9 / 48
9.卒業パーティーからの逃亡
しおりを挟む
「急げ!正気に戻ったやつらが来るぞ。」
護衛は、公爵令嬢シルヴィの手を引き、学院の正門に向かって全力で走り出す。
「そんなこと言われても、この靴じゃこれ以上早くは無理よ。」
「あーーーくそ!なんでそんな靴。逃げるのわかっていただろ!」
アランは、シルヴィを軽々と横に抱き上げ先ほどとほとんど変わらない速度で走り出す。
「ふふ、アランは力持ちね。あー、とっても楽だわ。」
横向きに抱えられ、足をぶらぶらさせながら楽しそうに笑う。
「ふん、お前なんか羽より軽い、俺でなくても軽々だ。」
「お、お二人とも早く!早く!!」
侍女が馬車から必死で手招きをしている。アランは軽やかにシルヴィを抱きかかえたまま馬車の中へと滑り込む。
「出してください!!」
揺れる馬車。どんどん学院から離れ、追手も見えないことに安心した侍女のナタリーが、シルヴィに話しかける。
「シルヴィお嬢様、会場はどうでした?」
「ふふ、想定通りすぎて、笑ってしまうわ。でも、今日で終わりだと思うとなんだか、あっけないというか寂しい感じもするわね。」
「はっ!俺はもっと早くにこの国から出てもよかったと思うがな。」
横柄な護衛、くすくす笑う令嬢、あわあわする侍女
「せっかく用意したのだから、もう少し反応を見て楽しみたいところだったけど…。」
「何を言っている。あれが限界だ。あのままいたら、一生王宮から出してもらえないところだったぞ。」
一緒に行くことができなかったナタリーが興味深そうに質問を続ける。
「どこまで答え合わせをしたのですか?」
「うーん、ちょっとよ。でも、あの冊子の続きを見る勇気が誰かにあるかしら。」
「ないだろうな。王太子があれじゃあ。くくっ」
腹を抱え笑い出す護衛。
「自分たちの頭では理解できないことがこれからあるはずよ。冊子を見らざるを得ないわね、きっと。」
恐る恐る見る者たちのことを思い浮かべているのか、令嬢の口元にも笑みが浮かぶ。
「連中は、邸に一度帰ると思っているだろう。が、このまま予定通り隣国でいいな?」
「ええ、勿論よ。でも、アランはともかく、ナタリーはこのまま私と隣国でいいの?」
「アレンはともかくって何ですか!?当然ついていきますよ!!まさか、私だけ置いて行くつもりだったのですか?嫌です、無理です。しがみついてずっとお傍にいますからね。置いてこうとしても。」
仲間外れなんて…。と、口をとがらせて拗ねている。
「ふふ、言ってみただけよ。今日は3人でパーティーね。解放感で、今夜は眠れないもの。」
護衛は、公爵令嬢シルヴィの手を引き、学院の正門に向かって全力で走り出す。
「そんなこと言われても、この靴じゃこれ以上早くは無理よ。」
「あーーーくそ!なんでそんな靴。逃げるのわかっていただろ!」
アランは、シルヴィを軽々と横に抱き上げ先ほどとほとんど変わらない速度で走り出す。
「ふふ、アランは力持ちね。あー、とっても楽だわ。」
横向きに抱えられ、足をぶらぶらさせながら楽しそうに笑う。
「ふん、お前なんか羽より軽い、俺でなくても軽々だ。」
「お、お二人とも早く!早く!!」
侍女が馬車から必死で手招きをしている。アランは軽やかにシルヴィを抱きかかえたまま馬車の中へと滑り込む。
「出してください!!」
揺れる馬車。どんどん学院から離れ、追手も見えないことに安心した侍女のナタリーが、シルヴィに話しかける。
「シルヴィお嬢様、会場はどうでした?」
「ふふ、想定通りすぎて、笑ってしまうわ。でも、今日で終わりだと思うとなんだか、あっけないというか寂しい感じもするわね。」
「はっ!俺はもっと早くにこの国から出てもよかったと思うがな。」
横柄な護衛、くすくす笑う令嬢、あわあわする侍女
「せっかく用意したのだから、もう少し反応を見て楽しみたいところだったけど…。」
「何を言っている。あれが限界だ。あのままいたら、一生王宮から出してもらえないところだったぞ。」
一緒に行くことができなかったナタリーが興味深そうに質問を続ける。
「どこまで答え合わせをしたのですか?」
「うーん、ちょっとよ。でも、あの冊子の続きを見る勇気が誰かにあるかしら。」
「ないだろうな。王太子があれじゃあ。くくっ」
腹を抱え笑い出す護衛。
「自分たちの頭では理解できないことがこれからあるはずよ。冊子を見らざるを得ないわね、きっと。」
恐る恐る見る者たちのことを思い浮かべているのか、令嬢の口元にも笑みが浮かぶ。
「連中は、邸に一度帰ると思っているだろう。が、このまま予定通り隣国でいいな?」
「ええ、勿論よ。でも、アランはともかく、ナタリーはこのまま私と隣国でいいの?」
「アレンはともかくって何ですか!?当然ついていきますよ!!まさか、私だけ置いて行くつもりだったのですか?嫌です、無理です。しがみついてずっとお傍にいますからね。置いてこうとしても。」
仲間外れなんて…。と、口をとがらせて拗ねている。
「ふふ、言ってみただけよ。今日は3人でパーティーね。解放感で、今夜は眠れないもの。」
821
お気に入りに追加
6,905
あなたにおすすめの小説
婚約破棄をしてきた婚約者と私を嵌めた妹、そして助けてくれなかった人達に断罪を。
しげむろ ゆうき
恋愛
卒業パーティーで私は婚約者の第一王太子殿下に婚約破棄を言い渡される。
全て妹と、私を追い落としたい貴族に嵌められた所為である。
しかも、王妃も父親も助けてはくれない。
