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お義母さんからのプレゼント
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あれから毎日があっという間に過ぎていった。
なぜだか分からないけど、室長は僕に構うことなく、嫌味も言われずに過ごせた。なんだか周りが落ち着き過ぎて、逆に居心地がなんとなく良いような、悪いような…
「海斗、また考え事か?」
「透さん、もう時間ですか?」
「そろそろだな。支度はできたか?」
「はい。大丈夫です」
「じゃあ行くか」
今日は、これからタキシードを取りに行く。2週間前に中縫いが終わり林さんが完成したと連絡があったのだ。一応、お義母さんに連絡したら一緒に行くからと昨日、連絡が来た。
お義父さんも、お義母さんも、なぜか角谷さんも来てくれることになっている。その後みんなでホテルリゾティアでご飯を食べる予定だ。打ち合わせで行っただけだから緊張するけど…
「透さんのタキシード姿、見るの楽しみです」
「え?見せないよ」
「なんでですか?」
「当日のお楽しみにしようと思って、だから俺も海斗の姿は見ないよ」
「でも僕、着替える時間ないかもしれません」
「なんで?当日、忙しいの?」
「はい…受付のサブ要員として受付の近くにいることになってて」
「それは、デルでもできるんじゃないか?」
「デルと平井は来賓の方の対応に回るみたいで…」
「わかった。当日、いつ着替えるか後で相談しようか」
「誰に?」
「そう。角谷さんなら対応してくれるだろ。しかも式典が始まればそんなに忙しくないだろうしな」
「わかりました。透さんにお任せします」
「そろそろ着くな」
林さんのお店には、お義父さん、お義母さん、角谷さんが林さんと林さんのパートナーの晃さんが談笑していた。
「遅くなりました」
「あら海斗くん、待ち合わせの時間より15分も早いわよ。私たちが早過ぎただけだから」
「海斗くん久しぶりだね。角谷からも聞いてるよ。一生懸命、頑張ってるって。これからもっと経験を積めば、良い秘書になるって」
「ありがとうございます」
「では、お2人さん、着替えてみましょうか」
「林さん、海斗の姿は当日までの楽しみにとっておこうと思うんです。だから1人ずつで…」
「あら、じゃあ私がみてもいい?他にもあるし」
「なんでお袋が?」
「良いじゃない。私の息子でもあるのよ。海斗くん行こう」
お義母さんに手を引かれ、僕は試着室に連れて行かれた。
晃さんが一緒に入ってくれて、林さんがタキシードを持ってきてくれた。着てみると、今まで着ていたスーツはなんだったんだろうと思うほど着心地が違った。
「オーダーメイドっていいでしょ?」
「はい。こんなにも違うんだって思うくらいです」
「じゃあみていただきましょうか?」
カーテンを開けると、お義母さんが
「海斗くん、素敵ね。かっこいいわよ。透が惚れなおすかもね。当日が楽しみだわ~」と喜んでくれた。このまま、どこかに行きたいと思うほど、着心地が良くて、脱ぐのが嫌だと思った。すると林さんがダークネイビーのスリーピースを持ってきてくれた。
「これは?」
「私から、海斗くんにプレゼント」
「え?」
「タキシードと一緒に作らせていただきました」
「いいんですか?」
「これ着て、ランチに行きましょう。さあ着替えてらっしゃい」
「ありがとうございます」
まさか、スーツまでプレゼントしてくれるなんて思ってなかった。今着ているスーツも透さんが買ってくれたもので、いいスーツだが、やはり1から作ってくれたスーツはとにかく着心地が良かった。
ネクタイはワイン色に小さな犬の刺繍がされていて可愛かった。
「透さん、透さんの番ですよ」
「じゃあ行ってくるかってカイトそれどうした?」
「素敵でしょ?私からのプレゼントなの。似合ってるよね」
「オーダーしてたのか?」
「そう。私から海斗くんに初めてのプレゼント、ネクタイは智子からなの。かわいいでしょ」
「このネクタイ智子おばさんからですか?」
「そう。この前の試食会の後、海斗くんのプレゼント私も買いたいって言ってね。じゃあこのスーツに合うネクタイを選んだのよ。さああと透は行ってらっしゃい。早くしないとランチの時間に遅れるから」
