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32.終わりに向かってー王太子ー

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ー王太子ー

「ミラが来た?何をやっている。すぐにここへ通せ。」


卒業パーティーで母上と同じく気を失って運ばれていったミラ。その後の体調が気になっていたが、私は、父上に仮病を使っているため、王宮から出ることもかなわない。側近も冊子を見てから、次々といなくなり、今はどうしていることやら。無言で帰る側近に何が書いていたと聞く勇気もなく、また、自分で見る勇気もない。


ああ、ミラが会いに来てくれるなんて。すっかり体調が戻ったのだな。私の姿を見て一体どう思うだろう。いや、心優しきミラだ。それに、私たちは心と心で結びついている。何も心配はいらない。


「…セド!会いたかったわ。」

一瞬の間と少しひきつった表情が気にかかる…。ああ、だめだ。私は少し敏感になりすぎているのかもしれない。


「セド、聞いて!シルヴィ様が私の家に慰謝料を請求してきたの。そんなお金、男爵家には…。ねえ、どうしたらいい?」

抱き着き、私を見上げるミラ。潤んだ目が可愛らし…い?ん?なんだ、この違和感。イエローやゴールドが混ざったような色合いの美しい琥珀色の瞳。だったはず…。これは市井の者に多いブラウン…。ゴールドが混ざったようなクリーム色のふわふわな髪も色が絶妙に違うような…肌もこんなに荒れて…


”男爵令嬢が、より美しく、輝くような女性になれるよう神に祈りました。”
神に祈る…はっ!まさか!幻覚魔法か!?


「ねぇ、聞いてるの?エド」

こうしてみると市井にいる少しかわいい子という感じではないか…気に入らなかったとはいえ輝くような美しさをもつ優秀なシルヴィ、そして好みであり愛らしく誰もが魅了されるという隣国の宝石姫。…なぜ私は、ミラを…


「払うしかないだろう…。」

あの場で浮気の認定をされたんだ、しょうがないだろう。
途端、顔が醜く歪んだミラ。

「はあ?ふざけないで。セドが私を選んだんじゃない!!ちゃんと責任を取ってよ。このままじゃ娼館行きよ!!」

つばを吐きながら騒ぎ立てる。何て品のない…。百年の恋も冷めるとはこのことだな。こんな女だったのか。シルヴィから王家にも慰謝料の請求が来ていることなど想像に容易いだろうに、自分の分も払わせる気だったのか?何て奴だ。


********************


コンコンコン

部屋の扉がノックされる。


「殿下、陛下がお呼びです。例の冊子をもって急いで謁見の間に来るようにとのことです。」


謁見の間!?


「いや、私はまだ体調が…」


「側近や男爵令嬢に会えるのに国王である私に会えないわけがないだろうと仰せです。王妃様もいらっしゃいますから、急いでお支度を。ああ、そちらの男爵令嬢もご一緒にとのことです。」


え?私…とミラベルが動揺し出した。


とうとう、この日が…。ああ、シルヴィが見つかっていないというのに、なんてことだ…。


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