、嫌だわ。そんな怖い顔をしないで、冗談よ。」

「…全く違いますわ。ヴィクター様は、常識がありますもの。」


レティシア貴方、ちょっと失礼ですわ。


「まあまあ、とにかく『ざまぁ』だったかしら?あなたの婚約者様は、誰からやるつもりなのかしらね」

「ああ、きっと、ミレーナの周りでさえずっている小鳥たちじゃないかしら?」


次期王太子妃の権力を後ろ盾にして威張り散らしている男爵令嬢たち。
ミレーナの振る舞いに賛同し、同じように私を見下している。いや、ミレーナが見下している令嬢を全て見下している。しかし、ミレーナは侯爵令嬢のレティシアに近づかないからもれなく、男爵令嬢たちもレティシアに近づかない。『鵜の真似をする烏』ってところね。


「セレナの前に立ちはだかるなんて。本当に覚悟をもってやっていたのかしら。…愚かだわ。」


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