「行ってくるよ」
透さんもどんな感じになるんだろう。当日が本当に楽しみだ。
なぜだか分からないけど、室長は僕に構うことなく、嫌味も言われずに過ごせた。なんだか周りが落ち着き過ぎて、逆に居心地がなんとなく良いような、悪いような…
「海斗、また考え事か?」
「透さん、もう時間ですか?」
「そろそろだな。支度はできたか?」
「はい。大丈夫です」
「じゃあ行くか」
今日は、これからタキシードを取りに行く。2週間前に中縫いが終わり林さんが完成したと連絡があったのだ。一応、お義母さんに連絡したら一緒に行くからと昨日、連絡が来た。
お義父さんも、お義母さんも、なぜか角谷さんも来てくれることになっている。その後みんなでホテルリゾティアでご飯を食べる予定だ。打ち合わせで行っただけだから緊張するけど…
「透さんのタキシード姿、見るの楽しみです」
「え?見せないよ」
「なんでですか?」
「当日のお楽しみにしようと思って、だから俺も海斗の姿は見ないよ」
「でも僕、着替える時間ないかもしれません」
「なんで?当日、忙しいの?」
「はい…受付のサブ要員として受付の近くにいることになってて」
「それは、デルでもできるんじゃないか?」
「デルと平井は来賓の方の対応に回るみたいで…」
「わかった。当日、いつ着替えるか後で相談しようか」
「誰に?」
「そう。角谷さんなら対応してくれるだろ。しかも式典が始まればそんなに忙しくないだろうしな」
「わかりました。透さんにお任せします」
「そろそろ着くな」
林さんのお店には、お義父さん、お義母さん、角谷さんが林さんと林さんのパートナーの晃さんが談笑していた。
「遅くなりました」
「あら海斗くん、待ち合わせの時間より15分も早いわよ。私たちが早過ぎただけだから」
「海斗くん久しぶりだね。角谷からも聞いてるよ。一生懸命、頑張ってるって。これからもっと経験を積めば、良い秘書になるって」
「ありがとうございます」
「では、お2人さん、着替えてみましょうか」
「林さん、海斗の姿は当日までの楽しみにとっておこうと思うんです。だから1人ずつで…」
「あら、じゃあ私がみてもいい?他にもあるし」
「なんでお袋が?」
「良いじゃない。私の息子でもあるのよ。海斗くん行こう」
お義母さんに手を引かれ、僕は試着室に連れて行かれた。
晃さんが一緒に入ってくれて、林さんがタキシードを持ってきてくれた。着てみると、今まで着ていたスーツはなんだったんだろうと思うほど着心地が違った。
「オーダーメイドっていいでしょ?」
「はい。こんなにも違うんだって思うくらいです」
「じゃあみていただきましょうか?」
カーテンを開けると、お義母さんが
「海斗くん、素敵ね。かっこいいわよ。透が惚れなおすかもね。当日が楽しみだわ~」と喜んでくれた。このまま、どこかに行きたいと思うほど、着心地が良くて、脱ぐのが嫌だと思った。すると林さんがダークネイビーのスリーピースを持ってきてくれた。
「これは?」
「私から、海斗くんにプレゼント」
「え?」
「タキシードと一緒に作らせていただきました」
「いいんですか?」
「これ着て、ランチに行きましょう。さあ着替えてらっしゃい」
「ありがとうございます」
まさか、スーツまでプレゼントしてくれるなんて思ってなかった。今着ているスーツも透さんが買ってくれたもので、いいスーツだが、やはり1から作ってくれたスーツはとにかく着心地が良かった。
ネクタイはワイン色に小さな犬の刺繍がされていて可愛かった。
「透さん、透さんの番ですよ」
「じゃあ行ってくるかってカイトそれどうした?」
「素敵でしょ?私からのプレゼントなの。似合ってるよね」
「オーダーしてたのか?」
「そう。私から海斗くんに初めてのプレゼント、ネクタイは智子からなの。かわいいでしょ」
「このネクタイ智子おばさんからですか?」
「そう。この前の試食会の後、海斗くんのプレゼント私も買いたいって言ってね。じゃあこのスーツに合うネクタイを選んだのよ。さああと透は行ってらっしゃい。早くしないとランチの時間に遅れるから」
「行ってくるよ」
透さんもどんな感じになるんだろう。当日が本当に楽しみだ。
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