20 / 101
嫉妬心は複雑です
しおりを挟む
俺の過去を話しても透さんの態度は変わらなかった。むしろ俺にたくさんの愛情をくれているのがわかる。
朝は透さんに起こしてもらい、朝ごはんを作ってもらう。職場では俺が上田さんや他の人と2人きりにならないように目を光らせて、夜は、ほぼ透さんが作ってくれる。どうしても遅い日は俺が作るようになったし、遅くなる日は必ず連絡をくれる。毎日一緒のお風呂入りそのまま寝るときもあれば抱かれて透さんの腕の中で寝るときもある。そしてまた朝が来る…最近はその繰り返しだ。
掃除も洗濯も俺が起きる頃には全部終わっていて透さんはいつ寝ているのか?と最近は疑問だ。自分だって疲れてるはずなのに…
こんなに甘やかされていいの?と聞いたことがある。そしたら「海斗を愛してるから、なんでも俺がやってあげたいんだと…」それにしても俺って…毎日愛されてるなぁ…とついニヤニヤしてしまった。「小沢、なんか気持ち悪い…」同期の平井に声をかけられた。
「いやぁ…悪い。そんな気持ち悪かったか?」
「なに思い出してんだよ。最近、幸せオーラ出してるよな?なんかいいことあったのか?」
「そうかな?」
「そうだよ。部長にも分けてあげたら?いっつも無表情でさ、すぐ怒るし…なんで彼女作らないんだろ?できたら変わると思うのになぁー」
「あぁ…」
「そういえばこの前、受付の佐々木さんが社食から戻る途中の部長に声かけてたって、みんな告ったんじゃないかって噂してたぞ」
「告白…」
「昨日なんてさぁーあの秘書課の美人の川上さんに告られたって話だぞ。頭いいし、美人だし…スタイルいいし、しかも親はあの川上不動産の社長だってさ。羨ましいよな!未来の社長だよ」
「そうなんだ…」
「部長、結構告られてるみたいなのになんでかな?いい人いるのかな?って小沢」
「………」
「どうした?大丈夫か?」
「あ…うん。大丈夫」
部長がモテるのは知っている…でも女の人がダメで…透さんが好きなのは俺だけってわかってるけど…それでも心が痛かった…
「小沢、この書類はなんだ。いったい何してんだ。確認もしないで持ってくる奴がいるか?」
「部長すみませんでしたっ」
「やり直し、こんなの30分もあれば直るだろ。早くやり直せ」
「わかりました…」
「小沢、大丈夫か?さっきから変だぞ?」
「ありがとう平井。なんでもないよ。こんなミスするなんておかしいよな…」
どうにも頭が回らない…考えないようにしてもどうしてもさっき平井から言われた言葉が心に突き刺さる。受付の佐々木さんと秘書課の川上さん。どっちも美人で人気だ。部長と歩いたら絵になりそうだよな…
「小沢、まだ書類できないのか?あれから何時間たってる。早く持ってこい」
「はいっ…」
なんとか書類を完成させて部長の所に持って行った。
「部長…できました」
「遅いな……まぁいいだろ。就業時間とっくに過ぎてるぞ」
「はい…」
「俺はこれから会食だから…みんな気をつけて帰れよ。」
そう言ってオフィスを出て行った。
会食?会食って言った?
そんなこと聞いてない。メールを確認しても透さんからは何も入ってなかった…いつもならメールをくれるのに…なんで???ぼーとしながら会社を出ると見てしまった…あれは透さんと川上さん?肩を並べて歩いている…と思ったら突然、川上さんが透さんに抱きついた…透さんも腰に手を回してその華奢な体を支えていた…そのまま2人は寄り添うようにタクシーに乗ってどこかに行ってしまった…
「ねぇ、あの2人って付き合ってるの?」
「昨日だか川上さん告白したんだよね?OKだったってこと?」
「みんなの前で抱き合うとか…美男美女で絵になるわー」
「本当、羨ましい。私も部長と付き合いたかったなぁー」
「あなたじゃダメでしょ」
「ひどーい」
笑いながら歩いてる人を横目に俺は足早に通りすぎた。
結局2人がどこに行ったのか分からなかった。追いかけることもできずに透さん家に帰ってきてしまった。ご飯を食べる気にもなれず…大きなソファーの上で足を抱えて座っていた。
「ただいまって海斗?どうした?」
「……」
「ごめん。会社で怒っちゃったから怒ってる?ごめんね。仕事だから海斗にだけ特別扱いできなくて本当ごめんね」そう言って抱きしめようとしてくれる手を振り払った。
「海斗?」
「今日は1人で寝ます。おやすみなさい」
透さんの顔を見れなくて俯きながら空いてる部屋に入って鍵を閉めた。
ドンドンドン
「海斗、怒らせちゃったならごめん。何度でも謝るから、特別扱いしてもいいなら明日からそうするから…海斗?ここ開けて?」
「今日は…無理ですっ…ごめんなさい…1人にさせてください」
「海斗っ…なんで?俺のせいか?本当に悪かった。辛い思いさせたな。落ち着いたら…待ってるから。その部屋、何もないだろ?クローゼットの中に布団入ってるよ。たまに優太とか泊まりにきたことがあるから使いなよ」
静まり返った何もない部屋の中で声を殺して泣いた。涙が止まらなかった…なんで本当のこと言ってくれないの?何もないよって言ってくれたら…それだけでいいのに…どうしてもネガティブな考えになってしまう。透さんを信じたかった。でも…あんなの見てしまったら…信じられなくなった。やっぱり女性がいいのかも…俺にだけ抱きしめてくれると思ってたのに…
自分に自信がない…俺には金持ちの親もいない…両親ともいない…仕事もできないし、家事も全部、透さん任せだ。透さんに甘えてやってもらったのがいけないの?好きって言われて図に乗っちゃった?俺には何もない…泣いて泣いて…気づいたら朝日が昇っていた。
ドアの外で音がする。きっと透さんが家事をしてくれてるんだろう。
トントントン
「海斗…大丈夫か?ご飯できてるよ。今日は朝からアポがあるから先に仕事に行くから、気をつけて来いよ。辛いならテレアポでもいいから…」そう言ってなんの音もしなくなった。しばらくすると玄関の鍵が閉まる音がした…出てったんだ…
そっと部屋を出た。ダイニングテーブルにはサンドウィッチが置いてあった。透さんの綺麗な字で
〝スープは冷蔵庫にあります。レンジで温めて。フルーツとヨーグルトも冷蔵庫に入ってるからね。先に行ってきます〟
と書いたメモがあった。一口サンドウィッチを食べると涙がまた溢れた。やっぱり俺は…幸せになれませんか?
朝は透さんに起こしてもらい、朝ごはんを作ってもらう。職場では俺が上田さんや他の人と2人きりにならないように目を光らせて、夜は、ほぼ透さんが作ってくれる。どうしても遅い日は俺が作るようになったし、遅くなる日は必ず連絡をくれる。毎日一緒のお風呂入りそのまま寝るときもあれば抱かれて透さんの腕の中で寝るときもある。そしてまた朝が来る…最近はその繰り返しだ。
掃除も洗濯も俺が起きる頃には全部終わっていて透さんはいつ寝ているのか?と最近は疑問だ。自分だって疲れてるはずなのに…
こんなに甘やかされていいの?と聞いたことがある。そしたら「海斗を愛してるから、なんでも俺がやってあげたいんだと…」それにしても俺って…毎日愛されてるなぁ…とついニヤニヤしてしまった。「小沢、なんか気持ち悪い…」同期の平井に声をかけられた。
「いやぁ…悪い。そんな気持ち悪かったか?」
「なに思い出してんだよ。最近、幸せオーラ出してるよな?なんかいいことあったのか?」
「そうかな?」
「そうだよ。部長にも分けてあげたら?いっつも無表情でさ、すぐ怒るし…なんで彼女作らないんだろ?できたら変わると思うのになぁー」
「あぁ…」
「そういえばこの前、受付の佐々木さんが社食から戻る途中の部長に声かけてたって、みんな告ったんじゃないかって噂してたぞ」
「告白…」
「昨日なんてさぁーあの秘書課の美人の川上さんに告られたって話だぞ。頭いいし、美人だし…スタイルいいし、しかも親はあの川上不動産の社長だってさ。羨ましいよな!未来の社長だよ」
「そうなんだ…」
「部長、結構告られてるみたいなのになんでかな?いい人いるのかな?って小沢」
「………」
「どうした?大丈夫か?」
「あ…うん。大丈夫」
部長がモテるのは知っている…でも女の人がダメで…透さんが好きなのは俺だけってわかってるけど…それでも心が痛かった…
「小沢、この書類はなんだ。いったい何してんだ。確認もしないで持ってくる奴がいるか?」
「部長すみませんでしたっ」
「やり直し、こんなの30分もあれば直るだろ。早くやり直せ」
「わかりました…」
「小沢、大丈夫か?さっきから変だぞ?」
「ありがとう平井。なんでもないよ。こんなミスするなんておかしいよな…」
どうにも頭が回らない…考えないようにしてもどうしてもさっき平井から言われた言葉が心に突き刺さる。受付の佐々木さんと秘書課の川上さん。どっちも美人で人気だ。部長と歩いたら絵になりそうだよな…
「小沢、まだ書類できないのか?あれから何時間たってる。早く持ってこい」
「はいっ…」
なんとか書類を完成させて部長の所に持って行った。
「部長…できました」
「遅いな……まぁいいだろ。就業時間とっくに過ぎてるぞ」
「はい…」
「俺はこれから会食だから…みんな気をつけて帰れよ。」
そう言ってオフィスを出て行った。
会食?会食って言った?
