いつか愛してると言える日まで

なの

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心の変化

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僕は入院する生活を始めた。
最初の頃は過呼吸、子どもの頃のフラッシュバックと…昼夜問わず発作を起こしていた。
酷い時には点滴の針を自分で抜いてしまったりした。
そんな事をしても先生たちは僕を怒ったりしない。いつも寄り添ってくれていた。
まだ声は出ないけど、穏やかに過ごせるようになった日が増えた。

施設長は郁人のおじいちゃんが寄付をしてくれてお金を自分の為に使っていて、施設で働く人達のお給料を払うのが遅れたりしていたらしい。
何人も辞めていったのは知ってる。辞めていった人が施設長の僕たち子どもに対してしていた性暴力も警察に言ってくれて捕まった。
もう会うこともないだろうと…
施設長から受けた事を紙に書いて伝えるのは辛かった。書いてるうちにパニックにもなるので少しずつ少しずつ先生が心を落ち着かせてくれた。












 
あれから1年…

学校には行けないけど勉強を教えてくれるお兄さん、お姉さんがきて教えてくれた。
もうすぐ中学2年生、そろそろ学校に行けそうなんじゃないかな?と言ってくれた。2人に会うのは緊張するけど、心もだいぶ落ち着いてきたから大丈夫な気がしていた。相変わらず声は出ないけど…筆談での会話もスムーズになっていた。


ある日、病室から見える窓の外を見ると奏と郁人の2人が見えた。
仲良さそうにお互いの顔を見ながら話をしていた。
中学生になってアルファとオメガで校舎が違くても2人はずっと仲良くしてるんだ。
僕の生きている世界とは違うんだ。見るからに奏は背が伸びて郁人との身長差が出ていた。郁人は相変わらず可愛い顔で首にチョーカーが見えた。きっと大人になる階段を上がっていってるのだろう。僕はまだヒートも何もない。

心が痛くなった。僕はまだ2人には会えない。奏の姿を見ると、やっぱり好きって気持ちがあふれて…隣にいる郁人が羨ましくてたまらない。どうして奏の隣は僕じゃないんだろう。そんな事、思っちゃいけないのに、2人の仲を壊すような事をしたらダメなのに。僕だけの奏でいてほしくて、心の中が喧嘩して、そのまま僕はまた落ちていった。どこまでも深い穴に…


《side郁人》

「お母さん今日の純平はどう?」
「ちょっとは落ち着いてるの。そろそろ学校にも行けるかもって話してみたから…どうかしら?ちょっと見てみようか?」

ようやく純平に会えるかも。ずっと願ってた。あれから入院してる純平だけど心が落ち着いたら会えるからと言われて待っていた。
きっと奏は嬉しくてたまらないと思う。
奏が純平のことが大好きなのは初めて話した時に聞いた。
同じオメガだから純平の友達になって欲しいとも…
僕のお家で暮らす為に、お父さんとお母さんが迎えに行ってくれて、帰って来てから純平がおかしくなった。喋ることができなくなった。何があったのかわからなくて、どうしていいかわからなかった。

純平の病室に奏と一緒に行く途中、看護師さんがバタバタと走りながら純平の病室に入っていった。
「ここで待ってなさい。」

そう言われたけど奏は一緒に走って行ってしまった。


《side奏》

先生を追いかけて純平の病室に入って息が止まるかと思った。 

純平じゃないみたいで、あの細い体からどんな力があるのか押さえられても、もがいて暴れてる。僕は咄嗟に純平を抱きしめた。細くて倒れそうな身体を…
僕に抱きしめられると気づいた純平が、「…なっ…ん…でっ…」とかなりかすれてはいたが声が出た。

「純平…純平…出たな。よかったな!」
俺は嬉しかった。嬉しくて抱きしめていた腕に力を込めた。
すると純平の腕が僕の胸を押してきた。俯いてる純平を見て「は…」とした。純平は…みるみるうちに真っ青になって震えていた。

「とりあえず外出ててね。」
結城先生に言われて病室を出た。

郁人が「どうだった?」と聞いてきたけど、何も答えられなかった。



2人の姿を見てパニックになってしまった。いつの間にか奏が来て抱きしめられた…
なんで…好きでもない僕なんて抱きしめなくていいから…
掠れた声が出ると奏は喜んでくれた。でも僕は喜べなかった。
奏に抱きしめられた感覚が体に残ってる。抱きしめられた温もりが…今まで感じた事がなかったけど奏から柑橘系のような爽やかな匂いがした。とてもいい匂いで、ずっと嗅いでいたかった。

そんな事を思い出してると身体の奥が熱くなってくるのを感じた。どうしようもなく身体の奥が何かを求めている感じがする。それと同時に何かとてつもなく怖い感じがして仕方なかった。

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