だから、私は……。
兄のお嫁さんに嫌がらせをされるので、全てを暴露しようと思います
きんもくせい
恋愛
リルベール侯爵家に嫁いできた子爵令嬢、ナタリーは、最初は純朴そうな少女だった。積極的に雑事をこなし、兄と仲睦まじく話す彼女は、徐々に家族に受け入れられ、気に入られていく。しかし、主人公のソフィアに対しては冷たく、嫌がらせばかりをしてくる。初めは些細なものだったが、それらのいじめは日々悪化していき、痺れを切らしたソフィアは、両家の食事会で……
10/1追記
※本作品が中途半端な状態で完結表記になっているのは、本編自体が完結しているためです。
ありがたいことに、ソフィアのその後を見たいと言うお声をいただいたので、番外編という形で作品完結後も連載を続けさせて頂いております。紛らわしいことになってしまい申し訳ございません。
また、日々の感想や応援などの反応をくださったり、この作品に目を通してくれる皆様方、本当にありがとうございます。これからも作品を宜しくお願い致します。
きんもくせい
11/9追記
何一つ完結しておらず中途半端だとのご指摘を頂きましたので、連載表記に戻させていただきます。
紛らわしいことをしてしまい申し訳ありませんでした。
今後も自分のペースではありますが更新を続けていきますので、どうぞ宜しくお願い致します。
きんもくせい
私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜
みおな
恋愛
大好きだった人。
一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。
なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。
もう誰も信じられない。
婚約破棄されまして(笑)
竹本 芳生
恋愛
1・2・3巻店頭に無くても書店取り寄せ可能です!
(∩´∀`∩)
コミカライズ1巻も買って下さると嬉しいです!
(∩´∀`∩)
イラストレーターさん、漫画家さん、担当さん、ありがとうございます!
ご令嬢が婚約破棄される話。
そして破棄されてからの話。
ふんわり設定で見切り発車!書き始めて数行でキャラが勝手に動き出して止まらない。作者と言う名の字書きが書く、どこに向かってるんだ?とキャラに問えば愛の物語と言われ恋愛カテゴリーに居続ける。そんなお話。
飯テロとカワイコちゃん達だらけでたまに恋愛モードが降ってくる。
そんなワチャワチャしたお話し。な筈!
妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
星名柚花
恋愛
魔法が使えない伯爵令嬢セレスティアには美しい双子の妹・イノーラがいる。
国一番の魔力を持つイノーラは我儘な暴君で、セレスティアから婚約者まで奪った。
「もう無理、もう耐えられない!!」
イノーラの結婚式に無理やり参列させられたセレスティアは逃亡を決意。
「セラ」という偽名を使い、遠く離れたロドリー王国で侍女として働き始めた。
そこでセラには唯一無二のとんでもない魔法が使えることが判明する。
猫になる魔法をかけられた女性不信のユリウス。
表情筋が死んでいるユリウスの弟ノエル。
溺愛してくる魔法使いのリュオン。
彼らと共に暮らしながら、幸せに満ちたセラの新しい日々が始まる――
※他サイトにも投稿しています。
0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。
アズやっこ
恋愛
❈ 追記 長編に変更します。
16歳の時、私は第一王子と婚姻した。
いとこの第一王子の事は好き。でもこの好きはお兄様を思う好きと同じ。だから第二王子の事も好き。
私の好きは家族愛として。
第一王子と婚約し婚姻し家族愛とはいえ愛はある。だから何とかなる、そう思った。
でも人の心は何とかならなかった。
この国はもう終わる…
兄弟の対立、公爵の裏切り、まるでボタンの掛け違い。
だから歪み取り返しのつかない事になった。
そして私は暗殺され…
次に目が覚めた時0歳児に戻っていた。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。こういう設定だとご了承頂けると幸いです。
マイティガード -赤毛の令嬢の絶対の盾-
唄うたい
ミステリー
「アネリお嬢様。
私はお嬢様をお護りするために
生まれてきました」
従者+護衛+保護者
+絶対の盾(ガード)
+ + + + + + + + + + + + +
これは、主人である小さな「お嬢様」と、彼女を何者からも護る化け物じみた「従者」のお話です。
※他サイトでも公開しています。
※2012年の作品に加筆しています。
愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。
梅雨の人
恋愛
私にはイザックという愛しの婚約者様がいる。
ある日イザックは、隣国の王女が私たちの学園へ通う間のお世話係を任されることになった。
え?イザックの婚約者って私でした。よね…?
二人の仲睦まじい様子を見聞きするたびに、私の心は折れてしまいました。
ええ、バッキバキに。
もういいですよね。あとは好きにさせていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる