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家族団らん
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透さんの試着になって僕は見たくてソワソワしてたけど、みんなは大して変わらないからと、あまり興味を示さず、あっという間に終わってしまった。そして僕たちはお互いの車でホテルに向かった。
ホテルに着くとお待ちしていました。とお店に案内をされた。
お店に向かっている時「海斗くんは、鰻は好きかな?今日はみんなで食べようと思って」とお義父さんに聞かれて、満面の笑みで「はい。好きです」と答えてしまった。
父さんの大好物だったので、土用の丑の日には近所の鰻屋さんで3人で食べていた。その他にも、お祝いや、特別な日には鰻を食べていたような気がする。だから僕も大好きだった。
でも、父さんが亡くなってからは全く食べなくなった。土用の丑の日に、うなぎの看板やのぼりを見ても父さんのことを思い出すから…でも鰻は好きだから、本当は食べたかった。でも1人では食べる気にはならなくて…なんとなく食べないことが、父さんへの罪滅ぼしと思っていた。だから土用の丑の日に透さんから誘われた時も行けなかった。でもこの前、お義母さんに僕の両親の話をしたことで、少しスッキリしたのもある。だから今日は食べられそうだ。
「鰻は私の好物なんだ」
「お義父さんもですか?」
「うん?」
「僕の父も大好物だったんです」
「そうだったのか。やっぱり鰻は好きな人が多いからな」
「嬉しいです。僕、10数年食べてないので」
「そんなにか?海斗くんも鰻好きだろう?透、海斗くんを鰻屋に連れて行かないのか?」
「いやっ、そう言うわけじゃないけど…」
「お義父さん、違うんです。僕が…」
「海斗、いいんだよ。無理して言わなくても。鰻もやめるか?」
「いえっ…大丈夫です」
「海斗くん、きっと何かあるんだろう?無理して言わなくてもいいし、なんなら鰻は食べずに違うのにしてもいいから」
「いえ。みんなで食べたいです。透さんの家族と」
「海斗…無理して」
「無理じゃないんです。今日はみんなで食べてみたいです。久しぶりの鰻を…きっと父さんも、もういいよって…そう言ってくれる気がします」
「海斗…」
「嬉しいね。じゃあ行こうか、みんなが待ちくたびれてるから」
「みんな?」
通された部屋に入ると「待ってたよー」「遅いよ」「早く食べよう」とたくさんの声が聞こえた。
部屋には、小倉さんと優太さん、そして里中さん、佐伯常務、智子おばさん、それに見たことがないけど、お義母さんと智子さんに似ている女性とその隣に優しそうな優太さんに似ている男性がいた。
「初めましてだよね…」そう言って声をかけてくれたのは優太さんのお父さんの健太さんと、お母さんの優子さんだった。
こんなにも透さんの親戚が集まって食事会なんて何かあるんだろうか?僕がいてもいいのだろうか…そう思ってたら、お義父さんが話始めた。
「今日、みんなに集まってもらったのは、来月行う透の副社長就任パーティーでここにいる海斗くんとパートナーとしてのお披露目会も兼ねている。透がカミングアウトしたことで、相手は誰だと、この会社なのか、そうじゃないのかと噂になってるしな。ちょっと厄介な人物から海斗くんをみんなで守ってほしい。そのお願いの食事会だ。みんなに守ってもらえないとパーティで幸子がプレゼントしたタキシードが着れなくなってしまいそうでな。海斗くんは実行委員のメンバーとしてきっと当日は動き回るために色々と役を頼まれそうなんだよ。せっかくオーダーした揃いのタキシードをみんなに披露したいんだ。しかもその日は海斗くんの26回目の誕生日でもある。みんなでお祝いをたくさんしてやりたいんだ。正直、透の就任より、私は海斗くんのタキシード姿が楽しみなんだ。それなのに幸子はさっき試着した海斗くんの姿を見てしまったがな」
「あら、誠さんも見たかったの?とても似合ってたわ。当日は楽しみね。でも厄介な人物って誰なの?」
「それは、土居室長です」そう答えたのは角谷さんだった。
「室長が?厄介って…透さん」
「海斗は心配しなくていい。総務の安田課長から、この前、話を聞いてな。ちょうど海斗が体調を崩したから何かあると思ってたからな。土居室長が海斗に対して厳しいと教えてくれた。だから角谷さんに頼んで、少し監視していたら、少しおかしいと思うこともあったと言ってたよ。海斗、言ってくれればよかったのに」
「当たりが強いとは思ってたけど、あまり気にしないようにしてました。透さんに迷惑かけちゃいけないと思って言わなかったけど、でも最近は、そんなことも減ってきて、周りも助けてくれることが多いんですよね。不思議ですけど。だから大丈夫です」
「俺に迷惑かけるとか思わなくていいから」
「それにしても当日、どのタイミングで2人を披露するんですか?兄さん」
「最後にしようと思う。雰囲気がざわついたまま終わるのはどうかと思うが、その後、優太達で海斗くんを連れ出して欲しい」
「わかったよ叔父さん。海斗くん楽しみだね」
「でも…せっかくのパーティーなのに…そんなこと…それにあの…片付けとか…僕、実行委員のメンバーなので申し訳ないんですが…いいんでしょうか?」
「いいんですよ海斗くん、当日は私たちが海斗くんを守りますから。片付けも基本はホテルにお任せですし、海斗くんは透さんのパートナーとしていてください。大丈夫ですからね」そう角谷さんに言ってもらって、当日はみんなにお任せしようと思った。
ホテルに着くとお待ちしていました。とお店に案内をされた。
お店に向かっている時「海斗くんは、鰻は好きかな?今日はみんなで食べようと思って」とお義父さんに聞かれて、満面の笑みで「はい。好きです」と答えてしまった。
父さんの大好物だったので、土用の丑の日には近所の鰻屋さんで3人で食べていた。その他にも、お祝いや、特別な日には鰻を食べていたような気がする。だから僕も大好きだった。
でも、父さんが亡くなってからは全く食べなくなった。土用の丑の日に、うなぎの看板やのぼりを見ても父さんのことを思い出すから…でも鰻は好きだから、本当は食べたかった。でも1人では食べる気にはならなくて…なんとなく食べないことが、父さんへの罪滅ぼしと思っていた。だから土用の丑の日に透さんから誘われた時も行けなかった。でもこの前、お義母さんに僕の両親の話をしたことで、少しスッキリしたのもある。だから今日は食べられそうだ。
「鰻は私の好物なんだ」
「お義父さんもですか?」
「うん?」
「僕の父も大好物だったんです」
「そうだったのか。やっぱり鰻は好きな人が多いからな」
「嬉しいです。僕、10数年食べてないので」
「そんなにか?海斗くんも鰻好きだろう?透、海斗くんを鰻屋に連れて行かないのか?」
「いやっ、そう言うわけじゃないけど…」
「お義父さん、違うんです。僕が…」
「海斗、いいんだよ。無理して言わなくても。鰻もやめるか?」
「いえっ…大丈夫です」
「海斗くん、きっと何かあるんだろう?無理して言わなくてもいいし、なんなら鰻は食べずに違うのにしてもいいから」
「いえ。みんなで食べたいです。透さんの家族と」
「海斗…無理して」
「無理じゃないんです。今日はみんなで食べてみたいです。久しぶりの鰻を…きっと父さんも、もういいよって…そう言ってくれる気がします」
「海斗…」
「嬉しいね。じゃあ行こうか、みんなが待ちくたびれてるから」
「みんな?」
通された部屋に入ると「待ってたよー」「遅いよ」「早く食べよう」とたくさんの声が聞こえた。
部屋には、小倉さんと優太さん、そして里中さん、佐伯常務、智子おばさん、それに見たことがないけど、お義母さんと智子さんに似ている女性とその隣に優しそうな優太さんに似ている男性がいた。
「初めましてだよね…」そう言って声をかけてくれたのは優太さんのお父さんの健太さんと、お母さんの優子さんだった。
こんなにも透さんの親戚が集まって食事会なんて何かあるんだろうか?僕がいてもいいのだろうか…そう思ってたら、お義父さんが話始めた。
「今日、みんなに集まってもらったのは、来月行う透の副社長就任パーティーでここにいる海斗くんとパートナーとしてのお披露目会も兼ねている。透がカミングアウトしたことで、相手は誰だと、この会社なのか、そうじゃないのかと噂になってるしな。ちょっと厄介な人物から海斗くんをみんなで守ってほしい。そのお願いの食事会だ。みんなに守ってもらえないとパーティで幸子がプレゼントしたタキシードが着れなくなってしまいそうでな。海斗くんは実行委員のメンバーとしてきっと当日は動き回るために色々と役を頼まれそうなんだよ。せっかくオーダーした揃いのタキシードをみんなに披露したいんだ。しかもその日は海斗くんの26回目の誕生日でもある。みんなでお祝いをたくさんしてやりたいんだ。正直、透の就任より、私は海斗くんのタキシード姿が楽しみなんだ。それなのに幸子はさっき試着した海斗くんの姿を見てしまったがな」
「あら、誠さんも見たかったの?とても似合ってたわ。当日は楽しみね。でも厄介な人物って誰なの?」
「それは、土居室長です」そう答えたのは角谷さんだった。
「室長が?厄介って…透さん」
「海斗は心配しなくていい。総務の安田課長から、この前、話を聞いてな。ちょうど海斗が体調を崩したから何かあると思ってたからな。土居室長が海斗に対して厳しいと教えてくれた。だから角谷さんに頼んで、少し監視していたら、少しおかしいと思うこともあったと言ってたよ。海斗、言ってくれればよかったのに」
「当たりが強いとは思ってたけど、あまり気にしないようにしてました。透さんに迷惑かけちゃいけないと思って言わなかったけど、でも最近は、そんなことも減ってきて、周りも助けてくれることが多いんですよね。不思議ですけど。だから大丈夫です」
「俺に迷惑かけるとか思わなくていいから」
「それにしても当日、どのタイミングで2人を披露するんですか?兄さん」
「最後にしようと思う。雰囲気がざわついたまま終わるのはどうかと思うが、その後、優太達で海斗くんを連れ出して欲しい」
「わかったよ叔父さん。海斗くん楽しみだね」
「でも…せっかくのパーティーなのに…そんなこと…それにあの…片付けとか…僕、実行委員のメンバーなので申し訳ないんですが…いいんでしょうか?」
「いいんですよ海斗くん、当日は私たちが海斗くんを守りますから。片付けも基本はホテルにお任せですし、海斗くんは透さんのパートナーとしていてください。大丈夫ですからね」そう角谷さんに言ってもらって、当日はみんなにお任せしようと思った。
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