転移したら獣人たちに溺愛されました。

第1章

第14話

ノアが目を覚ましたのは、それから1時間ほど経ったころだった。
「ノア目が覚めたのね？気分は大丈夫かしら？」

「あの…さっきはごめんなさい。僕…いい子になります。だから…」
ノアが私に必死に言いかけるのを制して

「ノアを食べようとする獣人はここにはいないから安心しなさい」
と抱きしめた。すると

「僕を食べないのに優しくしてくれるのはどうしてですか？」
と聞いてきた。今までの経験から優しくしてもらったことがないからきっと何かあるんだろうと思ってしまったのかもしれない。でもまだ幼子のこの子にカイルの運命の子だなんて言えない。不安そうに私を見つめる青い瞳のノアに自分の思いを打ち明けた。

「人間界でノアを見つけて私がノアのお母さんになりたいと思ってここに連れてきたの。でもここは獣人の世界、一度来てしまったら元の世界には戻れなくなるけど…それでもノアにとって人間の世界にいるよりも、ここの世界の方がずっと幸せになれると絶対に幸せにしてくれる人がいると思ったのよ。ノアはここに来てどう思ったか教えてくれる？やっぱり人間界の方がよかった？」
すると目にいっぱい涙を溜めて

「ここに来てよかったです。カイルさんは優しくて、カイルさんのお母さんも優しくて、僕もう死んじゃうと思ったんです。もし死んでもお父さんとお母さんに会えると思ってたけど大きな光が来て、それから幸せになれる。って天使に言われたような気がしたんです。そしたらなんか森みたいなところにいて…」
ノアが話してる途中でノック音が響いてドアを開けるとクラリスとウサギのムーンが入ってきた。

「あっあの子だ。耳が長くて僕と同じくらいの男の子に最初にあったんです」
そうノアが言うと

「こんにちは。少しは元気になった？僕ムーンっていうの。僕この前お誕生日がきたから8歳になったんだけど君はいくつ？」

「僕はノア。僕はまだ7歳、3月にお誕生日が来たら8歳になるよ」

「じゃあ僕と一緒だね。おんなじ学校に通えるといいね」
うん。そうだねと嬉しそうに笑い合うノアとムーンを見てノアはまだ小学校に上がってないんじゃないかと思ってたのにもう2年生だなんて…早く回復させて学校にいって同じくらいのお友達をたくさん作ってあげないと思った。すると

「ねぇベットから降りて一緒に遊ぼうよ」
とムーンに言われると、まだ僕歩けないんだ。だから遊べない。そう言って残念がるノアにそろそろ立ち上がる練習をした方がいいかもね。ムーンと一緒に今日はいつもより少し頑張ろうか？頑張れそう？と声をかけるとムーンが応援してくれると言ってくれた。じゃあリハビリのサイモン先生とノアが倒れそうになった時に支えてくれる人が必要だから、リアムを呼んでもいいかしら？そういうとビクッと肩が強張った。リアムも怒鳴ってしまって反省してたから大丈夫よ。それにね尻尾は大事な部分で触られたくない人がいるの、だから気にしないで大丈夫。そう言うとムーンが尻尾を触られるとくすぐったいけど、触りたいなら僕の触ってもいいよ。とお尻をこちらに向けて言ってくれた。
ノアはカイルさんは本当は嫌だったのに僕がわがまま言ったから無理してたのかな？と言うのでカイルはノアだからいいんだと思って触らせてくれたんじゃない？帰ってきたらカイルに聞いてあげるから心配しなくていいのよ。と口を濁していたら

「もし本当にノアが嫌いなら尻尾を触らせてなんかくれないから大丈夫だよ。それにね、僕のパパとママは仲良い時には尻尾とかお耳を触りあってるんだ。でも仲がいい人同士じゃないとできないって言ってたよ」
ムーンの言葉で少しは納得してくれたようだ。

サイモン先生とリアムを呼ぶとすぐに来てくれた。リアムは部屋に入るなりさっきノアに怒鳴ったことを必死で謝っている姿を見て最初ムーンは熊獣人で体が大きいリアムが怖かったのだろう私の後ろに隠れて見ていたが背中を丸め謝ってるリアムに近づき声をかけた。

「リアムさん、ノアが怖がることをもうしないでね。ノアは僕のお友達なんだから」
うさぎ獣人が熊獣人、しかも大人に声をかけるのは怖いし相当な勇気がいっただろう。しかも人間のノアを友達と躊躇なく言ってくれたのも嬉しかった。ノアも

「ムーンは僕とお友達になってくれるの？」
少し不安そうに声をかけるとぴょんぴょんとノアのベットに近づき
「友達だよ。僕のお友達もきっとノアの友達になってくれるから頑張って歩けるようになろうね。練習しよう、練習」

その言葉でノアのやる気が入ったのがわかった。
「じゃあノア様、まずはいつも通り体を起こしますね」
サイモン先生に声をかけられゆっくりと体を起こしていく。最近は食事も体を起こして食べることができている。サイモン先生はいつも通り脚をマッサージしながら元々細くて筋力もないのに、しばらく寝たきりだったから筋力が落ちてるけど毎日マッサージもしてたから焦らずにリハビリすれば必ず歩けるし走れるようになるからね。と優しい笑みを浮かべて言ってくれた。今日はいつもより長めにマッサージをしてから脚を地面につけて立ってみる練習だ。
リアムに支えてもらって立ち上がるが筋力も落ちてるので自分を支えられなかった。それでもムーンは頑張ったね。きっと立てるようになるよ。と笑顔で言ってくれた。