40 / 65
時限爆弾スイッチON
しおりを挟む
「ねぇ、いい加減その子に服を着せないと。それに、指を吸い始めたわ、お腹空いているのよ」
それまで黙ってたから気づかなかったけど、奥の方の椅子に谷山先輩が座っていた。その顔色は僕に違わず蒼い。僕はそれまで夢だと思っていたことが現実だと解っただけだけど(それでも衝撃的ではあるけどね)、いきなりパラレルワールドだのドッペルゲンガーだと言われた谷山先輩の衝撃はそれ以上だろう。理解の範疇をはるかに超えているって話だ。
「そう言ゃもうすぐお昼だしな。それに、おしめだけはしとかないと、赤ん坊は所構わずだろ。包んでるのは本人のもんだが、汚しちまったら、元に戻った時に着せるもんがなくなっちまうからな。何気にコレ、ア〇マーニだし。不測の事態になったら、いきなり代替えとかできねぇ」
それを受けた先輩の言葉に、一同が無言で頷く。
「そうですね、美久、そろそろ動けますか」
「え、ええ」
セルディオさんの言葉に僕は頷いた。何度も魔法を使って慣れてきたからなのか、それともガザの実は乾燥している方が効果があるのか、僕は少しふらつくもののガソリンを作ったときよりずっと症状は軽いと感じていた。
「大丈夫です」
と僕が返事をすると、
「これからだが、ビクトールにはこいつに化けてもらって俺と一緒に社外に出る。そんで、お前は薫が体調不良だから送っていく体でこいつをうまく連れて出てくれ。赤ん坊のモノを買って俺のマンションで合流だ」
と、先輩は僕にそう言った。でも、セルディオさんが中司さんに化けるってそう簡単に……まてよ、エリーサちゃんがマシューに化けられたんだから、魔法使いのセルディオさんも同じことができるのか。
「では、鮎川様参りましょう」
セルディオさんはそう言って、念を込める。すると、先輩たち二人ははぎょっとして目を瞠った。そして、
「おっ、さすがだな。ソックリだ」
って先輩が感心した様子で言うけど、僕の目にはちっとも変わらないそのまんまのセルディオさんの姿。首を傾げていると、
「美久には私と同等の魔力があるので、まったく不意打ちならともかく、それでも本来の姿を感じ取ってしまうのではないでしょうか」
と、セルディオさんが説明してくれた。そして彼は、
「それって、つまらないでしょう? 私もそう思います」
と言って先輩に続いて応接室を一旦は出たところで立ち止まり、
「あ、必ず今から40分以内にあなた方もここを出てくださいね」
と言った。
「えっ、何で40分?」
さらに首を捻る僕に、
「実はこの方にSleepの魔法をかけてあるんです。今から40分後にそれの解除魔法がかかるようにしておきますから。本来なら出たところで直接解除できれば良いんですけど、別々に行動をと言うことなので。美久、くれぐれも40分以内にここを出てしまってくださいね」
としつこく念を押す。
「どうして?」
「でないとたぶんこの方、大泣きされますよ。たぶんあなたがかけたのはこの前ミシェルに施したアレですよね」
「はい、そうですよ」
「でしたらこの方があなたのしたことを解ってではないと思いますが。
この方はは私(ということはもちろん美久も)のことが生理的にお嫌いな様なので」
「そうそう、こいつわざわざ目で追っかけてまで泣いてたもんな」
セルディオさんの言葉に対して、先輩が吹き出すのをこらえながらそう続ける。
「それは僕たちが女みたいな顔をしてるからですよ。中司さんはすごく女嫌いですから」
僕はむくれながらそう返した。
「ま、ぐだぐだ言っててもしゃーねぇ、作戦開始だ」
先輩はそう言って中司さんもどきのセルディオさんにわざと大きな声で、
「本当に今日はありがとうございました。で、今後の日程について……」
と話しながら、彼を先導して歩き始めた。
それまで黙ってたから気づかなかったけど、奥の方の椅子に谷山先輩が座っていた。その顔色は僕に違わず蒼い。僕はそれまで夢だと思っていたことが現実だと解っただけだけど(それでも衝撃的ではあるけどね)、いきなりパラレルワールドだのドッペルゲンガーだと言われた谷山先輩の衝撃はそれ以上だろう。理解の範疇をはるかに超えているって話だ。
「そう言ゃもうすぐお昼だしな。それに、おしめだけはしとかないと、赤ん坊は所構わずだろ。包んでるのは本人のもんだが、汚しちまったら、元に戻った時に着せるもんがなくなっちまうからな。何気にコレ、ア〇マーニだし。不測の事態になったら、いきなり代替えとかできねぇ」
それを受けた先輩の言葉に、一同が無言で頷く。
「そうですね、美久、そろそろ動けますか」
「え、ええ」
セルディオさんの言葉に僕は頷いた。何度も魔法を使って慣れてきたからなのか、それともガザの実は乾燥している方が効果があるのか、僕は少しふらつくもののガソリンを作ったときよりずっと症状は軽いと感じていた。
「大丈夫です」
と僕が返事をすると、
「これからだが、ビクトールにはこいつに化けてもらって俺と一緒に社外に出る。そんで、お前は薫が体調不良だから送っていく体でこいつをうまく連れて出てくれ。赤ん坊のモノを買って俺のマンションで合流だ」
と、先輩は僕にそう言った。でも、セルディオさんが中司さんに化けるってそう簡単に……まてよ、エリーサちゃんがマシューに化けられたんだから、魔法使いのセルディオさんも同じことができるのか。
「では、鮎川様参りましょう」
セルディオさんはそう言って、念を込める。すると、先輩たち二人ははぎょっとして目を瞠った。そして、
「おっ、さすがだな。ソックリだ」
