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セルディオさんの言語スキル

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「あ……あの、いや、待った? その……トール」
 僕はセルディオさんをどう呼んだら良いのかで迷った。僕の双子の兄? 弟? だと言うんだから、ビクトールまたはセルディオと本名で呼ぶわけにはいかないから。すると、セルディオさんが『トール』と2度口パクで言ったので、それに乗っかる。そっか、ビクトールのビクじゃなくってトールなら、トオル(徹・透・亮・亨……等々)って日本名っぽいもんね。ってコレ、先輩の入れ知恵だろうか。それともセルディオさんが自分で思いついた? だとしたらセルディオさんスゴすぎ。
「ええ、ちょっと……おかげでゆっくりこちらを堪能できました」
フルーツもプリンも生クリームもこんなに一度に頂いたのは初めてですと、セルディオさんはほくほく顔でそう答える。でも、双子設定にしたんなら、弟(どう見ても僕の方が年下っぽいと思わない?)にこのくそ丁寧なしゃべり方は止した方が良いと思うんだけど。ま、二度と二人でこの店に来ることもないだろうから良いんだけどね。セルディオさんは、
「へぇ、お召し替えするとますます可愛いですね。で、こういうのをなんて言うんでしたっけ。あの、『お孫さんに衣装』でしたっけ」
と言いながら中司さんに笑みを向け、彼の頬を突くけど、彼は露骨にイヤな顔をして庇護を求めるように抱いている谷山先生の顎元にその手を伸ばす。
「それ以上するとまた大泣きするから止め……といた方がいいと思うよ。それに、それを言うなら『馬子にも衣装』だし。馬子、馬番のことだよ。普段、みすぼらしい恰好をしている馬番でも、着飾ればそれなりに見られるっていうのが元だからね」
僕はセルディオさんにつられて丁寧口調になりそうなのを必死に抑えながらそう言った。
「へぇ、馬番のことですか、勉強になります」
だから、日本の諺まで理解してるのには敬意を表するけど、丁寧口調は止めてって。
 僕はセルディオさんを『ジャンボプリンパフェ』の完食と同時に即刻店から連れ出した。
「あーいう客商売の人たちって、客の会話を聞いてないようで聞いてるもんなんだからね」
僕は先輩のマンションに向かう道中、セルディオさんに懇々と説教して走った。
 そして、僕たちはようやく先輩のマンションへとたどり着いた。ホント、ここまで長かった。
僕はリビング横の和室に荷物を置くと、どっと疲れを感じてへたり込んだ。乾燥ガザの実は生より回復が早くうまくすれば今日中に対逆魔法が唱えられると思ってたけど、最後の最後にセルディオさんにみんなエネルギーを持ってかれちゃった感じがする。
 まぁ、先輩が戻ってきてからこの先のことは相談して決めれば良いかなと、和室に中司ベビーの空間ができるのを見ながら、僕はソファーで何時しか船出していた。



 





 
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