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道の先には……
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意識を回復した先輩は、まるで怪我なんかしてなかったかのようにバカみたいに元気になった。一方、僕の方は意識を失った後原因不明の高熱が出て、点滴生活に逆戻り。
「急変するのはよくあることだが」
と言いながらも、どこか腑に落ちないという表情で担当の医師は僕を看た。
結局、退院は先輩の方が先で、僕はその三日後。その週いっぱい自宅療養して(一人暮らしの僕はというより、居なかった分ほこりのたまった部屋の掃除とか、たまった洗濯をするとか、事後処理に明け暮れていたのだけど)、週明けにお久しぶりの出社をした。正直入社して半年そこらで事故で長欠した僕の席がまだあるのか不安だった。
深呼吸して、営業部のドアを開く。
「おはようございまーす」
「お、宮本、やっと元気になったみたいだな」
声をかけてくれたのは、兵藤さん。
「はい、おかげさまで。本当に長い間ご迷惑おかけしました」
そう言いながら、僕がデスクにつこうとすると……
「宮本、そこもうお前の席じゃないぞ」
と、兵藤さんが言った。や、やっぱりもう僕の席はどこにもないの! 不安が的中して頭が真っ白になってしまった僕に兵藤さんは笑いながら、
「お前、掲示板ちゃんと見たか? 辞令が降りてんだよ、配置換え。わかったらさっさと見て、新しい部署に出社しろ。早く行かないと、大目玉くらうぞ」
と言った。は、配置換え? はぁ、辞めなくて済んだのは良かったけど、それでも窓際行きかぁ。僕はのろのろと掲示板を見に行って、そこにかかれてある辞令に……
マジでひっくり返った。そこには、
宮本美久
上記の者平成○○年○月○○日付けで秘書課勤務とする。
以上
と書かれてあったからだ。秘書課ぁ? この僕が? 何かの間違いでしょ!
だけど、いつまでも呆けてはいられないし、僕はとりあえず今度は秘書課のドアを叩いた。
「どうぞ」
と言われて中にはいると、そこにはなんと先輩がいた。
「先輩!」
「遅いぞ宮本。社長より遅れてきたら洒落になんねぇんだからな」
先輩はそう言って僕にデコピンを食らわせた。
「なんか悪い冗談なんですかね、秘書課なんて」
「ああ、そう思いたいよ。お前はなんかまだ良いぞ。俺なんか頃合い見て取締役会に出席のおまけ付きだぞ」
取締役会? 完全に予想外のワード連発に頭がついていかない。
先輩はため息を落として、
「俺さ、お前が倒れた後薫にその……プロポーズしたんだわ。んで、退院した日に薫の親に挨拶に行ってさぁ、そしたらこうなった」
と言った。まぁ、夢の中でまで奥さんにするくらいだから、本気で惚れてることを自覚してちゃんと向き合ったんだろうけど、それがどうして取締役会やら僕まで秘書課勤務になるんだろう。
「へっ?」
「薫、この会社の会長の孫。正真正銘のお姫様」
「げっ。でも、それじゃなんで僕まで秘書課なんですか」
「あれ、気づいてねぇのか? 薫とあの子、絵梨紗はこっちの世界でも、姉と妹なんだよ。お前、あの子口説いただろ。薫と俺が結婚するって言ったら、あの子もおまえと結婚するんだって駄々こねてさ、ほんじゃま様子見ってことで社長のそばに置くって事になったわけ」
「はぁ」
その言葉に今度は僕からため息が出た。
「ま、英語も呪文も使いこなす『語学マスター』なんだから、案外おまえって、向いてんじゃねぇの、この仕事」
向いてる向いてないは解んないけど、エリサちゃんと再会したとき、運命を感じた僕の予感は当たっていたのだろうな。それが良い運命なのかどうかは別として……
谷山先輩とエリサちゃんは本当は姉妹ではなく、会長の長女の娘の谷山先輩と、最初の奥さんが亡くなった後、三〇歳年下の奥さんと再婚した会長の娘のエリサちゃんは実は姪と叔母の関係であることが分かるのは、また後日の話。
道の先には……Happy endが転がっていた。なーんてねっ!
「急変するのはよくあることだが」
と言いながらも、どこか腑に落ちないという表情で担当の医師は僕を看た。
結局、退院は先輩の方が先で、僕はその三日後。その週いっぱい自宅療養して(一人暮らしの僕はというより、居なかった分ほこりのたまった部屋の掃除とか、たまった洗濯をするとか、事後処理に明け暮れていたのだけど)、週明けにお久しぶりの出社をした。正直入社して半年そこらで事故で長欠した僕の席がまだあるのか不安だった。
深呼吸して、営業部のドアを開く。
「おはようございまーす」
「お、宮本、やっと元気になったみたいだな」
声をかけてくれたのは、兵藤さん。
「はい、おかげさまで。本当に長い間ご迷惑おかけしました」
そう言いながら、僕がデスクにつこうとすると……
「宮本、そこもうお前の席じゃないぞ」
と、兵藤さんが言った。や、やっぱりもう僕の席はどこにもないの! 不安が的中して頭が真っ白になってしまった僕に兵藤さんは笑いながら、
「お前、掲示板ちゃんと見たか? 辞令が降りてんだよ、配置換え。わかったらさっさと見て、新しい部署に出社しろ。早く行かないと、大目玉くらうぞ」
と言った。は、配置換え? はぁ、辞めなくて済んだのは良かったけど、それでも窓際行きかぁ。僕はのろのろと掲示板を見に行って、そこにかかれてある辞令に……
マジでひっくり返った。そこには、
宮本美久
上記の者平成○○年○月○○日付けで秘書課勤務とする。
以上
と書かれてあったからだ。秘書課ぁ? この僕が? 何かの間違いでしょ!
だけど、いつまでも呆けてはいられないし、僕はとりあえず今度は秘書課のドアを叩いた。
「どうぞ」
と言われて中にはいると、そこにはなんと先輩がいた。
「先輩!」
「遅いぞ宮本。社長より遅れてきたら洒落になんねぇんだからな」
先輩はそう言って僕にデコピンを食らわせた。
「なんか悪い冗談なんですかね、秘書課なんて」
「ああ、そう思いたいよ。お前はなんかまだ良いぞ。俺なんか頃合い見て取締役会に出席のおまけ付きだぞ」
取締役会? 完全に予想外のワード連発に頭がついていかない。
先輩はため息を落として、
「俺さ、お前が倒れた後薫にその……プロポーズしたんだわ。んで、退院した日に薫の親に挨拶に行ってさぁ、そしたらこうなった」
と言った。まぁ、夢の中でまで奥さんにするくらいだから、本気で惚れてることを自覚してちゃんと向き合ったんだろうけど、それがどうして取締役会やら僕まで秘書課勤務になるんだろう。
「へっ?」
「薫、この会社の会長の孫。正真正銘のお姫様」
「げっ。でも、それじゃなんで僕まで秘書課なんですか」
「あれ、気づいてねぇのか? 薫とあの子、絵梨紗はこっちの世界でも、姉と妹なんだよ。お前、あの子口説いただろ。薫と俺が結婚するって言ったら、あの子もおまえと結婚するんだって駄々こねてさ、ほんじゃま様子見ってことで社長のそばに置くって事になったわけ」
「はぁ」
その言葉に今度は僕からため息が出た。
「ま、英語も呪文も使いこなす『語学マスター』なんだから、案外おまえって、向いてんじゃねぇの、この仕事」
向いてる向いてないは解んないけど、エリサちゃんと再会したとき、運命を感じた僕の予感は当たっていたのだろうな。それが良い運命なのかどうかは別として……
谷山先輩とエリサちゃんは本当は姉妹ではなく、会長の長女の娘の谷山先輩と、最初の奥さんが亡くなった後、三〇歳年下の奥さんと再婚した会長の娘のエリサちゃんは実は姪と叔母の関係であることが分かるのは、また後日の話。
道の先には……Happy endが転がっていた。なーんてねっ!
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