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第一話
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クラリス・アシュフォードは、その日も華やかなドレスを纏い、社交界のパーティーに出席していた。
同じ空間にいる者は男女問わず、一度彼女の姿を目で追っている。
それは彼女の美しさだけが理由では無い。
彼女の父はその類稀なる商才で一代で名を腕の持ち主でもあったからだ。
その縁を目当てに1人の小太りな男がクラリスに近づいていく。
彼はこのパーティーに初めて参加した商人だった。
見た目に反して、その商人として才能は高く評価されており、今では出世筆頭株である。
そんな将来有望な彼が伝手を使いこのパーティーに参加したのも、クラリスと顔馴染みになり、今後の商人として良縁になればと考えていたからだった。
彼は咳払いをしてクラリスの視線を奪う。
「初めまして、クラリス・アシュフォード様。私商人をしておりますコブトリーと申します。本日かのアシュフォード様の令嬢に会えたこと心より感謝申し上げます」
「初めましてコブトリー様。私の方こそ、今話題のコブトリー様とお会いできて嬉しく思います。それで私に一体どういったご用件でしょうか?」
「クラリス様に認知していただけているとは。実は今度クラリス様の父上と商談がございましてご挨拶をと…」
「なんて醜い姿なのかしら」
コブトリーは深々としたお辞儀を止め、放たれた言葉の意味をじっくりと自らに落とし込んでから声の主に視線を向ける。
そこには紫のドレスに身を包み、濃いめのメイクで威圧感を持たせた美女が軽蔑の視線を向けていた。
「私の容姿について言及しているのですか?」
「そうよ、小さい子豚さん。あなた以外に誰がいるのかしら?」
「ちょっとリエル、なんて失礼なことを!」
商人に罵声を浴びせたのは、リエル・ローチェ。
クラリスの幼馴染でもある。
彼女の父親は貴族である。
しかし世襲制の当主は領地運営に才能がなく、貴族としての発言力は昔と比べるとほぼ無いに等しかった。
しかしアシュフォード商会の誕生により、領地が潤いかつての栄光に近い輝きを取り戻しつつあった。
その影響からかリエルはとても不遜な態度で周りを威圧する女性になっていた。
「あなたは確かリエル様ですね。お噂はかねがね。なんでも貴族でありながら商会を後ろ盾に権威を主張しているそうで」
「…この豚が、私にそのような口を聞いてただで済むと思うなよ。クラリス、あなたもなにか言って。親友の私がここまでコケにされているのにどうして何も言わないの?悔しくないの?」
「それは」
「クラリス様、ご挨拶をと思いましたが今はタイミングがよろしくなかったですね。1つだけご友人は選ばれた方が良いと思います」
そう言って立ち去るコブトリーの姿を見てクラリスは今後の商談が破断する事を確信した。
もう何度目だろうか。
こうしてリエルのせいで商談や人脈作りが頓挫するのは。
そう思う反面、唯一の友達であるリエルのことを憎からず思うクラリス。
「何か騒がしかったが、どうしたんだ?」
声をかけてきたのは、クラリスの婚約者であるエドワード・ランカスターだった。
同じ空間にいる者は男女問わず、一度彼女の姿を目で追っている。
それは彼女の美しさだけが理由では無い。
彼女の父はその類稀なる商才で一代で名を腕の持ち主でもあったからだ。
その縁を目当てに1人の小太りな男がクラリスに近づいていく。
彼はこのパーティーに初めて参加した商人だった。
見た目に反して、その商人として才能は高く評価されており、今では出世筆頭株である。
そんな将来有望な彼が伝手を使いこのパーティーに参加したのも、クラリスと顔馴染みになり、今後の商人として良縁になればと考えていたからだった。
彼は咳払いをしてクラリスの視線を奪う。
「初めまして、クラリス・アシュフォード様。私商人をしておりますコブトリーと申します。本日かのアシュフォード様の令嬢に会えたこと心より感謝申し上げます」
「初めましてコブトリー様。私の方こそ、今話題のコブトリー様とお会いできて嬉しく思います。それで私に一体どういったご用件でしょうか?」
「クラリス様に認知していただけているとは。実は今度クラリス様の父上と商談がございましてご挨拶をと…」
「なんて醜い姿なのかしら」
コブトリーは深々としたお辞儀を止め、放たれた言葉の意味をじっくりと自らに落とし込んでから声の主に視線を向ける。
そこには紫のドレスに身を包み、濃いめのメイクで威圧感を持たせた美女が軽蔑の視線を向けていた。
「私の容姿について言及しているのですか?」
「そうよ、小さい子豚さん。あなた以外に誰がいるのかしら?」
「ちょっとリエル、なんて失礼なことを!」
商人に罵声を浴びせたのは、リエル・ローチェ。
クラリスの幼馴染でもある。
彼女の父親は貴族である。
しかし世襲制の当主は領地運営に才能がなく、貴族としての発言力は昔と比べるとほぼ無いに等しかった。
しかしアシュフォード商会の誕生により、領地が潤いかつての栄光に近い輝きを取り戻しつつあった。
その影響からかリエルはとても不遜な態度で周りを威圧する女性になっていた。
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「…この豚が、私にそのような口を聞いてただで済むと思うなよ。クラリス、あなたもなにか言って。親友の私がここまでコケにされているのにどうして何も言わないの?悔しくないの?」
「それは」
「クラリス様、ご挨拶をと思いましたが今はタイミングがよろしくなかったですね。1つだけご友人は選ばれた方が良いと思います」
そう言って立ち去るコブトリーの姿を見てクラリスは今後の商談が破断する事を確信した。
もう何度目だろうか。
こうしてリエルのせいで商談や人脈作りが頓挫するのは。
そう思う反面、唯一の友達であるリエルのことを憎からず思うクラリス。
「何か騒がしかったが、どうしたんだ?」
声をかけてきたのは、クラリスの婚約者であるエドワード・ランカスターだった。
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