77 / 101
隠しカメラ
しおりを挟む
「お待たせいたしました。皆様、プロジェクターをご覧ください」
そう角谷さんに言われて画面を見ると、映像が流れてきた。
それは秘書課の部屋からだ。右下には日付と時間が表示されていた。今から2ヶ月前の映像だ。
「まさか室長があの桜宮さんのことが好きだなんて知りませんでしたよ」
「大学の同期だったんだ。今でも同期会とかで交流があってね。この前、同期会でたまたま会って川上さんの所のグループ会社の副社長になるって聞いて思わず秘書は?って聞いたらこれから選ぶんだって、しかも経験がある男性の方がいいかもって言ってたんだよ。女性だと同性でやりやすいけど、色々と面倒な事もあるからって…しかも彼女、最近離婚したと聞いたからね…これは俺の最後のチャンスじゃないかと思ったんだよ」
「室長はここを辞めてもいいと思ってるんですね。副社長と秘書なんて関係深まるし、恋愛に発展するといいですね。じゃあ私も…ちゃんと浅井部長の秘書になれるようにしてくれますよね?そうじゃないとパパに推薦してあげないですよ」
「わかってるよ。お互いにwin-winの関係だろ?実は俺にいい考えがあるんだ。小沢は浅井部長の推薦だって聞いただろ?でも小沢が本当は仕事ができない人間だと知ったら、いくら推薦でも上層部も黙ってないんじゃないかって思ってる。その為に小沢が仕事ができない人間だって仕立て上げないとな。川上さんも常務の秘書で忙しいと思うがよろしく頼むよ」
「えー他に方法ないんですか?たまに鈍臭いけど、真面目な子なのに…」
「確かに真面目に秘書検定合格の為にスクールにも通ってる。隙もないし、角谷さんも気にいってる。おまけに社長や常務の奥様方にも気に入られてるしな。それこそ、浅井部長のパートナーになるかもしれないぞ。何せ男が好きだとカミングアウトしたくらいなんだから、それでもいいのか?」
「えーそれは困る。確かに気に入られてるみたいだけど…私がさりげなく仕事のフォローをしながら、ここぞ!という場面で小沢さんにミスを押し付ければいいですかね?」
「あぁ…タイミングは任せる」
資料には室長と川上さんのやり取りの詳細が書かれていた。いつ、どこで、どんな内容だったのか…まさか、その映像が残っていたとは…わが社は社内の安全の為、防犯カメラがたくさん設置してある。みんなが気づくものから実は気づかないものまで…だからまぁ…オフィスラブ…なんてことをしても警備員さんにはバレバレだ。だから俺と海斗のことも一部の警備員は知っているが、みんな個人情報だと思って気をつけてるから誰にも言うことはないが…
そのあとにも、ちょこちょこと2人は会って近況報告をしていたようだった。
そして決定的な証拠があった。海斗が作成した資料を川上さんがすり替えていた。
そして、その資料を見た室長が海斗に暴言を吐いてる様子が写し出された。
「小沢くん、資料が違うんだけど、これじゃないんだよ、頼んだ資料は…明後日の重役会議にメインで使う資料なんだよ。君に任せた俺が悪かったようだね」
「えっそんなわけ……申し訳ありませんでした。今すぐ用意を…」
「もういいよ。川上さんがちゃんと用意してくれたから、全く資料の1つ満足に用意できないんじゃ来週の秘書検定試験も合格なんかできないんじゃないか?せっかく浅井部長の推薦だかなんだか知らないけど、まだ勤務年数も浅い君には秘書なんて部署は荷が重かったのかもしれないね。今後のことは、考え直した方がいいよ。私から角谷さんや、社長に伝えておいてあげるから。もういいよ。業務に戻りなさい」
海斗は項垂れてるように見える。以前、上田とのことがあってから、余計に資料には慎重になっていたのに、かわいそうに今すぐに抱きしめてやりたい。
そして最後に川上さんの様子が映し出された。別角度の映像だろう口角を上げて笑っているようにも見えた。
「皆様、ご覧いただいたように、室長と川上さんが小沢くんにミスをなすりつけていたようですが、これに関して反論はございますか?室長」
そう社長に問いただされて、室長はわなわなと震え出した。
「角谷さん、川上さんをお連れして来てください」
「承知いたしました」
角谷さんが出ていくと、周りの空気が変わったのがわかる。社長は室長を睨みつけて、隣にいた里中の叔父さんと話していた。
「お連れいたしました」
川上さんは会議室にいるメンバーを見て顔が綻んで来ているのがわかる。この女、絶対に勘違いしてるだろう。
「社長、どのようなお話しでしょうか?」
おいおい顔がどんどん緩んでるぞ。
「川上さんにお聞きしたいことがあってね。浅井部長の…」と社長が話そうとしたのを遮って
「はい。承知しております。浅井新副社長の秘書でしたらこの私にお任せくださいませ。しっかりとお役目、はたさせていただきます。よろしくお願いします」
社長は笑いながら「ん?何か勘違いしてはいないのかね?」と尋ねた。
「勘違い…ですか?」
「そう。私は浅井部長の部下だった小沢さんのことについて聞きたいと思ったんだが…」
「あら私ったら…失礼いたしました」川上さんの顔が一気に青ざめた。
おいおい、こいつは大丈夫か?周りをよく見てみろ。みんな笑ってるぞ。どんな勘違いしてるんだよ。俺はいくら金を積まれたとしても、絶対にこいつを秘書になんてしたくない。
そう角谷さんに言われて画面を見ると、映像が流れてきた。
それは秘書課の部屋からだ。右下には日付と時間が表示されていた。今から2ヶ月前の映像だ。
「まさか室長があの桜宮さんのことが好きだなんて知りませんでしたよ」
「大学の同期だったんだ。今でも同期会とかで交流があってね。この前、同期会でたまたま会って川上さんの所のグループ会社の副社長になるって聞いて思わず秘書は?って聞いたらこれから選ぶんだって、しかも経験がある男性の方がいいかもって言ってたんだよ。女性だと同性でやりやすいけど、色々と面倒な事もあるからって…しかも彼女、最近離婚したと聞いたからね…これは俺の最後のチャンスじゃないかと思ったんだよ」
「室長はここを辞めてもいいと思ってるんですね。副社長と秘書なんて関係深まるし、恋愛に発展するといいですね。じゃあ私も…ちゃんと浅井部長の秘書になれるようにしてくれますよね?そうじゃないとパパに推薦してあげないですよ」
「わかってるよ。お互いにwin-winの関係だろ?実は俺にいい考えがあるんだ。小沢は浅井部長の推薦だって聞いただろ?でも小沢が本当は仕事ができない人間だと知ったら、いくら推薦でも上層部も黙ってないんじゃないかって思ってる。その為に小沢が仕事ができない人間だって仕立て上げないとな。川上さんも常務の秘書で忙しいと思うがよろしく頼むよ」
「えー他に方法ないんですか?たまに鈍臭いけど、真面目な子なのに…」
