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ご近所のおばあちゃん
しおりを挟む近所に住むおばあちゃんは、早くに旦那さんを亡くして子供もいない。天涯孤独だと言っていた。
そんなおばあちゃんに、私は小さい頃から本当の孫のように可愛がってもらっていた。
会ったら挨拶するのは勿論の事、おばあちゃんが出掛けるタイミングなら『行ってらっしゃい』、帰ってきた時は『おかえりなさい』と言っていた。それが当たり前のことだと思っていた。
ある時、おばあちゃんの家でお茶菓子を一緒に食べていた時だった。おばあちゃんは、私に『行ってらっしゃい』や『おかえり』と言われるのが嬉しいのだと教えてくれた。どうして涙ぐむほど嬉しいのか、小4の私には真意が分からなかった。
私が高校に上がると同時に両親が離婚した。母と2人で暮らし始めたのだが、母は仕事詰めですれ違いの生活が当たり前になった。
学校やバイトから帰ると、誰も居ない家に入り『ただいま』と呟く。家を出る時は、誰に見送られることもなく無言で出ていく。
私は漸く、おばあちゃんの気持ちが分かった気がした。きっと寂しかったのだ。
暫くおばあちゃんとはご無沙汰だったが、折を見て会いに行くようになった。おばあちゃんは、久々に孫に会えたようだと喜んでくれた。
高校を卒業する直前、おばあちゃんが病気で倒れた。どうにも手の打ちようがないらしい。もって半年だそうだ。
社会人になって初めてのお給料で、母とは別におばあちゃんとお茶をしに行った。会社に馴染めず落ち込んでいた私に、お弁当を作って励ましてくれた。
おばあちゃんは眠るように亡くなった。半年と宣言された余命を超えて、2年が経った秋の終わりだった。
おばあちゃんの葬儀で最後のお別れの時、私はおばあちゃんに花を手向けながらできる限りの笑顔で言った。
「おばあちゃん、行ってらっしゃい」
――行ってきますね――
そう聞こえたような気がした。
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