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シーバス!①
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私…いや、俺の名はシーバス。
かつてはもう少しでB級冒険者になれそうなところまでかけ上がった元C級冒険者だ。
と言っても実際のところは他のパーティーメンバーが強かったお蔭で…と言うのが正直なところか…。
俺自身はパーティーの斥候役と雑用係がメインで戦闘に自信があったワケではない。…もちろん訓練はしていたが…。
転機は突然のことだった。
俺たちのパーティーでダンジョン攻略に臨んだ際、メインアタッカーの剣士の負傷により、やむを得ず引き上げたのだが、治療が遅れたことで障害が残り、あっさりと引退、パーティーは解散となった。
剣士は幸いなことに普通に生活する分には問題が無かったので、その後は冒険者ギルド職員として働くようになり、今では副ギルド長の地位にまで就いている。
困ったのは残された俺たち…いや俺か。
B級間近だった俺たちは冒険者としてはそれなりに周りからも認められていた。そう、俺『たち』は…。
『俺』個人はというと斥候役としては多少出来る程度。雑用はまあそれなり…といったところか。
…実力的にはB級には届いていなかった。
パーティーの他の奴らは別の都市に行ったり、別のパーティーに入ったり、引退したりと比較的早くに次を決めているなか、俺は取り残されていた。
「当家で働いてみませんか?」
そんななか突然の声…。
声の主は白髪をオールバックにしたモノクルをした執事然とした妙齢の男。
男はゼハールト準男爵家の執事長であった。
彼は俺を自分の後継者としてスカウトにきた、と話す。
何故、俺?と当然の疑問を投げ掛けるが…
「そこそこの隠密性とそこそこの戦闘力、そして多様性…ですかね」
…なるほど、ある意味俺にぴったりではある。しかしそうであるならば、俺よりも適任者はたくさんいると思うのだが…。
「こう言ってはなんですが優秀な斥候職は上級パーティーは離しません。貴方はちょうど良かったのです」
そう言われるとえらい複雑なんだが…。しかし、俺に務まるか?礼儀もなにもないぞ?
「あえて一から教えるのです。その為にギルドに来たのですから…」
ニコリと薄く笑うが、その目は笑っていない。…いや怖ぇよ。
しかし、燻っていた俺にはソレが蜘蛛の糸のように見えたのだろう…俺はその糸を掴んだ。
そう、他のパーティーにも入らず、他の土地に移るでもない。
実力的にも伸び代があるワケでもない俺のところに垂れてかた蜘蛛の糸…ソレを掴まない理由が無いのだ。
俺はその男の手を掴み、ゼハールト準男爵家へと足を踏み入れた。
かつてはもう少しでB級冒険者になれそうなところまでかけ上がった元C級冒険者だ。
と言っても実際のところは他のパーティーメンバーが強かったお蔭で…と言うのが正直なところか…。
俺自身はパーティーの斥候役と雑用係がメインで戦闘に自信があったワケではない。…もちろん訓練はしていたが…。
転機は突然のことだった。
俺たちのパーティーでダンジョン攻略に臨んだ際、メインアタッカーの剣士の負傷により、やむを得ず引き上げたのだが、治療が遅れたことで障害が残り、あっさりと引退、パーティーは解散となった。
剣士は幸いなことに普通に生活する分には問題が無かったので、その後は冒険者ギルド職員として働くようになり、今では副ギルド長の地位にまで就いている。
困ったのは残された俺たち…いや俺か。
B級間近だった俺たちは冒険者としてはそれなりに周りからも認められていた。そう、俺『たち』は…。
『俺』個人はというと斥候役としては多少出来る程度。雑用はまあそれなり…といったところか。
…実力的にはB級には届いていなかった。
パーティーの他の奴らは別の都市に行ったり、別のパーティーに入ったり、引退したりと比較的早くに次を決めているなか、俺は取り残されていた。
「当家で働いてみませんか?」
そんななか突然の声…。
声の主は白髪をオールバックにしたモノクルをした執事然とした妙齢の男。
男はゼハールト準男爵家の執事長であった。
彼は俺を自分の後継者としてスカウトにきた、と話す。
何故、俺?と当然の疑問を投げ掛けるが…
「そこそこの隠密性とそこそこの戦闘力、そして多様性…ですかね」
…なるほど、ある意味俺にぴったりではある。しかしそうであるならば、俺よりも適任者はたくさんいると思うのだが…。
「こう言ってはなんですが優秀な斥候職は上級パーティーは離しません。貴方はちょうど良かったのです」
そう言われるとえらい複雑なんだが…。しかし、俺に務まるか?礼儀もなにもないぞ?
「あえて一から教えるのです。その為にギルドに来たのですから…」
ニコリと薄く笑うが、その目は笑っていない。…いや怖ぇよ。
しかし、燻っていた俺にはソレが蜘蛛の糸のように見えたのだろう…俺はその糸を掴んだ。
そう、他のパーティーにも入らず、他の土地に移るでもない。
実力的にも伸び代があるワケでもない俺のところに垂れてかた蜘蛛の糸…ソレを掴まない理由が無いのだ。
俺はその男の手を掴み、ゼハールト準男爵家へと足を踏み入れた。
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