14 / 45
じゃがいも?こうしてこうやってこうしてやる!3
しおりを挟む
***
わたしは目の前のジャガイモの山に目を輝かせた。髪を後ろで一つにまとめ、腕まくりをすると興奮して鼻息が荒くなる。
毒でももられては堪らないと、みんなに見張られながらの調理となった。カウルを始め警備隊のみんなも物珍しそうに覗いている。
食材を見せて貰うと、小麦や狩りで獲った獣なども備蓄されている。野菜や肉などは今までの生活と同じものだった。ショウガやソバの実、ミルクまである。ジャガイモ以外は量が少ない。希少な食材は城中に行き渡っていなそうだ。
(よし、これなら作れる!)
知らない食材もあるみたいだが、調理器具や調味料、火加減も初めてで手探りだ。失敗しないため、無難な食材で作ることにした。
キョロキョロとみまわすと廃棄のゴミ箱に鶏肉の骨が大量に捨ててあった。
「あの、これ捨てる奴ですよね」
「見りゃわかるだろ」
「貰いますね!」
「あぁ?ゴミをどうするってんだ?!」
鳥の骨を拾うと、沸かしたお湯で一度ざっと流してから、沸かしておいた大鍋に放り込む。
ついでにタマネギの皮や野菜の根など、捨てる部分を手当たり次第に放りこんだ。これはスープの下ごしらえ。棄てる食材にも栄養もダシもたっぷりあるんだから、活用しなくっちゃね。
「俺達に残飯を食べさせるつもりか!」
料理長を名乗る男が怒った。オレンジの髪をそり上げており形がパイナップルのようだ。彼はプーリーと言う名前らしい。
「まぁ見ててくださいよ」
大量にふかしておいたジャガイモを蒸し器からとりだすと、大きなボウルの中ですり潰す。
300人ほどが暮らしているらしい。大人数だから大変だ。
さすがに一人で全員分は作れないので、みなさんに手伝ってもらうことになった。
「こんな感じで、滑らかにすり潰したら塩を少し、それから小麦粉を混ぜて捏ねてください」
少しずつ小麦粉を混ぜながらやり方を見せる。ほんとうは重曹とかあると茹でた時にのびにくくなっていいんだけど。
「ふん、なんで俺がワガママ姫の言うことを聞かないといけないんだ」
彼らが手伝うことになったのはカウルが頼んでくれたからだ。文句を言いながらも手伝ってくれる。
「スミマセン、お願いします」
控えめにお願いすると、見張っていたカウルと目が合った。瞬きをするとカウルはふっと表情を和らげた。
かたぶつそうな顔が優しい雰囲気になる。ちょっとどきっとして、わたしはまた瞬きをした。
「…これは何をつくってるの?」
若い女の子が話しかけてくれる。
そう言えばいつも一人で作っていたから、過程を誰かに見られるのは初めてだ。ニヤニヤ動画の「作ってみた」で録画した過程を動画で流した事はあったが、リアルタイムっていうのはなかった。
「まだ内緒。絶対美味しいの作るから、楽しみにしててね」
嬉しくなってふふふと笑うと女の子は目を丸くして慌てて顔をそらした。
捏ねたジャガイモを耳たぶ程の堅さに調節すると、丸めて濡れた布をかけた。
生地を休ませる間に、スープの仕上げとジャガイモを茹でるためのお湯を沸かす。
スープが充分にダシを取れていることを確認すると、ザルでこしながら違う鍋に移した。塩とショウガを入れて味を調節する。
「うん。美味しい」
野菜のダシが優しく喉を通る。薄味のパイタンスープのような、しつこすぎないがしっかりとした風味が舌を喜ばせた。ショウカが鳥の臭みを消してくれ、後味も爽やかだ。上出来だろう。
プーリーにも試食をして貰うと、何も言ってくれなかったが目を見開いたのを見逃さなかった。わたしはその反応にテンションがあがる。
「俺にも」
後ろカウルが興味ありげに顔を出してきた。一口飲んでもらうと、「うまい…」とつぶやき、驚いた顔でわたしを見た。
味付けはこれから作る麺に絡むように、少しだけ濃いめにした。
ーーーそう。わたしが作ろうとしているのはモチモチのジャガイモ麺だ。
ホクホクも最高だが、ジャガイモのすばらしさは粉にも麺にも餅にもなることである。
「ふふふふふ、見てなさい。城の皆さんに最高の食事をとどけるわ!」
スープをおたまでかき混ぜながら笑っていると、カウルに「笑い方怪しすぎて魔女みたいだぞ」と突っ込まれた。
わたしは目の前のジャガイモの山に目を輝かせた。髪を後ろで一つにまとめ、腕まくりをすると興奮して鼻息が荒くなる。
毒でももられては堪らないと、みんなに見張られながらの調理となった。カウルを始め警備隊のみんなも物珍しそうに覗いている。
食材を見せて貰うと、小麦や狩りで獲った獣なども備蓄されている。野菜や肉などは今までの生活と同じものだった。ショウガやソバの実、ミルクまである。ジャガイモ以外は量が少ない。希少な食材は城中に行き渡っていなそうだ。
(よし、これなら作れる!)
