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第二話
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「ラーシェさん、また一人で食事をしてらっしゃるわ」
「仕方ないわよ、農民のくせに聖女に選ばれたんだから」
「今までは聖女は貴族から出るのが普通だったのになんで今回はラーシェさんなのかしら」
「何か特別な媚の売り方でもしたのよ。じゃなきゃありえないわ」
私は食堂で食事をとっている
周りの雑音はいつものことだ
もう気にしていない
だけど私にも無視できないことがある
「ラーシェ!!いつまで食事をしているのだ。さっさと来い!!」
「…すみません、今行きます」
私を大声で呼ぶのは私の婚約者ゼラード様
この国の第一王子様
顔はイケメンだが性格が最悪ですぐ私にちょっかいをかける
ついたあだ名が悪徳王子
私はゼラード様が嫌いだ
「おいラーシェ、俺の荷物を持て」
「…はい」
「なんだ、不満なのか?」
「いえ、そういうわけでは」
「前にも言ったろ、いくら聖女でも王子の俺に歯向かえば不敬罪で即処刑、お前の家族も同罪だからな」
「わかっております」
「なら早く持て、行くところがあるのだ」
ゼラード様が向かったのは図書館…ではなく図書館の後ろにある森の中だ
ここは学生同士の逢引きスポットとして有名である
「やあカンナ、待たせたかい?」
「いいえ、ゼラード様。わたくしも今来たところです」
「この愚図のせいで遅れた、すまなかったな」
「ゼラード様が謝る事ではありません。悪いのはそこの愚図なのですから、フフフ」
「そうだな、全く俺の婚約者がお前ならよかったのに」
「わたくしもゼラード様と結ばれたいと心より思っております」
「ったく本当にお前は俺の邪魔ばかりする」
「…すみません」
ゼラード様は私という婚約者がいるのに陰でお付き合いしている方と逢瀬を重ねている
私のことなどお構いなしに
ゼラード様は元農民の私を嫌っている
だから私に意地悪をするのだ
だけど私が我慢すればいいだけの話
聖龍様に話すようなことでもない
私が我慢すればいいのだから
何度も自分に言い聞かせ納得させようとする
そんな日々を続けていたがある日ついに最悪の出来事が起きてしまう
「ラーシェ、コーヒー」
「わかりました」
私はゼラード様に淹れたコーヒーを渡す
「ずぅぅぅ熱っ!!」
ゼラード様はコーヒーの熱さに驚き目の前の置いてある書類にコーヒーをこぼしてしまった
「おい!この書類は学園に提出する論文なのだぞ!!!どうしてくれるのだ」
「申し訳ございません」
「いい加減にしろ!いつもいつも俺の邪魔ばかりしやがって!さすがに俺の堪忍袋も限界だ」
「どうかお許しください」
「このことは父上に報告させてもらう。お前は聖女だからお咎めは無いかもしれないがお前の家族はそうもいかんだろう。いい気味だ、お前のせいで家族が罰せられるのだから」
その言葉を聞いて私の視界は真っ暗になった
気づくと聖龍の洞窟まで来ていた
歩いてきたから履いていたズボンも靴もボロボロだ
私が入って来ると聖龍様は私に気付き驚いて声をかけてくる
「どうしたのラーシェ!?そんなボロボロで!何があったの?」
「…何でもない」
「何でもないわけないでしょ!私はあなたの味方だからつらいことがあったなら私に話して。そうすれば楽になるから」
聖龍様の言葉に張り詰めていた糸が切れたように涙があふれ出てきた
聖龍様は私が泣き止むまでただじっと私に寄り添ってくれていた
泣き止んだ私は自分のせいで家族が危険にさらされてしまった事を聖龍様に伝える
すると聖龍様は今までに見たことがないほど声を荒げる
「ラーシェを泣かせるクソガキがーーーー!!!!ただでは済まさんぞーーーーーーーーー!!!」
「聖龍様…悪いのは私なんです。だから…」
「いいえ!悪いのはゼラードとかいうクソガキです!!」
聖龍様は本気で怒っている
「ちょうどいい機会です。私を舐めている人たちも一定数出てきた頃ですし、私の恐ろしさをもう一度世に知らしめますか!」
聖龍様は私に目を合わせ声をかける
「ラーシェ。私はあなたが大好きです。そんなあなたが泣いているのを私は見たくない。そして泣かせた奴を許せない。私とともにあのクソガキに目に物見してやりましょう」
「…私も聖龍様のことが大好き。私もゼラード様をぎゃふんと言わせたい!」
