ヲワイ

くにざゎゆぅ

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教室

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 しらみつぶしと宣言しただけあって、自分が担当した一組、そして二組、さらに三組と順番に、力也は乱暴に鍵をあけていく。

「なにが、おめでとう、だ? ムカつく!」

 黒板アートに向かって暴言を吐き、近くにあった机と椅子を、派手に蹴り飛ばした。その音で、身をひそめている者を暴こうとしているようだ。
 力也のあとをついて回りながら、曽我は、鈴音と忠太とともに、彼が動かした机や椅子を元通りに戻していく。
 そして、一番端の教室へ向かうために廊下へ飛びだした力也を、曽我が追いすがった。

「もうやめよう、佐々木。外から鍵がかかっている教室なんだから。誰もいないから」
「うるせぇな! 襟首捕まえて、放送室のドアを開けさせるまでやめねぇよ!」

 そして、力也は双眸を怒りでぎらつかせる。

「これだけコケにされてんだ。ボコ殴るまでやめられるか」

 力也が、力任せに曽我を振り払おうとしたとき、ようやく栞と神園が廊下を駆けてきた。

「どうしたの? 佐々木くん、曽我先生」
「あ、神園先生!」

 ほとほと困り果てた表情で、曽我が、神園へ助けを求める声をあげる。

「佐々木が、どうしても放送室の犯人を捕まえないと気がすまないって、言い張るんですよ」
「でも、その犯人が、もう学校内にいるとは限らないから……」

 曽我の口添えをするように、神園も力也へ、なだめる口調で声をかける。
 力也は、ぎりっと曽我と神園を睨みつけた。いまにも殴りつけそうな勢いで、ふたりに向かって吼える。

「お、れ、が! この俺の気が! すまないんだよ!」

 すると、こうなった力也は手がつけられないことを、身を持って知っている忠太が提案した。力也に向かって、お愛想笑いを浮かべる。

「それじゃあ、効率よく、みんなで手分けして探しましょうよ、力也さん。全員固まって調べていくより、絶対に早く見つかると思います」
「それは、危ないんじゃないかな……」

 栞が、思わず口をはさんだ。

「だって、放送でも体育館でも、なんか挑発的じゃない? 外も暗くなったし……」

 栞の言葉に、曽我と神園が同意するようにうなずく。
 だが、忠太は、調子よく言い返した。

「効率よく早く終わらせたほうが、絶対いいと思います! だって、あの声を聞く限り、女子生徒ひとりって気がしませんか? 大丈夫ですって」

 忠太の言葉に、力也が乗った。皆の顔をぐるりとねめつけてから、仕切るように、曽我へ指を突きつける。

「わかった。先生、上の教室を確認しに行け」
「なんだって?」
「見に行けって言ってんだ!」

 切り口上で繰り返すと、力也は持っている鍵の束から教室のものを選び、曽我へ押しつける。無理やり鍵を渡された曽我は、力也に教室を荒らされるよりはいいと考えたのだろう。仕方がなさそうに、力也へ念を押す。

「わかったよ。これで佐々木の気がすむのなら、ぼくが一年と二年の教室を見回ってこよう」
「ぐだぐだ言ってないで、さっさと行けよ」
「わかったから」

 曽我は、気乗りのしない顔で歩きだす。すぐに、二階へ向かう階段へ姿を消した。
 次に力也は、鈴音へ視線を向ける。とたんに察した鈴音が、か細い声をあげた。

「――あたし、怖い。栞と神園先生と一緒に見て回りたい……」
「効率が悪くなるだろ? 全員ばらばらで探すんだよ!」

 力也ににらまれ、ビクッと体を震わせた鈴音は、たちまち瞳を潤ませた。

「ひとりなんて怖いわ。女の子は一緒でもいいじゃない」

 勇気を振り絞って、栞が抗議する。第一、犯人の捜索なんてする必要さえないと考えてるくらいだったが、さすがに怖くて、そこまで口にできなかった。
 じろりと栞を睨んだ力也は、苛立たしげに言った。

「ちっ、仕方がねぇな。鈴音、安藤と一緒に回れ! 先生は大人なんだから、ひとりで回れるよなぁ?」
「え? ええ……」

 押し切られるように、神園はうなずく。
 それから、じっと考えると、栞と鈴音に向かって口を開いた。

「そうね……。それじゃあ、ふたりは各階の女子のお手洗いを見てまわるというのは、どうかしら? 先生は――そうね、少し離れた家庭科室や理科室のほうを見てくるわ」
「おう、それなら先生、ついでに校内の廊下の電気、職員室で全部つけてこい」
「ええ、わかったわ。もう暗いものね」

 神園は、神妙な面持ちでうなずいた。

「だったら、ぼくは体育倉庫や、結局さっき見に行かなかった部室のほうを見てきますよ! それでいいですか? 力也さん!」

 忠太が、眼鏡の奥から媚びるような目で、力也を見あげる。
 その言葉を聞いて、力也は、自分の思い通りに皆が行動することに満足したようだ。
 歪んだ笑みを浮かべて、さっさと散れと言わんばかりに片手を振った。

「ほら! さっさと行け! 見つけたら、俺を大声で呼べよ!」

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