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死亡フラグ

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「いい加減なこと言わないでよ」
 謎のイケメン外人にいきなり死亡フラグを立てられた私。だけど、突然初対面の人に、『おまえはもう死んでいる』なんてどっかのアニメのような台詞言われても、『はい、そうですか』ってあっさり信じる人間が果たしているんだろうか。
「いい加減ではありません。わたくしのお迎え名簿にはちゃんとあなたの住所と名前が記載されてありますから。あなたは、中町1ー5ー36の田中一子様でよろしいんですよね」
そしたら、イケメン外人は何やらメモを見ながらウチの住所と私の名前を言う。だけど、お迎えメモってウソっぽ~い。どっかにドッキリのプラカードを持ったスタッフが隠れてる気がする。
「じゃぁ、何で動けんのさ。それと朝から誰も私の存在を覚えてる人いないんだけど、何か知ってるの?」
そうよ、死んでる人間が動くなんてあり得ない。他人(ひと)勝手にゾンビにしないでほしい。
「それはわたくしにも解りません」
すると、イケメン外人はそう言って首を振った。解んないって、ますます怪しい。
「ただ、こうしてお迎え名簿に載っているということは、生存者名簿からは既に外れているので、不測の事態としてあなたは初めからいなかったという世界を構築したということではないでしょうか。
大体、わたくしがお迎えに行く時点ではみなさん大抵、いえ総じてその場にじっとしておられますので。こんなケースはわたくしも初めてでして、それで幾分、あなたを見つけるのに時間を費やしてしまいました。
ですが、もう大丈夫です。安心してわたくしに付いてきてください」
フツー動かないって、そりゃそうだろ、死んでんだから。けど、初めからいなかったことにって、当の本人の前でさらっと言うんじゃないわよ。
「ついて行くってどこへ」
ひたすらいやな予感がする……おそるおそるそう聞いた私に、
「先ほど申しませんでしたか。もちろん、天国ですよ。
あ、ただ、本人確認のために一旦ご自宅に戻っていただかなければならないんですけど、確認し次第、すぐにお連れいたします」
イケメン外人は、満面の笑み(営業スマイル?)でそう答えた。でも、て、天国? 聞いてない! 聞いてないよ!!
 しかも、本人確認のためにウチに帰れですって!?
何が悲しくて、死にに帰らなきゃなんないのよ! 信じらんない!!
「イヤよ、死にに行くなんて。今すぐ消えろ、この死神っ!」
私はそう言うと、ダッシュで駆けだした。だけど、 
「ま、待ってください! 素直にお迎えに応じてくれないと困ります。わたくしもあなたお一人にそう時間はかけていられませんので。
それと、わたくしは死神ではございません。お迎え天使です。名はデビッド。神はお一人しかおられません。たとえ、それが比喩的な表現だとしても、わたくしごときの被造物に、神の呼称はお止めください」
と、-謎のイケメン外人改めお迎え天使デビッド-がそう叫んでいるのを聞いて、思わず脱力。足、停まっちゃったよ。

 それにしても、神呼称は止めろって……どうでもいいけど、拘るとこってソコなの? 
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