5 / 12
5
しおりを挟む
私はパナ・モーマ、侯爵令嬢だ。
突然だが私には婚約者がいる。
「帝国の美剣」ことサラド・マクトリーラ。
私を飾り付ける最高の装飾品だ。
サラド・マクトリーラが私の婚約者であると言うだけで周りは私を褒める。
それがどれだけ気持ちのいいことか。
「今回の戦場でも必ず功績を上げる。そして無事帰ることが出来たら…結婚しよう」
サラドにそう言われた。
正直結婚自体に興味はないし子供が欲しいと思ったこともないが将来安泰な彼なら文句はない。
だから私は愛を語る。
「嬉しい。こんなに嬉しいことはありません…どうかご無事で」
ま、死んだら死んだときだけど。
サラドが大怪我を負ったらしい。
面倒くさいけど一応見に行くか。
そこにいたのは火傷で顔の原型すら分からなくなった婚約者だった。
「化け物」
つい本心が出てしまう。
…もういいか。この状態じゃあ近いうちに亡くなるでしょ。
私はサラドに素の自分を出した。
結構驚いたみたいだけどもう会うこともないし別に問題は無い。
じゃあ、さようなら。
ゼゴ副団長に言い寄られた。
どうやら昔から私のことが好きだったらしい。
「サラド団長はもう剣を握ることすらできない。反戦行為もあって団長の地位剥奪は免れないだろう。だから俺の物になれ。そうすれば今まで以上に幸せにしてやるからよ」
たぶんゼゴがサラドを陥れたのだろう。
女の勘というのかゼゴの言葉の裏にある卑劣さを感じた。
でも感じただけ、憎しみとかそう言う感情は湧いてこない。
「嬉しいです!これからどうしよかと途方に暮れていた私に道を示してくださるなんて…私はあなたをお慕いしますゼゴ様」
サラドと同じ様に愛を語る。
ゼゴは意気揚々と結婚だと話を進め、私に婚約破棄の証書を書かせた後、それを自身でサラドに届けに行った。
男としては及第点以下、それでも次期騎士団長、文句はない。
私は自分のことしか考えない、そんな女だ。
◇◇◇◇
ゼゴが住む屋敷の寝室。
窓から入る月明かりだけが光源となった部屋には服を脱ぎシーツだけを羽織る男女の姿がある。
ゼゴとパナだ。
「今あちこちの要人に婚約パーティーの招待状を送っているところだ。せっかくだし派手にやろう」
「いいですね。今から楽しみです」
「本当ならサラドにも招待状を送ってやるつもりだったが、状況が変わったからな」
どういうこと?
「サラドの火傷は国の誰にも治せないほどの重症。そのまま放置しても問題なかったんだが、それを治せる人物が1人だけいたんだ。サラドが治されても面倒だから誰も知らない人里離れた山奥に療養と言う名目で流してやった。そのうち餓死するだろう」
別にサラドが餓死しようと何も思わない。
けどサラドを治されると私の立場も危うくなるわね。
「ゼゴ様。その治療が出来る人を婚約パーティーに招待してはいかがでしょう?そこで1言口添えすれば今後問題が起きることは無いはずです」
「それは名案だ。流石は俺の妻になる女、こうでなくては」
◇◇◇◇
婚約パーティー当日、計画通りその回復魔法の使い手に招待状を送り、挨拶を交わす。
それだけで済むはずだった…。
「初めまして。ミルネ・ルルロと申します。この度はご招待に預かり光栄です。不束ながら私の婚約者も紹介したいと思います」
ミルネ・ルルロの隣に立つ男性、私はこの顔に見覚えがあった。
いや、見覚えがあるレベルではない。
何故ここに…?
「ご紹介に預かったサラド・マクトリーラと申します。お久しぶりですね、パナ」
突然だが私には婚約者がいる。
「帝国の美剣」ことサラド・マクトリーラ。
私を飾り付ける最高の装飾品だ。
サラド・マクトリーラが私の婚約者であると言うだけで周りは私を褒める。
それがどれだけ気持ちのいいことか。
「今回の戦場でも必ず功績を上げる。そして無事帰ることが出来たら…結婚しよう」
サラドにそう言われた。
正直結婚自体に興味はないし子供が欲しいと思ったこともないが将来安泰な彼なら文句はない。
だから私は愛を語る。
「嬉しい。こんなに嬉しいことはありません…どうかご無事で」
ま、死んだら死んだときだけど。
サラドが大怪我を負ったらしい。
面倒くさいけど一応見に行くか。
そこにいたのは火傷で顔の原型すら分からなくなった婚約者だった。
「化け物」
つい本心が出てしまう。
…もういいか。この状態じゃあ近いうちに亡くなるでしょ。
私はサラドに素の自分を出した。
結構驚いたみたいだけどもう会うこともないし別に問題は無い。
じゃあ、さようなら。
ゼゴ副団長に言い寄られた。
どうやら昔から私のことが好きだったらしい。
「サラド団長はもう剣を握ることすらできない。反戦行為もあって団長の地位剥奪は免れないだろう。だから俺の物になれ。そうすれば今まで以上に幸せにしてやるからよ」
たぶんゼゴがサラドを陥れたのだろう。
女の勘というのかゼゴの言葉の裏にある卑劣さを感じた。
でも感じただけ、憎しみとかそう言う感情は湧いてこない。
「嬉しいです!これからどうしよかと途方に暮れていた私に道を示してくださるなんて…私はあなたをお慕いしますゼゴ様」
サラドと同じ様に愛を語る。
ゼゴは意気揚々と結婚だと話を進め、私に婚約破棄の証書を書かせた後、それを自身でサラドに届けに行った。
男としては及第点以下、それでも次期騎士団長、文句はない。
私は自分のことしか考えない、そんな女だ。
◇◇◇◇
ゼゴが住む屋敷の寝室。
窓から入る月明かりだけが光源となった部屋には服を脱ぎシーツだけを羽織る男女の姿がある。
ゼゴとパナだ。
「今あちこちの要人に婚約パーティーの招待状を送っているところだ。せっかくだし派手にやろう」
「いいですね。今から楽しみです」
「本当ならサラドにも招待状を送ってやるつもりだったが、状況が変わったからな」
どういうこと?
「サラドの火傷は国の誰にも治せないほどの重症。そのまま放置しても問題なかったんだが、それを治せる人物が1人だけいたんだ。サラドが治されても面倒だから誰も知らない人里離れた山奥に療養と言う名目で流してやった。そのうち餓死するだろう」
別にサラドが餓死しようと何も思わない。
けどサラドを治されると私の立場も危うくなるわね。
「ゼゴ様。その治療が出来る人を婚約パーティーに招待してはいかがでしょう?そこで1言口添えすれば今後問題が起きることは無いはずです」
「それは名案だ。流石は俺の妻になる女、こうでなくては」
◇◇◇◇
婚約パーティー当日、計画通りその回復魔法の使い手に招待状を送り、挨拶を交わす。
それだけで済むはずだった…。
「初めまして。ミルネ・ルルロと申します。この度はご招待に預かり光栄です。不束ながら私の婚約者も紹介したいと思います」
ミルネ・ルルロの隣に立つ男性、私はこの顔に見覚えがあった。
いや、見覚えがあるレベルではない。
何故ここに…?
「ご紹介に預かったサラド・マクトリーラと申します。お久しぶりですね、パナ」
25
お気に入りに追加
1,683
あなたにおすすめの小説
傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~
キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。
両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。
ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。
全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。
エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。
ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。
こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。
その令嬢は、実家との縁を切ってもらいたい
キョウキョウ
恋愛
シャルダン公爵家の令嬢アメリは、学園の卒業記念パーティーの最中にバルトロメ王子から一方的に婚約破棄を宣告される。
妹のアーレラをイジメたと、覚えのない罪を着せられて。
そして、婚約破棄だけでなく公爵家からも追放されてしまう。
だけどそれは、彼女の求めた展開だった。
どうせ愛されない子なので、呪われた婚約者のために命を使ってみようと思います
下菊みこと
恋愛
愛されずに育った少女が、唯一優しくしてくれた婚約者のために自分の命をかけて呪いを解こうとするお話。
ご都合主義のハッピーエンドのSS。
小説家になろう様でも投稿しています。
私の以外の誰かを愛してしまった、って本当ですか?
樋口紗夕
恋愛
「すまない、エリザベス。どうか俺との婚約を解消して欲しい」
エリザベスは婚約者であるギルベルトから別れを切り出された。
他に好きな女ができた、と彼は言う。
でも、それって本当ですか?
エリザベス一筋なはずのギルベルトが愛した女性とは、いったい何者なのか?
無能だと捨てられた王子を押し付けられた結果、溺愛されてます
佐崎咲
恋愛
「殿下にはもっとふさわしい人がいると思うんです。私は殿下の婚約者を辞退させていただきますわ」
いきなりそんなことを言い出したのは、私の姉ジュリエンヌ。
第二王子ウォルス殿下と私の婚約話が持ち上がったとき、お姉様は王家に嫁ぐのに相応しいのは自分だと父にねだりその座を勝ち取ったのに。
ウォルス殿下は穏やかで王位継承権を争うことを望んでいないと知り、他国の王太子に鞍替えしたのだ。
だが当人であるウォルス殿下は、淡々と受け入れてしまう。
それどころか、お姉様の代わりに婚約者となった私には、これまでとは打って変わって毎日花束を届けてくれ、ドレスをプレゼントしてくれる。
私は姉のやらかしにひたすら申し訳ないと思うばかりなのに、何やら殿下は生き生きとして見えて――
=========
お姉様のスピンオフ始めました。
「体よく国を追い出された悪女はなぜか隣国を立て直すことになった」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/465693299/193448482
※無断転載・複写はお断りいたします。
悪役令嬢の私が転校生をイジメたといわれて断罪されそうです
白雨あめ
恋愛
「君との婚約を破棄する! この学園から去れ!」
国の第一王子であるシルヴァの婚約者である伯爵令嬢アリン。彼女は転校生をイジメたという理由から、突然王子に婚約破棄を告げられてしまう。
目の前が真っ暗になり、立ち尽くす彼女の傍に歩み寄ってきたのは王子の側近、公爵令息クリスだった。
※2話完結。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
どうして別れるのかと聞かれても。お気の毒な旦那さま、まさかとは思いますが、あなたのようなクズが女性に愛されると信じていらっしゃるのですか?
石河 翠
恋愛
主人公のモニカは、既婚者にばかり声をかけるはしたない女性として有名だ。愛人稼業をしているだとか、天然の毒婦だとか、聞こえてくるのは下品な噂ばかり。社交界での評判も地に落ちている。
ある日モニカは、溺愛のあまり茶会や夜会に妻を一切参加させないことで有名な愛妻家の男性に声をかける。おしどり夫婦の愛の巣に押しかけたモニカは、そこで虐げられている女性を発見する。
彼女が愛妻家として評判の男性の奥方だと気がついたモニカは、彼女を毎日お茶に誘うようになり……。
八方塞がりな状況で抵抗する力を失っていた孤独なヒロインと、彼女に手を差し伸べ広い世界に連れ出したしたたかな年下ヒーローのお話。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID24694748)をお借りしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる