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21.父子の過去 2
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泣き疲れてうたた寝していたティオは、小さな物音を耳にして目を覚ました。洞窟の入口に目をやれば、ザクセンが帰ってきたところのようだった。
青年は慌てて駆け寄り、いつも通り彼の体を隅々まで調べた。今夜も怪我がないと知って満足するティオとは裏腹に、ザクセンは眉間に皺を寄せている。
「いつも言っているが…、わざわざ起きて来なくてもいい」
「俺が好きでしてるんだから、いいんだ」
「物好きな奴だ」
ザクセンは呆れた様子で大きく溜め息を吐き、人型の姿になった。焚き火の側に置かれた太い丸太に腰掛け、見回りのついでに狩ったらしい小動物の解体を始める。
「それ、今食べる?」
「いや、干し肉にする」
それなら、とティオは魚の干物と根菜で簡単に汁物を作った。干物をよく炙っていれると、香ばしくなっておいしい。我ながらおいしく作れたと思うものの、食が進まない。青年は、タータの話を思い出していた。
「どこか具合でも悪いのか。……目が赤い」
ザクセンは早くも一杯目を平らげ、お代わりを自分で注いでいる。この暗闇の中でも、泣いたことは隠しきれないらしい。汁の入った木の器を両手で抱え、青年は誤魔化そうかどうしようか逡巡した。
「その…タータからお母さんの話を聞いて…」
大狐の動きがぴたりと止まる。だが一拍の後、柄杓でぐるりと鍋をかき混ぜ、器に中身を注いだ。
「…何を聞いた」
きっと触れられたくないところに踏み込んで、さすがに怒られるかと思ったが、ザクセンの声音は落ち着いていた。表情すら変わらない。
ティオはタータから聞いたことを全て話した。その間ずっと、ザクセンはただ黙々と食事をしていた。青年が話し終えるのと時を同じくして、大狐は空になった器を地面に置いた。
「体を清めて来る」
ザクセンの姿が闇夜に紛れて見えなくなると、ティオは頭を抱えた。やってしまった、と後悔の念が押し寄せる。促されるままについ話してしまったが、気分の良いものではないだろう。
鍋の中は空になっていた。手元の自分の椀を見下ろす。ますます食欲は減退していたが、残すのも捨てるのもったいなくて、ティオは無理矢理胃に流しこんだ。
片づけが終わっても、ザクセンは戻って来なかった。罪悪感もあり、ティオは不安に駆られてしまう。暫く待ってみるも、焦れた青年は様子を見に行くことにした。タータを一人残して行くことに躊躇ったが、少しの間だと自分に言い聞かせる。
夜に一人出歩くのは初めてで、妙な気分だった。昼間以上にしんと静まり返った周囲は、赤青黄色の様々な光を纏った虫が優雅に宙を漂っている。植物の中にも柔らかな光を発しているものがあり、幻想的な光景だ。
少しだけ散歩を楽しんだ後、ティオは川べりに見慣れた獣姿を見つけた。ザクセンのお気に入りだと、タータが教えてくれた場所だった。大狐はティオに気づき一瞥を寄越したものの、すぐにそっぽを向いてしまう。薬師は彼の傍にそっと膝をついた。
「ザクセンさん、ごめん。俺、無神経で…」
「ナンナは、タータの母親は愛情深い狸だった」
静かに言葉を紡ぐザクセンに、ティオは慌てて押し黙る。
「俺の一族は炎を司り、近親間で婚姻を繰り返して繁栄してきた一族だった。一族以外の者は決して信用せず、懐疑的で気位が高かった。成年を迎えたばかりの俺も傲慢で、ある時出会ったナンナのことも最初は見下していた。だが、ナンナはそんな俺をありのまま受け入れてくれ、同時に視野を広げてくれた。一族の者とは異なる価値観や考え方に触れるうちに、俺はナンナと生を共にしたいと考えるようになった。だが、当然一族は反対した。俺の話もろくに聞こうとせず、ナンナを傷つけてまで引き離そうとした」
「それで、駆け落ちを…」
「ナンナは、認めてもらえるよう説得しよう、一族から離れては駄目だと俺を宥めた。反対を押し切ってまで婚姻を結ぶことは俺の本意でもない。だが、何度試みようと門前払いを受けた。若い連中の中には、俺達に理解を示す者もいたが、絶対的な発言力を持つ長老は決して認めようとはしなかった。ナンナもとうとう諦めてな。二人だけで暮らすようになった。
それから何年も経って、タータが産まれた。幸せの絶頂だった。ナンナに似た容姿で、自分の炎の能力を受け継いだ可愛い我が子と妻に囲まれて、穏やかで満ち足りた日々だった。」
当時のことを思い出しているのか、ザクセンの表情が柔らかくなる。
「…ある日、遠くの方に狩りに出かけた。洞窟の周囲に小魔獣の気配が一切無かったからだ。その時は何故かはわからず、さして疑問にも思っていなかった。帰路に着いて初めて、異変に気づいた。タータが一人大泣きしていて、一緒にいるはずのナンナが忽然と消えていた。かつての仲間とナンナの匂いが洞窟近くに微かに残っていた。匂いを辿ると、重傷を負った瀕死のナンナが地面に体を横たえていた。一族が四つ目の狼の群れに襲われ、皆殺しにされたと息も絶え絶えに口にして、絶命した。タータの元へ帰ろうとしたのだろうが、その望みは叶わなかった」
ティオは言葉を失っていた。タータから聞いた時も衝撃を受けたが、所々情報が欠けていて分かりづらい点があった。だがこうしてザクセンの口から事実を耳にして、より胸が張り裂けそうに苦しくなる。
「襲撃してきた狼共は、全部で六頭だった。ナンナの残した言葉通り、顔には大きな四つの目があった。六頭の内、三頭は足掻く仲間達によって殺された。二頭は、俺が殺した。最後の一頭さえ見つけられれば、ナンナや仲間達の無念を晴らすことが出来る」
大狐は遠くを見ていた。まるで他人事のように淡々と語っている。そう語れるようになるまで、どれほど苦しんだのだろう。
そう思うと鼻の奥がツンと痛む。
「もしかして…夜の見回りは、狼を見つけるためでもある…?」
「そうだ」
よどみなく答えるザクセンに、ティオは膝の上の拳を握り締めた。
止めてくれ、と言いたかった。運よく最後の一頭を見つけたとして、良くて相打ち、最悪負けて命を落としてしまったらどうするのだろう。父親まで失ってしまったら、タータの心は完全に壊れてしまう。
復讐に囚われるのでなく、タータと一緒に未来に向かって歩んで欲しい、と願うのは自分のエゴだとティオは分かっていた。
それに、ザクセンはその道もあると分かった上で復讐する道を選んだ気がした。そこに自分が立ち入る権利はない。自分は居候の身だし、森で生まれたわけでも住んでいるわけでもない。何も知らない他人が口出ししていい問題ではない。
「…お前は、最近泣いてばかりだな」
涙で歪む視界でも、ザクセンが苦笑いをしているのがわかる。ティオは唇を噛んで、嗚咽が漏れないようにするので精一杯だった。先程も泣いたのに、この溢れる涙は一体どこから来ているのか不思議だった。
「すっかり体が冷えてしまった。戻るぞ。…タータも、俺達がいないことに気がついて泣いているようだ」
ザクセンがゆっくりと腰を上げる。
「…ごめ…、先に行ってて。顔、…洗ってから戻る」
ティオはザクセンの顔を見ることが出来なかった。手の甲で、涙が止まらない目を擦る。
「…あまり遅くなるな。タータが心配する」