知らない食材もあるみたいだが、調理器具や調味料、火加減も初めてで手探りだ。失敗しないため、無難な食材で作ることにした。
キョロキョロとみまわすと廃棄のゴミ箱に鶏肉の骨が大量に捨ててあった。
「あの、これ捨てる奴ですよね」
「見りゃわかるだろ」
「貰いますね!」
「あぁ?ゴミをどうするってんだ?!」
鳥の骨を拾うと、沸かしたお湯で一度ざっと流してから、沸かしておいた大鍋に放り込む。
ついでにタマネギの皮や野菜の根など、捨てる部分を手当たり次第に放りこんだ。これはスープの下ごしらえ。棄てる食材にも栄養もダシもたっぷりあるんだから、活用しなくっちゃね。
「俺達に残飯を食べさせるつもりか!」
料理長を名乗る男が怒った。オレンジの髪をそり上げており形がパイナップルのようだ。彼はプーリーと言う名前らしい。
「まぁ見ててくださいよ」
大量にふかしておいたジャガイモを蒸し器からとりだすと、大きなボウルの中ですり潰す。
300人ほどが暮らしているらしい。大人数だから大変だ。
さすがに一人で全員分は作れないので、みなさんに手伝ってもらうことになった。
「こんな感じで、滑らかにすり潰したら塩を少し、それから小麦粉を混ぜて捏ねてください」
少しずつ小麦粉を混ぜながらやり方を見せる。ほんとうは重曹とかあると茹でた時にのびにくくなっていいんだけど。
「ふん、なんで俺がワガママ姫の言うことを聞かないといけないんだ」
彼らが手伝うことになったのはカウルが頼んでくれたからだ。文句を言いながらも手伝ってくれる。
「スミマセン、お願いします」
控えめにお願いすると、見張っていたカウルと目が合った。瞬きをするとカウルはふっと表情を和らげた。
かたぶつそうな顔が優しい雰囲気になる。ちょっとどきっとして、わたしはまた瞬きをした。
「…これは何をつくってるの?」
若い女の子が話しかけてくれる。
そう言えばいつも一人で作っていたから、過程を誰かに見られるのは初めてだ。ニヤニヤ動画の「作ってみた」で録画した過程を動画で流した事はあったが、リアルタイムっていうのはなかった。
「まだ内緒。絶対美味しいの作るから、楽しみにしててね」
嬉しくなってふふふと笑うと女の子は目を丸くして慌てて顔をそらした。
捏ねたジャガイモを耳たぶ程の堅さに調節すると、丸めて濡れた布をかけた。
生地を休ませる間に、スープの仕上げとジャガイモを茹でるためのお湯を沸かす。
スープが充分にダシを取れていることを確認すると、ザルでこしながら違う鍋に移した。塩とショウガを入れて味を調節する。
「うん。美味しい」
野菜のダシが優しく喉を通る。薄味のパイタンスープのような、しつこすぎないがしっかりとした風味が舌を喜ばせた。ショウカが鳥の臭みを消してくれ、後味も爽やかだ。上出来だろう。
プーリーにも試食をして貰うと、何も言ってくれなかったが目を見開いたのを見逃さなかった。わたしはその反応にテンションがあがる。
「俺にも」
後ろカウルが興味ありげに顔を出してきた。一口飲んでもらうと、「うまい…」とつぶやき、驚いた顔でわたしを見た。
味付けはこれから作る麺に絡むように、少しだけ濃いめにした。
ーーーそう。わたしが作ろうとしているのはモチモチのジャガイモ麺だ。
ホクホクも最高だが、ジャガイモのすばらしさは粉にも麺にも餅にもなることである。
「ふふふふふ、見てなさい。城の皆さんに最高の食事をとどけるわ!」
スープをおたまでかき混ぜながら笑っていると、カウルに「笑い方怪しすぎて魔女みたいだぞ」と突っ込まれた。
1
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説
寝る間が極楽、だが寝れない
Hk
恋愛
【第14回恋愛小説大賞にて奨励賞を頂きました】
修道女のステファニーは国王の庶子だが、幼い頃から修道院で暮らしていた。ある日還俗してオーウェン・バートン伯爵の元へ降嫁することを命じられる。
一方、オーウェンは自身が携わった鉱山採掘における崩落事故のトラウマで、不眠と閉所恐怖症に悩まされていた。強制的な結婚だったので、3年で離縁することをステファニーに約束するオーウェン。
しかし降嫁してきたステファニーはなんだか変わっていて、一緒に過ごすうちにトラウマが薄れだんだんステファニーのことが気になって仕方なくなってきて…
※本編完結。たまに番外編を更新しています
※他サイトにも投稿しています
※主人公の仕事については一部ふわふわ設定です
※表紙イラストはあまもり様(@amamori_stst)に描いて頂きました
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
俺がマヨネーズ男爵だとぅ!?~異世界でおっさん領主は奴隷ちゃんと結婚したい
武蔵野純平
ファンタジー
美少女性奴隷と幸せに暮らすため、おっさんは異世界で成り上がる!
平凡なおっさんサラリーマンの峰山真夜は、ある日、自室のドアが異世界につながっている事を知る。
異世界と日本を行き来し、異世界では商売を、日本ではサラリーマンの二重生活を送る。
日本で買ったアイテムを異世界で高額転売し金持ちになり、奴隷商人のススメに従って美少女性奴隷サラを購入する。
愛する奴隷サラと幸せに暮らすため、おっさんサラリーマン・ミネヤマは異世界で貴族を目指す。
日本ではかなえられなかった立身出世――成り上がりに邁進する!
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる