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41.始まりは君のそばで②
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ーシルヴィー
「わたくし明日なんの予定もないから、お休みしていいわよ。」
ナタリーの入れてくれたお茶を飲みながら、アランに提案する。
「休み?お前が生きている限り護衛の俺に休みはない。」
なに、その極端な労働思考
「護衛に休みがないわけないでしょう。ナタリーにだってちゃんと休みがあるもの。ほら買い物したり、おいしいものを食べたり、好きに時間を使うのも大事だわ。」
「お前の買い物に付いて行ったり、お前が食べるものを同じように食べている。衣食住に困ってはいない…いらない心配をするな。好きでここにいるんだ。下手に休みなんかあったらお前の叔父にまた家庭教師をつけられる。」
ああ、そっちが理由ね。でも、それはそうなんだけど…
「娼館とか…」
立ち上がって、 真っ赤になって怒る。
「行かないと言っているだろ!ったく。早くお前に娼館のことを教えた奴の名前を言え!!」
ナタリーの目が、”勘弁してください”と私に訴えている。そんなに動揺したらアランにばれちゃうわ。
「でも、暇でしょ?”狂乱の死神”ともあろう人が、こんな何もない平和に時間をつぶすなんて」
ソファに再び座り直し、頭を掻きながらアランが言い始める。
「あのなぁ、好きで狂乱していたわけではないし、暇でもない。護衛中は、お前が一歩踏み出すたびに転ぶんじゃないかといつだって気を張っている。それに、四六時中、お前と一緒にいるわけでもないだろう?お前が起きる前と寝た後にきちんと訓練もしているし、言っていなかったがお前の叔父に頼まれている諜報活動も密かにしている。」
いつ寝ているのかしら?
「いやね。淑女よ。転ぶわけないわ。」
「お前この前、擁壁から降りられなかっただろ…許されるなら移動は全部かかえていきたいくらいだ」
嫌なことを持ち出したわね…。忘れてくれていいのに。
「それは、護衛とはいえ、許されないわね。…分かったわ。降参よ。じゃあ、明日は街に出かけるわ。一緒に来るでしょ?」
「何を当たり前のことを」
アランに服でも買ってあげよう、楽しみだわ。
********************
―アラン―
「はあ、いったい君は、誰だったらいいんだい?」
懲りずに、縁談の話をしやがるから、ひとつずつ確認し、蹴散らしていく。
『もう、先に見たらいいよ。』とお茶を飲んでいるこの男の前で、吟味する。
辞退する家も多いが、俺も一緒だと言っても少なからず縁談が届く。当然だ、シルヴィは、賢く美しい優良物件だ。
「…こいつなら…」
一つの釣書を渡す。お茶を吹き出しやがった。おい、マナーはどうした。
「…子爵令息。え?いいの?あまり爵位は高いとは言えないし…身分はぎりぎりだよ?君が許可するなんて。逆に怖いんだけど…」
怖いって何だよ!
「戦場で会ったことがある。この子爵家は代々騎士の家系だ。そのせいもあるのか、周りの者からの信頼、剣の腕前どれをとっても申し分がない。今は子爵令息だが、奴なら近衛騎士長も騎士団長も狙える。ほかの騎士が娼館に行く中、一人で報告書を仕上げているような男だ。きっとシルヴィに誠実に接するはずだ。そうだな、他に女の影がなければ、今はこいつが一番だ。」
釣書と俺を何度か交互に見た後、
「君がそう言うなら、いや、君の気が変わらないうちに…さっそくシルヴィに報告しなくっちゃ」
そう言って、浮かれて出て行く。
そろそろ、腹を決めねばならない。シルヴィが行き遅れて、後妻などとなったら目も当てられない。
もし、俺のことが懸念材料となったら、あんなことは言ったが、シルヴィのそばにいなくても、見守ることはできるだろう。
その男で決まりなら、近衛だろうが騎士団だろうが俺もそいつと共に入ってシルヴィの話を聞けばいい。シルヴィが悲しまないようその男のことも守ってやる。
「わたくし明日なんの予定もないから、お休みしていいわよ。」
ナタリーの入れてくれたお茶を飲みながら、アランに提案する。
「休み?お前が生きている限り護衛の俺に休みはない。」
なに、その極端な労働思考
「護衛に休みがないわけないでしょう。ナタリーにだってちゃんと休みがあるもの。ほら買い物したり、おいしいものを食べたり、好きに時間を使うのも大事だわ。」
「お前の買い物に付いて行ったり、お前が食べるものを同じように食べている。衣食住に困ってはいない…いらない心配をするな。好きでここにいるんだ。下手に休みなんかあったらお前の叔父にまた家庭教師をつけられる。」
ああ、そっちが理由ね。でも、それはそうなんだけど…
「娼館とか…」
立ち上がって、 真っ赤になって怒る。
「行かないと言っているだろ!ったく。早くお前に娼館のことを教えた奴の名前を言え!!」
ナタリーの目が、”勘弁してください”と私に訴えている。そんなに動揺したらアランにばれちゃうわ。
「でも、暇でしょ?”狂乱の死神”ともあろう人が、こんな何もない平和に時間をつぶすなんて」
ソファに再び座り直し、頭を掻きながらアランが言い始める。
「あのなぁ、好きで狂乱していたわけではないし、暇でもない。護衛中は、お前が一歩踏み出すたびに転ぶんじゃないかといつだって気を張っている。それに、四六時中、お前と一緒にいるわけでもないだろう?お前が起きる前と寝た後にきちんと訓練もしているし、言っていなかったがお前の叔父に頼まれている諜報活動も密かにしている。」
いつ寝ているのかしら?
「いやね。淑女よ。転ぶわけないわ。」
「お前この前、擁壁から降りられなかっただろ…許されるなら移動は全部かかえていきたいくらいだ」
嫌なことを持ち出したわね…。忘れてくれていいのに。
「それは、護衛とはいえ、許されないわね。…分かったわ。降参よ。じゃあ、明日は街に出かけるわ。一緒に来るでしょ?」
「何を当たり前のことを」
アランに服でも買ってあげよう、楽しみだわ。
********************
―アラン―
「はあ、いったい君は、誰だったらいいんだい?」
懲りずに、縁談の話をしやがるから、ひとつずつ確認し、蹴散らしていく。
『もう、先に見たらいいよ。』とお茶を飲んでいるこの男の前で、吟味する。
辞退する家も多いが、俺も一緒だと言っても少なからず縁談が届く。当然だ、シルヴィは、賢く美しい優良物件だ。
「…こいつなら…」
一つの釣書を渡す。お茶を吹き出しやがった。おい、マナーはどうした。
「…子爵令息。え?いいの?あまり爵位は高いとは言えないし…身分はぎりぎりだよ?君が許可するなんて。逆に怖いんだけど…」
怖いって何だよ!
「戦場で会ったことがある。この子爵家は代々騎士の家系だ。そのせいもあるのか、周りの者からの信頼、剣の腕前どれをとっても申し分がない。今は子爵令息だが、奴なら近衛騎士長も騎士団長も狙える。ほかの騎士が娼館に行く中、一人で報告書を仕上げているような男だ。きっとシルヴィに誠実に接するはずだ。そうだな、他に女の影がなければ、今はこいつが一番だ。」
釣書と俺を何度か交互に見た後、
「君がそう言うなら、いや、君の気が変わらないうちに…さっそくシルヴィに報告しなくっちゃ」
そう言って、浮かれて出て行く。
そろそろ、腹を決めねばならない。シルヴィが行き遅れて、後妻などとなったら目も当てられない。
もし、俺のことが懸念材料となったら、あんなことは言ったが、シルヴィのそばにいなくても、見守ることはできるだろう。
その男で決まりなら、近衛だろうが騎士団だろうが俺もそいつと共に入ってシルヴィの話を聞けばいい。シルヴィが悲しまないようその男のことも守ってやる。
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