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11. 再び指
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その日の夜から、リュカは蘇芳とセキシと食事を共にすることになった。きっかけは昼食の時のことだった。
いつものようにセキシが食事を運んでくれたのだが、離れた場所に座ってリュカが食べるのを見ていたのだ。彼は食事を取らないのか聞いてみると、別の時間帯に一人で取っているということだった。じゃあ一緒に食べようとリュカが提案すると、セキシはひどく驚いた様子で目を丸くしていた。
「一人で食べるのも悪くないけど、一緒だともっとうまいんじゃないかと思ってさ。あと、この箸っていうの慣れないから、教えてほしい。だめ?」
「ええと…蘇芳様に確認してみないと何とも…」
「…セキシって何をするにもあいつの許可がいるのか?」
「そういう訳ではないのですが…」
「じゃあ、どうして?俺は、セキシと一緒に食べたいって言ってるのに。セキシがしたいかどうかの意志だけじゃだめなのかよ」
「リュカ様は蘇芳様の伴侶ですし、その蘇芳様を差し置いて私だけがご相伴にあずかるのはどうかと…」
リュカがむっと唇を尖らせると、蘇芳の従者は苦笑いを浮かべた。セキシを困らせたいわけではなかったので、少年はそれ以上は何も言わないでおいた。それから夕方近くまで惰眠を貪ったリュカは、無遠慮に入室した蘇芳によって起こされた。
「お前、ほんとよく寝るな。赤ん坊みてえ」
起き抜けにちくりと嫌味を言われ、リュカは顔をしかめた。
「…うるさいな。なんか用?」
「用も何も、リュカが飯一緒に食いたいって言ったんだろうが」
驚きのあまり反応を取れないでいると、例の如く障子が開いてセキシが入ってきた。布団の上で呆然とするリュカをよそに、座卓に三名分の食事が配膳されていく。気がつけばセキシに抱き上げられ、座椅子に座っていた。こうもひょいひょい運ばれては、本当に赤ん坊みたいで複雑だ。自分を挟む形で左右にセキシと蘇芳が座る。
「リュカ様、どうぞ召し上がってください」
セキシに促されて箸を取る。右を一瞥すれば、蘇芳はもう食べ始めていた。自分はセキシと一緒に食べたかったのであって、蘇芳は別に呼んでないのに、と心の中で愚痴る。
「あっ」
小鉢に入っていた豆を箸で掴もうとすると、滑って机の上を転がっていく。腕を伸ばして捕まえようとするが、力めば力むほど豆は逃げていった。すると違う箸が伸びて、横から豆を掻っ攫ってしまう。固まるリュカの目の前で、それは蘇芳の口の中へと消えた。
「俺の!」
「うるせえな。食べ物で遊んでっからだろ」
「遊んでない!好きでやってんじゃ…あ、くそっ!」
「それで遊んでないってのか?」
再度挑戦するが、無情にも別の豆が卓上に転がる。蘇芳のにやつく顔に唸り声が出る。すると今度はセキシの箸が豆をすくいあげた。そのままリュカの口元へと運ぶ。少年は脊髄反射で目の前の食べ物に食いついた。
「んまい」
噛み砕きながらセキシに笑いかける。途端に襟首をぐっと掴まれた。一体誰が、など分かり切ってはいるのだが、リュカは一応振り返った。犯人である蘇芳は打って変わって眉間に皺を寄せている。
「おい、箸の使い方教えてやるから自分で食え。セキシに甘えんな」
「はあ?別に甘えてないし!」
「ア゛?」
地を這うように低い声と殺気をにじませた顔で凄まれ、リュカは口を閉じた。セキシがくすくす笑う声が聞こえてくる。今のやり取りのどこに笑うポイントがあったのか全くわからない。
理解できないのは蘇芳もだ。さっきまで意地の悪い笑みを浮かべていたのに、一瞬で不機嫌になっている。何なんだよもう。情緒不安定なのかよ、とは思うも怖くて口にできない。
蘇芳からは下手くそだとか愚図だとか罵られ、セキシからは励まされながら、正しい箸の持ち方を教わり、拙いながらも豆を食べられるようになった。
「なあ、俺もう寝るんだけど」
リュカは枕を胸に抱きながら、座卓で酒を嗜む蘇芳に話しかけた。彼は、食事と風呂を終えても部屋に居座っている。セキシは早々に引き上げているにも関わらずだ。
「だから?寝ればいいじゃねえか」
「寝ればいいって…。あんたがいると寝にくいんだよ!」
気安く言うな!蘇芳の前で無防備な姿を晒すなど嫌な予感しかしない。まるで少年が駄々をこねているかのように、赤鬼はため息を吐くと不意に立ち上がり、リュカの元へと近づいてきた。
「リュカ、下脱げ」
「はっ!?」
「二度も言わせんな。ケツ出せって」
蘇芳は舌打ちしたが、リュカは驚きのあまり、馬鹿みたいに口を開けていることしかできなかった。
「な、なんでっ!」
「俺が直々にケツに薬塗ってやる」
直々って、なんでそう恩着せがましいんだよ。元はと言えばあんたが無茶苦茶したからだろ。
蘇芳は布団の上に腰を下ろすと、リュカの寝間着を引っ張った。ずるりと脱げて尻が露出する。リュカは慌てて赤鬼の手首を掴んだ。
「い、いいっいらねえ!」
「何でだよ。遠慮すんなって」
「遠慮じゃないっつの!も、もう治ったから必要ないんだよ!」
全くの嘘である。今朝よりかは和らいだものの、尻穴はまだじんじんと痛む。だけど、セキシに薬を塗られるのよりも、蘇芳にされることの方が抵抗を感じた。その違和感を言葉にはできない。ただ本能がそう告げていた。
へえ、と呟く蘇芳は口角を吊り上げて、寝間着を掴む手に力をこめた。ズボンがすぽんと脱げ、下半身丸出しのリュカは布団の上でひっくり返る。
「なら、ここにまた俺のチンポぶちこむぞ」
「ひえっ」
「いいよな?もう治ってんだろ?」
悪魔のように邪悪な笑みを浮かべる蘇芳に、リュカの顔は引きつった。喉から小さな悲鳴がもれる。鬼の指先が尻穴に触れて、小さな痛みが走った。
昨日に続いて今日もあの巨根を受け入れるなど無理だ。本当に尻穴がぶっ壊れてしまう。そう思った途端に恐怖で動けなくなって、リュカの目からは涙がこぼれた。
「むり、無理っ。まだ治ってない…っ。痛いから、嫌だ…」
「…意地張らずに最初から素直にそう言え」
蘇芳の雰囲気がふと柔らかくなり、彼の唇が優しく少年の涙を吸い取る。唇はそのまま下降し、リュカのそれを食む。蘇芳は少年の腰の下に腕を差しこみ、彼の体を起こして己の膝に乗せた。大きな手のひらで尻の肉を揉みしだかれ、リュカはいやいやと頭を振った。
「…リュカ、尻柔らけえな。餅みてえ」
「…な、で尻揉むんだよぉ…」
「ただのスキンシップだろ。尻柔らかいって褒めてんだから、泣くなよ」
「嬉しくねえ…っ」
赤鬼の肩に顔を埋めて、ぐじゅぐじゅと鼻を鳴らすリュカに、蘇芳はくつくつとのどを鳴らして笑った。突然首筋を舐められて、少年は肩を竦めた。逃げたくてもがっちりと抱きしめられていて身じろぎすら難しい。
「蘇芳…っ、なにす…!」
「お前が怖くないよう、尻から意識逸らしてやってんだろうが。優しい旦那に感謝しろな」
「んぃ…!?」
首筋を吸われて、体が跳ねる。その瞬間、軟膏をまとった指が中に入ってきた。
「や、…なんで中…っ」
「何でって、中も傷ついてるかもしれねえだろ」
既視感。セキシも全く同じことを言って指を突っ込んできた。さすがは主従。考えることは同じらしい。朝も晩も指を挿入されて、嫌でも比較してしまう。セキシの指は細くて触り方もソフトだったが、蘇芳は正反対だ。太さのある指が、無遠慮に中を探る。
「ぃあ…ぁ、ふ、んン…っ」
「えっろい声出すなよ…。感じてんのか?」
耳にくっつく程に唇を寄せられ、声を吹きこまれる。熱を孕んだ、深い重低音に電気のようなものが背筋を走った。蘇芳の人差し指は根元まで押しこまれたかと思えば、浅い部分で抜き差しを繰り返したりと、明らかに薬を塗布するのとは全く違う目的で動いてるのが丸わかりだ。
昨日体に覚えさせられたばかりの快感が蘇る。寝間着に隠れてはいるが、性器が勃っているのがわかった。
「…やだっ、抜いて、抜いて…っ」
「お前の中がきつく締め付けてくるから、抜けねえんだよ」
そう言って蘇芳は笑いながら指を動かしている。いつしか、くちゅくちゅと卑猥な水音が聞こえてきてくる。赤鬼の指を締め付けてしまうのは、彼がリュカの弱い部分を突いてくるからだ。その度に体が勝手に反応して、尻に力が入ってしまう。
「…っふ、ぅ、…ん」
「あー、くそ。入れてえな」
何を、とは怖くて聞けなかった。否、聞かなくてもわかっていた。自分の下肢の下で硬いものが隆起していたからだ。そっと赤鬼を見上げると、ぎらついた瞳が己を見下ろしていた。赤い瞳の奥に欲望の光が灯っているのがわかって、肌が粟立った。
「…いやだっ、死ぬ…!」
「分かってる。入れたりしねえよ。だから泣くなって」
眉尻を垂れて激しく泣き始めたリュカを見て、蘇芳は軽く吹き出した。苦笑しつつ、少年の唇を奪う。中を掻きまわす指とは裏腹に、口づけは優しく、まるであやすようなものだった。
これまでキスなど全く経験がなかったのに、昨日今日で何度口づけを受けているのかわからない。激しいものはまだ慣れないし、戸惑いが先行するが、それでも柔らかな口づけはだんだんと気持ちいいと感じてきている自分がいる。
「…ん、ゃだ…っあ、くぅ…っ」
ある一点を指の腹で強く押され、リュカは達した。蘇芳にもたれかかり、乱れた息を整える。ぽんぽんと背中を撫でられて、少し気持ちが良かった。
「セキシ」
「ここに」
すっと開いた障子の先にセキシが正座していた。手に持った、蒸しタオルを主人に差し出す。当然の如く蘇芳はそれを受け取り、己の手とリュカの下肢を拭った。その間、少年は呆然としていた。
「な、えっ、はや、何でっ!?も、も、もしかしてずっとそこにいた…っ!?」
いくら何でも準備が良すぎる。障子の外にいて、ずっと聞いていたのだろうか。だとしたら恥ずかしすぎる。朝セキシに薬を塗られた時も変な声を出してしまったが、これはその比ではない。
「さあ、どうでしょう」
セキシは明言せず、リュカの替えの寝間着を差し出し、にっこりと笑うだけだった。どっち、ねえどっち!?と食い下がる少年をそのままに、彼は障子を閉めて姿を消したのだった。
いつものようにセキシが食事を運んでくれたのだが、離れた場所に座ってリュカが食べるのを見ていたのだ。彼は食事を取らないのか聞いてみると、別の時間帯に一人で取っているということだった。じゃあ一緒に食べようとリュカが提案すると、セキシはひどく驚いた様子で目を丸くしていた。
「一人で食べるのも悪くないけど、一緒だともっとうまいんじゃないかと思ってさ。あと、この箸っていうの慣れないから、教えてほしい。だめ?」
「ええと…蘇芳様に確認してみないと何とも…」
「…セキシって何をするにもあいつの許可がいるのか?」
「そういう訳ではないのですが…」
「じゃあ、どうして?俺は、セキシと一緒に食べたいって言ってるのに。セキシがしたいかどうかの意志だけじゃだめなのかよ」
「リュカ様は蘇芳様の伴侶ですし、その蘇芳様を差し置いて私だけがご相伴にあずかるのはどうかと…」
リュカがむっと唇を尖らせると、蘇芳の従者は苦笑いを浮かべた。セキシを困らせたいわけではなかったので、少年はそれ以上は何も言わないでおいた。それから夕方近くまで惰眠を貪ったリュカは、無遠慮に入室した蘇芳によって起こされた。
「お前、ほんとよく寝るな。赤ん坊みてえ」
起き抜けにちくりと嫌味を言われ、リュカは顔をしかめた。
「…うるさいな。なんか用?」
「用も何も、リュカが飯一緒に食いたいって言ったんだろうが」
驚きのあまり反応を取れないでいると、例の如く障子が開いてセキシが入ってきた。布団の上で呆然とするリュカをよそに、座卓に三名分の食事が配膳されていく。気がつけばセキシに抱き上げられ、座椅子に座っていた。こうもひょいひょい運ばれては、本当に赤ん坊みたいで複雑だ。自分を挟む形で左右にセキシと蘇芳が座る。
「リュカ様、どうぞ召し上がってください」
