[執筆休止中]私の婚約者になった人は「氷の王子」と呼ばれる人でした?

阿華羽

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 さて、私は今何を見せられているのでしょう。

 いきなりのクイズですが、皆様お察しください。
 現実逃避したいくらいには、現在の状況から逃げたいのです。

「…………で?」

 何でしょう、デジャヴを感じますわ。

「で?とは?」
「…………ふん」

 今日は、先日の仕切り直しという事で、王城より…………と言うか、トール兄様より王太子殿下のお茶のお誘いがあり登城したのですが。
 嫌がらせでしょうか?前回と対して変わらない様な気がいたします。
 本当に、何を考えて生きてらっしゃるのかしら。
 向かいの一人掛けソファーに肘をつき、私と全く視線を合わそうともしない殿下に、ほとほと疲れてきました。

「殿下、本日はお招きありがとうございます。私、殿下にと焼き菓子を焼いてきましたの」

 カサカサと包みを開けてテーブルに広げます。
 とりあえず、会話のきっかけにでもなれば…………と、持参してきたのですが。
 広げたクッキーを一枚取ると、半分に割り、パクリと口に入れます。
 もちろん私の口です。
 王族故、毒への耐性はあるでしょうが、一応です。毒見は大丈夫な事をお知らせした方が安心でしょ?

「よろしければ殿下も如何ですか?」

 私がそう言うと、殿下は軽くクッキーをチラ見なさいました。
 何かしら、とても腹が立つわ。

「…………パク」
「いかがですか?」
「…………はぁ」

 しかも無言ですか。おまけに溜息って!馬鹿にするにも程がありますね。
 食べたらいいって問題ではないでしょうに!感想!そこで何か言いなさいよ!
 あ、シビレを切らせたトール兄様が侍女達を下がらせてますわ。
 これは…………キレられたかしら?

「殿下!」

 部屋の中が私と殿下、そしてトール兄様とミミリアの四人になったところで、トール兄様が爆発なさいました。

「何だトール?」

 こめかみに怒りマークを沢山つけられた兄様が、殿下の側まで大股で近づかれました。
 そして、殿下が持たれていた本を強引に奪うと、テーブルに叩きつける様に置かれました。
 おかげで、少し残っていたお茶がカップから飛び出ましたね。
 あぁ、そう言えばお伝えし忘れていましたね。
 実は殿下、私が目の前に居ながら、ずーーーーーっと本に目を通していらっしゃったのです。
 失礼にも程があると思いませんか?これは兄様でなくてもキレると思います。

「何だ、だぁ?ルーク!お前ふざけんなよ!シフォンはお前の婚約者だろうが!しかも、この婚約はお前がぁぁっ!…………ふがふが!」
「…………黙れ」

 えっと…………。
 状況説明いたしますと、大声でルーカス殿下にお説教をしようとした兄様でしたが、最後まで喋る事もなく、殿下により口を塞がれてしまいました。
 しかも、殿下の冷ややかな視線が、さらに冷酷なものへと変貌しています。
 気のせいか、部屋の温度が下がった様な気さえしますね。

「トール、いささかお喋りが過ぎるようだな」
「ふがふがっ!…お前、こんの…………!」
「ん?まだ続きを言うつもりか?」
「…………こんの、クソ根暗!」
「トール、従兄弟とは言え…………ゴハ!」

 本当、何を見せられているのかしら。
 冷めた目でお二人のやり取りを見てしまうのは仕方ないと思いません?
 今しがた、トール兄様が殿下に向けてチョップされました。
 いくら従兄弟同士とはいえ、王太子殿下にチョップですからね。兄様、恐れを知らないのでしょうか。
 まぁ、おかげでと言いましょうか、兄様の口を塞いでいた殿下の手が離れました。

「トール、貴様…………いくら従兄弟でも私に手を挙げるとは」
「うるさい!そんなんだから「氷の王子」なんてクソみたいな二つ名を付けられるんだろうが!この根暗王子が!」
「根暗を連呼するな」
「お前が根暗じゃなかった事なんかあるのかよ!」

 ホントウに、私は何を見せられているのでしょうか。
 怒りを露わにする兄様に対し、氷の様な表情で淡々と返す殿下。
 コントですか?そうですねきっと。

 では。

 言い争う?兄様達を無視し、私はすっくと立ち上がると、無言で一礼。
 これ以上この二人に付き合っていても、面白くも何ともないのですもの。

「え?シフ?」

 その様子に、兄様がギョッとした表情をなさいますが、知ったことではございません。

「ちょっと待て!悪かった!」
「兄様のせいでは…………いえ、兄様のせいでもありますね」

 焦る兄様と、冷静な表情で此方を見る殿下に、私は満面の笑みを見せると、完璧な所作で腰を折りました。
 本当、付き合ってられないわ。

「お二人とも、お忙しい様なので「日を改めて」またお会い出来たらと思いますわ…………では」

 「日を改めて」。その言葉にありったけの嫌味を込めて差し上げました。
 本来なら、今日は先日の殿下の態度に対する挽回のチャンスとして兄様がセッティングした日。
 その「日を改めた」日にこれだもの。
 私はそのまま踵を返し、無言でミミリアを連れ部屋を後にしました。

「…………?」

 部屋を出ると、控えていた侍女たちと視線がぶつかりました…が。
 あらあら、皆さん泣きそうな表情ですわね。

 本当に、面倒な婚約者様だこと。
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