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くにざゎゆぅ

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【第二章】 文化祭編『最終舞台(ラストステージ)は華やかに』

第45話 ほーりゅう

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 文化祭もお昼を過ぎた。
 舞台も無事に終わり、ざっと後片付けも終了したところで、わたしのクラスとしては自由行動となる。
 ほとんどのクラスメートが、それぞれ連れだって教室をでていき、あとに残ったのはわたしと夢乃、そして京一郎とジプシーだけになった。
 わたしはさっそく、夢乃を誘う。

「ねえ夢乃、お昼を過ぎたよ。なにか食べにいこうよぉ」

 わたしの目的は、模擬店巡り!
 さあて。
 なにを食べようかな~。

「ほーりゅう、おまえって元気というかなんというか、食い意地が張ってんなぁ」

 椅子に座り、机に寄りかかる感じで頬杖をついていた京一郎が、あきれたような声をあげた。

「え~なんで? 京一郎はいかないの? 舞台でお腹が空いてたんじゃないの? 早く買いにいかないと、人気の屋台のものなんか、すぐに売り切れちゃうよ?」

 わたしは、焦ったように京一郎へ向かって言ったけれど。
 京一郎は、ゆるりと返してきた。

「俺、なんか午前中のゴタゴタと舞台ですっげえ疲れた。もうこの教室は誰もいないしさ、しばらくここで寝る。おまえら、適当に起こしに戻ってきてよ。俺ら、また後夜祭も出番があるしさ」

 あ、そうか。
 京一郎もジプシーも、後夜祭ライブに出るんだっけ。

「俺も今回パス」

 そう告げたジプシーを、わたしは驚いて見つめた。
 彼にしては珍しい。
 仕事と先ほどの舞台の主役の両方が、予期せず同時にあったから、やっぱり大変だったのだろうか。

 いやいや、待てよ。
 もともとイベントが好きなタイプってわけでもなさそうだし、彼にとって、文化祭を回らないってのは、そんなに珍しいことでもないのかな。

 せっかくの文化祭なのに、見る側でも楽しもうという元気のない男子ども。
 まあ、控え室となっていたこの教室には、にぎやかな場所からはずれているし、一般は入ってこないはずだ。
 放っておいて大丈夫だろう。

 そう考えたわたしは、夢乃と文化祭を満喫するために、教室をあとにした。



 いろんな模擬店の美味しいものを食べて、講堂の舞台や文化部の展示物を観て。
 そうそう、あのクラスが校内で撮影したっていう不思議の国のアリスの映画、上手に作っていたなぁ。
 なんて、楽しんで回ったわたしだけれど。

 でも、やっぱり途中で、ふたりが気になってしまった。
 夢乃と相談をして、焼きそばの差し入れを手に入れたわたしは、ふたりで教室に戻ってみることにする。
 疲れていても、なにか食べないと。
 人間、どうしたってお腹が空くもんね。
 それに、後夜祭ライブにでるんだったら、空腹のままでいるわけにはいかないはずだ。
 そう言い合いながら、夢乃と教室の入り口まで戻ってくると、教室のなかから、ぼそぼそと話し声が聞こえた。

 なんだ。
 ふたりとも結局寝てないじゃない。
 なにが起こしに戻ってきて、よ。
 そう考えながら、わたしはドアに手をかけようとしたけれど。

「――で、ほーりゅうのこと、どう思うわけ?」

 ふいに、京一郎の声が、はっきりと聞こえた。

 ――え?
 わたしのこと?

 思わず夢乃と顔を見合わせて、その場にしゃがみこむ。
 そして、そっと聞き耳をたてた。
 なかなかジプシーの返事が聞こえない。
 これって、もしかして。男ふたりの恋愛話? コイバナ?
 なんて考えているあいだに、やっとジプシーの声が聞こえた。

「前回の俺とおまえの件、もともと俺が知識として持っていた媒体の石の件、そして今回試した結果としては、ほーりゅう自身に向けられた殺気や危害の加え方に対して、発動するんじゃないかと思う」

 ――?

「絶対的にサンプルが少ないから言い切れないところだが、攻撃される大きさによって超能力も比例して大きくなるかもしれない。あと、殺気を感じてから超能力がでるまでのタイムラグが気になるな。乱闘や、場合によっては、この数秒の遅れを知っている者にでも遭えばアウトだ。もう少し様子をみて、能力を使いこなせるようになるような、なにかしらの糸口が見つかればいいが」

 ああ、そうか!
 なぁんだ。
 わたしの持っている、制御不能な超能力の話のことかぁ。

 同時に気づいたらしい夢乃も、なぁんだというような顔になる。

 ふ~ん。
 でも、ふたりとも、それなりにわたしの能力のことを考えてくれているんだ。
 いいなあ、友だちって!

 わたしは、とっても嬉しくなった。
 しかし、それと同時に、ふとした疑問がでてくる。

 そういえば、このふたりって、恋愛話なんてものをするのだろうか?
 わたしにとって、京一郎はすでに友だち感覚だ。
 ジプシーは一般的に顔が良くてもわたし好みじゃないし、根暗い性格も好きだとはいいがたいから、恋愛対象にはならないだろう。

 わたしは、そうだなぁ。
 わたしだったら、手が当たっただけでも心臓がドキドキするような、離れていても会いたいって思えるような相手がいいなぁ……。

 なんて考えていると。

「なにやってんだ? おまえら」

 急に教室のドアが開いて、そこに京一郎が立っていた。
 ドキッとしたわたしと夢乃は、慌てて立ちあがる。
 充分驚いたであろう夢乃が、それでも落ち着いた声で返事をした。

「寝ていたら、起こしちゃ悪いかなぁって考えていたの。先に様子をみようと思って……」

 ふぅんという感じでうなずいた京一郎は、それ以上気にならないのか、すぐに教室のなかへと戻る。
 わたしと夢乃もあとに続いて、教室に入っていった。

「お昼にしては遅くなったけれども、焼きそばを買ってきたのよ。食べる?」

 すぐに夢乃が机の上で袋を開くと、お茶と一緒に割り箸を用意する。

「そうだな。もう少ししたらバンドのメンバーと合流しないといけないし。いま食っといたほうがいいか」

 さっきまで疲れたって言っていて、その上、結局寝ていないんじゃないの?
 そう思ったわたしは、夢乃へ返事をした京一郎へ、確認するように訊いてみた。

「ふたりとも、休まなくて大丈夫なの?」

 京一郎は、夢乃から受け取った焼きそばをジプシーへ回しながら答えた。

「いや、一時間くらいはふたりとも爆睡。おまえらがけっこう時間かけて回ってきてたんだよ」

 京一郎に言われて、わたしは、そのときはじめて気がついた。
 全然感覚がなかったけれど、そんなに時間が経っていたのか。
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