って先輩が感心した様子で言うけど、僕の目にはちっとも変わらないそのまんまのセルディオさんの姿。首を傾げていると、
「美久には私と同等の魔力があるので、まったく不意打ちならともかく、それでも本来の姿を感じ取ってしまうのではないでしょうか」
と、セルディオさんが説明してくれた。そして彼は、
「それって、つまらないでしょう? 私もそう思います」
と言って先輩に続いて応接室を一旦は出たところで立ち止まり、
「あ、必ず今から40分以内にあなた方もここを出てくださいね」
と言った。
「えっ、何で40分?」
さらに首を捻る僕に、
「実はこの方にSleepの魔法をかけてあるんです。今から40分後にそれの解除魔法がかかるようにしておきますから。本来なら出たところで直接解除できれば良いんですけど、別々に行動をと言うことなので。美久、くれぐれも40分以内にここを出てしまってくださいね」
としつこく念を押す。
「どうして?」
「でないとたぶんこの方、大泣きされますよ。たぶんあなたがかけたのはこの前ミシェルに施したアレですよね」
「はい、そうですよ」
「でしたらこの方があなたのしたことを解ってではないと思いますが。
この方はは私(ということはもちろん美久も)のことが生理的にお嫌いな様なので」
「そうそう、こいつわざわざ目で追っかけてまで泣いてたもんな」
セルディオさんの言葉に対して、先輩が吹き出すのをこらえながらそう続ける。
「それは僕たちが女みたいな顔をしてるからですよ。中司さんはすごく女嫌いですから」
僕はむくれながらそう返した。
「ま、ぐだぐだ言っててもしゃーねぇ、作戦開始だ」
先輩はそう言って中司さんもどきのセルディオさんにわざと大きな声で、
「本当に今日はありがとうございました。で、今後の日程について……」
と話しながら、彼を先導して歩き始めた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R-18あり】先輩は私のお姉ちゃんだけどそれを先輩は知らない
こえだ
恋愛
百合です。少しドロドロした設定かも知れません。
途中からR18の内容が入る予定です。
小説はど素人の初心者です。
なので気になる点、アドバイスなんかあったらコメントくださるとすごく嬉しいです。
<冒頭>
私の学校にはみんなが憧れる1つ上の先輩がいる。
スポーツ万能、勉強でも学年で1番を取るような誰にでも優しい完璧な先輩。
この先輩は私のお姉ちゃんらしい。
そして先輩はそのことを知らない…
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
キャンピングカーで往く異世界徒然紀行
タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》
【書籍化!】
コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。
早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。
そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。
道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが…
※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜
※カクヨム様でも投稿をしております
先輩と後輩の変わった性癖(旧タイトル『マッチングした人は会社の後輩?』)
雪本 風香
恋愛
※タイトル変更しました。(投稿時のミスで他サイト様に掲載している分とタイトルが違っていたため)
オトナのおもちゃを使って犯されたい…
結城加奈子は彼氏に言えない欲望の熱を埋めるべく、マッチングアプリを始めた。
性癖が合う男性を見つけた加奈子は、マッチングした彼に会うことにする。
約束の日、待ち合わせ場所に現れたのは会社の後輩の岩田晴人だった。
仕事ではクールぶっているが、実際はドMな加奈子。そんな性癖を知っている晴人はトコトン加奈子を責め立てる。晴人もまた、一晩で何回もイける加奈子とのプレイにハマっていく。
おもちゃでクリトリスでしかイけなかった加奈子だが、晴人に膣内を開発をされ、ナカイきを覚える頃にはおもちゃだけではイけない体になっていた…。
体の関係から始まる恋愛を書きたいと思います。
ムーンライトノベルズ様にも掲載中です。
え?私、最強なんですか?~チートあるけど自由気ままに過ごしたい~
猫野 狗狼
ファンタジー
神様の手違いで転生してしまう主人公ナナキ、ちょっとボケた神様はステータスすらとんでもないことにしちゃって…!?ナナキの所に神様やら聖獣やら精霊王やら集まってくるけど、周りの人達のおかげで今日も今日とて元気に暮らせます。そして、自分からやらかすナナキだけどほとんど無自覚にやっています。そんな女の子が主人公の話です。
表紙は、左上がハデス、真ん中がナナキ、右上がゼウス、ナナキの隣がアポロ、右下がヘファイストスです。
ド素人な私が描いた絵なので下手だと思いますが、こんな感じのキャラクターなんだとイメージして頂けたら幸いです。他の人達も描きたかったのですが、入りきりませんでした。すいません。
稚拙ですが、楽しんでもらえたら嬉しいです。
お気に入り700人突破!ありがとうございます。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる