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23.回想③~アラン~
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********************
「隣国のミュラー侯爵からの使いできたアラン・ディアスと申す。ご当主に取り次ぎを願いたい。」
サロンに通される。この男が父親か。
「手紙をこちらへ。」
読み終わった男が、”余計なことを”という顔でため息をつく。手紙には、姪との交流の催促、そして護衛の件が書いてあるはずだ。
「せっかくここまで来てもらったが、手紙の内容は了承しかねる。その旨、国へ帰り伝えてもらいたい。」
あいつの予想通りの答えだな。スパイだと思っていやがるのか。
「令嬢に誕生日プレゼントを贈っても、手紙の返信すらないことを危惧しておられる。安否確認のため私が遣わされた。令嬢の安否確認後、早馬で連絡することとなっているので、私が帰るまでもない。それに、私は、戦場で功績をあげ、1代限りではあるが皇帝から男爵位を賜っている。護衛としては申し分ないと思うが、断る理由をお聞かせ願おう。」
「しかし、勝手に…護衛と言われても。」
明らかに迷惑だという顔で、まだ断ろうとする。
「ミュラー侯爵は大変心配なさっており、懇意にしている帝国の第2皇子に頼み、国を通して連絡することも検討している。大きな問題にならないとよいが、それとも、護衛は十分間に合っているというのだろうか。」
苦々しい顔を隠そうともしない。貴族は顔色を隠すと聞いたが…。
扉が開き、サロンに鈴のような声が響く。
「お父様ちょうどよかったではないですか、王家からも早々に護衛をつけろと言われていましたし。そうですわね。今なら、お義母さまの耳に輝いている隣国でしか取れない宝石を使ったピアスの出どころも追及いたしませんわ。」
「お前!!」
「ああ、そういうことでしたか。ご当主、賢明なご判断を。」
「…わかった、認めよう。お前の給金は、隣国の侯爵が出すでいいのだな。シルヴィ、さっさと部屋に連れていけ!!」
ガタンと大きな音を立て、サロンから出て行く。なんだ、俺でもわかるぞ、マナーがなっていないな。
「さあ、行きましょう。」
…また、こいつは振り返りもせずすたすた歩き出しやがった。
********************
部屋に着く。ん?なんでこいつはこんなに顔色が悪いんだ?
「思ったより時間がかかったわね。もう、私学院に入学してしまったではないの。学院に護衛の申請を今すぐにしないと。」
心配は撤回だ。
「はぁぁ?何言っている、半年だぞ!!早いだろうが。最短で爵位を手に入れるため、お前が暢気に学院に通っているとき、国益に関わるかなりやばい諜報活動までさせられたんだぞ!手柄のためずっとあちこちの戦場を駆け回って!気弱なふりをしてお前の叔父は悪魔だ!!おかげで、”狂乱の死神”なんてありがたくもない二つ名まで俺についたんだぞ!…お前が待っているなんていうから、正気が乱れてまで…なんだよ?」
なんだ、泣いているのか?
「…ごめんなさいね。私があなたを見つけてしまったばっかりに。たくさんの人を殺させて…余計な傷もこんなにたくさんついて。」
綺麗な深緑の瞳から涙が止まらない。
「あー、くそ!、俺はお前を恨んでたのに…泣くな泣くな!調子が狂う。それこそ捕まっていないだけで人に言えない悪いことなんかたくさんしてきた。…人を殺すのも初めてじゃなかったんだ…。傷だってもともとたくさんあった。お前が気に病むことはない。おかげで、生きるのに困らないだけのものを手に入れたんだ、万々歳だろ。」
なんで俺は慰めてるんだ?恨み言を言う予定だったのに。
「改めまして。シルヴィ・ウィレムスですわ。普段は、シルヴィと呼んでいいわ。これからよろしくね。」
目じりも鼻も赤いまま微笑んだ。
「ああ、アラン・ディアスだ。シルヴィ、約束通り男爵位をふんだくって戻ってきたぞ。お前が望んだんだ。責任をもってそばに置け。代わりにお前のことは毎日、俺の記憶に残してやる。」
「ふふ、嬉しいわ。」
嬉しいのかよ。やっぱり調子が狂う。
「隣国のミュラー侯爵からの使いできたアラン・ディアスと申す。ご当主に取り次ぎを願いたい。」
サロンに通される。この男が父親か。
「手紙をこちらへ。」
読み終わった男が、”余計なことを”という顔でため息をつく。手紙には、姪との交流の催促、そして護衛の件が書いてあるはずだ。
「せっかくここまで来てもらったが、手紙の内容は了承しかねる。その旨、国へ帰り伝えてもらいたい。」
あいつの予想通りの答えだな。スパイだと思っていやがるのか。
「令嬢に誕生日プレゼントを贈っても、手紙の返信すらないことを危惧しておられる。安否確認のため私が遣わされた。令嬢の安否確認後、早馬で連絡することとなっているので、私が帰るまでもない。それに、私は、戦場で功績をあげ、1代限りではあるが皇帝から男爵位を賜っている。護衛としては申し分ないと思うが、断る理由をお聞かせ願おう。」
「しかし、勝手に…護衛と言われても。」
明らかに迷惑だという顔で、まだ断ろうとする。
「ミュラー侯爵は大変心配なさっており、懇意にしている帝国の第2皇子に頼み、国を通して連絡することも検討している。大きな問題にならないとよいが、それとも、護衛は十分間に合っているというのだろうか。」
苦々しい顔を隠そうともしない。貴族は顔色を隠すと聞いたが…。
扉が開き、サロンに鈴のような声が響く。
「お父様ちょうどよかったではないですか、王家からも早々に護衛をつけろと言われていましたし。そうですわね。今なら、お義母さまの耳に輝いている隣国でしか取れない宝石を使ったピアスの出どころも追及いたしませんわ。」
「お前!!」
「ああ、そういうことでしたか。ご当主、賢明なご判断を。」
「…わかった、認めよう。お前の給金は、隣国の侯爵が出すでいいのだな。シルヴィ、さっさと部屋に連れていけ!!」
ガタンと大きな音を立て、サロンから出て行く。なんだ、俺でもわかるぞ、マナーがなっていないな。
「さあ、行きましょう。」
…また、こいつは振り返りもせずすたすた歩き出しやがった。
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部屋に着く。ん?なんでこいつはこんなに顔色が悪いんだ?
「思ったより時間がかかったわね。もう、私学院に入学してしまったではないの。学院に護衛の申請を今すぐにしないと。」
心配は撤回だ。
「はぁぁ?何言っている、半年だぞ!!早いだろうが。最短で爵位を手に入れるため、お前が暢気に学院に通っているとき、国益に関わるかなりやばい諜報活動までさせられたんだぞ!手柄のためずっとあちこちの戦場を駆け回って!気弱なふりをしてお前の叔父は悪魔だ!!おかげで、”狂乱の死神”なんてありがたくもない二つ名まで俺についたんだぞ!…お前が待っているなんていうから、正気が乱れてまで…なんだよ?」
なんだ、泣いているのか?
「…ごめんなさいね。私があなたを見つけてしまったばっかりに。たくさんの人を殺させて…余計な傷もこんなにたくさんついて。」
綺麗な深緑の瞳から涙が止まらない。
「あー、くそ!、俺はお前を恨んでたのに…泣くな泣くな!調子が狂う。それこそ捕まっていないだけで人に言えない悪いことなんかたくさんしてきた。…人を殺すのも初めてじゃなかったんだ…。傷だってもともとたくさんあった。お前が気に病むことはない。おかげで、生きるのに困らないだけのものを手に入れたんだ、万々歳だろ。」
なんで俺は慰めてるんだ?恨み言を言う予定だったのに。
「改めまして。シルヴィ・ウィレムスですわ。普段は、シルヴィと呼んでいいわ。これからよろしくね。」
目じりも鼻も赤いまま微笑んだ。
「ああ、アラン・ディアスだ。シルヴィ、約束通り男爵位をふんだくって戻ってきたぞ。お前が望んだんだ。責任をもってそばに置け。代わりにお前のことは毎日、俺の記憶に残してやる。」
「ふふ、嬉しいわ。」
嬉しいのかよ。やっぱり調子が狂う。
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