そんなこと聞いてない。メールを確認しても透さんからは何も入ってなかった…いつもならメールをくれるのに…なんで???ぼーとしながら会社を出ると見てしまった…あれは透さんと川上さん?肩を並べて歩いている…と思ったら突然、川上さんが透さんに抱きついた…透さんも腰に手を回してその華奢な体を支えていた…そのまま2人は寄り添うようにタクシーに乗ってどこかに行ってしまった…
「ねぇ、あの2人って付き合ってるの?」
「昨日だか川上さん告白したんだよね?OKだったってこと?」
「みんなの前で抱き合うとか…美男美女で絵になるわー」
「本当、羨ましい。私も部長と付き合いたかったなぁー」
「あなたじゃダメでしょ」
「ひどーい」
笑いながら歩いてる人を横目に俺は足早に通りすぎた。
結局2人がどこに行ったのか分からなかった。追いかけることもできずに透さん家に帰ってきてしまった。ご飯を食べる気にもなれず…大きなソファーの上で足を抱えて座っていた。
「ただいまって海斗?どうした?」
「……」
「ごめん。会社で怒っちゃったから怒ってる?ごめんね。仕事だから海斗にだけ特別扱いできなくて本当ごめんね」そう言って抱きしめようとしてくれる手を振り払った。
「海斗?」
「今日は1人で寝ます。おやすみなさい」
透さんの顔を見れなくて俯きながら空いてる部屋に入って鍵を閉めた。
ドンドンドン
「海斗、怒らせちゃったならごめん。何度でも謝るから、特別扱いしてもいいなら明日からそうするから…海斗?ここ開けて?」
「今日は…無理ですっ…ごめんなさい…1人にさせてください」
「海斗っ…なんで?俺のせいか?本当に悪かった。辛い思いさせたな。落ち着いたら…待ってるから。その部屋、何もないだろ?クローゼットの中に布団入ってるよ。たまに優太とか泊まりにきたことがあるから使いなよ」
静まり返った何もない部屋の中で声を殺して泣いた。涙が止まらなかった…なんで本当のこと言ってくれないの?何もないよって言ってくれたら…それだけでいいのに…どうしてもネガティブな考えになってしまう。透さんを信じたかった。でも…あんなの見てしまったら…信じられなくなった。やっぱり女性がいいのかも…俺にだけ抱きしめてくれると思ってたのに…
自分に自信がない…俺には金持ちの親もいない…両親ともいない…仕事もできないし、家事も全部、透さん任せだ。透さんに甘えてやってもらったのがいけないの?好きって言われて図に乗っちゃった?俺には何もない…泣いて泣いて…気づいたら朝日が昇っていた。
ドアの外で音がする。きっと透さんが家事をしてくれてるんだろう。
トントントン
「海斗…大丈夫か?ご飯できてるよ。今日は朝からアポがあるから先に仕事に行くから、気をつけて来いよ。辛いならテレアポでもいいから…」そう言ってなんの音もしなくなった。しばらくすると玄関の鍵が閉まる音がした…出てったんだ…
そっと部屋を出た。ダイニングテーブルにはサンドウィッチが置いてあった。透さんの綺麗な字で
〝スープは冷蔵庫にあります。レンジで温めて。フルーツとヨーグルトも冷蔵庫に入ってるからね。先に行ってきます〟
と書いたメモがあった。一口サンドウィッチを食べると涙がまた溢れた。やっぱり俺は…幸せになれませんか?
188
お気に入りに追加
826
あなたにおすすめの小説
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
ガラス玉のように
イケのタコ
BL
クール美形×平凡
成績共に運動神経も平凡と、そつなくのびのびと暮らしていたスズ。そんな中突然、親の転勤が決まる。
親と一緒に外国に行くのか、それとも知人宅にで生活するのかを、どっちかを選択する事になったスズ。
とりあえず、お試しで一週間だけ知人宅にお邪魔する事になった。
圧倒されるような日本家屋に驚きつつ、なぜか知人宅には学校一番イケメンとらいわれる有名な三船がいた。
スズは三船とは会話をしたことがなく、気まずいながらも挨拶をする。しかし三船の方は傲慢な態度を取り印象は最悪。
ここで暮らして行けるのか。悩んでいると母の友人であり知人の、義宗に「三船は不器用だから長めに見てやって」と気長に判断してほしいと言われる。
三船に嫌われていては判断するもないと思うがとスズは思う。それでも優しい義宗が言った通りに気長がに気楽にしようと心がける。
しかし、スズが待ち受けているのは日常ではなく波乱。
三船との衝突。そして、この家の秘密と真実に立ち向かうことになるスズだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる