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迷子の子猫
しおりを挟むあーあ、なんで飛び出してきたゃったんだろう…でももう帰れないよな。悠人の所…って俺…電源切ってそのままスマホ置いてきたよ…財布には2,000円と小銭が入ってた。駅でも探すか…最悪、お金はどこかで下ろそうと考えて歩いてたら
「あれ?さっきの…」と声をかけられた。
「…あっ…」
「さっきぶりだね?どうした?泣いてるの?迷子になっちゃった?」
さっきの洋服を買った店員さんがいた。
「すみませんっ…グスッ…大丈夫ですっ…あのー駅、どこにありますか?」
「透と喧嘩でもしちゃった?とりあえずおいで」
連れてきてもらったのはさっきの店だった。
俺、随分と走ってきちゃったんだ…
「とりあえず座って」
さっきも座っていたソファーに座ってると「はい」とお茶と温かいタオルを出してくれた。
「すみませんっ」
「いいのよ。気にしないで、目に当ててね。腫れちゃうと困るから…あ!名前言ってなかったわね。浅井 優太です」
「浅井…」
「透とはいとこなの。透の家のことは聞いた?」
「はい。お父さんが社長だって…」
「それで…嫌になった?」
「いえっ…それは関係なくて…」
その時、ドアが開いて「あれ?お客さん?」背の高い男性が入ってきた「あ…おかえり。この子、透の知り合いなの」
「透の?」
「初めまして、小沢 海斗です」
今度は…軽く会釈をした。
「初めまして、浅井の同級生の小倉 蓮です」
「同級生?」
「あぁ…浅井の事でなんかあったか?」
「さっき一緒に買い物にきたんだけど、透となんかあったみたいで…泣きながら歩いてたから連れて帰ってきたの」
「泣いてって…大丈夫なのか?何か嫌な事されたか?一大事ならアイツに連絡…いや…叔父さんにでも頼むか?」
「蓮…落ち着いてよ…まだ何も聞いてないんだから…」
「ごめんっ…」
「あのー大丈夫です。俺が情けなくて…その場から逃げてきたんです。俺…社会人として失格です。こんなんだから捨てられるんです。部長にも迷惑かけられないんで…もう帰ります。失礼しました」帰ろうと思って腰をあげたら両脇から「待て待て」と掴まれて座らされた。
「捨てられたって…何か嫌な事、辛い事があったんじゃない?話せそうなら聞くよ。」
「いや…」
突然、軽快な音楽が鳴って、小倉さんは電話に出て、そのまま奥の部屋に行ってしまった。
優太さんが「海斗くんっていくつなの?」と突然、聞かれた「25歳です」と答えると
「若いねー僕たちと7個も下なんだ…」
「優太さんも若いですよ」と答えると「さすが…営業マンだね。まあ恋してるから…」と…
「付き合ってる人いらっしゃるんですね」
「うん。蓮が恋人であり、ここの店も蓮と始めたの」
「そうなんですね。いいですね仲…良さそうで…俺、同棲してた彼氏に浮気されて、飲んだくれてたら、ぶち……透さんの家にいて…なのに…俺…」
「人生…色々あるよ。でも透は信用してあげてよ。いいやつだよ」
《side 透》
「海斗っ…」アイツはあっという間に店を飛び出してしまった…
「透、どうした?何があった?」
叔父さんが席に来てくれた。
中腰だった俺に「とりあえず座れ」と言われ席に座った。
「今日は店はクローズだなっ…もしかしてあの子は…お前の大事な子か?」
「あぁ…大事だ。この前の金曜日、同棲してた相手の浮気現場を見て、学の所に酔い潰れてる所を家に連れてきた。」
「はぁ?それは辛かっただろうな」
「だから俺が幸せにしてやるつもりでいたのに…ハンバーグがトラウマになってるの知らなくて…」
「なんかあったのか?」
「修羅場見たその日ハンバーグを作ろうと思って買い物から帰ったらしい…それで2人にその材料投げつけたって、その食材無駄になったのに、美味しいハンバーグの店に連れてきてもらったのに俺に何も返せなくて申し訳ないって…」
「心が辛くて…逃げたか?」
「俺は海斗がいるから幸せになれる。海斗を幸せにしたいって思ってたのに…こっからじゃ車じゃないと家に帰れないだろうし…それにアイツ、スマホ電源切って家に置いてあって居場所探してあげられない。」
「大人だからな…大丈夫だろ。」
「いゃ…でも…」
「とりあえずその辺探してみるか?一緒に行くぞ」
「はい…」
俺はどうしたら海斗を助けてやれるのか…海斗が俺の所に戻ってくるのか不安だったが、とりあえず車で探すことにして店を出ようとしたら「こんにちは」と声がした
「学…」
「やっぱりお前の車だったか…あれ?海斗は?一緒か?」
「学、久しぶりだな。逃げられたんだよ。コイツは…」
「逃げられた?浅井さん、何してるんですか、海斗は?どこに行っちゃったんですか?俺…探して」
「待て待て悠人、落ち着け…浅井、何があった。必要ならアイツ呼ぶか?」
「いや…アイツはまだ呼ばなくても…」
「とりあえず、みんな座ろう。立ってても話しづらいだろ」そう叔父さんに言われて席に着いた。
「浅井、俺、おまえだから…海斗を任せていいと思ったんだぞ。お前の気持ちも知ってたし…」
「分かってんだよ。俺だって…」
「何があったか言ってみろ」
「浅井さん…なんで海斗、逃げたんですか?何か言ったんですか?」
俺は2人にさっき叔父さんにも話した経緯を伝えた。
「海斗…どこ行っちゃったんだろう…」
「ここ来たの初めてだろ…しかも車だし…道なんてわかんないだろ?ここに来る前にどっか行ったか?」
「ああ…優太と蓮のとこ」
「小倉の所か…あそこならここから歩けるか?連絡は?」
「いや…まだ…」
「とりあえず電話してみるか?」
そう言って学は電話かけてくれた。
「もしもし」
「小倉か学だけど…ちょっといいか?」
「ああ…ちょっと今立て込んでるから手短に…」
「何またイチャイチャしてた?」
「…っんなんじゃねえよ。何?」
「そっちに迷子の子猫見なかったかな?って」
「子猫って?」
「名前は海斗くん、浅井の大事な子なんだけど…」
「…え…なんでお前が?」
「その口ぶりは知ってるな。もしかして…そこにいる?」
「うん」
「じゃあ迎えに行く。逃げないようにしとけよ。じゃあ後で…」
「アイツの所にいるってよ。よかったな。じゃあみんなで迎えに行くか…」
叔父さんにお礼を言って学達と迎えに行こうと車のエンジンをかけた。
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