セキシに促されて箸を取る。右を一瞥すれば、蘇芳はもう食べ始めていた。自分はセキシと一緒に食べたかったのであって、蘇芳は別に呼んでないのに、と心の中で愚痴る。
「あっ」
小鉢に入っていた豆を箸で掴もうとすると、滑って机の上を転がっていく。腕を伸ばして捕まえようとするが、力めば力むほど豆は逃げていった。すると違う箸が伸びて、横から豆を掻っ攫ってしまう。固まるリュカの目の前で、それは蘇芳の口の中へと消えた。
「俺の!」
「うるせえな。食べ物で遊んでっからだろ」
「遊んでない!好きでやってんじゃ…あ、くそっ!」
「それで遊んでないってのか?」
再度挑戦するが、無情にも別の豆が卓上に転がる。蘇芳のにやつく顔に唸り声が出る。すると今度はセキシの箸が豆をすくいあげた。そのままリュカの口元へと運ぶ。少年は脊髄反射で目の前の食べ物に食いついた。
「んまい」
噛み砕きながらセキシに笑いかける。途端に襟首をぐっと掴まれた。一体誰が、など分かり切ってはいるのだが、リュカは一応振り返った。犯人である蘇芳は打って変わって眉間に皺を寄せている。
「おい、箸の使い方教えてやるから自分で食え。セキシに甘えんな」
「はあ?別に甘えてないし!」
「ア゛?」
地を這うように低い声と殺気をにじませた顔で凄まれ、リュカは口を閉じた。セキシがくすくす笑う声が聞こえてくる。今のやり取りのどこに笑うポイントがあったのか全くわからない。
理解できないのは蘇芳もだ。さっきまで意地の悪い笑みを浮かべていたのに、一瞬で不機嫌になっている。何なんだよもう。情緒不安定なのかよ、とは思うも怖くて口にできない。
蘇芳からは下手くそだとか愚図だとか罵られ、セキシからは励まされながら、正しい箸の持ち方を教わり、拙いながらも豆を食べられるようになった。
「なあ、俺もう寝るんだけど」
リュカは枕を胸に抱きながら、座卓で酒を嗜む蘇芳に話しかけた。彼は、食事と風呂を終えても部屋に居座っている。セキシは早々に引き上げているにも関わらずだ。
「だから?寝ればいいじゃねえか」
「寝ればいいって…。あんたがいると寝にくいんだよ!」
気安く言うな!蘇芳の前で無防備な姿を晒すなど嫌な予感しかしない。まるで少年が駄々をこねているかのように、赤鬼はため息を吐くと不意に立ち上がり、リュカの元へと近づいてきた。
「リュカ、下脱げ」
「はっ!?」
「二度も言わせんな。ケツ出せって」
蘇芳は舌打ちしたが、リュカは驚きのあまり、馬鹿みたいに口を開けていることしかできなかった。
「な、なんでっ!」
「俺が直々にケツに薬塗ってやる」
直々って、なんでそう恩着せがましいんだよ。元はと言えばあんたが無茶苦茶したからだろ。
蘇芳は布団の上に腰を下ろすと、リュカの寝間着を引っ張った。ずるりと脱げて尻が露出する。リュカは慌てて赤鬼の手首を掴んだ。
「い、いいっいらねえ!」
「何でだよ。遠慮すんなって」
「遠慮じゃないっつの!も、もう治ったから必要ないんだよ!」
全くの嘘である。今朝よりかは和らいだものの、尻穴はまだじんじんと痛む。だけど、セキシに薬を塗られるのよりも、蘇芳にされることの方が抵抗を感じた。その違和感を言葉にはできない。ただ本能がそう告げていた。
へえ、と呟く蘇芳は口角を吊り上げて、寝間着を掴む手に力をこめた。ズボンがすぽんと脱げ、下半身丸出しのリュカは布団の上でひっくり返る。
「なら、ここにまた俺のチンポぶちこむぞ」
「ひえっ」
「いいよな?もう治ってんだろ?」
悪魔のように邪悪な笑みを浮かべる蘇芳に、リュカの顔は引きつった。喉から小さな悲鳴がもれる。鬼の指先が尻穴に触れて、小さな痛みが走った。
昨日に続いて今日もあの巨根を受け入れるなど無理だ。本当に尻穴がぶっ壊れてしまう。そう思った途端に恐怖で動けなくなって、リュカの目からは涙がこぼれた。
「むり、無理っ。まだ治ってない…っ。痛いから、嫌だ…」
「…意地張らずに最初から素直にそう言え」
蘇芳の雰囲気がふと柔らかくなり、彼の唇が優しく少年の涙を吸い取る。唇はそのまま下降し、リュカのそれを食む。蘇芳は少年の腰の下に腕を差しこみ、彼の体を起こして己の膝に乗せた。大きな手のひらで尻の肉を揉みしだかれ、リュカはいやいやと頭を振った。
「…リュカ、尻柔らけえな。餅みてえ」
「…な、で尻揉むんだよぉ…」
「ただのスキンシップだろ。尻柔らかいって褒めてんだから、泣くなよ」
「嬉しくねえ…っ」
赤鬼の肩に顔を埋めて、ぐじゅぐじゅと鼻を鳴らすリュカに、蘇芳はくつくつとのどを鳴らして笑った。突然首筋を舐められて、少年は肩を竦めた。逃げたくてもがっちりと抱きしめられていて身じろぎすら難しい。
「蘇芳…っ、なにす…!」
「お前が怖くないよう、尻から意識逸らしてやってんだろうが。優しい旦那に感謝しろな」
「んぃ…!?」
首筋を吸われて、体が跳ねる。その瞬間、軟膏をまとった指が中に入ってきた。
「や、…なんで中…っ」
「何でって、中も傷ついてるかもしれねえだろ」
既視感。セキシも全く同じことを言って指を突っ込んできた。さすがは主従。考えることは同じらしい。朝も晩も指を挿入されて、嫌でも比較してしまう。セキシの指は細くて触り方もソフトだったが、蘇芳は正反対だ。太さのある指が、無遠慮に中を探る。
「ぃあ…ぁ、ふ、んン…っ」
「えっろい声出すなよ…。感じてんのか?」
耳にくっつく程に唇を寄せられ、声を吹きこまれる。熱を孕んだ、深い重低音に電気のようなものが背筋を走った。蘇芳の人差し指は根元まで押しこまれたかと思えば、浅い部分で抜き差しを繰り返したりと、明らかに薬を塗布するのとは全く違う目的で動いてるのが丸わかりだ。
昨日体に覚えさせられたばかりの快感が蘇る。寝間着に隠れてはいるが、性器が勃っているのがわかった。
「…やだっ、抜いて、抜いて…っ」
「お前の中がきつく締め付けてくるから、抜けねえんだよ」
そう言って蘇芳は笑いながら指を動かしている。いつしか、くちゅくちゅと卑猥な水音が聞こえてきてくる。赤鬼の指を締め付けてしまうのは、彼がリュカの弱い部分を突いてくるからだ。その度に体が勝手に反応して、尻に力が入ってしまう。
「…っふ、ぅ、…ん」
「あー、くそ。入れてえな」
何を、とは怖くて聞けなかった。否、聞かなくてもわかっていた。自分の下肢の下で硬いものが隆起していたからだ。そっと赤鬼を見上げると、ぎらついた瞳が己を見下ろしていた。赤い瞳の奥に欲望の光が灯っているのがわかって、肌が粟立った。
「…いやだっ、死ぬ…!」
「分かってる。入れたりしねえよ。だから泣くなって」
眉尻を垂れて激しく泣き始めたリュカを見て、蘇芳は軽く吹き出した。苦笑しつつ、少年の唇を奪う。中を掻きまわす指とは裏腹に、口づけは優しく、まるであやすようなものだった。
これまでキスなど全く経験がなかったのに、昨日今日で何度口づけを受けているのかわからない。激しいものはまだ慣れないし、戸惑いが先行するが、それでも柔らかな口づけはだんだんと気持ちいいと感じてきている自分がいる。
「…ん、ゃだ…っあ、くぅ…っ」
ある一点を指の腹で強く押され、リュカは達した。蘇芳にもたれかかり、乱れた息を整える。ぽんぽんと背中を撫でられて、少し気持ちが良かった。
「セキシ」
「ここに」
すっと開いた障子の先にセキシが正座していた。手に持った、蒸しタオルを主人に差し出す。当然の如く蘇芳はそれを受け取り、己の手とリュカの下肢を拭った。その間、少年は呆然としていた。
「な、えっ、はや、何でっ!?も、も、もしかしてずっとそこにいた…っ!?」
いくら何でも準備が良すぎる。障子の外にいて、ずっと聞いていたのだろうか。だとしたら恥ずかしすぎる。朝セキシに薬を塗られた時も変な声を出してしまったが、これはその比ではない。
「さあ、どうでしょう」
セキシは明言せず、リュカの替えの寝間着を差し出し、にっこりと笑うだけだった。どっち、ねえどっち!?と食い下がる少年をそのままに、彼は障子を閉めて姿を消したのだった。
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