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「マリン様、我々の不手際で御身を危険にさらしてしまったこと深くお詫び申し上げます。貴方様のご活躍のうわさを聞きつけてここまでやってまいりました。虫のいい話であると理解はしています。ですが我々と共に王都に来ていただきたい」


 頭を下げる大司祭。
 シーナが好き勝手に動いていることを知らされた。
 王都に行くことすら考えたことのないマリン。
 ヴィーナに尋ねてみようとするが、何故か浮かない顔をしている。


『ごめんなさいマリン』

「ヴィーナがどうして謝るの?」

『だって私はシーナが聖女だと勘違いさせた側。あの時は自分のことしか考えてなくて。でもこの子たちがこんなに謝っている姿をみて私も謝るべきだと思ったの』


 頭を下げるヴィーナ。
 ヴィーナが謝ることなんて初めてなので取り乱すマリン。
 そっとアルベットが耳打ちをした。


「マリンがどうしたいのかを優先させればいいさ。俺はそれに従う」

「私がどうしたいか、ですか?」

「そうだ。目の前にいる人たちはシーナのせいで色々と迷惑をかけられた者たちだ。それを踏まえてマリンがどうしたいか考えたほうがいい」


 その日は解散を提案した。
 宿屋をとり、1人だけで考えるマリン。


 そして決意した。


◇◇


 シーナが覚えているマリンの姿は惨めな物だった。
 痩せて髪はボサボサ、それでいて恥ずかしくもなく笑う子。
 
 しかし今目の前にいるのは年相応の体に整えられた髪、白を基調とした法衣がとてもよく似合う。
 とても素敵な女性だ。


 それに比べて私は?
 こんな麻のボロイ服を着て、肌はカサカサ、瘦せこけた頬、みっともない髪の毛。
 嫌いだったマリンの姿に、私が成っているじゃない。


「見ないで。見ないでよ!!」

「シーナ、話を聞いて」

「嫌!!私を見ないで!どこかに消えて!お願いだから!!」

「お姉ちゃん!!!私を見て!!!」


 初めて聞いたマリンの怒声に、シーナは頭が真っ白になる。
 マリンの目には涙がこぼれる。


「もう、やめよう?誰かと自分を比べるのは。シーナはシーナだよ。誰でもない私のお姉ちゃんなの」


 感極まりながらシーナをお姉ちゃんと呼ぶマリン。
 

「だから、お姉ちゃんだから。どんなにひどいことされても、どんだけ馬鹿にされても…大好きなの」


 今まで自分がどれだ愚かで酷いことをしてきたのかシーナは本当に気が付いていなかった。
 だが、マリンの涙で自分がどうしようもないクズであったことを自覚する。


「ごめんなさい。ごめんなさいマリン!私、今まで…たくさんの人に迷惑かけて」

 
 シーナが初めてマリンに謝罪をした。


「いいよ。お姉ちゃん。一緒に謝ろう。そして、また一緒に暮らそう」

「ありがとうマリン」
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