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第一章 リコプリン編
42 金ピカの居候
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「うわあぁ、広……」
改めて、リコは圧倒されていた。
庭の大きなプールと大浴場、豪華なリビングは立ち入っていたが、部屋のドアが連なる長い廊下は、また別の迫力があった。
マニもクルクルと見回している。
「どひゃ~、こんなに部屋数あって、どうすんの? ホテルみたい!」
ミーシャはジャラジャラと大量の鍵が付いた鍵束を取り出した。
「私とアレキ様の二部屋以外、全然使ってないの。週に一度クリーニングでメイドを雇うくらいで。もったいないよね」
ミーシャの部屋の隣のドアに鍵を差し込んで開けると、それはまさに、高級ホテルの一室のようだった。
「ひっろ~い! 豪華!!」
マニは我がことのように喜んで、室内を走り回っている。
「見てみて、このカーテン! 可愛いベッド! お姫様みたい!!」
夢のように可愛い家具やファブリックに、リコは目がチカチカするほど眩しく感じていた。
いつの間にか、後ろのドアにアレキが寄りかかっている。
「どうだい? お嬢さんのイメージに合わせて誂えたのさ。気に入った?」
「アレキさん……私、こんなにして頂いて申し訳ないっていうか」
アレキはリコに歩み寄り、厳重に固めた左肩と、ギプスをしている右手、そして擦り傷だらけの顔を見て悲しい顔をした。
「お嬢さんを守るのは大人の役目なんだ。こんな目に合わせてしまったのは、俺達大人の責任でもあるんだよ。何もしてやれなかった俺に、どうか償わせてくれ」
跪くとギプスの右手の甲にそっとキスをした。
リコはお姫様になった気分でドキドキする。
アレキは続けて後ろにいるレオを指した。
「ちなみにレオは社会人歴長いから、大人だからね? コキ使ってやってくれ」
レオは頷く。
「僕の部屋はこの廊下の奥にありますから、いつでも呼び出してください。すぐに伺います」
「え!?」
目を丸くするリコに、ミーシャが教えてくれた。
「リコの怪我が治るまで、レオ君もここに住むんだって」
思ってもみなかった展開に、リコの胸は再び早鐘を打っていた。
(同棲、ではないけど、同じアパートみたいな? いや、同居??)
「そ、そそそ、それはかたじけない……」
明らかに動揺しているリコを、マニは笑っていた。
* * * *
ランチの時間。
リビングで一番嬉しそうなのは、アレキだった。
「お嬢さんの退院祝いだ!」
勢い良くシャンパンを開けて、ミーシャに怒られている。
「お昼間からまたお酒! ダメですよ」
「いいじゃないか、こんなめでたい日なんだから」
「午後からお客様が来るのに」
「大丈夫、大丈夫~」
テーブルの上には大量の皿が並んでいる。様々な肉料理にサラダ、パン、果物、ケーキ……。
「うっひゃぁ、美味しそう!」
ご馳走に飛びつくマニの横で、薄味の病院食ばかり食べていたリコは、キューンとお腹が鳴るほど欲している。だけど……両手が動かず、情けない気持ちになっていた。なんとかフォークを持ってみようと固定された右手で足掻いていると、ミーシャが止めた。
「ダメー! 絶対安静なんだよ!? 動いたら骨が付かないって、お医者様が言ってたんだから!」
リコのフォークを取り上げると、ポテトサラダをすくって口に運んでくれた。
「はい、あーん」
「あ、あーん」
ミーシャに食べさせてもらうポテトは、ほっぺがジーンとするほど美味しい。
「食べたい物を言ってね。取るから」
マニがそれを見て真似をする。
「あたしも、あたしもやりたい! ほらリコ、あーん!」
大盛りのスプーンを突っ込まれて、リコは自分が雛鳥になった気持ちになっていた。ミーシャとマニがスプーンを持った天使に見える。
3人が仲良くランチを食べている姿を、アレキは満足そうに眺めている。
「家族って、いいよなぁ。レオ君も戻って来てくれて、俺は嬉しいよ」
隣のレオに向けてシャンパンを掲げた。
「期間限定ですよ。宮廷を離れると聞いてノエル王子がごねているらしいので、なるべく王子の部屋に行く時間を増やさないといけません」
「じゃじゃ馬君はレオ君にご執心だよな~」
アレキはレオに近づくと、耳元で囁いた。
「好きなのかな? 君のこと」
レオはグッと喉を詰まらせた。
リコの件にかけて言っているのは明らかで、レオは声を顰める。
「お願いですから、変なお節介はやめてくださいね?」
「え? 俺が? キューピッドに?」
レオはアレキの赤に近い紫色の目を、冷めた目で睨んだ。
リコにとって、安心と緊張が入り混じる、金ピカ城での奇妙な生活が始まろうとしていた。
改めて、リコは圧倒されていた。
庭の大きなプールと大浴場、豪華なリビングは立ち入っていたが、部屋のドアが連なる長い廊下は、また別の迫力があった。
マニもクルクルと見回している。
「どひゃ~、こんなに部屋数あって、どうすんの? ホテルみたい!」
ミーシャはジャラジャラと大量の鍵が付いた鍵束を取り出した。
「私とアレキ様の二部屋以外、全然使ってないの。週に一度クリーニングでメイドを雇うくらいで。もったいないよね」
ミーシャの部屋の隣のドアに鍵を差し込んで開けると、それはまさに、高級ホテルの一室のようだった。
「ひっろ~い! 豪華!!」
マニは我がことのように喜んで、室内を走り回っている。
「見てみて、このカーテン! 可愛いベッド! お姫様みたい!!」
夢のように可愛い家具やファブリックに、リコは目がチカチカするほど眩しく感じていた。
いつの間にか、後ろのドアにアレキが寄りかかっている。
「どうだい? お嬢さんのイメージに合わせて誂えたのさ。気に入った?」
「アレキさん……私、こんなにして頂いて申し訳ないっていうか」
アレキはリコに歩み寄り、厳重に固めた左肩と、ギプスをしている右手、そして擦り傷だらけの顔を見て悲しい顔をした。
「お嬢さんを守るのは大人の役目なんだ。こんな目に合わせてしまったのは、俺達大人の責任でもあるんだよ。何もしてやれなかった俺に、どうか償わせてくれ」
跪くとギプスの右手の甲にそっとキスをした。
リコはお姫様になった気分でドキドキする。
アレキは続けて後ろにいるレオを指した。
「ちなみにレオは社会人歴長いから、大人だからね? コキ使ってやってくれ」
レオは頷く。
「僕の部屋はこの廊下の奥にありますから、いつでも呼び出してください。すぐに伺います」
「え!?」
目を丸くするリコに、ミーシャが教えてくれた。
「リコの怪我が治るまで、レオ君もここに住むんだって」
思ってもみなかった展開に、リコの胸は再び早鐘を打っていた。
(同棲、ではないけど、同じアパートみたいな? いや、同居??)
「そ、そそそ、それはかたじけない……」
明らかに動揺しているリコを、マニは笑っていた。
* * * *
ランチの時間。
リビングで一番嬉しそうなのは、アレキだった。
「お嬢さんの退院祝いだ!」
勢い良くシャンパンを開けて、ミーシャに怒られている。
「お昼間からまたお酒! ダメですよ」
「いいじゃないか、こんなめでたい日なんだから」
「午後からお客様が来るのに」
「大丈夫、大丈夫~」
テーブルの上には大量の皿が並んでいる。様々な肉料理にサラダ、パン、果物、ケーキ……。
「うっひゃぁ、美味しそう!」
ご馳走に飛びつくマニの横で、薄味の病院食ばかり食べていたリコは、キューンとお腹が鳴るほど欲している。だけど……両手が動かず、情けない気持ちになっていた。なんとかフォークを持ってみようと固定された右手で足掻いていると、ミーシャが止めた。
「ダメー! 絶対安静なんだよ!? 動いたら骨が付かないって、お医者様が言ってたんだから!」
リコのフォークを取り上げると、ポテトサラダをすくって口に運んでくれた。
「はい、あーん」
「あ、あーん」
ミーシャに食べさせてもらうポテトは、ほっぺがジーンとするほど美味しい。
「食べたい物を言ってね。取るから」
マニがそれを見て真似をする。
「あたしも、あたしもやりたい! ほらリコ、あーん!」
大盛りのスプーンを突っ込まれて、リコは自分が雛鳥になった気持ちになっていた。ミーシャとマニがスプーンを持った天使に見える。
3人が仲良くランチを食べている姿を、アレキは満足そうに眺めている。
「家族って、いいよなぁ。レオ君も戻って来てくれて、俺は嬉しいよ」
隣のレオに向けてシャンパンを掲げた。
「期間限定ですよ。宮廷を離れると聞いてノエル王子がごねているらしいので、なるべく王子の部屋に行く時間を増やさないといけません」
「じゃじゃ馬君はレオ君にご執心だよな~」
アレキはレオに近づくと、耳元で囁いた。
「好きなのかな? 君のこと」
レオはグッと喉を詰まらせた。
リコの件にかけて言っているのは明らかで、レオは声を顰める。
「お願いですから、変なお節介はやめてくださいね?」
「え? 俺が? キューピッドに?」
レオはアレキの赤に近い紫色の目を、冷めた目で睨んだ。
リコにとって、安心と緊張が入り混じる、金ピカ城での奇妙な生活が始まろうとしていた。
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