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よつば 綴

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雨降りの散歩

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雨の日は必ず散歩に行く。
坊やは傘を持ち、長靴を履いて意気揚々と玄関を出る。

坊やは傘をさし、そっと水溜まりに挑む。
足元を覗き、うつむく坊やは傘ごとお辞儀をする。
しかし、坊やが雨に打たれることはない。

何故なら、お母さんが後ろから傘で覆ってくれているのだもの。


傘を叩く雨が弱まり、ふと、坊やは雨が上がったと思い傘を閉じる。
違うんだよ。
お母さんの背中はびしょ濡れである。

雨が止んだのではないことに気づき、再び傘をさす。
暫くするとまた遊び、始め閉じた傘に挟まり、まるで傘お化けのようになっている。
後ろから差し出す傘は相変わらず。
濡れる背中も相変わらず。
『可愛い』と胸が高鳴るばかりで。

家に帰る頃には、長靴に水が入り、坊やの傘は外も内も濡れている。
お母さんはびしょ濡れなのに、にこにこと坊やを見守っている。
こうして、幸せな雨降りのお散歩を終えた。

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