頷くと、ザクセンが横を通り去る。静寂のなか、草を踏みしめる音がする。大狐の気配が完全になくなると、ティオは涙を拭い、両手で頬を叩いた。頭部全体にじんじんと痛みが広がる。だが、思考はすっきりとしていた。
青年は慌てて駆け寄り、いつも通り彼の体を隅々まで調べた。今夜も怪我がないと知って満足するティオとは裏腹に、ザクセンは眉間に皺を寄せている。
「いつも言っているが…、わざわざ起きて来なくてもいい」
「俺が好きでしてるんだから、いいんだ」
「物好きな奴だ」
ザクセンは呆れた様子で大きく溜め息を吐き、人型の姿になった。焚き火の側に置かれた太い丸太に腰掛け、見回りのついでに狩ったらしい小動物の解体を始める。
「それ、今食べる?」
「いや、干し肉にする」
それなら、とティオは魚の干物と根菜で簡単に汁物を作った。干物をよく炙っていれると、香ばしくなっておいしい。我ながらおいしく作れたと思うものの、食が進まない。青年は、タータの話を思い出していた。
「どこか具合でも悪いのか。……目が赤い」
ザクセンは早くも一杯目を平らげ、お代わりを自分で注いでいる。この暗闇の中でも、泣いたことは隠しきれないらしい。汁の入った木の器を両手で抱え、青年は誤魔化そうかどうしようか逡巡した。
「その…タータからお母さんの話を聞いて…」
大狐の動きがぴたりと止まる。だが一拍の後、柄杓でぐるりと鍋をかき混ぜ、器に中身を注いだ。
「…何を聞いた」
きっと触れられたくないところに踏み込んで、さすがに怒られるかと思ったが、ザクセンの声音は落ち着いていた。表情すら変わらない。
ティオはタータから聞いたことを全て話した。その間ずっと、ザクセンはただ黙々と食事をしていた。青年が話し終えるのと時を同じくして、大狐は空になった器を地面に置いた。
「体を清めて来る」
ザクセンの姿が闇夜に紛れて見えなくなると、ティオは頭を抱えた。やってしまった、と後悔の念が押し寄せる。促されるままについ話してしまったが、気分の良いものではないだろう。
鍋の中は空になっていた。手元の自分の椀を見下ろす。ますます食欲は減退していたが、残すのも捨てるのもったいなくて、ティオは無理矢理胃に流しこんだ。
片づけが終わっても、ザクセンは戻って来なかった。罪悪感もあり、ティオは不安に駆られてしまう。暫く待ってみるも、焦れた青年は様子を見に行くことにした。タータを一人残して行くことに躊躇ったが、少しの間だと自分に言い聞かせる。
夜に一人出歩くのは初めてで、妙な気分だった。昼間以上にしんと静まり返った周囲は、赤青黄色の様々な光を纏った虫が優雅に宙を漂っている。植物の中にも柔らかな光を発しているものがあり、幻想的な光景だ。
少しだけ散歩を楽しんだ後、ティオは川べりに見慣れた獣姿を見つけた。ザクセンのお気に入りだと、タータが教えてくれた場所だった。大狐はティオに気づき一瞥を寄越したものの、すぐにそっぽを向いてしまう。薬師は彼の傍にそっと膝をついた。
「ザクセンさん、ごめん。俺、無神経で…」
「ナンナは、タータの母親は愛情深い狸だった」
静かに言葉を紡ぐザクセンに、ティオは慌てて押し黙る。
「俺の一族は炎を司り、近親間で婚姻を繰り返して繁栄してきた一族だった。一族以外の者は決して信用せず、懐疑的で気位が高かった。成年を迎えたばかりの俺も傲慢で、ある時出会ったナンナのことも最初は見下していた。だが、ナンナはそんな俺をありのまま受け入れてくれ、同時に視野を広げてくれた。一族の者とは異なる価値観や考え方に触れるうちに、俺はナンナと生を共にしたいと考えるようになった。だが、当然一族は反対した。俺の話もろくに聞こうとせず、ナンナを傷つけてまで引き離そうとした」
「それで、駆け落ちを…」
「ナンナは、認めてもらえるよう説得しよう、一族から離れては駄目だと俺を宥めた。反対を押し切ってまで婚姻を結ぶことは俺の本意でもない。だが、何度試みようと門前払いを受けた。若い連中の中には、俺達に理解を示す者もいたが、絶対的な発言力を持つ長老は決して認めようとはしなかった。ナンナもとうとう諦めてな。二人だけで暮らすようになった。
それから何年も経って、タータが産まれた。幸せの絶頂だった。ナンナに似た容姿で、自分の炎の能力を受け継いだ可愛い我が子と妻に囲まれて、穏やかで満ち足りた日々だった。」
当時のことを思い出しているのか、ザクセンの表情が柔らかくなる。
「…ある日、遠くの方に狩りに出かけた。洞窟の周囲に小魔獣の気配が一切無かったからだ。その時は何故かはわからず、さして疑問にも思っていなかった。帰路に着いて初めて、異変に気づいた。タータが一人大泣きしていて、一緒にいるはずのナンナが忽然と消えていた。かつての仲間とナンナの匂いが洞窟近くに微かに残っていた。匂いを辿ると、重傷を負った瀕死のナンナが地面に体を横たえていた。一族が四つ目の狼の群れに襲われ、皆殺しにされたと息も絶え絶えに口にして、絶命した。タータの元へ帰ろうとしたのだろうが、その望みは叶わなかった」
ティオは言葉を失っていた。タータから聞いた時も衝撃を受けたが、所々情報が欠けていて分かりづらい点があった。だがこうしてザクセンの口から事実を耳にして、より胸が張り裂けそうに苦しくなる。
「襲撃してきた狼共は、全部で六頭だった。ナンナの残した言葉通り、顔には大きな四つの目があった。六頭の内、三頭は足掻く仲間達によって殺された。二頭は、俺が殺した。最後の一頭さえ見つけられれば、ナンナや仲間達の無念を晴らすことが出来る」
大狐は遠くを見ていた。まるで他人事のように淡々と語っている。そう語れるようになるまで、どれほど苦しんだのだろう。
そう思うと鼻の奥がツンと痛む。
「もしかして…夜の見回りは、狼を見つけるためでもある…?」
「そうだ」
よどみなく答えるザクセンに、ティオは膝の上の拳を握り締めた。
止めてくれ、と言いたかった。運よく最後の一頭を見つけたとして、良くて相打ち、最悪負けて命を落としてしまったらどうするのだろう。父親まで失ってしまったら、タータの心は完全に壊れてしまう。
復讐に囚われるのでなく、タータと一緒に未来に向かって歩んで欲しい、と願うのは自分のエゴだとティオは分かっていた。
それに、ザクセンはその道もあると分かった上で復讐する道を選んだ気がした。そこに自分が立ち入る権利はない。自分は居候の身だし、森で生まれたわけでも住んでいるわけでもない。何も知らない他人が口出ししていい問題ではない。
「…お前は、最近泣いてばかりだな」
涙で歪む視界でも、ザクセンが苦笑いをしているのがわかる。ティオは唇を噛んで、嗚咽が漏れないようにするので精一杯だった。先程も泣いたのに、この溢れる涙は一体どこから来ているのか不思議だった。
「すっかり体が冷えてしまった。戻るぞ。…タータも、俺達がいないことに気がついて泣いているようだ」
ザクセンがゆっくりと腰を上げる。
「…ごめ…、先に行ってて。顔、…洗ってから戻る」
ティオはザクセンの顔を見ることが出来なかった。手の甲で、涙が止まらない目を擦る。
「…あまり遅くなるな。タータが心配する」
頷くと、ザクセンが横を通り去る。静寂のなか、草を踏みしめる音がする。大狐の気配が完全になくなると、ティオは涙を拭い、両手で頬を叩いた。頭部全体にじんじんと痛みが広がる。だが、思考はすっきりとしていた。
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