キミと2回目の恋をしよう

なの

文字の大きさ
上 下
19 / 23

18話

しおりを挟む
「先輩、迎えにきました」
俺はなるべく明るい声で病室に入った。

「ありがとう相澤」
先輩も普通通りに接してくれた。

その日、帰ってきた俺たちは普通通りに接していたが、なんだがぎこちなくて……少し息が苦しかった。

「先輩、明日から会社ですが大丈夫ですか?」
「あぁ……大丈夫。何か持っていくものあるか?」
そういえば社員証はあるだろうか?と思い出した。

「先輩、社員証ありますか?」
先輩はいつも持っていた鞄を開けてこれか?と掲げて見せた。

「それです。あとは定期もありますか?」
俺たちはぎこちないながらも同居生活をスタートさせていたが、お互いに先輩の記憶や俺たちの関係については何も触れなかった。

翌日、2人で会社に着くと先輩は色んな人から声をかけられた。先輩は少しというか、かなり戸惑いながらも応えている姿を見ていたら

「よぉ!あいつ見た目は元気そうだな」
俺の肩を叩いて海野先輩が声をかけてきた。
「おはようございます」
「おぅ……ちょっといいか?」
先輩からは死角になってる場所を指差した。なんだろう?とその場所に向かうと

「あいつ、お前との記憶ないんだろ?お前、大丈夫か?」
海野先輩は唯一知ってる人の1人だ。本当は辛くて苦しくてどうにもならないけど俺はそれを隠して大丈夫です。と答えるしかなかった。

先輩は中途採用の2人と共に研修室に行ってしまった。

◇◇◇◇◇

あれから相澤とは当たり障りのない話しかしていない。付き合っていたなんて聞いても、俺はどうしていいのかわからなかった。嬉しいと思う反面どうしてこうなってしまったのかと自分の運命を恨んだ。記憶があれば、記憶さえ戻れば……そんなことを思っても俺は何も思い出せなかった。

職場に行くとみんなが声をかけてくれた。でも俺にはなんの記憶もないのに……俺は中途採用された佐川さんと松平さんと一緒に研修を受けることになった。

「久しぶりだなって覚えてないよな。この前、電話した海野だ。今日から研修よろしくな」
この人が海野さんなのか……そう思いながら研修室に向かった。

「社内ツールの使用方法を学ぶ研修会」
と研修室には書いてあった。

「今日から研修指導をすることになった海野だよろしく。じゃあ最初はテキストの1ページを開いてくれ」
そこにはこれからする研修内容が書かれていた。

①プログラミングの基礎
②言語機能の勉強
③デバッグ講習
④不具合を発見して正常にプレイできるようにする
⑤バージョン管理
⑥コーディングの練習
⑦プログラミング言語などを使ってソースコードを書く作業
⑧ブラインドタッチができない人にはタイピングの練習

「それぞれできないことはすぐに聞いてくれ、早く実践できるように力を各自つけるように。では初めはプログラミングの基礎からだ」

俺も会社の一員となるべく頑張らないと……早く記憶が戻ることを願いながら。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

火傷の跡と見えない孤独

リコ井
BL
顔に火傷の跡があるユナは人目を避けて、山奥でひとり暮らしていた。ある日、崖下で遭難者のヤナギを見つける。ヤナギは怪我のショックで一時的に目が見なくなっていた。ユナはヤナギを献身的に看病するが、二人の距離が近づくにつれ、もしヤナギが目が見えるようになり顔の火傷の跡を忌み嫌われたらどうしようとユナは怯えていた。

林檎を並べても、

ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。 二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。 ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。 彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

記憶喪失のふりをしたら後輩が恋人を名乗り出た

キトー
BL
【BLです】 「俺と秋さんは恋人同士です!」「そうなの!?」  無気力でめんどくさがり屋な大学生、露田秋は交通事故に遭い一時的に記憶喪失になったがすぐに記憶を取り戻す。  そんな最中、大学の後輩である天杉夏から見舞いに来ると連絡があり、秋はほんの悪戯心で夏に記憶喪失のふりを続けたら、突然夏が手を握り「俺と秋さんは恋人同士です」と言ってきた。  もちろんそんな事実は無く、何の冗談だと啞然としている間にあれよあれよと話が進められてしまう。  記憶喪失が嘘だと明かすタイミングを逃してしまった秋は、流れ流され夏と同棲まで始めてしまうが案外夏との恋人生活は居心地が良い。  一方では、夏も秋を騙している罪悪感を抱えて悩むものの、一度手に入れた大切な人を手放す気はなくてあの手この手で秋を甘やかす。  あまり深く考えずにまぁ良いかと騙され続ける受けと、騙している事に罪悪感を持ちながらも必死に受けを繋ぎ止めようとする攻めのコメディ寄りの話です。 【主人公にだけ甘い後輩✕無気力な流され大学生】  反応いただけるととても喜びます!誤字報告もありがたいです。  ノベルアップ+、小説家になろうにも掲載中。

僕は君になりたかった

15
BL
僕はあの人が好きな君に、なりたかった。 一応完結済み。 根暗な子がもだもだしてるだけです。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

処理中です...