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32 ゲームと現実の違い(フレア)

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「クソッ!」

 学園から帰宅した私は、手当たり次第に部屋の物を投げまくった。

 何あれ!
 何あれ!
 何あれ!!!!!

 積まれた本が崩れ、生けられた花がひっくり返る。
 割れた花瓶のせいで、部屋が水浸しになったけど、そんな事はどうでもいい。

「クソが!何なのよアイツら!」

 今日、私は「例のイベント」を実行するべくアシェリーに近づいた。
 ちゃんと「笑う門には福来たる」を持って。

 何故かそれを聞きつけた「彼ら」がゾロゾロと後をついてきたけど、私を守るためと言われたから、悪い気はしなかった。

 アシェリーの行動は把握済み。

 お昼休憩の時、彼は絶対に一人になる。だから、それを狙って呼び止めた。
 ゲームの時間軸とは違うけど、この世界は「好きマジ」の世界。
 今私の周りには、好きマジの血縁者ばかり。

 運命の巡り合わせなのよ?墜とせないワケないのに!
 だってそうでしょ?主要攻略キャラの内、三人はあっという間に私を好きになったじゃない。
 いくら時間軸が違うって言ったって、ゲームの強制力がないと、普通ここまで上手くいくはずないわ。

 だから、絶対おかしい!

 場所だってイベント通りにしたし、問題なんてなかったはずなのに。
 アシェリーの好感度がまだ低いのは分かってるけど、ゲーム内では、それでも王太子のアズラエルはプレゼントを貰ってくれた。
 いつもお世話になってるからって、アレを渡したら笑顔で「ありがとう」って……。

 なのに、アシェリーは、中身が分からないものは受け取らないって。

 何よ!ここはゲームの世界でしょ?「現実世界」みたいな事言わないでよ!
 ゲームキャラはゲームキャラらしく、プレイヤーの言う事聞きなさいよね!

「あー、クソッ」

 投げる物が無くなったから、勉強机の椅子をぶん投げてやったわ。
 チェストに当たって足が折れたけど、知らないわ!

 そう言えば、今日初めてマーシャル子爵の息子に会ったけど、アイツも最悪だったわね。

 全然笑わないし、私が自ら声を掛けてあげたのに、「名前」を呼んだ瞬間一気に不機嫌になるし。全然話聞かないし。

 アイツもバグなの?

 ゲームでは、マーシャル子爵の息子……ガイルは、初めての挨拶から直ぐにヒロインと意気投合したのに。

 もぉ!訳わかんない!

「こんな役にたたない人形なんて、いらないわ!」

「笑う門には福来たる」を掴むと、私は窓の外に投げ捨てた。

 せっかく買わせたのに、全部全部ぜんぶ無駄!
 あームシャクシャする!

 このゲーム、バグだらけね!



 って、ん?



 あれ?……バグ……だらけ?

 ん?………バグ?………バグ………バグ。

 ………あ~、そう言う事。




「…………あの女ね」




 何故気がつかなったのかしら。

 あの女が全ての元凶なんじゃない?

「笑う門には福来たる」を売ってた店だって、あの女の家の物になってたし。
アシェリーといつもベタベタしてるし。

 そうか、何で今まで気がつかなかったのかしら。
 前世でもこの手のラノベは多かったじゃない。
 今になってやっと気づくなんて、私も馬鹿だったわ。

「あの女も……私と同じ「転生者」か」

 そう考えると、今までのあの女の行動も頷けるわね。
 じゃあ、あの女はアシェリー狙い?
 私に「ざまぁ」して、自分が王太子妃になるつもりなのかしら。

 そうね、多分間違いない。

 後は………そう、そうなのね。

 色々点と点が線で結ばれていくわ。

 王太子アズラエルの攻略に失敗した「お母さま」。
 代わりに王太子妃になった「マリアナ」。

 あの女…マリアナも転生者だとしたら。

「ふぅ~ん、そう言う事」

 アシェリーに、クソ女かマリアナが何か伝えている可能性も考えて動かないとダメね。
 と言う事は、今日私を拒絶したウルドも何かしらあるのかしら。

 作戦、練り直さなきゃ。

 とりあえず、クソ女が転生者か確認するのが先ね。
 それから次を考えましょう。
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