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やっぱり異世界転生ってやつ?しかもめちゃくちゃ美人じゃないですか3
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手当が終わると食堂に案内され、食事をだしてくれた。ふかしたジャガイモだ。顔にかかるほど立ちのぼる湯気に、祭りで食べたジャガバターを思い出す。
皮付きのジャガイモはほくほくとし、柔らかい舌触りと微かな甘み、そしてバターの塩っ気が染みて、家で食べるより何倍も美味しく感じた。
出された物は味付けも何もない、質素なものだった。
中くらいのものがふたつほど。
普段のわたしであったら二つも食べないだろう。しかし極限まで飢餓を感じていたわたしはむさぼりついた。
熱々の芋が口の中でとろける。すこしでも栄養を取ろうと、皮も食べた。
いつもなら直ぐに水分が欲しくなるのに、今日はそれどころではなく喉に流し込んだ。
なんだか懐かしい味だ。のり塩やマヨバター、塩辛もなかなか美味しいよね。たこ焼き器で蒸して、アヒージョのように一口ずつ味が違ったら楽しいし写真映えしそうだ。ああ、生きているうちにインスタグリムにアップできてたら、たくさん評価もらえたかな。
食堂の料理人や給仕係らしき人たちは、何か言いたそうに顔をしかめ、必死に食べるわたしをじっと見つめていた。
「ああ、美味しかった。ごちそうさまでした」
パンと両手を併せて頭を下げる。凝った味付けばかりではなく、たまには素材の味をそのまま楽しむのもいい。
食べおわったお皿を持ちいそいそと立ち上がると、周囲の人たちがあり得ない、といった視線を向けてきた。
「お食事ありがとうございました。お皿はどこで洗うんですか?」
声をかけてみるがみんな困惑していて答えてくれない。ヒソヒソと耳打ちをし、一定の距離を取って近寄っても来なかった。
見かねたカウルが「こっちだ」と厨房へ案内してくれる。
厨房木の根を細く裂いたような面白いスポンジで洗う。白くてゴボウのささがきみたいだ。洗剤はかわいらしい壺にはいっていて、木のスプーンで掬って使った。『掛けすぎ注意』と書いてあったが、ティースプーン一杯でも多過ぎたようだ。泡風呂のように、シンクよから溢れるほど、もこもこと泡だってしまった。
泡がもったいなかったのとついでだったので、他の食器や調理器具も洗ってしまうことにする。
さすが城。大人数が暮らしているらしく、大量の皿があった。うつわや平皿すべてを併せると600枚くらいあったんじゃないだろうか。塗ってくれた薬が水をはじく優れものだったお陰で、傷口も多少ヒリヒリする程度だったため頑張れた。
しかし皿洗いも結構疲れる。腕が重たかった。
「ゆづかは皿洗いが好きなのか?」
厨房からの帰りがけ、わたしは本名を呼ばれたことに目を丸くした。
「いえ、特に好きとか嫌いとはなくて、泡だらけになったからついでに洗っただけだけど。それよりも名前…」
「なんだ。お前はゆづかという名前なんだろう?それともまた俺達を騙しているのか?」
「いえいえいえ!何も騙してないです!信じてくれたんだなって驚いただけで」
「まだ信用したわけじゃない。こんな皿洗いくらいで信用を取り戻せると思うなよ」
「も、もちろん」
ギロッと睨まれ、わたしは胸の前で小さなガッツポーズを見せた。
なんでわたしがリアの尻ぬぐいをしているのかわからないが、今はとにかく頑張るしかない。頑張らないと、命は危ういは、気軽に話せる仲間はいないわで、気が狂ってしまう。
今まではSNSがあったからそれでもよかったが、ここにはそういった通信設備はなさそうだし。
「本格的な仕事は明日からだ」
「は、はいっ」
こうしてわたしは、次の日から城の仕事を請け負うことになった。
手当が終わると食堂に案内され、食事をだしてくれた。ふかしたジャガイモだ。顔にかかるほど立ちのぼる湯気に、祭りで食べたジャガバターを思い出す。
皮付きのジャガイモはほくほくとし、柔らかい舌触りと微かな甘み、そしてバターの塩っ気が染みて、家で食べるより何倍も美味しく感じた。
出された物は味付けも何もない、質素なものだった。
中くらいのものがふたつほど。
普段のわたしであったら二つも食べないだろう。しかし極限まで飢餓を感じていたわたしはむさぼりついた。
熱々の芋が口の中でとろける。すこしでも栄養を取ろうと、皮も食べた。
いつもなら直ぐに水分が欲しくなるのに、今日はそれどころではなく喉に流し込んだ。
なんだか懐かしい味だ。のり塩やマヨバター、塩辛もなかなか美味しいよね。たこ焼き器で蒸して、アヒージョのように一口ずつ味が違ったら楽しいし写真映えしそうだ。ああ、生きているうちにインスタグリムにアップできてたら、たくさん評価もらえたかな。
食堂の料理人や給仕係らしき人たちは、何か言いたそうに顔をしかめ、必死に食べるわたしをじっと見つめていた。
「ああ、美味しかった。ごちそうさまでした」
パンと両手を併せて頭を下げる。凝った味付けばかりではなく、たまには素材の味をそのまま楽しむのもいい。
食べおわったお皿を持ちいそいそと立ち上がると、周囲の人たちがあり得ない、といった視線を向けてきた。
「お食事ありがとうございました。お皿はどこで洗うんですか?」
声をかけてみるがみんな困惑していて答えてくれない。ヒソヒソと耳打ちをし、一定の距離を取って近寄っても来なかった。
見かねたカウルが「こっちだ」と厨房へ案内してくれる。
厨房木の根を細く裂いたような面白いスポンジで洗う。白くてゴボウのささがきみたいだ。洗剤はかわいらしい壺にはいっていて、木のスプーンで掬って使った。『掛けすぎ注意』と書いてあったが、ティースプーン一杯でも多過ぎたようだ。泡風呂のように、シンクよから溢れるほど、もこもこと泡だってしまった。
泡がもったいなかったのとついでだったので、他の食器や調理器具も洗ってしまうことにする。
さすが城。大人数が暮らしているらしく、大量の皿があった。うつわや平皿すべてを併せると600枚くらいあったんじゃないだろうか。塗ってくれた薬が水をはじく優れものだったお陰で、傷口も多少ヒリヒリする程度だったため頑張れた。
しかし皿洗いも結構疲れる。腕が重たかった。
「ゆづかは皿洗いが好きなのか?」
厨房からの帰りがけ、わたしは本名を呼ばれたことに目を丸くした。
「いえ、特に好きとか嫌いとはなくて、泡だらけになったからついでに洗っただけだけど。それよりも名前…」
「なんだ。お前はゆづかという名前なんだろう?それともまた俺達を騙しているのか?」
「いえいえいえ!何も騙してないです!信じてくれたんだなって驚いただけで」
「まだ信用したわけじゃない。こんな皿洗いくらいで信用を取り戻せると思うなよ」
「も、もちろん」
ギロッと睨まれ、わたしは胸の前で小さなガッツポーズを見せた。
なんでわたしがリアの尻ぬぐいをしているのかわからないが、今はとにかく頑張るしかない。頑張らないと、命は危ういは、気軽に話せる仲間はいないわで、気が狂ってしまう。
今まではSNSがあったからそれでもよかったが、ここにはそういった通信設備はなさそうだし。
「本格的な仕事は明日からだ」
「は、はいっ」
こうしてわたしは、次の日から城の仕事を請け負うことになった。
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