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36.終わりの終わりーミラベル+αー
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「さて、ミラベルと言ったかな。私の元息子が世話になった。」
元息子…。
「君は、我が国の大聖女にいったい何をしたのだ?」
「な、何もしておりません。いえ、むしろ聖女様たちが悪口を言っていた時もかばっていたくらいで…。」
陛下が、冊子をペラペラめくる。
「そうだろうか?まあいい、ただ、君がいなければ…と、思わないこともないのだがな。」
優し気な言い方が恐怖をさらに募らせる。
「ああ、そうだ!君にお願いがある。」
「お願いでございますか?」
「そう、実は、シルヴィがいなくなったことにより、結界が綻び、我が国の魔獣出現が増加した。」
魔獣ですって?
「君は、聖女たちと仲がよかったな。ぜひ討伐や浄化の際のサポートをしてほしい。」
討伐、浄化…無理よ!
「陛下、私は何の力もありません。そんなの無理です。」
「ははは、聖女の力はないが、できることをしたいと神殿へ頻繁に訪れていたんだろ?民のためだぞ?無理なわけないだろう。ああ、それに、君はシルヴィから慰謝料を請求されていると聞いたが?そうだ、お金が必要だ。このお願いを聞いてくれたら、私が代わりに払ってやろう。どうだ、娼館とサポート。考えるまでもないと思うがな。」
娼館…サポートなら、そんな危険なこともないかしら。お金、そうよ、お金が必要よ。
********************
「邪魔よ、そんなところに突っ立っていないで!!」
―そっちに1匹、行ったぞ!!逃げろ!!!―
怒号が飛び交う国境付近。聞いていない、なんなのこれ。魔獣の数が尋常じゃない。
夜、血の付いた騎士の服を洗う。いやだ、臭い、手が凍える。
「はぁ、浄化どころか結界がもう駄目だわ。少し修復できたと思ったら、すぐ魔獣に壊される。」
「力が足りない…永遠に終わらない…。」
「…ったく、誰かさんが王太子妃なんて高望みなんかするから!!」
なによ!自分たちのことを棚に上げて!!
睨み返してやると、硬いパンを投げつけられる。
「もう2か月よ…。あんたのせいで…生きて帰れる保証もない…」
何があんたのせいよ!さんざん悪口を言っていたくせに。そうよ、せいぜい最後まで逃げ出さずに死ねばいい。私は、こんなとこ逃げ出してやる。そうだ!ここからは、辺境伯領が近いはず。ダニエル!!あの正義感の強い男なら私をきっと助けてくれる。
********************
「ダニエル!!」
森を駆け抜け、馬車を乗り継ぎ、辺境伯領へ着いた。探し出せるか心配だったが、運よくダニエルを見つけた。
「…ミラベルか?」
「そうよ、私よ。助けてダニエル。私、今、大変な目にあっているの。」
明るく、人懐っこいイメージだったダニエルは、疲れ果てた顔をしていた。
「…大変。大変かぁ。いや、ミラベル。逃げた方がいい。この辺境伯領は、君が思っているより危険だ。王都までの馬車を手配してやる。それに乗って早くここから離れるといい。」
聞くと、辺境伯領の結界は、すでに崩壊しており、昼夜問わず毎日魔獣が襲ってくるそうだ。
「そ、そうなのね。じゃあ、残念だけど私はもう行くわ。」
こんなところに長居はできない!!立ち去ろうと馬車乗り場へと向きを変えた私にダニエルが話しかけた。
「…なあ、ミラベル。あの噂は…シルヴィは、本当に悪い女だったのか?」
…。いまさら何を。振り返らず、聞こえないふりをして馬車へと急いだ。
********************
家には帰れないわ。陛下の命令で監視がいるはずだもの。
監視…シルヴィの兄もまずいわ。
そうよ!レオンス、侯爵家でかくまってもらおう。
「…ミラベルか?」
ダニエルといい、レオンスといい、なぜ疑問形で聞くのかしら。
「そうよ、ミラベルよ。」
侯爵家のサロンに通され、レオンスと話す。レオンスも疲れた顔をしているわね。
「レオンス、私すごく困っていて、しばらくここに置いてもらえないかしら。」
「ここに?ああ、それは無理だな」
どうしてよ、私がお願いしているのよ。
「困ったことがあったら何でも相談に乗るって。…殿下の婚約者になっても、私をずっと想っているってそういったじゃない!!」
何て男らしくないの!!
「大切な幼馴染をないがしろにしてまで君を…どうかしていたんだ。そのつけが、今の私を襲っている。ちょうど明日、領地へ行くこととなった。何にもない土地だ。はは、難しい決算書を作る必要のないほど穏やかな土地で私は生涯を終える。」
「じゃあ、私も連れて行って。」
王都よりも国境付近よりも安全なはず。
「…私は、1か月前子爵令嬢と結婚をしたのだ。知らなかったのか…。妻と一緒に領地へ行く。君は連れて行けない。」
バタン、部屋に騎士が押し寄せてくる。
「陛下の命令に背いた罪により、これより連行する、大人しく着いてこい。」
ああ、レオンス、私を売ったのね。裏切者!!…終わったわ。このまま娼館行きかしら。違うわね、きっと。はは、あははは…生きていられるかしら…。
元息子…。
「君は、我が国の大聖女にいったい何をしたのだ?」
「な、何もしておりません。いえ、むしろ聖女様たちが悪口を言っていた時もかばっていたくらいで…。」
陛下が、冊子をペラペラめくる。
「そうだろうか?まあいい、ただ、君がいなければ…と、思わないこともないのだがな。」
優し気な言い方が恐怖をさらに募らせる。
「ああ、そうだ!君にお願いがある。」
「お願いでございますか?」
「そう、実は、シルヴィがいなくなったことにより、結界が綻び、我が国の魔獣出現が増加した。」
魔獣ですって?
「君は、聖女たちと仲がよかったな。ぜひ討伐や浄化の際のサポートをしてほしい。」
討伐、浄化…無理よ!
「陛下、私は何の力もありません。そんなの無理です。」
「ははは、聖女の力はないが、できることをしたいと神殿へ頻繁に訪れていたんだろ?民のためだぞ?無理なわけないだろう。ああ、それに、君はシルヴィから慰謝料を請求されていると聞いたが?そうだ、お金が必要だ。このお願いを聞いてくれたら、私が代わりに払ってやろう。どうだ、娼館とサポート。考えるまでもないと思うがな。」
娼館…サポートなら、そんな危険なこともないかしら。お金、そうよ、お金が必要よ。
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「邪魔よ、そんなところに突っ立っていないで!!」
―そっちに1匹、行ったぞ!!逃げろ!!!―
怒号が飛び交う国境付近。聞いていない、なんなのこれ。魔獣の数が尋常じゃない。
夜、血の付いた騎士の服を洗う。いやだ、臭い、手が凍える。
「はぁ、浄化どころか結界がもう駄目だわ。少し修復できたと思ったら、すぐ魔獣に壊される。」
「力が足りない…永遠に終わらない…。」
「…ったく、誰かさんが王太子妃なんて高望みなんかするから!!」
なによ!自分たちのことを棚に上げて!!
睨み返してやると、硬いパンを投げつけられる。
「もう2か月よ…。あんたのせいで…生きて帰れる保証もない…」
何があんたのせいよ!さんざん悪口を言っていたくせに。そうよ、せいぜい最後まで逃げ出さずに死ねばいい。私は、こんなとこ逃げ出してやる。そうだ!ここからは、辺境伯領が近いはず。ダニエル!!あの正義感の強い男なら私をきっと助けてくれる。
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「ダニエル!!」
森を駆け抜け、馬車を乗り継ぎ、辺境伯領へ着いた。探し出せるか心配だったが、運よくダニエルを見つけた。
「…ミラベルか?」
「そうよ、私よ。助けてダニエル。私、今、大変な目にあっているの。」
明るく、人懐っこいイメージだったダニエルは、疲れ果てた顔をしていた。
「…大変。大変かぁ。いや、ミラベル。逃げた方がいい。この辺境伯領は、君が思っているより危険だ。王都までの馬車を手配してやる。それに乗って早くここから離れるといい。」
聞くと、辺境伯領の結界は、すでに崩壊しており、昼夜問わず毎日魔獣が襲ってくるそうだ。
「そ、そうなのね。じゃあ、残念だけど私はもう行くわ。」
こんなところに長居はできない!!立ち去ろうと馬車乗り場へと向きを変えた私にダニエルが話しかけた。
「…なあ、ミラベル。あの噂は…シルヴィは、本当に悪い女だったのか?」
…。いまさら何を。振り返らず、聞こえないふりをして馬車へと急いだ。
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家には帰れないわ。陛下の命令で監視がいるはずだもの。
監視…シルヴィの兄もまずいわ。
そうよ!レオンス、侯爵家でかくまってもらおう。
「…ミラベルか?」
ダニエルといい、レオンスといい、なぜ疑問形で聞くのかしら。
「そうよ、ミラベルよ。」
侯爵家のサロンに通され、レオンスと話す。レオンスも疲れた顔をしているわね。
「レオンス、私すごく困っていて、しばらくここに置いてもらえないかしら。」
「ここに?ああ、それは無理だな」
どうしてよ、私がお願いしているのよ。
「困ったことがあったら何でも相談に乗るって。…殿下の婚約者になっても、私をずっと想っているってそういったじゃない!!」
何て男らしくないの!!
「大切な幼馴染をないがしろにしてまで君を…どうかしていたんだ。そのつけが、今の私を襲っている。ちょうど明日、領地へ行くこととなった。何にもない土地だ。はは、難しい決算書を作る必要のないほど穏やかな土地で私は生涯を終える。」
「じゃあ、私も連れて行って。」
王都よりも国境付近よりも安全なはず。
「…私は、1か月前子爵令嬢と結婚をしたのだ。知らなかったのか…。妻と一緒に領地へ行く。君は連れて行けない。」
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「陛下の命令に背いた罪により、これより連行する、大人しく着いてこい。」
ああ、レオンス、私を売ったのね。裏切者!!…終わったわ。このまま娼館行きかしら。違うわね、きっと。はは、あははは…生きていられるかしら…。
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