21 / 21
21 姉妹
しおりを挟む
「マリン様、我々の不手際で御身を危険にさらしてしまったこと深くお詫び申し上げます。貴方様のご活躍のうわさを聞きつけてここまでやってまいりました。虫のいい話であると理解はしています。ですが我々と共に王都に来ていただきたい」
頭を下げる大司祭。
シーナが好き勝手に動いていることを知らされた。
王都に行くことすら考えたことのないマリン。
ヴィーナに尋ねてみようとするが、何故か浮かない顔をしている。
『ごめんなさいマリン』
「ヴィーナがどうして謝るの?」
『だって私はシーナが聖女だと勘違いさせた側。あの時は自分のことしか考えてなくて。でもこの子たちがこんなに謝っている姿をみて私も謝るべきだと思ったの』
頭を下げるヴィーナ。
ヴィーナが謝ることなんて初めてなので取り乱すマリン。
そっとアルベットが耳打ちをした。
「マリンがどうしたいのかを優先させればいいさ。俺はそれに従う」
「私がどうしたいか、ですか?」
「そうだ。目の前にいる人たちはシーナのせいで色々と迷惑をかけられた者たちだ。それを踏まえてマリンがどうしたいか考えたほうがいい」
その日は解散を提案した。
宿屋をとり、1人だけで考えるマリン。
そして決意した。
◇◇
シーナが覚えているマリンの姿は惨めな物だった。
痩せて髪はボサボサ、それでいて恥ずかしくもなく笑う子。
しかし今目の前にいるのは年相応の体に整えられた髪、白を基調とした法衣がとてもよく似合う。
とても素敵な女性だ。
それに比べて私は?
こんな麻のボロイ服を着て、肌はカサカサ、瘦せこけた頬、みっともない髪の毛。
嫌いだったマリンの姿に、私が成っているじゃない。
「見ないで。見ないでよ!!」
「シーナ、話を聞いて」
「嫌!!私を見ないで!どこかに消えて!お願いだから!!」
「お姉ちゃん!!!私を見て!!!」
初めて聞いたマリンの怒声に、シーナは頭が真っ白になる。
マリンの目には涙がこぼれる。
「もう、やめよう?誰かと自分を比べるのは。シーナはシーナだよ。誰でもない私のお姉ちゃんなの」
感極まりながらシーナをお姉ちゃんと呼ぶマリン。
「だから、お姉ちゃんだから。どんなにひどいことされても、どんだけ馬鹿にされても…大好きなの」
今まで自分がどれだ愚かで酷いことをしてきたのかシーナは本当に気が付いていなかった。
だが、マリンの涙で自分がどうしようもないクズであったことを自覚する。
「ごめんなさい。ごめんなさいマリン!私、今まで…たくさんの人に迷惑かけて」
シーナが初めてマリンに謝罪をした。
「いいよ。お姉ちゃん。一緒に謝ろう。そして、また一緒に暮らそう」
「ありがとうマリン」
頭を下げる大司祭。
シーナが好き勝手に動いていることを知らされた。
王都に行くことすら考えたことのないマリン。
ヴィーナに尋ねてみようとするが、何故か浮かない顔をしている。
『ごめんなさいマリン』
「ヴィーナがどうして謝るの?」
『だって私はシーナが聖女だと勘違いさせた側。あの時は自分のことしか考えてなくて。でもこの子たちがこんなに謝っている姿をみて私も謝るべきだと思ったの』
頭を下げるヴィーナ。
ヴィーナが謝ることなんて初めてなので取り乱すマリン。
そっとアルベットが耳打ちをした。
「マリンがどうしたいのかを優先させればいいさ。俺はそれに従う」
「私がどうしたいか、ですか?」
「そうだ。目の前にいる人たちはシーナのせいで色々と迷惑をかけられた者たちだ。それを踏まえてマリンがどうしたいか考えたほうがいい」
その日は解散を提案した。
宿屋をとり、1人だけで考えるマリン。
そして決意した。
◇◇
シーナが覚えているマリンの姿は惨めな物だった。
痩せて髪はボサボサ、それでいて恥ずかしくもなく笑う子。
しかし今目の前にいるのは年相応の体に整えられた髪、白を基調とした法衣がとてもよく似合う。
とても素敵な女性だ。
それに比べて私は?
こんな麻のボロイ服を着て、肌はカサカサ、瘦せこけた頬、みっともない髪の毛。
嫌いだったマリンの姿に、私が成っているじゃない。
「見ないで。見ないでよ!!」
「シーナ、話を聞いて」
「嫌!!私を見ないで!どこかに消えて!お願いだから!!」
「お姉ちゃん!!!私を見て!!!」
初めて聞いたマリンの怒声に、シーナは頭が真っ白になる。
マリンの目には涙がこぼれる。
「もう、やめよう?誰かと自分を比べるのは。シーナはシーナだよ。誰でもない私のお姉ちゃんなの」
感極まりながらシーナをお姉ちゃんと呼ぶマリン。
「だから、お姉ちゃんだから。どんなにひどいことされても、どんだけ馬鹿にされても…大好きなの」
今まで自分がどれだ愚かで酷いことをしてきたのかシーナは本当に気が付いていなかった。
だが、マリンの涙で自分がどうしようもないクズであったことを自覚する。
「ごめんなさい。ごめんなさいマリン!私、今まで…たくさんの人に迷惑かけて」
シーナが初めてマリンに謝罪をした。
「いいよ。お姉ちゃん。一緒に謝ろう。そして、また一緒に暮らそう」
「ありがとうマリン」
41
お気に入りに追加
4,763
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
【完結】虐げられてきた侯爵令嬢は、聖女になったら神様にだけは愛されています〜神は気まぐれとご存知ない?それは残念でした〜
葉桜鹿乃
恋愛
アナスタシアは18歳の若さで聖女として顕現した。
聖女・アナスタシアとなる前はアナスタシア・リュークス侯爵令嬢。婚約者は第三王子のヴィル・ド・ノルネイア。
王子と結婚するのだからと厳しい教育と度を超えた躾の中で育ってきた。
アナスタシアはヴィルとの婚約を「聖女になったのだから」という理由で破棄されるが、元々ヴィルはアナスタシアの妹であるヴェロニカと浮気しており、両親もそれを歓迎していた事を知る。
聖女となっても、静謐なはずの神殿で嫌がらせを受ける日々。
どこにいても嫌われる、と思いながら、聖女の責務は重い。逃げ出そうとしても王侯貴族にほとんど監禁される形で、祈りの塔に閉じ込められて神に祈りを捧げ続け……そしたら神が顕現してきた?!
虐げられた聖女の、神様の溺愛とえこひいきによる、国をも傾かせるざまぁからの溺愛物語。
※HOT1位ありがとうございます!(12/4)
※恋愛1位ありがとうございます!(12/5)
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも別名義にて連載開始しました。改稿版として内容に加筆修正しています。
【完結】婚約破棄にて奴隷生活から解放されたので、もう貴方の面倒は見ませんよ?
かのん
恋愛
ℌot ランキング乗ることができました! ありがとうございます!
婚約相手から奴隷のような扱いを受けていた伯爵令嬢のミリー。第二王子の婚約破棄の流れで、大嫌いな婚約者のエレンから婚約破棄を言い渡される。
婚約者という奴隷生活からの解放に、ミリーは歓喜した。その上、憧れの存在であるトーマス公爵に助けられて~。
婚約破棄によって奴隷生活から解放されたミリーはもう、元婚約者の面倒はみません!
4月1日より毎日更新していきます。およそ、十何話で完結予定。内容はないので、それでも良い方は読んでいただけたら嬉しいです。
作者 かのん
妹に裏切られた聖女は娼館で競りにかけられてハーレムに迎えられる~あれ? ハーレムの主人って妹が執心してた相手じゃね?~
サイコちゃん
恋愛
妹に裏切られたアナベルは聖女として娼館で競りにかけられていた。聖女に恨みがある男達は殺気立った様子で競り続ける。そんな中、謎の美青年が驚くべき値段でアナベルを身請けした。彼はアナベルをハーレムへ迎えると言い、船に乗せて隣国へと運んだ。そこで出会ったのは妹が執心してた隣国の王子――彼がこのハーレムの主人だったのだ。外交と称して、隣国の王子を落とそうとやってきた妹は彼の寵姫となった姉を見て、気も狂わんばかりに怒り散らす……それを見詰める王子の目に軽蔑の色が浮かんでいることに気付かぬまま――
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
嫌われ者の側妃はのんびり暮らしたい
風見ゆうみ
恋愛
「オレのタイプじゃないんだよ。地味過ぎて顔も見たくない。だから、お前は側妃だ」
顔だけは良い皇帝陛下は、自らが正妃にしたいと希望した私を側妃にして別宮に送り、正妃は私の妹にすると言う。
裏表のあるの妹のお世話はもううんざり!
側妃は私以外にもいるし、面倒なことは任せて、私はのんびり自由に暮らすわ!
そう思っていたのに、別宮には皇帝陛下の腹違いの弟や、他の側妃とのトラブルはあるし、それだけでなく皇帝陛下は私を妹の毒見役に指定してきて――
それって側妃がやることじゃないでしょう!?
※のんびり暮らしたかった側妃がなんだかんだあって、のんびりできなかったけれど幸せにはなるお話です。
婚約者マウントを取ってくる幼馴染の話をしぶしぶ聞いていたら、あることに気が付いてしまいました
柚木ゆず
恋愛
「ベルティーユ、こうして会うのは3年ぶりかしらっ。ねえ、聞いてくださいまし! わたくし一昨日、隣国の次期侯爵様と婚約しましたのっ!」
久しぶりにお屋敷にやって来た、幼馴染の子爵令嬢レリア。彼女は婚約者を自慢をするためにわざわざ来て、私も婚約をしていると知ったら更に酷いことになってしまう。
自分の婚約者の方がお金持ちだから偉いだとか、自分のエンゲージリングの方が高価だとか。外で口にしてしまえば大問題になる発言を平気で行い、私は幼馴染だから我慢をして聞いていた。
――でも――。そうしていたら、あることに気が付いた。
レリアの婚約者様一家が経営されているという、ルナレーズ商会。そちらって、確か――
聖人の番である聖女はすでに壊れている~姉を破壊した妹を同じように破壊する~
サイコちゃん
恋愛
聖人ヴィンスの運命の番である聖女ウルティアは発見した時すでに壊れていた。発狂へ導いた犯人は彼女の妹システィアである。天才宮廷魔術師クレイグの手を借り、ヴィンスは復讐を誓う。姉ウルティアが奪われた全てを奪い返し、与えられた苦痛全てを返してやるのだ――
聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。
ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」
出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。
だがアーリンは考える間もなく、
「──お断りします」
と、きっぱりと告げたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる