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38.終わりの終わりー神殿長+αー
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聖女を全員送り出した討伐と浄化が失敗した。
生き残った騎士たちはいたようだが、聖女たちは全滅だ。
くっくっくっ
思惑通りに事が進み、笑いが止まらない。聖女たちの死を悼み、悲しい顔をして涙を流し事実を伝えれば、貴族や民は、憐れむだけで苦情など言わない。むしろ献金を納めていく。
そんな中、王家から使いが来た。登城しろ?聖女たちの弔慰金か?わざわざ城で渡さなくてもいいのに、面倒だな。
********************
「この度の遠征は失敗に終わった。神殿長もさぞかし心を痛めていることだろう。」
重苦しい空気の中、国王陛下が話し出す。
「…はい、聖女たちも全滅し…ぅぅ…陛下!やはり、大聖女がいなければ我が国は終わりです。」
何としてでも、探し出さねば。
「ああ、その件については少し待て。共に話をする相手がまだ来ておらん。」
相手?だれだ…
扉が開き、ウィレムス公爵家の親子2人が入ってくる。
「陛下にご挨拶申し上げます。」
「ああ、よい。そこに座り、楽にせよ。」
ああ、なるほど、この2人か。ウィレムス公爵家も探しているのだな。当然だ。
「陛下、我が妹の居場所に心当たりがあります。隣国です。隣国にシルヴィの叔父がいます。きっとそこに…。」
隣国だと!そうか、国内をあれだけ探し回ったのに見つからないはずだ。
「知っているが?それがどうした。」
「「「へ?」」」
知っていた?
「で、では陛下、隣国の皇帝に親書を送りシルヴィを引き渡すように言ってください。我が国の大事な大聖女です!!神殿にはもう聖女がいないのです。」
「そ、そうです、神殿長の言う通りです。シルヴィの力はこの国に必要です。保護しなければ。そうだ親書は、私と息子が持っていきましょう。使者として。家族の私たちが迎えに行けばシルヴィは喜んで…」
「それは無理な話だな。」
呆れたように陛下が言う。
「平民が、国王の使者になれるわけがないだろう。」
「「へ、平民!」」
この2人が平民とは、どういうことだ?
「なんだ知らなかったのか。シルヴィは公爵家の爵位を国に返上した。異例のことだが、国はそれを受理した。お前たちは、そうなると平民だろう?ただの代理と代理の息子だ。ああ、家には血のつながらない母もいたな。シルヴィの保護?はっ、笑わせるな。せめてお前たち家族だけでもシルヴィを大切にしていたら、まだこの国に残っていたやもしれん。…ああ、そうだな、平民が国王の執務室にいるのはおかしいな、おい、連れ出せ。」
”うそだー、何かの間違いだー”…状況を把握できていない2人が連れ出された。声がどんどん小さくなっていく。
………音のないこの空間が怖すぎる。
「…さて、先日面白い話を聞いた。”大聖女の治癒魔法がないと病が再発する。苦しくて眠れない。体が動かない。”という貴族の訴えだ。”欠損を、誰もが見放していた病を治してくれた大聖女に王家の仕打ちはあまりにも…”との訴えも届いている。貴族たちはいつ大聖女の治療を受けていたのだ?報告は受けていないのだが。」
…まずい。
「神殿長は、なぜあの男爵令嬢を野放しにした。聖女たちと大聖女の関係を修復してやらなかった。いや、お前だけはもちろんシルヴィを丁重に扱っていただろうな?」
これは、全てを知っていての質問だろう…最悪だ…
「ああ、そうだ、神殿長も聖力がわずかだがあったな。残念ながら、国境近くの土地はいまだに魔獣が暴れている。第2討伐隊を今編成中だ。お前も一緒に行け、王命だ」
生き残った騎士たちはいたようだが、聖女たちは全滅だ。
くっくっくっ
思惑通りに事が進み、笑いが止まらない。聖女たちの死を悼み、悲しい顔をして涙を流し事実を伝えれば、貴族や民は、憐れむだけで苦情など言わない。むしろ献金を納めていく。
そんな中、王家から使いが来た。登城しろ?聖女たちの弔慰金か?わざわざ城で渡さなくてもいいのに、面倒だな。
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「この度の遠征は失敗に終わった。神殿長もさぞかし心を痛めていることだろう。」
重苦しい空気の中、国王陛下が話し出す。
「…はい、聖女たちも全滅し…ぅぅ…陛下!やはり、大聖女がいなければ我が国は終わりです。」
何としてでも、探し出さねば。
「ああ、その件については少し待て。共に話をする相手がまだ来ておらん。」
相手?だれだ…
扉が開き、ウィレムス公爵家の親子2人が入ってくる。
「陛下にご挨拶申し上げます。」
「ああ、よい。そこに座り、楽にせよ。」
ああ、なるほど、この2人か。ウィレムス公爵家も探しているのだな。当然だ。
「陛下、我が妹の居場所に心当たりがあります。隣国です。隣国にシルヴィの叔父がいます。きっとそこに…。」
隣国だと!そうか、国内をあれだけ探し回ったのに見つからないはずだ。
「知っているが?それがどうした。」
「「「へ?」」」
知っていた?
「で、では陛下、隣国の皇帝に親書を送りシルヴィを引き渡すように言ってください。我が国の大事な大聖女です!!神殿にはもう聖女がいないのです。」
「そ、そうです、神殿長の言う通りです。シルヴィの力はこの国に必要です。保護しなければ。そうだ親書は、私と息子が持っていきましょう。使者として。家族の私たちが迎えに行けばシルヴィは喜んで…」
「それは無理な話だな。」
呆れたように陛下が言う。
「平民が、国王の使者になれるわけがないだろう。」
「「へ、平民!」」
この2人が平民とは、どういうことだ?
「なんだ知らなかったのか。シルヴィは公爵家の爵位を国に返上した。異例のことだが、国はそれを受理した。お前たちは、そうなると平民だろう?ただの代理と代理の息子だ。ああ、家には血のつながらない母もいたな。シルヴィの保護?はっ、笑わせるな。せめてお前たち家族だけでもシルヴィを大切にしていたら、まだこの国に残っていたやもしれん。…ああ、そうだな、平民が国王の執務室にいるのはおかしいな、おい、連れ出せ。」
”うそだー、何かの間違いだー”…状況を把握できていない2人が連れ出された。声がどんどん小さくなっていく。
………音のないこの空間が怖すぎる。
「…さて、先日面白い話を聞いた。”大聖女の治癒魔法がないと病が再発する。苦しくて眠れない。体が動かない。”という貴族の訴えだ。”欠損を、誰もが見放していた病を治してくれた大聖女に王家の仕打ちはあまりにも…”との訴えも届いている。貴族たちはいつ大聖女の治療を受けていたのだ?報告は受けていないのだが。」
…まずい。
「神殿長は、なぜあの男爵令嬢を野放しにした。聖女たちと大聖女の関係を修復してやらなかった。いや、お前だけはもちろんシルヴィを丁重に扱っていただろうな?」
これは、全てを知っていての質問だろう…最悪だ…
「ああ、そうだ、神殿長も聖力がわずかだがあったな。残念ながら、国境近くの土地はいまだに魔獣が暴れている。第2討伐隊を今編成中だ。お前も一緒に行け、王命だ」
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