「なら行きましょう!目指すは王都!!」
歴史に名を残す大事件はここから始まる
「仕方ないわよ、農民のくせに聖女に選ばれたんだから」
「今までは聖女は貴族から出るのが普通だったのになんで今回はラーシェさんなのかしら」
「何か特別な媚の売り方でもしたのよ。じゃなきゃありえないわ」
私は食堂で食事をとっている
周りの雑音はいつものことだ
もう気にしていない
だけど私にも無視できないことがある
「ラーシェ!!いつまで食事をしているのだ。さっさと来い!!」
「…すみません、今行きます」
私を大声で呼ぶのは私の婚約者ゼラード様
この国の第一王子様
顔はイケメンだが性格が最悪ですぐ私にちょっかいをかける
ついたあだ名が悪徳王子
私はゼラード様が嫌いだ
「おいラーシェ、俺の荷物を持て」
「…はい」
「なんだ、不満なのか?」
「いえ、そういうわけでは」
「前にも言ったろ、いくら聖女でも王子の俺に歯向かえば不敬罪で即処刑、お前の家族も同罪だからな」
「わかっております」
「なら早く持て、行くところがあるのだ」
ゼラード様が向かったのは図書館…ではなく図書館の後ろにある森の中だ
ここは学生同士の逢引きスポットとして有名である
「やあカンナ、待たせたかい?」
「いいえ、ゼラード様。わたくしも今来たところです」
「この愚図のせいで遅れた、すまなかったな」
「ゼラード様が謝る事ではありません。悪いのはそこの愚図なのですから、フフフ」
「そうだな、全く俺の婚約者がお前ならよかったのに」
「わたくしもゼラード様と結ばれたいと心より思っております」
「ったく本当にお前は俺の邪魔ばかりする」
「…すみません」
ゼラード様は私という婚約者がいるのに陰でお付き合いしている方と逢瀬を重ねている
私のことなどお構いなしに
ゼラード様は元農民の私を嫌っている
だから私に意地悪をするのだ
だけど私が我慢すればいいだけの話
聖龍様に話すようなことでもない
私が我慢すればいいのだから
何度も自分に言い聞かせ納得させようとする
そんな日々を続けていたがある日ついに最悪の出来事が起きてしまう
「ラーシェ、コーヒー」
「わかりました」
私はゼラード様に淹れたコーヒーを渡す
「ずぅぅぅ熱っ!!」
ゼラード様はコーヒーの熱さに驚き目の前の置いてある書類にコーヒーをこぼしてしまった
「おい!この書類は学園に提出する論文なのだぞ!!!どうしてくれるのだ」
「申し訳ございません」
「いい加減にしろ!いつもいつも俺の邪魔ばかりしやがって!さすがに俺の堪忍袋も限界だ」
「どうかお許しください」
「このことは父上に報告させてもらう。お前は聖女だからお咎めは無いかもしれないがお前の家族はそうもいかんだろう。いい気味だ、お前のせいで家族が罰せられるのだから」
その言葉を聞いて私の視界は真っ暗になった
気づくと聖龍の洞窟まで来ていた
歩いてきたから履いていたズボンも靴もボロボロだ
私が入って来ると聖龍様は私に気付き驚いて声をかけてくる
「どうしたのラーシェ!?そんなボロボロで!何があったの?」
「…何でもない」
「何でもないわけないでしょ!私はあなたの味方だからつらいことがあったなら私に話して。そうすれば楽になるから」
聖龍様の言葉に張り詰めていた糸が切れたように涙があふれ出てきた
聖龍様は私が泣き止むまでただじっと私に寄り添ってくれていた
泣き止んだ私は自分のせいで家族が危険にさらされてしまった事を聖龍様に伝える
すると聖龍様は今までに見たことがないほど声を荒げる
「ラーシェを泣かせるクソガキがーーーー!!!!ただでは済まさんぞーーーーーーーーー!!!」
「聖龍様…悪いのは私なんです。だから…」
「いいえ!悪いのはゼラードとかいうクソガキです!!」
聖龍様は本気で怒っている
「ちょうどいい機会です。私を舐めている人たちも一定数出てきた頃ですし、私の恐ろしさをもう一度世に知らしめますか!」
聖龍様は私に目を合わせ声をかける
「ラーシェ。私はあなたが大好きです。そんなあなたが泣いているのを私は見たくない。そして泣かせた奴を許せない。私とともにあのクソガキに目に物見してやりましょう」
「…私も聖龍様のことが大好き。私もゼラード様をぎゃふんと言わせたい!」
「なら行きましょう!目指すは王都!!」
歴史に名を残す大事件はここから始まる
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