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体育館
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「くそ! 電気はついているのに、鍵がかかってるじゃねぇか!」
一番にたどり着いた力也が、体育館の大きな扉をガタガタと揺すった。
「乱暴するな。扉が壊れる!」
「壊れるんだったら壊してやるよ!」
力也と曽我がもめているあいだに、神園が追いついた。
息を切らせながら、ふたりに声をかける。
「待って待って。体育館の鍵はあるから」
「早く貸せよ! トロいな!」
暴言とともに、力也は、神園が差しだした鍵を奪うように取りあげる。乱暴に開けると、鍵を差しっぱなしのまま扉を開いて、ずかずかと中へ入っていった。
「どこだぁ! 隠れてんだろ? 出てこい!」
力也の声はアーチ形の天井に反射して、大きく響いた。
きれいな列に並べられたパイプ椅子のあいだを、力也は周りを見回しながら突き進む。周囲を気にせずに歩く力也の腕や足にあたって、並んでいた椅子が乱れていった。
その後ろを曽我が、ずれた椅子をガタガタと元の位置に直しながらついていく。
「佐々木、電気はついていたが、ここにはもう誰もいないと思うんだ。ほら、鍵もかかっていたし。明日の準備も終わっていることだし、もう、ここから出よう」
「うるせえ! 電気がついてんだから、それまで誰かがいたんだろ? まだいるかもしれねぇだろうが!」
曽我の言葉に耳を貸さず、力也は体育館の一番前までやってくると、両脇にある階段を使わずに、真ん中からステージの上へ身軽にのぼった。そして、何気なく移動式の演台をのぞきこんだ力也が、声を呑みこんだように目を見開いた。
演台の表面へ、直接チョークで書かれた文章に目を通した力也は、右手を振りあげると、こぶしを作ってドンと叩く。
「舐めやがって!」
階段を使ってステージに上がった曽我が、慌てて力也の手もとをのぞきこんだ。力也のこぶしでかすれたところがあるが、演台の表面に書かれた文字を、声にだして読みあげる。
「わたしは、遊びという名目で追いかけられた。遊びだったら許されるの? ――これ、どういう意味だ?」
ようやくステージ上まで追いついた忠太や栞や鈴音、そして神園が、首をかしげた曽我の周りに集まって、演台の文字をのぞきこんだ。
曽我が読んだ内容が、演台の中央に小さな文字で書かれている。ほかに、宛名や書いた者の名前など、なにも書かれていなかった。だが、あの放送の内容を考えると、無関係ではないだろう。
「バカにしやがって。絶対に捕まえてやる」
力也は親指の爪を噛みながら、ステージの上からなにか痕跡はないかと睨みつけるように全体を見回す。
ふと、栞は不安を覚えた。この言葉にしろ放送にしろ、ただ力也を煽るためにだけ、行われている気がしたからだ。それをする七奈美の成りすましは、なにが目的なのだろう?
「――力也くん。わたし、この挑発に乗らないほうがいい気がする。曽我先生も、放送室の録音テープが手に入ったら、力也くんに渡してくれるって言ったんでしょう? だったら、もう帰ったほうが」
「うるせえ! 関係のない奴は黙ってろ!」
力也の怒号に、栞は首をすくめて身を縮めた。神園がかばうように、そっと栞のそばに寄って肩を抱き寄せる。
その様子に、力也がイラつくように舌打ちをすると、鈴音がため息とともに口を開いた。
「でも、力也さぁ。七奈美の成りすましを探すあてはあるの?」
「さっきまで、放送室に仕掛けたりしゃべったりしているし。まだ校内にいるんじゃないかな。ねえ、力也さん」
鈴音の疑問に答えた忠太の言葉に、力也が言い放った。
「――しらみつぶしで、探しだす!」
力也は神園へ近づくと、ヌッと手のひらを前に突きだし、脅すように口を開いた。
「先生、ほかの鍵も持ってきていたよな。ほら、全部、こっちに寄こせ」
「え? でも」
「寄こせって言ってんだよ! ぐずぐずするな!」
力也は、恐る恐る差しだした神園の手から、持っていた残りの鍵を、ごっそりすべて奪った。そして、ステージの真ん中から飛び降りると、入ってきた扉へ向かって駆けだした。
「佐々木、待て!」
力也のあとを、曽我が追いかける。
そして、不満な表情を浮かべた忠太と鈴音も、仕方がなさそうにあとに続いた。
一番にたどり着いた力也が、体育館の大きな扉をガタガタと揺すった。
「乱暴するな。扉が壊れる!」
「壊れるんだったら壊してやるよ!」
力也と曽我がもめているあいだに、神園が追いついた。
息を切らせながら、ふたりに声をかける。
「待って待って。体育館の鍵はあるから」
「早く貸せよ! トロいな!」
暴言とともに、力也は、神園が差しだした鍵を奪うように取りあげる。乱暴に開けると、鍵を差しっぱなしのまま扉を開いて、ずかずかと中へ入っていった。
「どこだぁ! 隠れてんだろ? 出てこい!」
力也の声はアーチ形の天井に反射して、大きく響いた。
きれいな列に並べられたパイプ椅子のあいだを、力也は周りを見回しながら突き進む。周囲を気にせずに歩く力也の腕や足にあたって、並んでいた椅子が乱れていった。
その後ろを曽我が、ずれた椅子をガタガタと元の位置に直しながらついていく。
「佐々木、電気はついていたが、ここにはもう誰もいないと思うんだ。ほら、鍵もかかっていたし。明日の準備も終わっていることだし、もう、ここから出よう」
「うるせえ! 電気がついてんだから、それまで誰かがいたんだろ? まだいるかもしれねぇだろうが!」
曽我の言葉に耳を貸さず、力也は体育館の一番前までやってくると、両脇にある階段を使わずに、真ん中からステージの上へ身軽にのぼった。そして、何気なく移動式の演台をのぞきこんだ力也が、声を呑みこんだように目を見開いた。
演台の表面へ、直接チョークで書かれた文章に目を通した力也は、右手を振りあげると、こぶしを作ってドンと叩く。
「舐めやがって!」
階段を使ってステージに上がった曽我が、慌てて力也の手もとをのぞきこんだ。力也のこぶしでかすれたところがあるが、演台の表面に書かれた文字を、声にだして読みあげる。
「わたしは、遊びという名目で追いかけられた。遊びだったら許されるの? ――これ、どういう意味だ?」
ようやくステージ上まで追いついた忠太や栞や鈴音、そして神園が、首をかしげた曽我の周りに集まって、演台の文字をのぞきこんだ。
曽我が読んだ内容が、演台の中央に小さな文字で書かれている。ほかに、宛名や書いた者の名前など、なにも書かれていなかった。だが、あの放送の内容を考えると、無関係ではないだろう。
「バカにしやがって。絶対に捕まえてやる」
力也は親指の爪を噛みながら、ステージの上からなにか痕跡はないかと睨みつけるように全体を見回す。
ふと、栞は不安を覚えた。この言葉にしろ放送にしろ、ただ力也を煽るためにだけ、行われている気がしたからだ。それをする七奈美の成りすましは、なにが目的なのだろう?
「――力也くん。わたし、この挑発に乗らないほうがいい気がする。曽我先生も、放送室の録音テープが手に入ったら、力也くんに渡してくれるって言ったんでしょう? だったら、もう帰ったほうが」
「うるせえ! 関係のない奴は黙ってろ!」
力也の怒号に、栞は首をすくめて身を縮めた。神園がかばうように、そっと栞のそばに寄って肩を抱き寄せる。
その様子に、力也がイラつくように舌打ちをすると、鈴音がため息とともに口を開いた。
「でも、力也さぁ。七奈美の成りすましを探すあてはあるの?」
「さっきまで、放送室に仕掛けたりしゃべったりしているし。まだ校内にいるんじゃないかな。ねえ、力也さん」
鈴音の疑問に答えた忠太の言葉に、力也が言い放った。
「――しらみつぶしで、探しだす!」
力也は神園へ近づくと、ヌッと手のひらを前に突きだし、脅すように口を開いた。
「先生、ほかの鍵も持ってきていたよな。ほら、全部、こっちに寄こせ」
「え? でも」
「寄こせって言ってんだよ! ぐずぐずするな!」
力也は、恐る恐る差しだした神園の手から、持っていた残りの鍵を、ごっそりすべて奪った。そして、ステージの真ん中から飛び降りると、入ってきた扉へ向かって駆けだした。
「佐々木、待て!」
力也のあとを、曽我が追いかける。
そして、不満な表情を浮かべた忠太と鈴音も、仕方がなさそうにあとに続いた。
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