「確かに真面目に秘書検定合格の為にスクールにも通ってる。隙もないし、角谷さんも気にいってる。おまけに社長や常務の奥様方にも気に入られてるしな。それこそ、浅井部長のパートナーになるかもしれないぞ。何せ男が好きだとカミングアウトしたくらいなんだから、それでもいいのか?」
「えーそれは困る。確かに気に入られてるみたいだけど…私がさりげなく仕事のフォローをしながら、ここぞ!という場面で小沢さんにミスを押し付ければいいですかね?」
「あぁ…タイミングは任せる」
資料には室長と川上さんのやり取りの詳細が書かれていた。いつ、どこで、どんな内容だったのか…まさか、その映像が残っていたとは…わが社は社内の安全の為、防犯カメラがたくさん設置してある。みんなが気づくものから実は気づかないものまで…だからまぁ…オフィスラブ…なんてことをしても警備員さんにはバレバレだ。だから俺と海斗のことも一部の警備員は知っているが、みんな個人情報だと思って気をつけてるから誰にも言うことはないが…
そのあとにも、ちょこちょこと2人は会って近況報告をしていたようだった。
そして決定的な証拠があった。海斗が作成した資料を川上さんがすり替えていた。
そして、その資料を見た室長が海斗に暴言を吐いてる様子が写し出された。
「小沢くん、資料が違うんだけど、これじゃないんだよ、頼んだ資料は…明後日の重役会議にメインで使う資料なんだよ。君に任せた俺が悪かったようだね」
「えっそんなわけ……申し訳ありませんでした。今すぐ用意を…」
「もういいよ。川上さんがちゃんと用意してくれたから、全く資料の1つ満足に用意できないんじゃ来週の秘書検定試験も合格なんかできないんじゃないか?せっかく浅井部長の推薦だかなんだか知らないけど、まだ勤務年数も浅い君には秘書なんて部署は荷が重かったのかもしれないね。今後のことは、考え直した方がいいよ。私から角谷さんや、社長に伝えておいてあげるから。もういいよ。業務に戻りなさい」
海斗は項垂れてるように見える。以前、上田とのことがあってから、余計に資料には慎重になっていたのに、かわいそうに今すぐに抱きしめてやりたい。
そして最後に川上さんの様子が映し出された。別角度の映像だろう口角を上げて笑っているようにも見えた。
「皆様、ご覧いただいたように、室長と川上さんが小沢くんにミスをなすりつけていたようですが、これに関して反論はございますか?室長」
そう社長に問いただされて、室長はわなわなと震え出した。
「角谷さん、川上さんをお連れして来てください」
「承知いたしました」
角谷さんが出ていくと、周りの空気が変わったのがわかる。社長は室長を睨みつけて、隣にいた里中の叔父さんと話していた。
「お連れいたしました」
川上さんは会議室にいるメンバーを見て顔が綻んで来ているのがわかる。この女、絶対に勘違いしてるだろう。
「社長、どのようなお話しでしょうか?」
おいおい顔がどんどん緩んでるぞ。
「川上さんにお聞きしたいことがあってね。浅井部長の…」と社長が話そうとしたのを遮って
「はい。承知しております。浅井新副社長の秘書でしたらこの私にお任せくださいませ。しっかりとお役目、はたさせていただきます。よろしくお願いします」
社長は笑いながら「ん?何か勘違いしてはいないのかね?」と尋ねた。
「勘違い…ですか?」
「そう。私は浅井部長の部下だった小沢さんのことについて聞きたいと思ったんだが…」
「あら私ったら…失礼いたしました」川上さんの顔が一気に青ざめた。
おいおい、こいつは大丈夫か?周りをよく見てみろ。みんな笑ってるぞ。どんな勘違いしてるんだよ。俺はいくら金を積まれたとしても、絶対にこいつを秘書になんてしたくない。
391
お気に入りに追加
1,016
あなたにおすすめの小説
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!
タッター
BL
ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。
自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。
――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。
そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように――
「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」
「無理。邪魔」
「ガーン!」
とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。
「……その子、生きてるっすか?」
「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
×
明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?
桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。
前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。
ほんの少しの間お付き合い下さい。

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。
カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。
異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。
ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。
そして、コスプレと思っていた男性は……。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~
紫鶴
BL
早く退職させられたい!!
俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない!
はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!!
なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。
「ベルちゃん、大好き」
「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」
でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。
ーーー
ムーンライトノベルズでも連載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる