38 / 138
どうやら歓迎されていないようです
先輩を探して右往左往
しおりを挟む
お弁当を食べ終わったわたしは、どきどきしながら、ひとりで階段をおりる。
校舎の階段をおりるだけのことが、別に不安なわけではない。
一年生の教室がある校舎四階から、二年生の教室が並ぶ三階へ向かっているということが、わたしを緊張させているのだ。
制服のブレザーのポケット部分につけている校章が、一年を表す学年色のグリーン。
なんとなく隠すようにうつむいて、わたしは二年生の教室が並んでいる廊下を歩いた。
目指すは二年三組。
凪先輩の言葉の端々から仕入れた情報で、留城也先輩のクラスを特定してやってきたのだ。
とはいっても、やっぱり上級生の教室をのぞくのも勇気がいるもので。
教室のドアのほうへ視線を向けながら、前の廊下を行ったり来たりウロウロしているあいだに、時間がどんどん経っていく。
こりゃ、この昼休みでは無理だと判断したわたしは、一度、自分の教室へ戻ろうと考えて、身体ごと大きく振り返った。
そのとたんに、誰かとぶつかってしまった。
「す、すみません!」
うつむいたままで謝り、その場から逃げるように走りだそうとしたわたしは、いきなり腕をつかまれた。
驚いて顔をあげると、それこそ探していた留城也先輩本人じゃないですか。
ラッキーと思う反面、心構えができていなかったわたしは、突き刺すような留城也先輩の視線を浴びて、緊張のあまりに凍りついた。
振り切ることもできずに引きずられるまま、わたしは四階へと続く階段の下まで連れて行かれる。
そこで、ようやく留城也先輩は、放り投げるようにわたしの腕を放した。
「どうせ凪先輩に俺のクラスを聞いてきたんだろう? なにを言ってきても、今朝のことは謝らねぇからな」
「違います!」
勘違いされたら困る。
わたしは謝って欲しいからきたんじゃない。
留城也先輩が口を開く前に、わたしは急いで言葉を続ける。
「わたしは浮かれて試験を受けようとしているわけでもないし、誤解されたままなのも嫌なので。それに、留城也先輩も、人を信じないだなんて凪先輩から聞いたんですが……」
「馬鹿か? アンタ」
言葉の途中でさえぎられた。
校舎の階段をおりるだけのことが、別に不安なわけではない。
一年生の教室がある校舎四階から、二年生の教室が並ぶ三階へ向かっているということが、わたしを緊張させているのだ。
制服のブレザーのポケット部分につけている校章が、一年を表す学年色のグリーン。
なんとなく隠すようにうつむいて、わたしは二年生の教室が並んでいる廊下を歩いた。
目指すは二年三組。
凪先輩の言葉の端々から仕入れた情報で、留城也先輩のクラスを特定してやってきたのだ。
とはいっても、やっぱり上級生の教室をのぞくのも勇気がいるもので。
教室のドアのほうへ視線を向けながら、前の廊下を行ったり来たりウロウロしているあいだに、時間がどんどん経っていく。
こりゃ、この昼休みでは無理だと判断したわたしは、一度、自分の教室へ戻ろうと考えて、身体ごと大きく振り返った。
そのとたんに、誰かとぶつかってしまった。
「す、すみません!」
うつむいたままで謝り、その場から逃げるように走りだそうとしたわたしは、いきなり腕をつかまれた。
驚いて顔をあげると、それこそ探していた留城也先輩本人じゃないですか。
ラッキーと思う反面、心構えができていなかったわたしは、突き刺すような留城也先輩の視線を浴びて、緊張のあまりに凍りついた。
振り切ることもできずに引きずられるまま、わたしは四階へと続く階段の下まで連れて行かれる。
そこで、ようやく留城也先輩は、放り投げるようにわたしの腕を放した。
「どうせ凪先輩に俺のクラスを聞いてきたんだろう? なにを言ってきても、今朝のことは謝らねぇからな」
「違います!」
勘違いされたら困る。
わたしは謝って欲しいからきたんじゃない。
留城也先輩が口を開く前に、わたしは急いで言葉を続ける。
「わたしは浮かれて試験を受けようとしているわけでもないし、誤解されたままなのも嫌なので。それに、留城也先輩も、人を信じないだなんて凪先輩から聞いたんですが……」
「馬鹿か? アンタ」
言葉の途中でさえぎられた。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
【R18】騎士たちの監視対象になりました
ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。
*R18は告知無しです。
*複数プレイ有り。
*逆ハー
*倫理感緩めです。
*作者の都合の良いように作っています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる